就業規則の意見書とは?記載例や作成時の注意点などを解説
会社の秩序を保ち、労働トラブルを避けるためには適切な就業規則の作成が欠かせません。
そのため、就業規則を作成・変更する際は、労働代表者の異議や要望が記載された意見書の提出が義務づけられています。
しかし、中には意見書の作成方法や労働代表者の選出方法について曖昧な方もいるのではないでしょうか。
本記事では就業規則の意見書の記載例や作成時の注意点などについて解説します。
目次[非表示]
- 1.就業規則の意見書とは
- 1.1.労働者代表の意見を記載した書類
- 1.2.就業規則の意見書が必要となるタイミング
- 1.3.意見書の目的
- 2.労働代表者の選出方法
- 3.就業規則の意見書の記載例
- 4.就業規則の意見書に関する注意点
- 4.1.意見聴取は事務所ごとに実施する必要がある
- 4.2.会社は労働者代表を選べない
- 4.3.労働代表者の同意は不要
- 5.意見書の提出を拒まれた際における対応
- 6.意見聴取を実施しなかった場合
- 7.就業規則の意見書に関するご相談はF&M Clubにお問い合わせください
- 8.まとめ
就業規則の意見書とは
常時10人以上の労働者を使用する事業所は、会社のルールである就業規則を作成することが義務づけられています。
就業規則を所轄の労働基準監督署に届出る際に必要となるものが「意見書」です。
意見書を添付することは労働基準法第九十条にて定められています。
労働者代表の意見を記載した書類
意見書とは、労働代表者から就業規則の内容について聞いた意見を記載した書類です。
就業規則に対する労働代表者の異議や要望を書類に記載し、署名もしくは記名押印してもらいます。
なお、就業規則に異議がなかった場合でも、その旨を意見書に記載して所轄の労働基準監督署に提出しなければなりません。
就業規則の意見書が必要となるタイミング
就業規則の意見書が必要となるタイミングは、就業規則の作成時と変更時です。
就業規則を作成・変更する際は意見書を作成し、所轄の労働基準監督署に就業規則と共に提出します。
また、一部の労働者のみに適用される就業規則を作成する場合にも意見書が必要です。
意見書の目的
意見書は、使用者が労働者にとって一方的に不利な就業規則を設けないために作成されます。
就業規則は法的効力を持つ会社のルールです。
そのため使用者が一方的に作成することを認めていれば労働トラブルが発生する可能性が高くなります。
また、就業規則の内容を労働者側に適切に理解してもらうという役割もあります。
ただし、意見を聞いていなかったとしても、労働者に就業規則を周知しており、内容が労働基準法に違反していない場合は法的効力を持つと認められる可能性が高いです。
労働代表者の選出方法
労働代表者とは、労働基準法で「労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者」と定義されています。
労働代表者の選出方法としては選挙・挙手・回覧などが一般的であり、会社が労働代表者を選出することはできません。
労働代表者は労働者の過半数以上の支持を集めている者である必要があるからです。
また、労働条件や人事の決定権を持つ管理監督者は労働代表者に選出できません。
【参考】労働基準法
就業規則の意見書の記載例
就業規則の意見書に書式は定められておらず、あくまでも労働代表者の就業規則に対する意見が明記されていれば問題ありません。
社労士の意見や厚生労働省の参考様式などをもとに意見書を作成しましょう。
ここからは意見書に記載すべき主な項目や記載例について解説します。
意見書の主な項目
意見書に記載すべき主な項目は以下のとおりです。
意見書の主な項目
- 提出年月日
- 意見書の提出先
- 就業規則に対する労働代表者の意見
- 労働代表者の氏名・職名
- 労働代表者の選出方法
異議なしの場合
就業規則に対して異議がない場合は、「就業規則について特に異議はありません。」と記載するだけで構いません。
異議ありの場合
就業規則に対して異議がある場合は、どの部分にどのような異議があるのかが明確に分かるように記載します。
記載例は以下のとおりです。
異議がある場合の記載例
第◯条 所定労働時間8時間とあるのを、7時間30分としてもらいたい。 第◯条 会社が定める特別休暇について、すべて有休休暇として取り扱ってもらいたい。 第◯条 定年年齢60歳とあるのを、65歳に引き上げてもらいたい。 |
就業規則の意見書に関する注意点
就業規則の意見書に関する注意点は以下のとおりです。
就業規則の意見書に関する注意点
- 意見聴取は事務所ごとに実施する必要がある
- 会社は労働者代表を選べない
- 労働者の同意は不要
意見聴取は事務所ごとに実施する必要がある
就業規則は基本的に常時10人以上の労働者を使用する事業所ごとに作成しなければならず、同様に労働代表者に対する意見聴取も事務所ごとに実施する必要があります。
すべての事務所で就業規則の内容が同じであれば一括して届出ることは可能ですが、それでもなお意見書は事務所ごとにそれぞれ作成しなければなりません。
会社は労働者代表を選べない
労働代表者を選出する際は、挙手や投票などといった民主的な方法を用いる必要があるため、会社が労働代表者を選ぶことはできません。
また、労働代表者は労働者の過半数が選任を支持していることが選出の条件となります。
そのため、労働代表者を選出する際は、すべての労働者が参加できる環境が必要です。
なお、正社員のみならず、アルバイトやパートタイムも労働者に含まれます。
労働代表者の同意は不要
就業規則を作成・変更する際は労働代表者に意見を聞く必要がありますが、同意されなかったとしても手続きにおいては問題はありません。
そのため、労働代表者の反対意見が記載された意見書を所轄の労働基準監督署に提出しても受理されます。
ただし、使用者が合理性や必要性もなく、一方的に従業員に不利な就業規則に変更した場合は、法的に無効となる可能性があります。
また手続きに問題がなかったとしても、反対意見が出た場合は使用者は慎重に受け止めましょう。
会社のルールである就業規則に対して従業員の納得がいっていないということであるため、モチベーションの低下や離職率の上昇などを招く恐れがあります。
意見書の提出を拒まれた際における対応
万が一、意見書の提出を拒まれた場合は、労働代表者へ意見を聴いたことが証明できる書類を代わりに提出します。
たとえば、労働代表者が意見書を提出しない理由や提出拒否に至った経緯が記載された書類を提出すれば、就業規則の作成・変更手続きに問題はありません。
ただし、意見書の提出が拒まれるということは従業員との間に何らかのトラブルが発生しているため、話し合いの場を設ける、就業規則の内容を説明するといった真摯な対応が重要です。
意見聴取を実施しなかった場合
労働基準法90条1項により、就業規則の作成・変更にあたって労働代表者への意見聴取を実施しなかった場合、使用者には30万円以下の罰金が科されます。
また、使用者が一方的に就業規則を作成・変更することは、従業員が不満を抱く恐れがあり、場合によっては訴訟を起こされる可能性もあります。
社会的信頼を失い、業績の悪化や倒産につながることもあるため、意見聴取は必ず実施しましょう。
就業規則の意見書に関するご相談はF&M Clubにお問い合わせください
就業規則は賃金や労働時間といった働くうえで重要なルールを定めたものです。
適切な就業規則を作成するために、労働者側とよく話し合い、意見を聞くことは欠かせません。
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まとめ
就業規則の意見書の記載例や作成時の注意点などについて解説しました。
就業規則の意見書は、従業員に一方的に不利なルールが設けられることを防ぎ、内容をよく理解してもらうために作成することが義務づけられています。
就業規則は法的効力を持っている会社のルールであるため、労働トラブルを避けるためにも意見書は必ず作成しましょう。
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