ここでいう「使っている会社」とは、社員が個人で生成AIを試しているだけの会社ではありません。生成AIの活用方針を定め、業務効率化や意思決定に組み込もうとしている会社を指します。
総務省「令和7年版情報通信白書」によると、2024年度に生成AIの活用方針を定めている日本企業の割合は49.7%でした。2023年度の約43%から増加しており、AI活用が広がっていることが分かります。
【出典】令和7年版情報通信白書|総務省
ただし、これは「半数の企業がAIを十分に使いこなしている」という意味ではありません。あくまで、活用方針を定めている企業の割合です。それでも、方針を持つ企業と持たない企業では、今後の活用スピードに差が出やすくなります。
企業規模別に見ると、大企業では約56%が生成AIの活用方針を策定しています。一方、中小企業では約34%にとどまる状況です。多くの中小企業は、まだAIをどの業務で使うのか、どこまで利用を認めるのかを明確にできていません。
【出典】令和7年版情報通信白書|総務省
AI活用では、最初の方針づくりが重要です。利用を認めるツール、入力してよい情報、禁止する使い方を決めておきます。簡単なルールでも整えておけば、小さな業務改善から活用することが可能です。
国際比較でも、日本企業の生成AI活用は遅れています。「積極的に活用する方針」を定めている企業の割合は、中国48.5%、米国39.2%、ドイツ39.2%に対し、日本は23.7%です。
また、活用方針を定めている企業全体の割合も、中国92.8%、米国84.8%、ドイツ76.3%に対し、日本は49.7%にとどまっています。日本企業の中でも、AI活用を進める企業と未対応の企業で差が広がる可能性があります。
【参考】令和7年版情報通信白書|総務省
AI活用の差は、ツールを導入しているかどうかだけではありません。業績・人材・意思決定という経営の重要領域に影響します。
独立行政法人経済産業研究所(RIETI)の森川正之氏が行った実証研究によると、2023年時点で仕事にAIなどを活用している企業の割合は8.2%にとどまります。しかし実際に導入している企業に目を向けると、AI利用者の約3分の2が「業務の効率性が高まった」と回答しました。利用者の主観的な生産性上昇率の平均値は21.8%です。
この数字を全体に当てはめると、AIを使い始めたことによるマクロ経済への生産性向上効果は年率0.1%強という試算です。日本の潜在成長率が0.6〜0.7%程度であることを踏まえると、0.1%は「決して小さくない」効果といえます。
AIやデジタルツールを使う会社は、同じ人数でも処理できる業務量を増やすことが可能です。一方、使っていない会社は、人件費や原材料費が上がる中で、作業効率が上がらず利益率を圧迫されやすくなります。
人材・採用力の格差
総務省の調査では、日本の20代の生成AI利用経験率は約45%に達しています。今後の主力世代の多くが、AIを使った経験を持って職場に入ってくるということです。
「生成AIの利用ルールがなく、現場が使いづらい会社」と「ルールを整え、業務効率化に活用している会社」では、若手人材から見た魅力に差が出やすくなります。特に人手不足が続く中小企業では、AI活用が採用力や定着率に影響するかもしれません。
また、AIを活用する職場ではルーティン業務が減り、従業員が付加価値の高い業務に集中しやすくなります。反対にAIを使わないと、単純作業の負担が残り、人手不足による疲弊が進むのです。
【参考】令和7年版情報通信白書|総務省
AIを経営に組み込んでいる会社では、自社の売上データや過去の提案書をAIに学習させ(RAGの活用)、市場情報や顧客データと掛け合わせた分析を瞬時に行っています。
経営者が判断する前の情報整理が速くなれば、意思決定のスピードも上がるのです。
たとえば、週1回60分かかっていた調査・分析業務を5分に短縮できれば、年間で約48時間を別の業務に回せます。毎営業日に発生する業務であれば、年間では200時間を超える削減効果も見込めます。
AI活用が重要だと分かっていても、導入できていない中小企業が見受けられます。主な理由は、使い道・セキュリティ・費用対効果への不安です。
最も大きな障壁は、具体的な使い道が見えていないことです。「ChatGPTは知っているものの、自社業務にどう使えばよいか分からない」という状態です。
ただ、最初から高度な活用を目指す必要はありません。議事録作成、メール文案作成、報告書のドラフト作成、社内FAQの整理など、すぐに試せる業務は多くあります。
生成AIに社内情報を入力することへの不安を感じることは当然です。顧客情報、個人情報、契約情報、未公開の財務情報などを安易に入力すれば、情報漏えいリスクが生じる可能性があります。
とはいえ、多くの場合は、利用ルールを整備することでリスクを抑えられます。入力してよい情報と禁止する情報を分ける、利用できるAIツールを指定する、出力内容を必ず人が確認する、といったルールが有効です。経済産業省も、AIを安全に活用するための契約チェックリストを公開しています。
参考:「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」|経済産業省
AI導入には高額な費用がかかると思われがちで、導入をためらう企業も少なくありません。しかし、生成AIツールの多くは、月額数千円から数万円程度で利用が可能です。大規模なシステム開発をしなくても、既存ツールの活用から始められます。
また、中小企業庁のデジタル化・AI導入補助金では、AI活用ツールが補助対象となる場合があります。費用が不安な企業は、補助金の活用も含めて検討するとよいでしょう。
AI活用は、大規模な業務改革から始める必要はありません。まずは、日常的に発生している繰り返し業務から始めるのが現実的です。
会議メモや録音内容をもとに、議事録の下書きや要点整理を行う用途は、生成AIと相性がよい分野です。毎回の議事録作成に時間がかかっている企業では、作成時間を短縮できる可能性があります。
ただし、AIの出力には誤りが含まれることがあります。決定事項、担当者、期限などの重要情報は、必ず人が確認する運用にしましょう。
顧客への案内メール、社内通知、提案書の一部文章なども、AIで下書きを作りやすい業務です。白紙から考えるのではなく、AIにたたき台を作らせ、人が調整します。
社内で繰り返し質問される内容をFAQにしたり、業務手順をマニュアル化したりする場面でもAIは役立ちます。担当者の頭の中にある手順を文章化し、分かりやすく整理する作業のサポートが可能です。業務の属人化を防ぎ、新人教育や引き継ぎの負担を軽減するという観点でも役立ちます。
AI活用は、全社導入や大規模投資から始める必要はありません。一つの業務で試し、ルールを作り、成果を共有する順番で進めると定着しやすくなります。
まず、毎日または毎週繰り返している業務の中から、時間がかかっているものを一つ選びます。議事録作成、メール文案作成、報告書作成、問い合わせ回答案作成などは、生成AIで効率化しやすい業務です。
重要なのは、いきなり全社導入を目指さないことです。まず一つの業務で試し、どれだけ時間が短縮できたかを確認しましょう。
AIを使い始める前に、簡単な利用ルールを作ります。最初から複雑なガイドラインを作る必要はありません。以下の内容を1ページにまとめておきます。
また、社員が個人アカウントの無料版を勝手に業務で使う「シャドーIT」を防ぐため、会社側でデータが学習されない法人向けプランを契約し、支給することが重要です。加えて、システム側でデータが学習されない「オプトアウト設定」を心がけましょう。会社側で用意し、ハード・ソフト両面から対策を講じることが重要です。
AI活用を社内に広げるには、成功体験の共有が効果的です。月1回、「30分かかっていた作業が5分になった」といった事例を共有する場を設けましょう。
経営者が「AIを使いましょう」と言うだけでは、現場には定着しづらいです。実際に使った人の成果を共有することで、「自分の業務にも使えるかもしれない」という意識が生まれます。
AIを使っている会社と使っていない会社の差は、業績・人材・意思決定の3つの面で広がり始めています。活用できている企業は、業務効率化によって時間を生み出せています。その浮いた時間を、営業、顧客対応、人材育成、経営判断などに充てています。AIを使っていない企業は、従来の業務負担を抱えたまま、人手不足やコスト上昇に対応しなければなりません。
「使わない」という選択は、もはや無コストではありません。競合他社が効率化を進める中で何もしなければ、相対的な遅れが広がります。AI活用を経営課題として捉え、今から小さく始めることが、企業間格差を乗り越える第一歩です。
しかし、「AIを使わないと差が開くのは分かったが、自社にどう組み込めばいいか分からない」「社内ルールを作るリソースも、高額な投資をする余裕もない…」という中小企業も多いでしょう。そのようなお悩みを、F&M Clubがサポートします。
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「まずは社内のムダを減らしたい」「何が自社の課題なのかも含めて相談したい」という段階で構いません。競合他社との「企業間格差」が広がる前に、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
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