葬祭業界は、人口減少や価格競争により長期的に収益性が下がる構造的課題を抱えています。
さらに人件費・地代・光熱費といった固定費の高止まりが続く中、利益をどう守り、信用力をどう高めるかは経営者にとって重要なテーマです。
本記事では、取締役の退任を契機に資金繰り改善と格付向上を同時に実現した葬祭業A社の実例を紹介します。
監修:金井弘一朗(元大手信用調査会社調査員)
新卒で大手信用調査会社へ入社し、調査部で延べ1,000社以上の企業を担当。業種別分析・財務評価・信用格付け・面談・レポーティングを通じ、企業の経営課題を可視化。その後関西学院大学客員研究員として、企業分析・リサーチの研究を行った後、株式会社ケイ・ブリッジを設立。経済産業省アクセラレーションプログラム「EXIT」に選定されたほか、経済産業省からの認定も受けるなど数多くの賞を受賞。
現在は中小企業を中心に、経営分析・戦略立案・マーケティング支援の伴走も行っている。
また、「パソコン博士の知恵袋」や「建築現場の知恵袋」など複数の専門メディアで記事監修を務めるなど、幅広い監修実績を持つ。
葬祭業を営むA社は、長年地域密着型の運営を行い、安定的な顧客基盤を築いていました。
企業概要
業種: 葬祭業
所在地: 和歌山県
従業員数: 9名
しかし取締役の退任に伴い、多額の退職金支払いが発生。利益自体は黒字でしたが、「この利益をどう活かすか」という経営判断が新たな課題となりました。
金井弘一朗(元大手信用調査会社)のコメント:
黒字企業でも注意が必要なのは、「利益の質」と「資金の流れ」です。
利益があっても現預金が不足していれば、資金繰りは悪化し、格付が下がるケースもあります。
特に葬祭業のように固定資産(会館・土地)を多く保有する業種では、資金効率の悪化が見えづらいため、数字で可視化することが重要です。
今回の相談テーマは「利益をどう有効に使い、資金繰りを健全化するか」。
顧問税理士には相談しづらい“節税の最適解”についても、第三者の視点からサポートを受けました。
【F&M Clubのコンサルタントによる主なサポート】
決算前に一般的な節税対策をアドバイス
利益の繰り延べだけでなく、中長期的なキャッシュ確保を重視。
土地の時価総額を確認し、税理士への相談を促進
資産の含み益を明確化し、金融機関への説明力を強化。
現預金の確保と借入返済計画を策定
短期返済を進めながら、自己資本比率の改善へとつなげた。
金井弘一朗(元大手信用調査会社)のコメント:
信用調査の現場では、節税対策=一時的な利益圧縮と見られがちですが、A社のように「キャッシュを残すための節税」を行えば評価は逆に上がります。
財務上の現預金が増え、返済余力が高まると、格付上昇に直結します。金融機関も“利益より資金の厚み”を重視しますからね。
A社は節税対策により現預金を確保。借入金の返済を着実に進め、2年間で財務体質を大幅に改善しました。
結果として、格付は2017年のCランクから2019年にB、2020年以降はAランクを維持しています。

金井弘一朗(元大手信用調査会社)のコメント:
格付上昇は単なる数字の改善ではなく、「経営者が数字を理解し、能動的に動いているか」を示すシグナルです。
調査員の立場から見ても、こうした企業はリスクが低いと判断され、金融機関との関係も安定します。
この事例から得られる教訓は、次の3点に集約されます。
利益の使い方を“税務”だけでなく“経営”視点で設計する
資産(特に土地・建物)の評価を定期的に見直す
現預金を厚くし、返済余力を可視化する
金井弘一朗(元大手信用調査会社)のコメント:
財務三表のバランスを見たとき、「黒字=安全」とは限りません。
むしろ、黒字の中でどれだけキャッシュを残せるかが格付向上の鍵です。
A社のように、利益の一部を“未来の経営安定化”に振り向ける判断が、金融機関からの信頼を生みます。
葬祭業界では今後も競争が激化する一方で、事業承継・退任・設備更新など大きな支出イベントが増えます。
A社は、その転換点を単なるコストではなく、財務改善のチャンスとして活かしました。
金井弘一朗(元大手信用調査会社)のコメント:
数字を読めばリスクは“予測可能”になります。
そして、見えた数字をもとに行動すれば、格付も再評価されます。
今回のように、財務データを根拠に改善を進める企業は、どの業種でも再現性の高い成功モデルです。
こうした「数字を基盤にした経営体制」を整えるためのパートナーとして、累計48,000社以上の中小企業がF&M Clubを活用しています。
財務・労務・補助金など、経営に必要な領域をワンストップで支援し、再現性のある改善を実現しています。