
二代目社長の苦悩とは?事業承継が進まない企業の特徴3つを解説
日本人口の3人に1人が65歳以上となり、2025年中小企業白書によると、中小企業・小規模事業者のうち後継者が未定の企業は52.7%にのぼります。また中小企業の廃業理由のうち28.4%を後継者不在が占めており、このまま事業承継ができない中小企業を放置しておくと約22兆円のGDPを失うといわれています。
しかし、後継者がいる中小企業においても、なかなか世代交代ができない事情も存在します。
本記事では、事業承継を考えている企業において、今後、二代目社長が心掛けておきたいことを解説します。
【参考】中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題│中小企業庁
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二代目社長が考えておきたい会社の状況
親族内事業承継を実施する場合、創業者の理念を継承しつつも、承継する事業を存続・成長させていくことが大切です。
創業者が高齢の場合、同じく従業員も高齢である場合が多いといえます。そのため、創業者が培ってきた企業文化において、「変えてはいけないこと」や「変えなくてはいけないこと」を把握・理解する必要があります。
「変えなくてはいけない」優先度が高いものは、業務効率化や労働環境の整備です。
変えなくてはいけないこと①:業務効率化
業務効率化の代表例はデジタル化です。中小企業庁によると、中小企業のうち87.5%がメールや顧客管理システムなどを利活用しており、32.0%が管理システムを導入し業務フローを見直しています。デジタル化による効率化で差がつく時代であるといえます。
【参考】2024年版中小企業白書|中小企業庁第1-4-45図、2025年版中小企業白書|中小企業庁第1-1-41図より作成
変えなくてはいけないこと②:労働環境の整備
労働環境整備の代表例は、就業規則などの整備と働きかた改革における対応です。
人手不足による採用難が続く時代においては、『ブラック企業』との風評は採用において大きく不利となります。
事業承継が進まない企業の特徴3つ
経営者を中心にDXやIT化の導入への理解は進んでいるものの、やはり人材の不足、とりわけ、IT人材の不足が考えられます。
しかし、先述のアンケートだけでなく、事業承継を対象とする企業において、何が障害となっているかも考える必要があります。
特に創業者が一代で築き上げた、従業員の高年齢が進んでいる企業においては、より根深い問題が潜んでいる可能性があります。
売上至上主義の組織
営業を中心とする企業において、受注する営業部署や製造現場の意見が強いことがあります。営業において、営業担当者の人柄や取引先との関係性が受注に大きく関わることは珍しくありません。また、製造現場では「職人」と言われる従業員の意見が強く、労働環境の改善や設備投資がうまくいかないことがあります。
業務効率化しやすい間接部門の意見が通りにくい
先述した通り、売上や利益がわかりやすい部門の意見が強い一方で、人事部や総務部といったバックオフィス、つまり、売上や利益への貢献が見えにくい間接部門の意見が通りにくい傾向があります。
間接部門はペーパーレス化による経費削減や若手人材の採用を担う人事部が機能しにくく、組織が事業承継しにくい状況に陥っている可能性があります。
また、就業規則や規定なども長年見直されておらず、知らずに法令違反になっていることも珍しくありません。
個人保証に対する偏見が根強い
親族内承継が進まない理由のひとつに、個人保証の引き継ぎがあげられています。
中小企業庁の資料によると、借入金の全部または一部について経営者が連帯保証している企業の割合は80%(2022年)、新規借入について経営者が連帯保証している割合は47%(2024年。民間金融機関平均)となっています。
事業承継時に経営者の交代に伴う前経営者の個人保証の解除と、新経営者が個人保証しないことを検討しますが、資金繰りに課題がある企業や、企業と経営者の家計が明確に分離されていない場合などは金融機関からの個人保証を外してもらえない可能性があります。
事業承継時において経営者保証解除をおこなうためには、「経営者保証に関するガイドライン」や「事業承継特別保証制度」の活用を検討しましょう。
【参考】経営者保証│中小企業庁
事業承継における具体的な課題は「人」「お金」「取引先」
事業承継における課題は企業によりさまざまです。中小企業庁の資料によると、事業承継における主な課題として、「後継者の経営能力」(28.0%)、「相続税・贈与税」(22.9%)、「株式・事業用資産の買い取り」(22.5%)などが上位となっています。
【参考】2024年版中小企業白書|中小企業庁第1-3-31図より作成
後継者・2代目社長が事業承継の前と後に取り組むこととは
中小企業庁の「事業承継ガイドライン」によると、後継者が事業を承継するために必要な準備期間は5年間から10年間とされています。後継者が事業承継の前と後におこなう主な取り組みは以下のとおりです。
後継者・二代目社長の事業承継「前」における主な取り組み5つ
中小企業庁の資料によると、事業承継した経営者が事業承継の前5年間に取り組んだこととして、「先代経営者とともに経営に携わった」(58.2%)など以下の5つをあげています。
【参考】2021年版中小企業白書|中小企業庁第2-3-34図より作成
継者の事業承継「後」における主な取り組み7つ
上記の中小企業庁の資料によると、後継者が事業承継の後に取り組んだこととして、「新たな販路の開拓」(44.9%)など、以下の7つをあげています。
【参考】2021年版中小企業白書|中小企業庁第2-3-36図より作成
前向きな後継者・二代目社長の相談相手は「異業種」「社外」
経営者が「成長意欲を高めることにつながった」と感じる交流相手は、事業承継の前後で異なります。
成長意欲が高い経営者は、事業承継後に、異業種の経営者仲間、外部の専門家や金融機関などとの交流が前向きな経営につながったと回答しています。
【参考】2023年版中小企業白書|中小企業庁第2-1-28図より作成
二代目社長の事業承継に関するよくある質問(FAQ)
事業承継や二代目社長の不安について、よくある質問とその回答は以下のとおりです。
Q1:事業承継と事業継承との違いは何ですか?
A:事業承継とは、企業の経営権や経営者としての地位を次の世代へ引き継ぐことです。事業継承も似た意味で使用されています。「承継」は包括的、「継承」はより具体的なものを指すことが多く、経営を引き継ぐことを表す場合は「事業承継」が一般的に用いられています。
Q2:二代目社長の特徴とは何ですか?
A:二代目社長の主な特徴として、「データ重視」「ドライな関係」「守りの経営姿勢」などがあげられており、なかには「偉そう」「会社を潰す」など厳しい表現がなされることがあります。すでに実績をあげた創業社長と異なり、二代目社長は、経営能力が未知数、スキルや経験が乏しいなか、二代目社長として会社を守る強いプレッシャーを感じることが多いといわれています。
Q3:事業承継税制とは何ですか?
A:事業承継税制とは、後継者が取得した株式や事業用資産にかかる贈与税や相続税の納税が猶予される制度です。事業承継税制は、「法人版事業承継税制(一般措置)」「法人版事業承継税制(特例措置)」「個人版事業承継税制」の3つがあります。
【参考】事業承継税制特集|国税庁
二代目社長の悩みごとの解決はF&M Clubがサポート
二代目社長にとっての最大の課題は、先代の想いを受け継ぎながら、自分の経営を確立すること。
事業を引き継ぐ準備から経営体制を整えるまでの移行期は、環境の変化が大きく、課題が最も表面化しやすい時期です。
特に事業承継を控えた二代目社長にとっては、以下のように同時に取り組むべきテーマが多岐にわたります。
- 社内ルールや就業規則の整備
- 採用・定着の仕組みづくり
- 助成金や補助金の効果的な活用
- 経営基盤を整える業務効率化
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まとめ|事業承継は組織改革と財務改善が鍵となる
事業承継を円滑に進めるには、単に経営権を引き継ぐだけでなく、企業文化や組織体制、財務面など多角的な課題に向き合う必要があります。
特に二代目社長は、先代が築いた企業の強みを守りながらも、時代に合った変革を進めるという難しい舵取りを求められます。
一方で、事業承継が進まない企業の多くは、「売上至上主義」「間接部門の停滞」「個人保証の問題」といった構造的な課題を抱えています。
こうした課題を放置すれば、後継体制の確立が遅れ、経営基盤の弱体化を招く恐れもあります。
そのため、承継前後には業務効率化や労務環境の整備、採用・定着の強化、資金繰りの見直しといった“組織と仕組みの再構築”が欠かせません。
特に事業承継の移行期は、経営者としての決断力とともに、実務面を支える外部リソースをうまく活用することが成功の鍵となります。












