キャッシュフローが行き詰まった時に考えられる支払いの優先順位と対策
健全な企業経営には、適切なキャッシュフローが必要ですが、収支のバランスを常に気にしている経営者は少ないと言えます。
現在はキャッシュフローが回っていたとしても、円安による原材料高騰や賃上げ圧直、増税といった経営環境が不確実性を増している中、いつキャッシュフローが行き詰まってもおかしくありません。
本記事では、もしキャッシュフローが行き詰まった時に考えられる支払いの優先順位と対策について、解説します。
目次[非表示]
- 1.経営者がおこなう5つの支払い
- 1.1.金融機関(銀行)からの借入金
- 1.2.買掛金(仕入外注費等)
- 1.3.従業員への給与
- 1.4.毎月の諸経費
- 1.5.法人税や社会保険料などの税金関係
- 2.なぜ金融機関への返済が第一ではないのか?
- 3.経営者が支払う優先順位とは
- 4.キャッシュフローや資金繰りに困ったときにおこなうべき4つの方法
経営者がおこなう5つの支払い
経営者がおこなう支払いは大きく分けて、「銀行からの借入金」、「買掛金(仕入外注費等)」、「従業員への給与」、「毎月の諸経費」、「法人税や社会保険料などの税金関係」の5つに分類できます。
金融機関(銀行)からの借入金
多くの中小企業が運転資金を銀行など金融機関から融資をもらっています。
経済活動をおこなう中で、売上の一部を金融機関からの借入金の返済に充てなければなりません。返済が滞ると、新たな融資を受けられないどころか、運転資金が足りず、倒産してしまう場合も考えられます。
買掛金(仕入外注費等)
貸借対照表の貸方項目の負債の部で計上される買掛金は、1年以内に返済する予定の流動負債のひとつです。商品の仕入れの際に発生し、まだ代金を払っていないものも含まれます。取引企業への期日通りの支払いは、企業間の信頼にもつながるため、支払いを優先する経営者も少なくありません。
従業員への給与
資金繰りが悪化し、従業員への給与が遅れることがあります。従業員への給与の遅配は労働基準法違反となり、違反した場合、30万円以下の罰金が科せられることがあります。
また、支払い方法も労働基準法第24条の「賃金支払いの5原則」に従い、「必ず通貨で支払うこと」「労働者本人に支払うこと」「全額一括で支払うこと」「毎月1回以上は支払うこと」「一定期日に支払うこと」を遵守しなければなりません。
違反や罰金だけでなく、会社の社会的信用の失墜や従業員の離職、遅延損害金の発生などのリスクがあります。
毎月の諸経費
会社を運営するにあたり、必要な事務所や工場の家賃、水道光熱費、福利厚生などが挙げられます。社員の給与も諸経費に含まれます。
法人税や社会保険料などの税金関係
令和4年4月1日現在法の法人税は、資本金1億円以下の法人で、年800万円超の部分だと23.20%となります。また、従業員の社会保険は労使折半となり、そのほか、雇用保険や労災保険料などの支払いも必要です。
なぜ金融機関への返済が第一ではないのか?
多くの経営者が運転資金の確保のため、金融機関の借入金への返済を最優先にする経営者がいらっしゃいます。
確かに銀行への借入金を返済できない場合、融資の打ち切りや新たな借入が難しくなるなどのデメリットがあります。
しかし、2020年に発生した新型コロナウイルス感染症拡大によって、無利子無担保の特別融資枠が設ける、金融機関に返済猶予の配慮要請するなどの措置がおこなわれました。
また、コロナ禍も収束し、経済が再び動き出した現在では、政府が新たに打ち出した中小企業活性化パッケージNEXTの「経済環境の変化を踏まえた資金繰り支援の拡充」のひとつである伴走支援型特別保証の拡充なども利用できます。
さらに最終手段として、借入金の返済を減額するリスケジュールという手段もあり、事業継続を前提とした救済手段が数多く存在します。
金融機関への返済ができなくなることが、会社の倒産や資産差押え、融資が全く受けられない状況に直結するわけではありません。
そのため、まずはキャッシュフローの改善、つまり資金繰りの改善をおこなうことが大切です。
経営者が支払う優先順位とは
経営者が優先すべき支払いは「従業員への給与 → 買掛金(仕入外注費等)→ 毎月の諸経費 → 法人税や社会保険料等の税金関係 → 銀行からの借入金」となります。
優先すべきは労働基準法に抵触する「従業員への給与」や取引企業との信頼関係の毀損につながりやすい「買掛金(仕入外注費等)」となります。次に事業運営に必ず必要となる毎月の諸経費となります。毎月の諸経費はコスト削減の見直しが可能です。
法人税や社会保険料などの税金関係は、支払い猶予特例を受けられることがあります。
そして、最後にさまざまな調整が可能な銀行からの借入金です。
従業員の給与未払いは従業員のモチベーションや事業継続にも大きな影響を与えるため、必ず優先すべき項目です。
一方で、キャッシュフローや資金繰りに困ったときは財務分析や財務改善をおこなわなければなりません。しかし、すぐに資金が必要な場合は経営者がおこなうべき3つの方法があります。
キャッシュフローや資金繰りに困ったときにおこなうべき4つの方法
キャッシュフローが行き詰まった際に利用したい制度があります。また、経営者が積み重ねた資産をなるべく崩さずに活用することもできます…