事業再構築補助金に産業構造転換枠が追加!概要や要件を解説
事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化していることを踏まえ、事業継続を支援するために設けられている補助金です。いくつもの枠があり、自分たちが置かれている状況を踏まえて適切なものに申請できるようになっています。今回は複数ある枠の中でも、2023年度に追加された「産業構造転換枠」について解説します。
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事業再構築補助金の産業構造転換枠とは
最初に産業構造転換枠が、どのような枠であるのか簡単に解説します。
産業構造転換枠とは
産業構造転換枠は、新型コロナウイルスの流行やその後の影響、物価の高騰などにより大きな影響を受けている業界を支援するために設立された制度です。
このように大きな影響を受け、業界自体が縮小している場合は、そのまま事業を営んでも存続できない可能性があります。将来的に事業を継続するためには、事業の拡大や新しい事業への転換など、大きな軌道修正が必要です。これにはまとまったお金が必要となるため、産業構造転換枠でこれらの取り組みに必要な資金をしてもらうことが可能です。
補助上限額と補助率
補助上限額と補助率をまとめると以下のとおりです。
補助上限額 |
補助率 |
【従業員数20人以下】100万円~2,000万円 |
【中小企業者等】3分の2 |
【参考】事業再構築補助金【サプライチェーン強靭化枠を除く】公募要領(第10回) 事業再構築補助金事務局
産業構造転換枠の申請要件
産業構造転換枠は自由に申請できる枠ではなく、以下の申請要件をそれぞれ満たす必要があります。
事業再構築要件
事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業であることが求められます。事業再構築とは「新市場進出」「事業転換」「業種転換」「事業再編」「国内回帰」をおこなう計画に基づく中小企業等の活動です。産業構造転換枠であれば、事業転換や業種転換を含めた計画が主に求められます。
【参考】事業再構築指針 中小企業庁
認定支援機関要件
事業計画について、認定経営革新等支援機関の確認を事前に受けなければなりません。認定経営革新等支援機関とは、経営課題を抱える中小企業などを支援するために、中小企業庁から指定を受けた個人や法人です。中小企業庁の「認定経営革新等支援機関検索システム」から検索して、最寄りの認定機関に確認を依頼します。
また、補助金額が3,000万円を超える案件では、認定経営革新等支援機関だけではなく金融機関の確認も受けなければなりません。なお、金融機関が認定経営革新等支援機関であれば、金融機関だけで完結します。
付加価値額要件
事業計画の策定にあたっては「補助事業終了後3年から5年間で付加価値額の年利平均3.0%以上増加、または従業員1人あたり付加価値額の年利平均3.0%以上増加」という条件を満たすことが求められます。
事業再構築補助金における「付加価値額」とは、営業利益・人件費・減価償却額を合算したものです。一般的な付加価値額の算出とは、少々違う部分があるため注意してください。
市場縮小要件
産業構造転換枠は、市場が縮小していると判断される業種や業態を中心に申請可能です。申請要件には「現在の主たる事業が過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上縮小する業種・業態に属していること」という旨の要件が記載されています。
こちらの要件だけでは、具体的に申請できるかどうか判断できないため、該当する業種や業態について事業再構築補助金事務局から「産業構造転換枠の対象となる業種・業態の一覧」が公開されています。これを参考にすることで、産業構造転換枠を申請できるかどうか判断できる仕組みです。
なお、基本的には一覧に記載されている業種や業態でなければ申請できません。ただ、上記で示した市場縮小要件を満たしていることを証明できるならば、証明書類などとともに産業構造転換枠の申請が可能です。また、今回は申請の対象にならなくとも、今後対象が広がる可能性があるため、継続的な情報収集が求められます。
対象地域
上記で紹介した用件とは別に、特定の地域に事業所が存在することで、産業構造転換枠の申請要件を満たす制度があります。これは、その地域における大企業やその子会社が撤退することにより、市町村内総生産が10%以上減ると考えられる地域のみ適用される制度です。
自治体が事前に申請しておくことが求められ、該当地域は「産業構造転換枠の対象となる地域の一覧」で確認できます。申請が認められるたびに資料が更新されるため、定期的に確認しておくと抜け漏れを防げます。
【参考】事業再構築補助金【サプライチェーン強靭化枠を除く】公募要領(第10回) 事業再構築補助金事務局
事業再構築補助金に申請する際のポイント
事業再構築補助金の産業構造転換枠に申請する際は、以下のポイントを意識しておきましょう。
廃業費が含まれる
産業構造転換枠には、既存事業の廃止に必要となる「廃業費」が含まれています。この費用は、今までの事業再構築補助金には含まれていない項目でした。産業構造転換枠でのみ活用できるため、その点は理解してください。なお、具体的な費用例は以下のとおりです。
- 廃止手続費
- 解体費
- 原状回復費
- リースの解約費
- 移転・移設費用
大まかに5種類の費用が廃業費に含まれます。ただ、消耗品や原材料の処分費など部分的に営業費に含まれない支払いがあるため、そこは注意してください。
賃上げに対する上乗せはない
産業構造転換枠は、事業再構築補助金の中でも、賃上げに対する上乗せが存在しない枠です。他の枠では、賃上げの状況によって補助金の上乗せがありますが、産業構造転換枠にはそのような条件が設けられていません。
これは、産業構造転換枠が既存の事業を推進するのではなく、新しい事業への転換にフォーカスしているからであると考えられます。一般的に、賃上げは既存の労働環境を向上させるために実施するものであるため、産業構造転換枠とは目的が異なっているからです。新しい業種や業態に転換してから、賃上げを実施したとしても、補助金額は上昇しません。
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まとめ
産業構造転換枠は、事業再構築補助金のうち2023年度に新設されたものです。国内市場が縮小しているなど、社会構造的な課題に直面している業種や業態の中小事業者を支援してくれます。このような環境に置かれている事業主は、自力での事業継続が難しくなってくるため、大規模な方向転換のために産業構造転換枠を活用可能です。
今回から新設された枠であるため「申請したいが何を準備すれば良いのかわからない」と不安を感じる経営者の方もいるでしょう。そのようなお悩みや不安をお持ちであれば、是非ともF&M Clubをご活用ください。