働き方改革推進助成金を有効活用しましょう
令和3年度働き方改革推進支援助成金は令和2年度から実務担当者レベルでの変更があります。
この助成金の概要は、勤務間の休憩時間を一定時間以上に延長した場合や、労働時間の短縮やコロナへの感染防止に寄与するため、テレワーク導入等に資する環境を整えた中小事業主に対してその実施に要する費用の一部を助成する助成金です。
例えば長時間労働を契機に離職者が出ていた企業であれば特定の取り組みを実施するために支出する費用が助成金によって、実質的に少なくなることから注目を集めています。
今回は実務的な申請方法ではなく、本助成金の概要に焦点をあて、解説してまいります。
目次[非表示]
働き方改革推進助成金の使い道は
令和2年4月1日から中小企業も法律によって時間外労働の上限規制が適用されました。
現行のままでは取り組みが難しいという場合に法令順守をしながら生産性を向上させ、労働時間の短縮等を図っていくことが主目的となります。
しかし、あくまで費用の一部を助成するという構図であることから、複数あるコースごとに使い道(対象となるもの)を確認しましょう。
令和3年度勤務間インターバルコース
以下の取り組みが対象となります。
1.労務管理担当者に対する研修 2.労働者に対する研修、周知・啓発 3.外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング 4.就業規則・労使協定等の作成・変更 5.人材確保に向けた取組 6.労務管理用ソフトウェアの導入・更新 7.労務管理用機器の導入・更新 8.デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新 9.労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新 (小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など) |
※研修には、業務研修も含む
※原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象とならない
また、単に取り組みを行えば助成されるわけではなく、「成果目標」の達成を目指して実施していくことが求められます。
▼成果目標
事前に提出する「事業実施計画」(詳細は割愛)において指定したすべての事業場において休息時間数が「9時間以上11時間未満」または「11時間以上」の勤務間インターバルを導入し、定着を図ることです。
▼支給額
【新規導入の場合】
休息時間数が11時間未満の場合:補助率は3/4となり、1企業あたりの上限額は80万円
休息時間数が11時間以上の場合:補助率は3/4となり、1企業あたりの上限額は100万円
【参考】令和3年度 働き方改革推進支援助成金テレワークコース(PDF)│厚生労働省
令和3年度 人材確保等支援助成金(テレワークコース)
働き方改革推進支援助成金はコロナにより国を挙げて定着を促すテレワークについてもコースを設けて助成しています。以下の取り組みが対象となり、いずれか1つ以上実施する必要があります。
1.テレワーク用通信機器(※)の導入・運用、就業規則・労使協定等の作成・変更 2.労務管理担当者に対する研修 3.労働者に対する研修、周知・啓発 4.外部専門家(社会保険労務士など)によるコンサルティング ※ シンクライアント端末(パソコン等)の購入費用は対象となるが、シンクライアント以外のパソコン、タブレット、スマートフォンの購入費用は支給対象外 |
また、勤務間インターバルコースと同様に単に取り組みを実施すればよいということではなく、以下の「成果目標」を達成することを目指して実施していくことが求められます。
1.評価期間に1回以上、対象労働者全員に、在宅又はサテライトオフィスにおいて就業するテレワークを実施する。 2.評価期間において、対象労働者が在宅又はサテライトオフィスにおいてテレワークを実施した回数の週間平均を、1回以上とする。 |
【参考】働き方改革推進支援助成金勤務間テレワークコース│厚生労働省
▼事業対象主
各コースに共通する前提条件として労災保険を成立させている事業所であることが条件です。例えば一人個人事業主などの場合は労働基準法で定義する労働者が存在しないことから労災保険が成立しておらず、本助成金の対象にならないという理解です。
▼支給額
成果目標の達成状況に応じて助成
【成果目標の達成状況】
対象経費の合計額 × 補助率
成果目標達成の場合の補助率は3/4となり、未達成の場合の補助率は1/2となります。
※尚、1人あたりの上限額は達成の場合40万円、未達成の場合20万円。1企業当たりの上限額は達成の場合400万円、未達成の場合200万円となります。
▼不支給の事例
共通する不支給事例として労働保険料の滞納が挙げられます。
労働者を雇用し、かつ、労災保険も成立済の事業所であっても労働保険料を滞納していたがゆえに不支給となった事例です。
そもそも労働保険料の一部は助成金の原資となるものであり、それを滞納し助成金だけ受給ということはできません。
反対に活用でき、かつ、成功した事例としては勤務間インターバルコースを例に取ると勤務時間を短縮するために、旧来手書きであった出退勤時刻の記録方式をICカード方式に変更し、労働時間が短縮されたことにより人件費(主に残業代)が節約できたといったケースがあります。
まとめ
本助成金の対象となるのは中小事業主であり、その判別方法は以下のとおりです。
業種 |
A.資本または出資額 |
B.常時雇用する労働者 |
小売業(飲食店を含む) |
5,000万円以下 |
50人以下 |
サービス業 |
5,000万円以下 |
100人以下 |
卸売業 |
1億円以下 |
100人以下 |
その他の業種 |
3億円以下 |
300人以下 |
上記の表に合致しない場合は助成金の対象となりませんが、日本の多くの企業は中小企業であることから、予め確認しておくことが適切です。
実際に申請をするまでにはハードルが高そうと感じる場合には助成金申請の専門家である社会保険労務士やそれに準ずるサービスの活用も検討しましょう。
また、各助成金の申請には期限が設けられており、その期限を過ぎてしまうと取り組みが適切でも助成金は一切支給されないので注意が必要です。