
人が辞めない営業組織のつくり方|キーエンス×プルデンシャルに学ぶ“育成の型”とは?
営業職は人手不足が深刻でありながら、常に高い離職率に悩まされています。その原因は、営業に“教科書”が存在しないこと。属人的なOJTに頼った育成では成果が出ず、自信を失って早期離職につながります。営業組織の強化に必要なのは、誰でも成果を出せる「営業の型」を整えること。本記事では、営業教育の第一人者・セールスナビ田中社長の視点をもとに、具体的な事例を交えながら、育成・定着の仕組みづくりの本質を解き明かします。
※本記事で紹介する数値や事例、プログラム名などは、田中社長の著書『売れる組織 売れる営業』(実業之日本社/2025年4月刊)に基づきます。
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【プロフィール】
田中 大貴
株式会社Sales Navi 代表取締役
元キーエンス・プルデンシャル生命で高い営業成果をあげ、全国最年少で部長に就任
新人・若手の即戦力化メソッドを独自開発し、全国の中小企業で営業改革を支援中。
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営業組織における課題|人材不足にもかかわらず離職率が高い
営業職は、日本の労働市場の中でも最も人材不足が深刻な職種のひとつです。厚生労働省の調査では、エンジニア職の2倍以上の人材不足が起きているとも言われています。にもかかわらず、営業職の離職率は非常に高く、慢性的な人手不足の状態にあります。
原因は「営業には教科書がない」こと
なぜ営業は辞めるのか。その要因は明快です。営業には“教科書”がないからです。
学校で学ぶわけでもなく、国家資格も不要。多くの企業では入社後に商品知識を学び、OJTで先輩営業のやり方を見て学ぶ、それが一般的な営業教育のスタイルです。
しかしこのやり方では、成果が出る人と出ない人の差が激しくなりがちです。結果が出なければモチベーションは下がり、「自分には向いていない」と感じて辞めていく。この“負のサイクル”が、営業現場では日常的に繰り返されています。

「誰でも成果が出せる営業の型」で離職率改善や営業組織の強化を図る
負のサイクルを変えるには、“営業における正しい学び方”を組織として提供する必要があります。言い換えれば、「誰でも成果が出せる営業の型」をつくることが、離職率の改善や営業組織の強化につながるのです。

成果を出せる営業には、4つの要素がある
成果が出る営業パーソンと、そうでない営業パーソンの違いはどこにあるのでしょうか。単なる才能の差ではありません。成果を出すために必要な要素は、以下の4つに集約されます。
- 知識:商品・業界・顧客・競合に関する知識
- スキル:トーク・ヒアリング・提案・クロージングの技術
- 心構え:顧客志向・誠実性・自己成長意欲などのマインドセット
- 習慣管理:行動記録・日報・振り返り・KPIなどの自己管理
さらに、この4つの要素を“ただ学ぶ”だけではなく、以下の4ステップで順序立てて定着させることが重要です。
- 知る:インプット段階。営業の原理原則や基礎知識を体系的に学ぶ
- 分かる:自分の中で具体化され、「なるほど」と腹落ちする段階
- やってみる:実践トレーニング。ロープレやシミュレーションを行う
- できる:実際の現場で成果として表れる段階

多くの企業では、入社直後から「成果を出せ」と求められます。しかし、「知る・分かる・やってみる」という過程を飛ばして成果だけを求めても、営業は育ちません。逆にこのステップを着実に踏むことで、誰でも“売れる営業”になることができるのです。
プルデンシャル生命・キーエンスに学ぶ営業パーソンの育成方法
営業成果を個人のセンスや経験に頼るのではなく、再現性のある“型”として仕組み化する。そんな教育体系を構築しているのが、プルデンシャル生命とキーエンスです。
両社に共通するのは、属人化を防ぎながら、誰もが一定の成果を出せる営業組織づくりへの徹底したこだわり。ここでは、それぞれの取り組みを通じて、営業教育に必要な“本質”を解き明かしていきます。
【事例1】プルデンシャル生命:営業に教科書を
プルデンシャル生命では、営業に“型”を導入する仕組みとして、以下の2つを活用しています。
- ブルーブック:100年以上の営業ノウハウをまとめたマニュアル
- FTP(First Month Training Program):1カ月間の集中研修
営業未経験者でも成果を出せるように、ブルーブックの音読からスタートし、提案のステップや応酬話法、トークスクリプトを徹底的にインプット。その後、テストやロープレを通じて、実践力を磨きます。
研修の中では、以下のようなスキル・知識を段階的に習得していきます。
● 業界知識、商品理解、競合情報
● セールスプロセスの理解と構造
● 顧客属性に応じたトークスクリプト
● 応酬話法(オブジェクションハンドリング)
研修の最終段階では、ロープレのテストをクリアすることで営業デビューが許可されます。結果的に、どの営業パーソンも一定レベルのスキルを持って現場に立てるため、属人化を防ぎ、再現性の高い営業組織を実現しています。

【事例2】キーエンス:ロープレ文化とPDCAの仕組み
キーエンスの営業現場では、“外報(がいほう)”という言葉が日常的に使われます。これは「外出報告」の略で、商談前後に営業マネージャーに行う営業報告のことです。
● 事前外:商談の目的・仮説・訪問理由などを上司に報告し、フィードバックを受ける
● 事後外:商談の結果とその要因を分析し、再現性のある改善策を考える
これらを全商談に対して徹底して行うことで、PDCAが高速で回り、営業としての精度が高まっていきます。
さらにキーエンスでは、「ロープレ」が完全に文化として根付いています。トークスクリプトやデモの再現だけでなく、製品の魅せ方や顧客の反応を想定した練習が日常的に行われているのです。
● 商談前に仮説トークとベストデモを練習
● 商談後に振り返りロープレを実施
● 月末にはロープレ大会も開催
ロープレは強制ではなく、営業パーソン自身が「やる価値がある」と自発的に取り組んでいます。これにより、新人でもトップ営業に匹敵する成果を出すことが可能となっています。
型のない営業組織は再現性がない。最初の一歩は“言語化”から
ここまで紹介してきたように、成果を出す営業組織には「スキル・知識・心構え・習慣管理」という4つの要素があり、それぞれを「知る → 分かる → やってみる → できる」のステップで定着させていくことが重要です。
その中でも、最も成果に直結しやすいのが「スキル」の部分です。特に、次のような要素を“型”として整備することが再現性のある営業組織への第一歩となります。
トップセールスの“暗黙知”を、組織の“共通言語”に
営業スキルを可視化する上で有効なのが、「トークスクリプト」と「応酬話法(オブジェクションハンドリング)」の整備です。
たとえば、ベテラン営業が実践している提案トークやクロージングの技術は、言語化されていない「暗黙知」であることが多く、新人には再現が困難です。だからこそ、社内のハイパフォーマーにインタビューを行い、その営業ノウハウを構造化・文章化し、“誰でも使えるスクリプト”として形式知化していく必要があります。
● 想定顧客ごとのトーク例(例:30代ファミリー層/法人決裁者/単身層など)
● よくある断り文句とその切り返し方
● 商談プロセスごとの会話展開・チェックポイント など
こうした“型”があるだけで、新人でも「何をどう話せばいいか」が明確になり、営業活動の不安が大幅に減少します。
ロープレ文化の定着が「売れる人」を量産する
スクリプトや応酬話法を整えたら、次はそれを実際に使えるようにするためのロープレ体制の構築です。
おすすめは「3人1組」でのロープレ形式です。
最低限、お客様役と営業役の2名がいれば実施可能で、フィードバックによって改善を繰り返すことが重要です。
さらに、以下のような仕組みも整えると効果が高まります。
● ロープレのチェックシート(評価項目)を事前に用意し、誰が見ても評価軸がブレない状態にする
● 商談での成果と、ロープレの精度を紐づけて振り返る仕組みを作る
● 毎週または隔週でロープレ日を設定することで、習慣化を促進する
【ロープレとチェックシートサンプル】
営業現場では「忙しいから練習できない」という声もありますが、プロのスポーツ選手が日々の練習なしに試合で成果を出せないのと同じで、「練習なき本番」では成果は期待できません。
営業教育導入のステップ:半年で仕組みをつくる
これらの施策は一気に導入する必要はありません。半年かけて、以下のようなステップで進めるのが現実的です。
導入にかかる負荷や現場のリソース状況に応じて、調整は必要ですが、半年あれば「成果の出る営業の型」は構築可能です。
1人のスーパースターを育てるのではなく、「誰でも成果を出せる営業組織」を目指すこと。その第一歩が“営業の型づくり”なのです。
営業教育の仕組みがあれば、人は辞めない
営業教育がない組織では、「成果が出ない→苦しい→辞める」という負のループに陥ります。しかし、営業教育が仕組み化されている企業では、「やり方が分かる→成果が出る→成長が楽しい」という正のスパイラルが生まれます。
営業パーソンが辞めない組織に必要なのは、待遇改善や精神論ではなく、成果につながる“営業の型”と、それを支える教育の仕組みです。
プルデンシャル生命やキーエンスに学んだ知見をヒントに、自社なりの営業教育サイクルを設計してみてはいかがでしょうか。
F&M Clubで営業パーソンの育成・定着に影響を与えるバックオフィス課題を解決
営業パーソンの育成・定着に課題を感じる企業の多くが、以下のようなバックオフィスの問題を抱えています。
● 労務:定着率が低く、人がすぐに辞める
● 採用:採用してもミスマッチで戦力化しない
● 評価:育成・昇進基準が不明確でモチベーションが上がらない
● 就業規則:現場にあっておらずトラブルが発生
こうした課題に向き合わず、現場任せの育成を続けてしまうと、どれだけ良い人材を採用しても定着しません。
F&M Clubでは、こうした構造的な課題に対して、総合的かつ継続的な支援を提供しています。
人事評価制度の構築支援
「評価制度を導入したいが、費用が高すぎて踏み出せない」という中小企業の声を多く聞きます。F&M Clubの「はじめて人事考課」サービスでは、専門家によるオンライン支援と解説動画を活用しながら、初めての評価制度導入をサポートします。
実際に制度を導入した企業の声として、「給与額に納得感が生まれた」「社員のやる気が上がった」など、組織に好影響を与えた事例も多数寄せられています。
就業規則の整備・見直し
就業規則は会社の方針や理念を示すとともに、トラブルを未然に防ぐための大切なルールブックです。しかし実際には「3年以上見直していない」という企業も少なくありません。
F&M Clubでは、法改正や実務上のリスクに対応した「就業規則のひな形」をご提供しています。ご希望に応じて、サービスセンターにてカスタマイズのポイントについてのご相談も可能です。
このひな形は、最新の法令への準拠はもちろん、過去数万件の実務事例をもとに、企業が抱えがちなトラブルを回避するための工夫が盛り込まれているのが特長です。
就業規則をゼロから作成・見直しするには、通常数十万円の費用がかかるケースもありますが、F&M Clubではこうした支援を月額料金の範囲内で受けられます。
求人票の添削・改善支援
「ハローワークに求人を出しても応募がない」という企業向けに、ハローワーク等で使用する求人票について、求職者の目に留まりやすくなるよう、実務経験のあるスタッフが表現や構成の見直し・改善アドバイスを行っています。5分~10分のフォーム記入だけで改善アドバイスがもらえる仕組みで、実際に1回の出し直しで20名の応募が来た企業もあります。
適性診断ツールの提供
社員の適性を可視化できる診断ツールも月額内で使い放題。通常1人あたり3,000~5,000円かかる適性検査を何名でも利用でき、採用や配属、育成の精度を高めます。
人材育成のeラーニング講座
ビジネスマナーや人材育成に関する15分程度の動画コンテンツを50本以上提供。5~10分の短時間講座も多く、スキマ時間に視聴できるため、現場に負担をかけず教育が可能です。
月額3.3万円で、育成・採用・評価・制度支援がすべてそろう
コンサルティング会社に依頼すれば上記のサービスひとつひとつに数十万円の費用がかかることも少なくありません。しかし、F&M Clubでは月額3.3万円で以下を利用できます。(エフアンドエム社会保険労務士法人が提供する就業規則などの作成から変更管理まですべておまかせの『まかせて規程管理』サービス利用料金2,000円(税抜)が含まれています)
● 評価制度の導入と運用支援
● 求人票の添削支援
● 適性診断ツール
● 労務や財務、補助金相談など30以上の支援コンテンツ
このように、現場任せになりがちな人材育成や組織整備を“会社全体の仕組み”として整えられることが、F&M Club最大の特長です。
営業は“センス”ではなく“仕組み”で育てる時代です。 再現性のある営業の型と、社員が辞めない組織をつくるには、現場任せの教育では限界があります。
F&M Clubでは、人材育成・採用・評価制度・就業規則・補助金活用まで、営業現場の定着と成長を支える仕組みづくりを総合的にサポートしています。
営業組織の強化に、何から着手すべきかお悩みではありませんか?
F&M Clubでは、支援内容や活用事例をまとめた資料を無料でご提供しています。
営業の型づくりや人材定着に課題を感じている方は、ぜひご覧ください。
