経営力向上計画とは?支援措置や作成方法・メリットを解説
経営力向上計画と呼ばれる制度を活用することで、自社経営の支援措置を受けることが可能です。
本記事では、経営力向上計画とは何か、認定されると受けられるメリット、申請方法、申請書・計画書の書き方について解説します。
なお、経営力向上計画の煩雑な手続きをサポートするサービスも紹介するため、最後までお読みください。
目次[非表示]
- 1.経営力向上計画とは
- 2.経営力向上計画の3つのメリット
- 2.1.中小企業経営強化税制
- 2.2.所得拡大促進税制
- 2.3.金融支援
- 3.経営力向上計画の申請手順
- 3.1.受ける支援措置を選択する
- 3.2.経営力向上計画を作成する
- 3.3.経営力向上計画を提出する
- 4.経営力向上計画の書き方・作成方法
- 4.1.申請書をダウンロード
- 4.2.経営力向上計画の書き方(申請書)
- 4.3.経営力向上計画の書き方(別紙)
- 4.4.申請書提出用チェックリスト
- 5.補助金を最大限活用するためには早めの情報取得が必須
- 6.補助金の申請ならばエフアンドエムにご相談ください
- 7.まとめ
経営力向上計画とは
経営力向上計画は、中小企業等経営強化法に基づき、人材の育成や、マネジメントの向上および設備投資など、自社の経営力を高める計画です。
計画申請においては、経営革新等支援機関のサポートを受けることが可能です。経営力向上計画について詳しく解説します。
制度の概要
「経営力向上計画」は、人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力を向上するために実施する計画を指します。
事前に計画を認定された事業者は、税制や金融の支援などを受けることが可能です。
また、計画の立案や申請にあたっては、経営革新等支援機関にサポートを依頼できます。専門家の支援を受けて計画を立案することで、より現実的かつ効果的な計画を生み出せる仕組みです。
申請対象者
経営力向上計画の認定対象申請対象者は、下記のとおりです(中小企業等経営強化法第2条第6項)。
申請可能事業者 |
会社または個人事業主 医業、歯科医業を主たる事業とする法人 社会福祉法人 特定非営利活動法人 |
従業員数 |
2,000人以下 |
※このほか企業組合、協業組合、事業協同組合、事業協同小組合、商工組合、協同組合連合会、その他政令で定める組合も対象です。
なお、利用する制度によって詳細が異なる場合があります。詳細については「支援措置活用の手引き」を確認しておきましょう。
【参考】経営力向上計画策定の手引き l 中小企業庁
経営力向上計画の3つのメリット
経営力向上計画の認定を受けると、税制・金融支援や措置などといったサポートが受けられます。
中小企業経営強化税制
主な措置として、以下の3つがあります。
- 認定計画に基づき取得した一定の設備に係る法人税等の特例
- 認定計画に基づき行った事業承継等に係る登録免許税・不動産取得税の特例
- 認定計画に基づき行った事業承継等に係る準備金の積立(損金算入)の措置
なお、一定の設備には以下のとおり条件があります。
類型 |
要件 |
対象設備 |
A類型: 生産性向上設備 |
生産性が旧モデル比で 平均1%以上向上する設備 |
機械装置:160万円以上 工具:30万円以上 器具備品:30万円以上 建物附属設備:60万円以上 ソフトウェア:70万円以上 |
B類型: 収益力強化設備 |
投資収益率が年平均5%以上の 投資計画に係る設備 |
|
C類型: デジタル化設備 |
可視化・遠隔操作・自動制御化の いずれかに該当する設備 |
|
D類型: 経営資源集約化設備 |
修正ROAまたは有形固定資産の回転率が 一定割合以上の投資計画に係る設備 |
【参考】中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き l 中小企業庁
所得拡大促進税制
以下の条件を満たす場合、中小事業者等は税額控除を受けられます。そのため、給与の増加分の一部が法人税から控除されるようになり、キャッシュフローに大きな影響を与えます。
雇用者に支払う給与等の額が前年度と比べて1.5%以上増加した場合に控除対象となる雇用者に支払う給与等の増加額の15%を法人税額または所得税額から控除
または、
雇用者に支払う給与等の額が前年度と比べて2.5%以上増加した場合に控除対象となる雇用者に支払う給与等の増加額の30%を法人税額または所得税額から控除
【参考】中小企業向け賃上げ促進税制ご利用ガイドブック l 経済産業省
金融支援
主な措置として、政策金融機関の低利融資、民間金融機関の融資に対する信用保証、債務保証等の資金調達に関する支援を受けられます。具体的には、日本政策金融公庫による以下の融資です。
中小企業事業 |
国民生活事業 |
|
貸付金利 |
基準利率 設備資金は2億7,000万円まで特別利率 |
基準利率
設備資金は特別金利
|
貸付限度額 |
7億2,000万円 (運転資金2億5,000万円) |
7,2000万円 (運転資金4,800万円) |
貸付期間 |
・設備資金 20年以内 ・長期運転資金 7年以内 |
・設備資金 20年以内 ・長期運転資金 7年以内 |
【参考】中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き l 中小企業庁
経営力向上計画の申請手順
経営力向上計画を立てて申請するためには、基本的な手順があります。これからの申請に向けて、手順を理解しておきましょう。
受ける支援措置を選択する
先程解説したとおり、経営力向上計画を活用した支援には4種類あります。
- A類型:生産性向上設備
- B類型:収益力強化設備
- C類型:デジタル化設備
- D類型:経営資源集約化設備
どれを活用したいのかを検討し、計画を立てる根底を定めなければなりません。
経営力向上計画を作成する
中小企業庁ホームページの申請書様式類より「経営力向上計画に係る認定申請書」をダウンロードし、作成します。
作成にあたり、後述の「経営力向上計画の書き方・作成方法」を参考にしてください。また、一部中小企業庁ホームページの「事業分野別指針及び基本方針」を確認する箇所があるため、ご一読ください。
経営力向上計画を提出する
経営力向上計画は、「経営力向上計画申請プラットフォーム」より申請します。
経営力向上計画の登録に際して、事前に直近の決算書に加え、税制措置・金融措置・法的支援それぞれ申請に必要な書類があります。
「経営力向上計画 申請書作成の手引き」を確認してください。
申請内容は、会社情報の登録および新規申請書です。入力後、 PDF出力画面で確認できます。
経営力向上計画申請プラットフォームを使用する際の注意点として、経営力向上計画を申請するためには、「gBizID」のアカウントを取得する必要があります。
「gBizID」とは、1つのID、パスワードでさまざまな行政サービスを利用できるIDです。
ただし、gBizIDのアカウントを取得するまで2週間ほどかかります。
gBizIDのアカウントを持っていないとすぐには経営力向上計画を申請できない点にご注意ください
経営力向上計画の書き方・作成方法
内容の検討や事前準備が完了すれば、実際に経営力向上計画をフォーマットに沿って用意しなければなりません。続いては、書き方や作成方法をポイントともに解説します。
申請書をダウンロード
中小企業庁ホームページより申請書をダウンロードします。
経営力向上計画の書き方(申請書)
ダウンロードした認定申請書に記入します。
※以下で使用する画像は、「経営力向上計画 策定の手引き」より引用しています。
以下3点にご注意ください。
- 様式第2は、「事業譲渡に伴う不動産取得税の軽減措置」を希望する場合に使用し、残りは様式1です。
- 様式第2で申請する場合、申請書は都道府県経由で提出しなければなりません。
- 業種により提出先が異なるため、注意が必要です。
経営力向上計画の書き方(別紙)
次に経営力向上計画(別紙)の記入についてです。
中小企業庁「経営力向上計画 策定の手引き」をもとに注意点のみ説明します。
1.名称等
個人事業主や法人番号(13桁)が指定されていない場合は、それぞれ記載不要です。
2.事業分野と事業分野別指針名
日本標準産業分類を確認し、該当する中分類(2桁)と細分類(4桁)コードと項目名を記入します。
なお、日本標準産業分類は、総務省「日本標準産業分類(平成25年10月改定)(平成26年4月1日施行)」で確認できます。
3.実施時期
計画の遡及申請は2ヶ月を限度とする点に注意が必要です。ただし、事業継承等に関する支援措置を利用する場合には、遡及申請ができません。
4.現状認識
自社の現状について記入します。
「③自社の経営状況」について、財務状況の分析ツール「ローカルベンチマーク」を活用します。ローカルベンチマーク(略称:ロカベン)とは、企業の経営状態の把握、いわゆる「企業の健康診断」をおこなうツールです。
5.経営力向上の目標及び経営力向上による経営の向上の程度を示す指標
基本方針にしたがって策定する場合は、「労働生産性」を指標として記入します。
なお、労働生産性は以下の式で算出します。
労働生産性=(営業利益+人件費+減価償却費)÷労働投入量 (労働者数または労働者数×1人当たり年間就業時間)
6.経営力向上の内容
・(1)(2)どちらかが「有」と記入します。
(3)具体的な実施事項
「事業分野別指針の該当箇所」欄は自社が取り組む方針が事業分野別指針のどの部分に該当しているか記載します。中小企業庁ホームページの「事業分野別指針及び基本方針」で確認してください。
なお、基本方針に基づいて計画を策定する場合、記載は不要です。また、経営力向上計画申請プラットフォームにて申請書を作成する場合、実施事項に合う選択肢を入力します。
「事業承継等の種類」欄は、事業承継等を伴う取組をおこなう場合、①吸収合併 ②新設合併 ③吸収分割 ④新設分割 ⑤株式交換 ⑥株式移転 ⑦株式交付⑧事業又は資産の譲受け ⑨株式又は持分の取得 ⑩事業協同組合、企業組合又は協業組合の設立のいずれかの番号を記入します。
「実施事項」欄は、自社が経営力向上のために取り組むことを取組ごとに具体的に記入しなければなりません。「4.現状認識」と整合性の取れるように記入します。
7.経営力向上を実施するために必要な資金の額及びその調達方法
「実施事項」欄には、「6. 経営力向上の内容」の実施事項ごとの記号を記入してください。また、「使途・用途」欄には、必要な資金、具体的な使途・用途を記入し、「資金調達方法」欄には、自己資金、融資、補助金、リース等を記入します。
8.経営力向上設備等の種類
税制措置を活用する場合、こちらに記入します。
添付書類の記載通りに記入する必要があるため、注意してください。
9.特定許認可等に基づく被承継等特定事業者等の地位 以降
「6.経営力向上の内容」で事業承継の取組がある場合のみ記入します。
申請書提出用チェックリスト
提出書類に記載漏れがないかなどをチェックするため、「経営向上計画 申請書提出用チェックシート」を用います。
チェックリスト上部部分の事業所名などを記入します。
チェック項目に記載されていることに関してチェックが必要です。
また、エクセルでのチェックリストを利用する場合、プルダウンにより選択します。
チェック項目の下部に代表者の自署する箇所があるため、忘れないでください。
補助金を最大限活用するためには早めの情報取得が必須
経営力向上計画など、経営を支援してくれる補助金や制度は多数存在しています。
ただ、必要な書類が多いなど、締め切りまでに計画的な準備が必要です。そのため、早めの情報収集が求められます。
利用できる制度を無駄にしないためにも、効率よく情報を収集するようにすべきです。
補助金の申請ならばエフアンドエムにご相談ください
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まとめ
経営力向上計画に申請して認定されると「税制」「金融」での支援を受けることが可能です。申請は経営力向上計画申請プラットフォームからおこないますが、その際「gBizID」のアカウント取得が必須となります。
経営力向上計画は企業にメリットのある制度ですが、書類作成や手続きは複雑で、自社だけで対応することは難しいかもしれません。
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