付加価値額と労働生産性の関係とは?算出方法・分析方法を解説
昨今の働き方改革などで、経営環境が変化している中、企業に求められていることは「付加価値」と「労働生産性」です。いかに付加価値のある商品・サービスを顧客に提供できるのか、またどれだけ効率よく生産できるかが、企業の存続に関わります。
本記事では、付加価値額と労働生産性の関連性、付加価値額の算出・分析方法、付加価値の高め方について説明します。
目次[非表示]
- 1.付加価値額と労働生産性の関係とは?
- 1.1.付加価値額とは
- 1.2.労働生産性とは
- 1.3.付加価値額と労働生産性の関係
- 2.付加価値額の算出方法
- 3.付加価値額の分析方法
- 4.付加価値の高め方
- 5.F&M Clubでは経営力向上につながるサポートをおこなっています
- 6.付加価値額と労働生産性の関係:まとめ
付加価値額と労働生産性の関係とは?
付加価値額とは、売上高から原価を差し引いた額、つまり「粗利」の意味に近いです。
一方の労働生産性とは、労働者1人あたりの生産量を表します。
なぜ付加価値額が高いと、労働生産性も高くなるのか、付加価値額と労働生産性との関連性について解説します。
付加価値額とは
付加価値額とは、企業が生産活動により産出した価値を数値で表したもの。売上高から外部で調達した価格を差し引いた数字で表します。
例えば、原価3,000円の製品を加工して5,000円で販売した場合、生産された付加価値額は2,000円です。つまり、付加価値額は利益に近い意味で用いられることが多いと理解できるでしょう。
また、中小企業庁が発表している「2021年中小企業白書」によると、国内の付加価値額の5割以上を中小企業が占めていることがわかりました。卸売業とサービス業では、付加価値額全体に占める中小企業の割合が相対的に高くなっています。
業種 |
小規模企業 |
中規模企業 |
大企業 |
製造業 |
10.4% |
37.1% |
52.5% |
卸売業 |
8.8% |
51.2% |
40.1% |
小売業 |
12.6% |
41.6% |
45.9% |
サービス業 |
15.4% |
42.1% |
42.5% |
その他 |
19.5% |
29.6% |
51.0% |
非1次産業計 |
14.0% |
38.9% |
47.1% |
【参考】2021年中小企業白書 第1節 多様な中小・小規模事業者|中小企業庁
労働生産性とは
公益財団法人日本生産性本部によると、生産性の定義として「生産性とは、生産諸要素の有効利用の度合いである」(ヨーロッパ生産性本部)としています。
商品・サービスを生産することを「産出」と呼びます。産出するためには、機械設備や土地、建物などの有形、無形の固定資産、また原材料などが必要です。そしてこれらを操作する労働量も欠かせません。これらを「投入」と呼びます。
生産性は投入に対する産出の割合です。次の方法で算出します。
生産性=産出(output)/投入(input) |
つまり、労働生産性とは、投入の中で労働量に焦点をあてた生産性です。
付加価値額と労働生産性の関係
労働生産性とは、従業員一人あたりの付加価値額です。
労働生産性=付加価値額/従業員数 |
付加価値額が同じであっても、従業員数の少ないほうが労働生産性は高くなります。
付加価値額の算出方法
付加価値額の算出方法は、2つに分けられます。
● 控除法(中小企業方式)
● 加算法(日銀方式)
控除法(中小企業庁方式)
控除法とは、売上から外部より取りよせた価値を差し引く方法です。
付加価値額=売上高-外部購入価値 |
外部購入価値には、主に以下が該当します。
● 材料費
● 購入部品費
● 運送費
● 外注加工費
控除法の考え方は、「自社の売上高の中に、他社の付加価値額が含まれている」というもの。他社の付加価値額を差し引くことで、自社の付加価値額が計算できます。
加算法(日銀方式)
加算法とは生産のプロセスで発生した価格を加算する方法です。
「積上法」とも呼ばれます。
付加価値額=人件費+経常利益+賃借料+営業外費用+租税公課 |
人件費
通常、労働者に支払う「給与」以外に「販売費」や「労務費」、「役員給与」、「退職金」などが含まれます。
経常利益
営業利益より営業外収益(例えば受取利息や雑収入)を加え、営業外融費用(例えば金融機関への支払利息など)を差し引いた利益です。
賃借料
企業が事業を行うに際して必要な土地や建物、機材や社用車にかかる費用です。
金融費用
企業が事業運営するときに必要な資金を調達する際の費用のことで、「支払利息」「社債利息」「割引料」「社債発行費償却」などがあります。
租税公課
企業が事業を経営するに必要な税金などで、「国税」や「地方税」が該当します。
加算法は、「企業が生産した付加価値は、利害関係者に分配される金額の原資である」という考え方です。
つまり、従業員や金融機関、出資者、賃貸人などの利害関係者への分配結果の総和となります。
付加価値額の分析方法
付加価値率や労働分配率、資本生産性分析について解説します。
企業が付加価値を上げるために見直すべきポイントが明確となるでしょう。
付加価値率
付加価値率とは、売上高あたりの付加価値額です。
付加価値率=付加価値額/売上高×100 |
付加価値額が高いと、付加価値率も高くなります。
労働生産性と付加価値額との関連性は先ほど説明しましたが、付加価値率と労働生産性とも関連しています。
労働生産性=付加価値額/従業員数 |
と計算できますが、下記のようにも表せます。
労働生産性=(売上高/従業員数)×(付加価値額/売上高) |
つまりは、下記の計算で表せます。
労働生産性=(一人あたりの売上高)×(付加価値率) |
労働生産性を高めるには、一人あたりの売上高、付加価値率の片方、もしくは双方を高める必要があります。
労働分配率
労働分配率とは、付加価値額のうち、労働者への給料など人件費の割合です。
労働分配率=(人件費/付加価値額)×100 |
労働分配率の調整は難しいといわれています。なぜなら、高すぎると収益を圧迫し、低すぎると労働者のモチベーションを下げかねないためです。
資本生産性分析
資本生産性とは、企業の総資産(総資本)が産出した付加価値額の割合です。
企業が事業を営むために使用している土地・建物・機械などの総資産が、付加価値をどれだけ生みだしたかの割合を示します。
資本生産性=付加価値額/総資本 |
また、次の計算式でも表せます。
資本生産性=(付加価値額/売上高)×(売上高/総資本) =(付加価値率)×(総資本回転率) |
資本生産性を高めるためには、付加価値率の上昇、または総資本回転率の上昇、あるいは双方の上昇が必要となります。
付加価値の高め方
付加価値を高めるには、企業の投入の見直しや、新しい商品やサービスの産出で他社にない価値提供をおこなうことが考えられます。
ここでは、人件費の削減や新商品開発、業務の効率化について解説します。
人件費の削減
商品・サービスの提供による付加価値額を高めるには、人件費の削減が必要です。
例えば、正社員でなく契約社員への業務委託、飲食店でのタッチパネルによる注文、製造業でのロボットによるオートメーション化など、これまで人がおこなっていた業務をIT化することで人件費削減につなげられます。
しかし、研究開発のように、今も人でないとできない分野は多く残されています。
一律に人件費を削減すると、労働者のモチベーションが下がり、付加価値額がかえって低くなる可能性もあり、見極めが大切です。
新商品開発
新商品・サービスの開発は、付加価値を高める手法のひとつです。既存の商品・サービスにない価値を提供したり、他の企業に先んじて供給することにより今までにない価値を生み出せます。
一方で、新商品の開発には時間・コストが膨大にかかり、また新商品が売れるかは提供するまでわからないといったリスクがあります。新商品を開発するためには、普段から顧客のニーズをつかんでおくことが大切でしょう。
業務効率化
業務の無駄を省き、簡略化することで、商品・サービスの付加価値を高められます。例えば、労働者がおこなっている業務をIT化し、今まで書類で管理していたシステムをクラウド化に変更することで、ファイリングの手間や保管スペースの確保も不要となるでしょう。これにより事務コストも削減できます。
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付加価値額と労働生産性の関係:まとめ
付加価値額と労働生産性の関係について説明しました。付加価値額は、生産価格から外部より調達した価格を控除した金額です。控除法(中小企業庁方式)と加算法(日銀方式)に分けられます。
労働生産性とは、従業員一人あたりの投入量を示します。付加価値額を従業員数で割って求められます。同じ付加価値額でも従業員数の少ないほうが、労働生産性は高いといえるでしょう。
付加価値額の分析には、「付加価値率」「労働分配率」「資本生産性」があり、売上高・人件費・総資産が密接に関わることについて解説しました。付加価値を高めるためには人件費の削減、新商品の開発、業務の効率化に注力することが重要です。
ワークスタイルの変化に伴い、付加価値や労働生産性を重視する企業が増加しました。売上が増加しても付加価値率の低下を招かないようインプットである投入に着目することをおすすめします。
- 付加価値額とは、売上高から原価を差し引いた値であるが、算出方法には控除法と加算法とがある。
- 労働生産性は従業員一人あたりの付加価値額である。
- 付加価値額と労働生産性とは密接に関わっている。
- 付加価値を高めるには人件費の削減、新商品の開発、業務の効率化がある。