3.5%の企業しか利用していない?誰でもできる優遇制度のご案内
企業の経営力向上を目指す制度である「経営力向上計画」は、中小企業全体の約3.5%しか利用していません。
経営力向上計画について知らない経営者も多く、経営力向上制度を有効活用し、経営に役立ていない中小企業がほとんどです。
「経営力向上計画」を利用することで、さまざまなメリットが得られます。
今回は経営力経営計画を解説します。
目次[非表示]
- 1.3.5%の企業しか利用していない?経営力向上計画制度とは
- 1.1.制度の概要
- 1.1.1.3つのポイント
- 1.2.4種類の細かい制度に分類
- 2.経営力向上計画制度がもたらす企業のメリット
- 2.1.設備投資による税金の低減
- 2.2.特別金利による利息負担の低下
- 2.3.賃上げによる税金の特別処置
- 3.企業が経営力向上計画制度を利用する効果
- 3.1.中期的な会社のビジョンが見える
- 3.2.資金繰りがよくなる
- 3.3.経営に必要な情報を社長が自らキャッチしていると示せる
- 4.経営力向上計画を最大限に活用するために
- 5.まとめ
3.5%の企業しか利用していない?経営力向上計画制度とは
経営力向上計画の制度を利用すると、さまざまな優遇を受けることができます。
その中でも大きな優遇が税金・金融に関する優遇です。
中小企業経営強化税制、所得拡大促進税制の上乗せ措置等を活用した優遇税制、政府系金融機関の制度融資の活用(新事業活動促進資金)等の金融支援を受けられます。
制度の概要
経営力向上計画制度とは、人材育成やコスト管理等のマネジメント力向上や、設備投資等、自社の経営力を向上するための計画で、認定された事業者は税制や金融の支援等を受ける制度です。
近年、我が国の経済産業政策において、持続的な経済成長の実現に向けて、中小企業の生産性向上が重要な課題として指摘されています。
経営力向上計画をうまく活用することで、企業の生産性向上につながります。
3つのポイント
経営力向上計画制度利用には3つのポイントがあります。
- 申請様式は3枚
- 計画策定をサポート
- 経営実行のための3種類の支援措置
①申請様式は3枚
申請書では、企業の概要、現状認識、経営力向上の目標および経営力向上の程度を示す指標営力向上の内容等、経営力向上実施に向けた簡単な計画等を策定することにより認定を受けます。
②計画策定をサポート
商工会議所や地域金融機関等の認定経営革新等支援機関による経営策定の支援を受けられます。また、ローカルベンチマークなど企業の経営状態を把握する診断ツールを使用し、計画策定ができる
③経営実行のための3種類の支援措置
・税制措置
認定計画に基づき取得した一定の設備や不動産について、法人税や不動産取得税等の特例措置を受けられます。
・金融支援
政策金融機関の低利融資、民間金融機関の融資に対する信用保証、債務保証等の資金調達に関する支援を受けられます。
・法的支援
業法上の許認可の継承特例、組合の発起人数に関する特例、事業譲渡の際の免責的責務引き受けに関する特例措置を受けられます。
4種類の細かい制度に分類
制度の概要にある「一定の設備」の要件は、A~D類型の4種類あり、それぞれ対象設備に対する要件が異なります。各類型の対象設備の詳細、目標値等は、中小企業庁のサイトをご確認ください。
・A類型:生産性向上設備
一定期間内に販売されたモデルであり、経営力の向上に資するものの指標(生産効率等)が旧モデルと比較して年1%以上向上している設備であることが要件です。
・B類型:収益力強化設備
年平均投資利益率が5%以上見込まれることにつき、経済産業省大臣(経済産業局)の確認を受けた投資計画に記載された投資の目的を達成するために必要不可欠な設備であることが要件です。
・C類型:デジタル化設備
事業プロセスの遠隔操作、可視化、自動制御化のいずれかを可能にする設備として、経済産業大臣(経済産業局)の確認を受けた投資計画に記載された投資の目的を達成するために必要不可欠な設備であることが要件です。
・D類型:経営資源集約化
経営力向上計画に事業継承等事前調査に関する事項の記載があるものであり、経営力向上計画に従って事業継承等を行ったあとに取得または製作もしくは建築をするもので、有形固定資産回転率、修正ROAの改善が見込まれるものであることが要件です。
【参考】 経営サポート「経営強化法による支援」| 中小企業庁
経営力向上計画制度がもたらす企業のメリット
経営力向上計画制度を通して、得られるメリットについて解説します。
設備投資による税金の低減
製造業を中心とした多くの企業では、少子高齢化による人材不足により、生産性の低下が大きな課題となっています。
生産性向上のためにも設備投資をして、一括で減価償却した場合、税額が低減できます。
【例:利益500万の企業が200万円の設備投資をした場合】
- 10年で減価償却した場合:法人税は111.36万円
- 即時償却した場合:法人税は69.6万円
- 税額控除した場合:法人税は96万円
即時償却税額控除を活用すると、税額に大きな違いが生まれます。
特別金利による利息負担の低下
中小企業等経営強化法に基づき、経営力向上計画の認定を受けた事業者は、新事業活動促進資金(金融支援)を受けられます。
新事業活動促進資金とは、経営力向上に向けて、経営多角化、事業転換を図る企業の資金について低金利融資制度によるサポートをおこなうために設けられた支援制度です。
新事業活動促進資金を受け取る、政策金庫が掲げる基準金利-0.9%設備資金の融資を受けられる可能性があります。(※融資を受けられない場合もあります)
賃上げによる税金の特別処置
一定要件を満たしている企業が、前年より賃金を増額させた場合、増加額の一部を法人税から税額控除できる場合もあります。(所得拡大促進税制の上乗せ措置の活用)
【参考】積極的な賃上げに取り組む企業を応援します(中小企業向け所得拡大促進税制(令和3年3月31日以前に開始した事業年度分)| 中小企業庁
企業が経営力向上計画制度を利用する効果
企業が経営力向上計画制度を利用した場合に期待できる効果について解説します。
中期的な会社のビジョンが見える
企業が経営力(生産力)向上に向けた計画を策定することにより、経営目標や経営環境の分析ができ、課題の再確認や、経営目標を明確にできます。
企業が経営状況を把握し、課題や目標を明確にする価値があり、中期的な企業のビジョンを見ておくことは大切です。
資金繰りがよくなる
経営力向上計画制度には、税制や借入れの優遇措置があるため、活用する資金面にメリットがあります。
企業の経営戦略には、生産性の向上同様、資金繰りも重要です。
計画策定時に財務状況も再確認し、必要な優遇措置を積極的に活用しましょう。
経営に必要な情報を社長が自らキャッチしていると示せる
前述したように、経営力向上計画制度は、中小企業の約3.5%しか活用していません。
その背景には、税理士がいるにもかかわらず「制度を知らない」「税理士に案内されていない」という状況であることも、ひとつの理由として挙げられます。
「経営に有利な情報は税理士ではなく、社長が自ら動いて得る」ことが重要です。
経営力向上計画制度を知り、利用することで他社と差をつけることができます。
経営力向上計画を最大限に活用するために
経営力向上計画は、中小企業全体の約3.5%しか利用していません。
制度自体の認知度が低いありますが、「チャレンジしたが、難しくて断念した」、「難しそうなため敬遠している」、「申請作業を手伝ってくれるところを探している」など、制度の申請作業で頭を抱えている企業も多くいます。
実際、申請作業は複雑で不備率が80%ともいわれています。
経営力向上計画制度についてしっかりと理解し、申請時のポイントをおさえることが大切です。
まとめ
経営力向上計画制度は、中小企業の約3.5%しか活用していません。
経営力向上計画制度を利用することで、優遇税制や金融支援を受けられます。
経営力向上計画の策定により、企業の中期的なビジョンが明確になるでしょう。
企業の経営状況を把握し、計画を策定することは企業存続のために必須です。