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【業務改善助成金】最低賃金は全国加重平均55円増の目安|9月申請へ今から準備

株式会社エフアンドエム

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2026年度の最低賃金改定の目安は、全国加重平均で55円のアップです。「またか」とため息をつく経営者も多いのではないでしょうか。特にパート・アルバイトなど最低賃金付近で働く従業員を抱える企業ほど、その影響は直接的です。

しかし、ただ人件費の負担として受け止めるだけでは、賃上げは経営を圧迫する要因のままです。生産性向上への投資と結びつけることができれば、話は変わってきます。

今回は、最低賃金引き上げの動向と、それにあわせて活用できる「業務改善助成金」の使い方をまとめました。業務改善助成金を活用し、賃上げと生産性向上を同時に進めるためのポイントを解説します。

目次

最低賃金は全国加重平均55円増

まず、2026年度の最低賃金改定がどれだけの影響を持つのか、数字で確認しましょう。

全国加重平均1,176円で引き上げ率は4.9%

厚生労働省の中央最低賃金審議会は2026728日、令和8年度地域別最低賃金額改定の目安を答申しました。目安どおりに改定されれば、全国加重平均は55円上がり1,176円に変化します。引き上げ率は4.9%で、上げ幅としては過去2番目の大きさです。

都道府県は経済実態に応じてABC3ランクに分けられています。埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・大阪の6都府県(Aランク)は54円、そのほかの道府県(BCランク)は56円の引き上げが目安です。8月上旬から、各都道府県の地方最低賃金審議会による答申が順次出ています。

実際の改定額と発効予定日は都道府県ごとに異なり、目安を上回るケースもあります。そのため、自社の都道府県について厚生労働省または各都道府県労働局の最新情報を確認しましょう。例年の流れでは10月から順次発効するため、準備に充てられる時間は限られます。

【出典】厚生労働省|令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について

すでに約8割の企業が昇給・賃上げを予定

最低賃金の引き上げは、パート・アルバイトだけの問題ではありません。エフアンドエム中小企業総合研究所がF&M Club会員企業を対象に20264月に実施した調査では、有効回答2,705社のうち、正社員全員または一部への昇給・賃上げを実施・予定している企業は78.93%にのぼりました。調査結果からは、正社員を含む賃上げの動きが中小企業に広がっていることがうかがえます。

「毎年のように賃金を引き上げなければならない」という状況は続くでしょう。ただ、単なる負担として捉え続けることはおすすめできません。経営変革の機会として活用することで、自社の未来を変化させられます。

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【出典】エフアンドエム中小企業総合研究所|中小企業の昇給予定実態調査(2026年度)

 

賃金の引き上げを「投資」と捉える発想

賃上げと生産性向上を同時に進める方法のひとつに「業務改善助成金」が挙げられます。賃金の引き上げにあわせて生産性向上のための設備投資等を行うことで、費用の一部が助成される制度です。賃上げそのものに助成金が支給されるわけではありません。ただ、賃上げと設備投資等を一体で進めるという制度設計が、賃上げを前向きな経営判断に変えてくれます。

業務改善助成金とは

業務改善助成金は、事業場内最低賃金を50円以上引き上げるとともに、生産性向上に資する設備投資等を行った中小企業・小規模事業者に対し、その設備投資等にかかった費用の一部を助成する厚生労働省の制度です。

また、事業場内最低賃金は、原則として以下に該当する労働者の賃金です。

雇入れ後6カ月を経過した雇用保険被保険者のうち、最も時間額の低い労働者

対象は、申請時点の事業場内最低賃金が、現行の地域別最低賃金以上かつ令和8年度改定後の地域別最低賃金未満である事業場です。また、解雇や賃金引き下げなどの不交付事由がないことも求められます。すでに改定後の水準以上を支払っている事業場は対象外であり、自社の状況をまずは確認しておきましょう。

対象経費の範囲は幅広く、POSレジシステムの導入、リフト付き特殊車両の導入、顧客管理のシステム化などが認められています。ただ、既存設備と同等性能への単純な入れ替えは対象外です。生産性向上の効果を客観的に説明できる投資が求められます。

【出典】厚生労働省|業務改善助成金

実際の引き上げ額でコースを選択

業務改善助成金は、事業場内最低賃金の実際の引き上げ額に応じて、50円・70円・90円の3コースに分かれています。ここで注意したいのは、コースを決めるのは最低賃金の改定目安ではなく、自社が実際に引き上げる額だという点です。

たとえば、事業場内最低賃金を55円引き上げた場合は50円コースに該当します。70円コースを利用するには70円以上、90円コースを利用するには90円以上の引き上げが必要です。最低賃金の改定額と助成金のコース区分は同じ数字ではない、と覚えておきましょう。

コースを上げるほど助成上限額は大きくなりますが、賃上げ後の人件費負担も増え続けます。助成額だけでなく、賃上げ後の人件費も試算したうえでコースを選びましょう。

【出典】厚生労働省|業務改善助成金

業務改善助成金の助成上限額はどのように決まるか

助成上限額は、選んだコースと賃金を引き上げる労働者数、そして事業場の規模によって変わります。自社が最大でどこまで受け取れるのか、順を追って確認しましょう。

コース・人数別の助成上限額

90円コースの場合、以下のように助成上限額が設定されています。

引き上げる労働者数

事業場規模30人未満

事業場規模30人以上

1人

100万円

90万円

2~3人

240万円

150万円

4~5人

270万円

270万円

6~7人

360万円

360万円

8人以上

450万円

450万円

10人以上※

600万円

600万円

※10人以上・600万円の区分は、特例事業者が10人以上の労働者の賃金を引き上げる場合に限られます。

事業場規模が30人未満の場合、1人および2~3人の区分で助成上限額が優遇されています。4人以上では事業場規模による違いはありません。また、10人以上・600万円の区分を利用できるのは特例事業者に限られます。実際の助成額は、対象経費に助成率を掛けた額と、表の助成上限額のいずれか低いほうです。上限600万円がそのまま支給されるわけではない点に注意しましょう。

自社で何人の賃金を引き上げる予定かを整理すれば、おおよその助成上限額の見当をつけられます。パート・アルバイトも、申請日時点で雇用保険被保険者となっていれば対象になり得ます。該当する従業員が何人いるかを、この機会に棚卸ししておくとよいでしょう。

【出典】厚生労働省|業務改善助成金

特例事業者なら600万円まで

「最大600万円」の上限額区分を利用できるのは、90円コースで10人以上の労働者の賃金を引き上げる特例事業者に限られます。特例事業者は以下のいずれかに当てはまる場合です。

  • 事業場内最低賃金が1,050円未満の事業場に係る申請を行う事業者
  • 原材料費の高騰など外的要因により、申請前最近6カ月平均の利益率が前年同期と比べて3%ポイント以上低下している事業者

自社の事業場内最低賃金が1,050円を下回っているなら、賃上げの必要性そのものが高いということです。物価高騰で利益率が悪化しているなら、この特例要件がむしろ申請の追い風になるかもしれません。まずは自社がどちらかの要件に当てはまるかを確認してみましょう。

助成率は4/5または3/4

助成される割合(助成率)も、事業場内最低賃金の水準によって変わります。事業場内最低賃金が1,050円未満の場合は4/51,050円以上の場合は3/4です。同じ経費をかけても、賃金水準が低い事業者ほど自己負担が軽くなる設計になっています。

業務改善助成金の申請前に動く実務アクション

業務改善助成金の交付申請受付は、令和891日に始まります。最低賃金の発効前に動くなら、逆算した準備が欠かせません。大きく3つのアクションに整理しました。

引き上げ額と対象人数を決める

まず、事業場内最低賃金をどこまで引き上げるか、対象となる従業員が何人いるかを確定させます。中央最低賃金審議会の目安はAランク54円、BCランク56円です。ただ、実際の改定額と発効予定日は、各都道府県で順次答申・決定されており、目安を上回るかもしれません。自社の都道府県における最新の答申・改定予定額を確認し、改定後の地域別最低賃金を下回らない引き上げ額を検討しましょう。

あわせて、引き上げ後の事業場内最低賃金額と同額を就業規則等に定めます。常時使用する労働者が10人未満で就業規則がなければ、就業規則に準ずる書面を作成しましょう。そして、労働者代表の意見書を添付したうえで労働者へ周知します。申請前の日付で適用してしまうと対象外になるため、適用日にも注意すべきです。

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対象経費と設備投資計画を洗い出す

次に、生産性向上につながる設備投資やコンサルティングの中身を具体化します。たとえば製造業であれば新機能を備えた設備の導入、小売業であればPOSレジや在庫管理システムの導入、サービス業であれば予約管理や顧客管理のシステム化など、業種によって使いやすい対象経費は異なります。設備等の契約・発注・納品は、交付決定を受けたあとでなければ対象外になるため、交付決定前に発注してしまわないよう注意しましょう。

申請から事業完了までのスケジュールを押さえる

交付申請の受付は令和891日に始まる予定です。また、申請期限は、申請事業場に適用される令和8年度地域別最低賃金の発効日の前日、または同年1130日のいずれか早い日です。発効日は都道府県ごとに異なるため、自社の地域の発効予定日を早めに確認しておきましょう。

賃金の引き上げは、交付申請後、発効日の前日までに実施しなければなりません。仮に発効日が101日の地域であれば、9月中に申請と賃上げの両方を終える必要があるということです。一方、設備の納品・支払いなど事業全体の完了は、原則として交付決定年度の131日までと、賃上げよりも長い期間が確保されています。賃上げと設備投資とでは着手・完了の期限が異なる点を、あらかじめ社内で共有しておきましょう。

まとめ

2026年度の最低賃金は、目安どおりなら全国加重平均1,176円、55円のアップです。賃金の引き上げはもはや避けて通れない経営課題になっています。

そのなかで業務改善助成金を活用すれば、賃上げにあわせた設備投資等の費用の一部を、最大600万円まで助成として受け取ることができます。「上げざるを得ない賃金」を、生産性向上という前向きな投資の理由に変えられるかどうかは、令和891日の申請受付開始前にどれだけ準備できるかにかかっています。

引き上げ額と対象人数の確定、対象経費の洗い出し、申請・賃上げ・事業完了それぞれのスケジュールの把握という3つのアクションから、ぜひ着手してみてください。

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