【2024年4月】キャリアアップ助成金「正社員化コース」が拡大予定!変更点や注意点を解説
キャリアアップ助成金における助成額の拡充と対象労働者の拡充が図られます。
近年、いわゆる非正規雇用労働者の「キャリアアップ」が問題となっており、必要な取り組みを実施することで、会社としては助成金を受給することができます。
ただし、助成金を受け取るには助成金上の取り組みだけでは足りず、法令を遵守した労務管理体制を敷く必要もあります。
目次[非表示]
- 1.助成金を受ける前に
- 2.キャリアアップ助成金(正社員化コース)とは
- 3.キャリアアップ助成金を受けるための条件
- 3.1.キャリアアップ助成金の支給対象となる事業主
- 3.2.(拡大)キャリアアップ助成金の対象となる労働者
- 3.3.キャリアアップ助成金における用語の定義の改正
- 3.4.(拡大)キャリアアップ助成金(正社員化コース)の受給額
- 3.5.(拡大)加算措置
- 4.キャリアアップ助成金「正社員化コース」を受けるときの注意点
- 4.1.対象労働者の要件を満たすか再確認する
- 4.2.就業規則・雇用契約書の内容も確認する
- 5.キャリアアップ助成金申請までの流れ
- 6.キャリアアップ助成金「正社員化コース」の申請に必要な書類
- 7.キャリアアップ助成金の申請に必要なキャリアップ計画とは?
- 8.キャリアアップ助成金「正社員化コース」が支給されない!失敗事例を紹介
- 8.1.キャリアアップ計画書の提出を忘れた
- 8.2.賃金&上昇要件が満たされていないかった
- 8.3.就業規則への転換規程を明文化し忘れた
- 9.F&M Clubでは経営力向上につながるサポートをおこなっています
- 10.最後に
助成金を受ける前に
助成金の原資は企業が支払っている雇用保険料の一部が活用されています。
今まで助成金を受けたことがない企業でも要件を満たした場合は申請し、審査後に受給できる場合もあるため、支払っている雇用保険料を有効活用するためにも、必要な準備を進めておきましょう。
しかし、助成金を受けるためには必要な書類の準備や要件を確認しておく必要があります。
ひとつずつ確認していきましょう。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)とは
キャリアアップ助成金(正社員化コース)とは、採用後に企業内でのキャリアアップを図り、その一部を支援するために設けられた助成金です。
就業規則または労働協約そのほかこれに準ずるものに規定した制度に基づき、有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換または直接雇用した場合に助成されます。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、支給される助成金を基に労働者の雇用の安定、処遇の改善を推進することが目的です。
キャリアアップ助成金を受けるための条件
キャリアアップ助成金を受けるためには、事業主と労働者のそれぞれが、対象となる条件を満たす必要があります。
キャリアアップ助成金の支給対象となる事業主
まずは➀雇用保険適用事業所であることが必要です。
労働者を一人も雇用していない場合や雇用していたとしても同居の家族だけでの経営であった場合、雇用保険に加入していない場合は支給対象外となります。
次に➁雇用保険適用事業所ごとにキャリアアップ管理者を置いておくことです。
キャリアアップ管理者とはキャリアアップに関する必要な知識および経験を有する者で、事業主や役員が就任することも可能です。
そして、③雇用保険適用事業所ごとに対象労働者に対してキャリアップ計画書を作成し、管轄労働局長の認定を受けた事業主であることが最初の条件となります。
さらに、④該当するコースの措置に係る対象労働者に対する労働条件、勤務状況および賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明確に示すことが可能な事業主であること、また、⑤キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主であることが条件となります。
(拡大)キャリアアップ助成金の対象となる労働者
キャリアアップ助成金の対象となる労働者は、以下の条件に該当する労働者です。
- 支給対象事業主に雇用される期間が通算して6か月以上の有期雇用労働者または無期雇用労働者
- 有期雇用労働者から転換する場合、雇用された期間が通算して3年以内であることが要件です。
(拡大予定)2024年4月~ 対象となる有期雇用労働者等の雇用期間の条件が6か月以上(3年以内が削除)
以下の場合、支給対象外となるため、注意が必要です。
1. 正規雇用労働者として雇用することを約束して雇入れられた場合 2. 事業主または取締役の3親等以内の親族の場合 3. 転換または直接雇用日から、定年までの期間が、1年以上ない場合 4. 支給対象事業主において、定年を迎えた者 |
キャリアアップ助成金における用語の定義の改正
2022年10月1日以降の正社員転換より、以下の定義についての改正が適用されます。
- 正社員の定義
現行 |
同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者 |
改正後 |
同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者 |
ただし、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用されている者に限る |
- 非正規雇用労働者の定義
現行 |
6か月以上雇用している有期または無期雇用労働者 |
改正後 |
賃金の額またが計算方法が「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を6か月以上受けて雇用している有期または無期雇用労働者 |
(拡大)キャリアアップ助成金(正社員化コース)の受給額
条件 |
受給額 |
①有期雇用労働者 → 正規雇用労働者への転換 |
一人当たり57万円<72万円>
2024年4月~ (拡大予定)一人当たり60万円(2人目以降が50万円)) |
②無期雇用労働者 → 正規雇用労働者への転換 |
一人当たり28万5千円<36万円> |
※2パターンを合わせて、1事業所あたりの1年間における支給申請上限人数は20人までです。
(拡大)加算措置
派遣労働者を派遣先で正規雇用労働者として直接雇用する場合
1人当たり28万5千円<36万円>
- 対象者が母子家庭の母等または父子家庭の父の場合
(転換等した日において母子家庭の母等または父子家庭の父である必要があります)
①の場合:1人当たり9万5千円<12万円>、②の場合:4万7,500円<6万円>
- 人材開発支援助成金の特定の訓練修了後に正規雇用労働者へ転換等した場合
①の場合:1人当たり9万5千円<12万円>、②の場合:4万7,500円<6万円>
- 「勤務地限定・職務限定・短時間正社員」制度を新たに規定し、有期雇用労働者等を当該雇用区分に転換等した場合
1事業所当たり9万5千円<12万円>
2024年4月~ (拡大予定)多様な正社員制度規定に係る加算措置が9万5千円から40万円に増額
キャリアアップ助成金「正社員化コース」を受けるときの注意点
まずは計画書の届出がスタート地点となります。また、それだけでなく、正しい労務管理体制が敷かれていることが要件となるため、助成金が正しい労務管理体制の構築の契機となればよりよい活用方法と考えます。
対象労働者の要件を満たすか再確認する
雇い入れにあたっては特に多い論点として、以下の点に該当していないかの確認が求められます。
- 正社員として雇用することを予め約束していない
- 正社員転換日から過去3年以内に当事業主または密接な関係の事業主に雇用されていない
- 正社員転換日から過去3年以内に当事業主または密接な関係の事業主の役員に就任したことはない
- 正社員転換日から過去3年以内に当事業主または密接な関係の事業主と請負、委任関係になかった
- 正社員転換した者は事業主または取締役の3親等内の親族ではない
就業規則・雇用契約書の内容も確認する
まずは就業規則が何よりも重要です。特に転換規定、賃金規程、昇給要件、賞与または退職金の要件は必要です。また、労働条件通知書や雇用契約書については当然転換前後の期間が網羅されたものが必要です。
キャリアアップ助成金申請までの流れ
キャリアアップ計画書は遅くとも各コースの実施日の前日までに事業所の所轄労働局長宛に届出しておく必要があります。その後必要な取り組みを進めていく必要があります。また、届出にあたっては労働者代表やキャリアアップ管理者の決定が必要ですので一定の時間を要することも頭に入れておく必要があります。
【参考】キャリアアップ助成金 厚生労働省
キャリアアップ助成金「正社員化コース」の申請に必要な書類
- 指定の申請書の他に会社として用意しなければならない書類が複数あります。
- 転換制度が明記されている就業規則または労働協約等
- 転換前後の雇用契約書または労働条件通知書
- 賃金台帳(転換前後の6か月分)および賃金3%以上増額に係る計算書
- 出勤簿またはタイムカード(転換前後の6か月分)
上記は最低限必要となる書類です。
不明点は専門家を活用するなどして速やかに準備しましょう。
キャリアアップ助成金の申請に必要なキャリアップ計画とは?
令和5年10月以降、届出が新しくなっていますので、必ず最新の届出書をダウンロードし使用する必要があります。また、計画をせずに実施しても助成金の対象とはなりませんので、実施する可能性がある場合は当該コースの計画書を届出しておくことが望まれます。
キャリアアップ助成金「正社員化コース」が支給されない!失敗事例を紹介
助成金は要件を満たしている場合、基本的には受給することが可能です。
しかし、書類の提出漏れなどが生じた場合は支給されないため、下記失敗事例を確認して失敗しないようにしましょう。
キャリアアップ計画書の提出を忘れた
こちらは挽回の余地がありません。
よって取り組みから逆算し、早めに届出をして防ぎましょう。
賃金&上昇要件が満たされていないかった
「登用前後の6か月」を比較して3%の上昇要件を満たしていることが必要です。
これは、契約締結時に判断しておきましょう。
就業規則への転換規程を明文化し忘れた
こちらは挽回の余地がありません。
また、当然、転換前に条文を整備しておく必要があります。
早め早めの対応を心がけましょう。
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最後に
キャリアアップ助成金(正社員化コース)を活用するためには、適切な労務管理ができていることが前提です。必要な要件を満たしている場合は積極的に活用しましょう。
従業員の正社員化は従業員のモチベーションを高め、企業への帰属意識を強化することにつながります。また、労働生産性の高い従業員を積極的に正社員化することは、企業に営業利益の強化にもつながります。
今後、多様な働き方を認めなければ、優秀な従業員は企業に集まってこないと言っても過言ではありません。人手不足や労働トラブルは企業を危機的状況に陥るきっかけとなり得ます。
助成金を積極的に活用して、労働環境の整備と優秀な人材の従業員の確保・維持に努めましょう。