両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)とは?受給額や取り組みを解説
働き方改革施行後、多様な働き方が尊重され始め、仕事一色で定年まで勤めあげるという働き方は限定的な時代となりました。
働き方改革以前であっても長期勤続になればなるほどさまざまなライフイベント(結婚、出産、家族の介護など)に直面する確率は高くなり、避けて通ることは困難です。
今回は社会問題ともなった介護離職を防止するための助成金として両立支援等助成金(介護離職防止コース)に焦点をあて解説します。
尚、助成金は支給要件は度々改正さることが予想され、2021年11月24日時点での制度内容を基に記載しております。
両立支援等助成金を受ける前に
両立支援等助成金を受けるにあたっては、法定三帳簿(労働者名簿、出勤簿、賃金台帳)の備え付けや労働保険料の納付等、会社として必要最低限の義務があります。その義務をクリアしたのちには毎年度改正があるものの助成金を活用できる段階にあがります。
また、助成金の原資は企業が納付する雇用保険料です。有効に活用しましょう。
両立支援等助成金(介護離職防止コース)とは①
令和3年度は同コースに「新型コロナウイルス感染症対応特例」という文言が付された内容が設けられ、その部分も含めて解説します。本コースの具体的な内容は新型コロナウイルス感染症への対応として、介護のための有給の休暇制度を設け、家族の介護をおこなう労働者が休みやすい環境を整備した中小企業事業主を支援するために設けられたコースです。
両立支援等助成金(介護離職防止コース新型コロナウイルス感染症対応特例)を受けるための前提条件
新型コロナウイルス感染症への対策として労働者が利用できる介護のための有給の休暇 制度を設け、当該制度を含めて仕事と介護の両立支援制度の内容を社内に周知することが前提条件です。
尚、本コースは1中小事業主あたり5人まで申請が可能です。また、他の要件として、所定労働日の20日以上取得できる制度であり、法定の介護休業、介護休暇、年次有給休暇とは別の休暇制度であることが条件となります。
また、新型コロナウイルス感染症の影響により対象家族の介護のために仕事を休まざるを得ない労働者が5日以上取得することとし、その対象期間は令和3年4月1日から令和4年3月31日までとなります。
尚、過去に年次有給休暇や欠勤した日を事後的に今回対象となる休暇を取得したこととして事後的に振り替えた場合も対象となります。
その場合は労働者に対して説明をし、同意を得る必要があります。
両立支援等助成金(介護離職防止コース新型コロナウイルス感染症対応特例)の受給額
休暇の取得日数が合計5日以上10日未満の場合、20万円となり、合計10日以上の場合は35万円となります。
両立支援等助成金(介護離職防止コース新型コロナウイルス感染症対応特例)の対象となる労働者
両立支援等助成金(介護離職防止コース新型コロナウイルス感染症対応特例)の対象となる労働者は以下の通りです。
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尚、支給要件を満たした翌日から起算して2か月以内の申請が必要となります。
両立支援等助成金(介護離職防止コース)とは②
家族の介護などが現実化し、その際に介護支援プランを作成し、当該プランに基づき労働者の円滑な介護休業の取得、復帰に取り組んだ中小事業主や介護のための柔軟な就労形態の制度について利用者が生じた中小企業事業主に支給するコースです。
両立支援等助成金(介護離職防止コース)を受けるための前提条件
介護のための有給の休暇制度について就業規則に規定し、かつ、対象労働者にかかる「介護支援プラン」を作成した場合は、支給対象となります。
尚、「介護支援プラン」について、労働者の介護休業の取得及び職場復帰を円滑にするため事業主が介護に直面した労働者との面談を実施する必要があります。
そして、面談結果を記録し、介護の状況や今後の就労形態や働き方についての希望を確認し、その後に作成したプランであることが求められます。
プランの作成の際には、厚生労働省ホームページに掲載している「介護支援プラン策定マニュアル」を参考にし、プラン策定のノウハウを持つ「仕事と家庭の両立支援プランナー」が中小企業に訪問し、プラン策定支援を無料でおこなっていることから、必要に応じて活用したい制度です。
両立支援等助成金(介護離職防止コース)の受給額
介護離職防止支援コースの内容によって異なり、ふたつの内容があります。ひとつは介護休業であり、ふたつめは介護両立支援制度です。
➀介護休業は休業取得時に28.5万円が助成され、職場復帰時にも28.5万円が助成されます。
②介護両立支援制度についても同額の28.5万円となります。
両立支援等助成金(介護離職防止コース)を受けるための必要な取り組み
介護休業(休業取得時)
介護休業の取得および職場復帰について介護支援プランに基づき支援する旨を予め労働者へ周知することが求められます。
二の後、介護支援プランを作成し、対象労働者が同プランに基づき所定労働日に5日以上の介護休業を取得することとなります。
尚、介護休業は法定の介護休業制度のみではなく、企業が任意で設けている法律を上回る制度も対象となります。
介護休業(職場復帰時)
介護休業を取得した対象労働者を原則として元の職場に復帰させ、フォロー面談を実施します。
その上で雇用保険被保険者として3か月以上継続雇用していることが条件となります。
介護両立支援制度
介護支援プランにより支援する旨あらかじめ労働者へ周知することが求められます。
その後、介護支援プランを作成し、所定外労働の制限制度等、いずれか1つ以上の介護両立支援制度を対象労働者がそのプランに基づき合計20日以上(法律を上回る介護休暇制度および介護サービス費用補助制度を除く)利用し、引き続き対象労働者を雇用保険被保険者として継続雇用していることが条件となります。
問い合わせ先
各都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)などが窓口となります。
また、社会保険労務士等の専門家の助言も参考にしながら申請期限を過ぎる前に申請することが重要です。
また、本助成金に関わらず、内容が変更となる場合もあることから、定期的に情報を集め、現行の内容と申請しようとしている内容が合致しているかも精査しておくことも重要です。
最後に
介護休業については育児休業と比べて一般的に馴染みが薄く、実際に活用されているケースも限定的です。
多くの助成金に共通して言えることですが、努力義務や活用が進んでいない制度の促進を図るため、助成金を活用し、活用促進を図るという流れが多くあります。
介護休業もその一つで介護離職は今後も増えることが予想されます。
特に核家族化となった時代背景上、実父母のみ実家に残し、都心で働くというビジネスパーソンも多いことと推察します。
また、新型コロナウイルスの影響も減ってきたとはいえ、ゼロにはなっていません。そのような時であっても助成金を活用することで、苦境を脱することができる場合もあるため、活用できるタイミングが訪れた際には活用していきましょう。