
両立支援等助成金(育児休業等支援コース)とは?助成額や留意点について解説
出生数の減少は喫緊の課題であり、持続的な社会保険制度の運営においても重要な問題です。
生まれてくる子供の数が少ないということは当分の間、少子高齢化社会の解消が難しいことを意味し、継続的な労働力人口の減少は否めません。
そこで、育児休業を取得しやすい基盤が整うことで、出産・子育てへの不安が薄らぎ、ひいては、少子高齢化社会の解消に繋がり得るため、助成金が整備されています。
しかし、助成金について詳しく理解できていない企業も多いです。
今回は育休取得を促進する助成金として、両立支援等助成金(育児休業等支援コース)にフォーカスをあて解説します。
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両立支援等助成金の対象企業は?
両立支援等助成金(育児休業等支援コース)の対象となるのは、雇用保険の適用事業である中小企業事業主であることが前提です。
そして、育児休業法に基づく育児休業制度および育児短時間勤務制度について就業規則などに規定し、周知していることが必要となります。
併せて一般事業主行動計画を策定し、所轄労働局長への届出および公表、労働者への周知ができていることが必要です。
本助成金は女性を雇用する中小企業であれば知っておいて損のない助成金です。尚、本助成金は申請期限が複数にわかれており、申請期限の管理も重要となります。
本助成金のコースは、大きく分けて5つあり、順番に解説します。
育休取得時(助成額1人あたり28.5万円)
育児休業の円滑な取得のための取り組みを行った事業主に対して支給されます。
育休復帰プランを作成し、予め労働者の円滑な育児休業の取得および職場復帰を支援する方針を規定し、労働者に周知していることが要件です。
そして、上司と育休取得予定の労働者が1回以上の面談を実施し、記録(産前休業に入るまでの働き方、業務引継ぎスケジュール、育児休業から復帰したあとの働き方など)を残し、その面談結果を踏まえて育休復帰プランを作成することが必要です。
そのあと、当該プランに基づき、対象労働者の育休開始日までに業務の引継ぎを行っていることです。
また、就業規則などに基づき3か月以上の育児休業の取得が要件であり、育児休業開始日時点において、雇用保険被保険者であることも求められます。
職場復帰時(助成額1人あたり28.5万円)
次に、職場復帰時について解説します。
育休復帰支援プランによる措置を実施し、対象労働者が職場復帰するまでに育児休業中の職務および業務内容に関する情報などを資料として提供しており、育児休業終了前に上司と対象労働者で面談を実施し、結果の記録を残していることが要件です。
また、上記面談結果を考慮し、原則として原職または、原職相当職に復帰させていることが要件です。
そのあと、職場復帰後の継続雇用として支給申請日まで雇用保険の被保険者として6か月以上雇用していることが求められます。
重要な点として、育休取得時の助成金を受給していない場合、職場復帰時の助成金を受給することはできません。
また、対象労働者が産前休業に入る前にプラン、面談シート、育児介護休業規程、一般事業主行動計画の作成・届出を完了させておくことが必要です。
育児休業復帰支援プランの作成にあたっては育児休業規程に予め、円滑な育児休業の取得および復帰のために、育児休業復帰支援プランにより支援する旨を明文化し、産後休業開始日の前日までに周知しておかなければなりません。
もちろん、労働者を10人以上雇用している事業場の場合には所轄労働基準監督署へ当該育児休業規程を届け出る必要があります。
また、一般事業主行動計画の策定における留意点として、届け出先は都道府県労働局の中にある、雇用環境均等部(室)となり、併せて一般事業主行動計画を両立支援ひろばなどで公開する必要があります(併せて労働者へも周知が必要)。
代替要員確保時(1人あたり47.5万円)
育児休業取得者の代替要員の確保に取り組む時に支給される助成金で、以下の要件があります。
- 育児休業終了時に育児休業取得者を原職等に復帰させる旨の規定を就業規則に規定していること
- 代替要員は実際に育児休業業取得者の職務を代替する者であること
- 育児休業取得者と同一の事業所および部署で勤務していること
- 育児休業取得者と所定労働時間が概ね同等であること
- 新たに雇い入れられた者または新たに派遣された者であること
- 事業主が代替要員を確保した時期が育児休業取得者(またはその配偶者)の妊娠などの事実を知り得たに日以降であることなどの要件があり、実際に対象労働者を原職等に復帰させ、その後引き続き雇用保険の被保険者として6か月以上雇用すること
職場復帰後支援(1人あたり28.5万円)
就業規則などに小学校就学の始期に達するまでの子にかかる保育サービスの費用の一部を補助する制度を整備していること、1か月以上の育児休業取得者に育児休業から現職等への復帰後6か月以内に費用補助制度を利用させた実績があり、当該労働者1人につき30,000円以上補助したこと、現職復帰後、雇用保険の被保険者として引き続き6か月以上雇用していることが要件となります。
尚、現職等への復帰とは育休取得前後を通じて同一の事業所に勤務していること、育休取得前後を通じて職制上地位が下がっていないこと、労働時間が少なくなっている場合は就業規則などに定めのある短時間務制度に基づく適正な措置の利用であることなどの要件を満たしていれば「原職等」の中に含まれるという解釈です。
反対に労働者が希望した場合であっても、育休前後を通じて、月給制を時給制に変更した場合や、正社員から短時間労働者として雇用契約を再締結している場合などは、「現職等」とはならないため、イレギュラーなケースは予め、専門家や労働局へ確認しておくことが有用です。
※育休復帰後6か月引き続き勤務の要件については、実際に出勤した日数が5割にも満たない場合、支給対象とならないため、注意が必要です。
新型コロナウイルス感染症対応特例(1人あたり5万円・1事業主につきで10人まで)
新型コロナウイルスによる影響を受け、小学校などの臨時休業などにより、子供の世話が必要とる場合、労働者が特別な休暇を取得できる取り組みを行い、実際に特別な休暇を取得した労働者が出た場合に助成金の支給対象となります。
申請における留意点
育休取得時については育児休業開始日から起算して3か月を経過する日の翌日から2か月以内です。また、職場復帰・代替要員確保時・職場復帰後支援については、育児休業終了日の翌日から起算して6か月経過する日の翌日から2か月以内となり、申請期限がそれぞれで異なるため、期限の管理が極めて重要です。
特に職場復帰は取得時と比べて流動的になるとなることが多く、課内の連携が必要です。
育児休業は最低でも3か月以上の取得が助成金の要件ですが、保育園に入園できなかったことに起因して育休取得者から育児休業の延長申請があった際は再度スケジュール管理が必要となるため注意が必要です。
最後に
育休取得時の申請を失念した場合には、職場復帰時の申請ができなくなる点は必ずおさえておきましょう。
コースによっては本助成金を活用しようと思っても、申請そのものができない場合があるります。「育休取得時」については、産前休業に入る前に、上司と打ち合わせの上、育休復帰支援プラン、面談シートの作成が必要です。
以上のように、複数の要件があり、申請期限も複数存在するため、スケジュール管理には細心の注意を払う必要があります。