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「賃上げ⽀援施策(2025年度)」を活⽤した⼈件費対策の⼯夫とは?

2025年8月に地域別最低賃金の目安が発表され、全国平均は1,118円、過去最大の引き上げ幅です。政府は、人件費の上昇に悩む中小企業を対象とする支援策を取りまとめた『賃上げ支援助成金パッケージ』を発表し、助成金の活用などを紹介しています。

本記事では、2025年度における賃上げ支援施策から、中小企業の賃上げで活用を検討したい助成金5選、賃上げでよくあるトラブルとその対策を解説します。

2025年の地域別最低賃金|全国平均の目安1,118円、引き上げ幅6.0%は過去最大

全国47都道府県で新しい最低賃金が答申され、加重平均は1,121円となりました。新しい最低賃金は2025年10月1日から2026年3月31日までの間に順次発効予定です。前年度から66円(加重平均)の引き上げとなり、引き上げ幅は過去最大です。

【参考】令和7年度地域別最低賃金の全国一覧|厚生労働省

“防衛的賃上げ” が約6割|「賃上げできる企業」「賃上げできない企業」の2極化が進む予測

”防衛的賃上げ“とは、業績の改善が見られないが賃上げすることです。

2025年6月4日、日本商工会議所が発表した調査結果によると、賃上げした企業のうち60.1%が”防衛的賃上げ“であると回答しています。また賃上げ率を5%以上とした企業の割合と賃上げできていない企業の割合が同時に増加しています。

企業体力などにより、“賃上げの2極化”が進んでいるとみられます。

賃上げ率(加重平均)レンジ集計 【全体、小規模企業】

 【出典】「中小企業の賃金改定に関する調査」集計結果(2025年6月4日)|日本商工会議所

賃上げができない理由|「売上の低迷」「資金面で余力が乏しい」「コスト負担増」

上記の日本商工会議所の調査結果によると、賃上げを見送った主な理由は次のとおりです。

  • 「売上の低迷」58.2%
  • 「資金面で余力が乏しい」43.8%
  • 「原材料費などのコスト負担増」38.0%

賃上げは、採用や従業員定着に影響があり、企業は『賃上げ原資の確保』が重要となります。

【助成金】賃上げ⽀援施策(2025年度)で活用できる5つの助成金

『賃上げしたいが原資(利益)に不安がある』と考える企業は多いでしょう。そこで、賃上げ原資の確保として『助成金の活用』がおすすめです。

中小企業が活用を検討したい、おすすめの助成金は次の5つです。

業務改善助成金|最低賃金引き上げとともにおこなう設備投資が対象

業務改善助成金とは、生産性向上が見込まれる設備投資と職場内最低賃金の引上げをおこなう企業が対象となります。

助成対象経費は、機械設備の取得、コンサルティングの導入、人材育成・教育訓練費用などの一部です。

助成上限額は最低賃金を引き上げる事業場の従業員数、引き上げ幅により異なります。

賃上げ区分

助成上限額

30円コース

30万円から130万円

45円コース

45万円から180万円

60円コース

60万円から300万円

90円コース

90万円から600万円

【参考】業務改善助成金|厚生労働省

キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)|非正規従業員の賃上げ3%以上が対象

キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)とは、パートタイムなど非正規従業員の基本給を3%以上増額した企業が助成対象となります。

助成額は賃上げ幅により異なり、従業員1名あたり最大7万円が助成されます。

賃上げ率

従業員1名あたり助成額(中小企業の場合)

3%以上4%未満

4万円

4%以上5%未満

5万円

5%以上6%未満

6.5万円

6%以上

7万円

【参考】キャリアアップ助成金のご案内(2025年版)|厚生労働省

働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)|労働時間削減などとともにおこなう設備投資が対象

働き方改革推進支援助成金とは、労働能率の向上が見込まれる設備投資と労働時間削減や年休取得の推進などに取り組む企業が対象となります。

助成対象経費は、機械設備の取得、コンサルティング導入などの一部が助成されます。

企業が取り組む内容に応じて3つのコースがあり、最大25万円から550万円が支給されます。

コース区分

助成額

業種別課題対応コース

25万円から550万円

労働時間短縮・年休促進支援コース

25万円から200万円

勤務間インターバル導入コース

50万円から120万円

賃上げ加算額

+6万円から+360万円

【参考】働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)|厚生労働省

人材開発支援助成金(人材育成支援コース)|従業員のスキルアップ費用が対象

人材開発支援助成金とは、従業員に専門的な知識やスキルを習得させる訓練経費や訓練期間中の賃金の一部などが対象となります。

助成額は、訓練経費については最大100%、訓練時間中の給与については1名1時間あたり最大1,000円、OJT費用は1名1コースあたり最大25万円が助成されます。

人材開発支援助成金「人材育成支援コース」の助成率・助成額

【出典】人材開発支援助成金(人材育成支援コース)リーフレット(2025年4月1日版)|厚生労働省

人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)|賃金規定や業務負担軽減機器などが対象

人材確保等支援助成金とは、雇用管理制度の導入と従業員の負荷を軽減する設備投資などに対して支給される助成金です。助成対象経費は、機械設備の取得、コンサルティングの導入費用などの一部です。

助成額は導入する施策などにより異なり、賃上げをおこなう企業は助成額が+5万円から37.5万円加算されます。(下図の助成額・上限額の括弧内は賃上げ時の助成額)

人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)の受給額【出典】人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)|厚生労働省

【参考】2025年度賃金引き上げ支援施策パッケージ|厚生労働省熊本労働局

【税制優遇】賃上げ⽀援施策(2025年度)で活用できる『賃上げ促進税制』とは?

賃上げ促進税制とは、賃上げをおこなった中小企業を対象に、賃上げ額の最大45%の税額控除を受けられる制度です。2027年3月31日までに開始する決算期が対象となります。

賃上げ促進税制の要件|控除率は全4段階

中小企業の場合、賃上げ幅と『くるみん』『えるぼし』認定の有無によって、次の4種類の税額控除率となります。なお控除上限額は法人税額または所得税額の20%となります。

給与等支給額など

税額控除率

税額控除率の上乗せ

前年度比+1.5%

15%

-

前年度比+2.5%

30%

-

教育訓練費+5%

+10%

『くるみん』以上または『えるぼし』の2段階目以上

+5%

賃上げ促進税制のメリット①|最大45%の税額控除

賃上げ促進税制のメリットは、最大45%の税額控除です。企業が負担する法人税額などが減額されます。

控除上限額が法人税額または所得税額の20%となっていますが、次で解説するとおり次年度以降に繰越しできます。

賃上げ促進税制のメリット②|税額控除の5年間繰越し

賃上げを実施した年度において控除しきれない額が生じた場合、5年間繰越しすることができます。

繰越控除措置のイメージ【出典】賃上げに取り組む経営者の皆様へ|中小企業庁

賃上げに関するよくある失敗・トラブルとその対策とは?

採用をすすめるため、初任給の引き上げなどをおこなう企業は多いですが、導入方法や内容によっては、社内の活気が失われる可能性があります。これは従業員の納得感が低いためです。

ここでは、賃上げにおいてよくある失敗・トラブル事例とその対策を紹介します。

初任給のみを上げたら離職が相次いだ|貢献度に応じた評価制度の導入

【事例】

初任給のみを引き上げたところ、入社年数が浅い若手従業員の給与よりも新人の初任給が高額となる“給与の逆転現象”が発生し、若手従業員のモチベーションが低下し、離職が増えた。

【対策】

入社3年目までの昇給スピードを速める賃金体制の導入、あるいは昇給対象を“貢献度の高い従業員”に限定する評価制度を導入する。

賞与(ボーナス)の給与化で利益が減った|経営計画の立案と成果報酬制度の導入

【事例】

ボーナスを給与化した(賞与を月給に振り分けた)ところ、売上減少と重なり、企業の利益を圧迫した。

【対策】

インセンティブ制度など従業員の成果と自社の業績に連動した給与体系に改める。

賃上げ手当を新設したら不満が出た|スキルアップ手当などの制度を導入

【事例】

基本給を引き上げる代わりに賃上げ手当を新設したところ、従業員から“手当の種類が多くわかりにくい、基本給を上げないのが不安”と不満が出た。

【対策】

実績やスキルに応じた給与体系や「スキルアップ手当」など従業員の成長を支援する手当を導入する。

賃上げ⽀援施策(2025年度)に関するよくある質問(FAQ)

2025年度における賃上げ支援策に関して、よくある質問とその回答は次のとおりです。

Q1:雇用者給与等支給額とは?何が含まれる?

A.中小企業賃上げ促進税制の場合における雇用者給与等支給額とは、給料・賞与・通勤⼿当などの合計額から、助成金や役務提供対価を控除した額です。

注意点は、支給額に退職⾦は含まれない、控除する助成金に雇用安定助成金は含まれない(控除しない)などです。

【参考】中小企業向け賃上げ促進税制 よくあるご質問 Q&A(2025年6月30日)|中小企業庁

Q2:賃上げ支援施策をまとめて探す方法は?一覧表はある?

A.厚生労働省が支援策の一覧を発表しています。

【参考】最低賃金・賃金引上げに向けた中小企業・小規模事業者への支援施策(2025年6月)|厚生労働省

Q3: 都道府県の独自の賃上げ支援策がある?

A.はい、都道府県が独自の補助制度を設けていることがあります。厚生労働省が各都道府県の賃上げ支援施策を取りまとめて発表しています。

【参考】各都道府県の賃金引上げ支援施策について(2025年7月1日更新)|厚生労働省

Q4: 2025年の地域別最低賃金は上がる?

A.はい、上がります。厚生労働省の中央最低賃金審議会が答申を発表し、全国平均は1,118円となりました。前年から+63円の引き上げとなり、引き上げ幅としては過去最大です。

Q5: 賃上げなどに使える補助金・助成金の探しかたは?

A.自社で使える可能性がある補助金や助成金を探す方法として、①エフアンドエムなど企業が提供する助成金を探すツールを使う、②中小企業基盤整備機構のホームページ『J-Net21』の支援情報で検索する、③詳しい専門家へ相談するなどがあげられます。

【参考】J-Net21 支援情報ヘッドライン|中小企業基盤整備機構

賃上げ支援策の検索、人材採用サポート、人事給与制度の見直しなどはF&M Clubがサポート

賃上げの原資を確保するためには助成金の受給など公的支援策の活用がおすすめです。

しかし助成金の申請は複雑な要件の確認、多くの書類作成、設備導入計画との整合性確認など、忙しい経営者にとって負担となります。

「自社の業績見通しを立て、賃上げ可能な金額を把握したい」

「自社に最適な賃金制度を検討したいがわからない」

「自社の取り組みが対象となる補助金・助成金を探したいが時間がない」

これらの悩みごとがある中小企業経営者様は、F&M Clubがサポートします。

F&M Clubでは、中小企業の公的制度活用の実務を、次のようなサービスでトータルにサポートしています。

  • 補助金・助成金の活用を、制度選定から基本的な実務支援まで一括対応。
  • 制度の選び方から加点対策まで、補助金・助成金の受給に向けた実務を支援サポート(※オプション)
  • 複雑な制度の活用を、実績ある専門チームがしっかりサポート。(※オプション対応あり)

F&M Clubは累計約48,000社を支援してきた実績があり、人材採用・労務管理・資金繰り改善など、30種類以上のノウハウをご提供しており、月額3万円(税抜)でご利用いただけます。(エフアンドエム社会保険労務士法人が提供する就業規則などの作成から変更管理まですべておまかせの『まかせて規程管理』サービス利用料金2,000円(税抜)が含まれています。)

まとめ

中小企業は労働力不足・若手の賃上げ・高齢従業員の定年後の処遇など、複雑な課題に直面しています。さらに2025年は最低賃金が大幅に引き上げられる予定です。

今後の中小企業は、単なる給与の引き上げではなく、自社の実情にあわせた賃金体系を設計し導入することで、長期的に持続できる賃金制度とすることが必要となります。

中小企業は生産性の向上など経営改善を進めつつ、助成金の活用など”賃上げ競争力“を高めることが求められています。

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