
新事業進出補助金の2025年第2回公募開始!補助率・補助額やスケジュールを解説
経済産業省が2025年に創設した中小企業新事業進出補助金の第2回公募要領が発表されました。
新事業進出補助金とは、中小企業が新規事業へ進出し成長するための設備投資を支援する補助金です。新事業進出補助金の補助率は2分の1、補助上限額は9,000万円、補助対象経費として機械装置のほか建物も補助対象となります。
本記事では、新事業進出補助金第2回公募の概要をわかりやすく解説します。
目次[非表示]
- 1.新事業進出補助金とは
- 1.1.新事業進出補助金と事業再構築補助金との違い|新事業進出補助金は大型投資・財務健全企業により向いている
- 1.2.基本要件①新事業進出要件|新しい製品・サービスや顧客、売上高10%以上
- 1.3.基本要件②付加価値額要件|付加価値額の年平均成長率+4.0%以上
- 1.4.基本要件③賃上げ要件|給与支給総額の年平均成長率+2.5%以上
- 1.5.基本要件④事業場内最賃水準要件|地域別最低賃金+30円以上
- 1.6.基本要件⑤ワークライフバランス要件|一般事業主行動計画の公表
- 1.7.追加要件⑥(融資を受ける予定の場合)金融機関要件|確認書の提出
- 1.8.追加要件⑦(大幅賃上げ特例による補助上限引き上げの場合)賃上げ特例要件【改正あり】
- 2.新事業進出補助金の補助率、補助上限額
- 2.1.新事業進出補助金の補助率|補助率2分の1で特例なし
- 2.2.新事業進出補助金の補助上限額|2,500万円から9,000万円(従業員数・特例により異なる)
- 2.3.補助上限額引き上げとなる「大幅賃上げ特例」とは【第2回公募より改正】
- 3.新事業進出補助金の補助対象経費
- 4.新事業進出補助金の第2回公募 はいつから?手続きの流れは?
- 5.新事業進出補助金第2回公募における主な変更・改正点
- 5.1.賃上げ特例対象期間の変更|事業実施期間内から「補助事業終了後3年間から5年間」へ変更
- 5.2.米国関税(トランプ関税)の影響|審査における考慮
- 5.3.減点項目の追加|『評価が低くなる事例』の例示
- 6.新事業進出補助金の想定採択率は15%?採択されるための5つのポイント
- 6.1.成長性、新規性(革新性)のアピール|既存の強みを活かし新製品・新顧客へ取り組む
- 6.2.賃上げの見通し|補助事業実施までの賃上げを考慮する
- 6.3.外部専門家の活用|認定経営革新等支援機関などの活用がおすすめ
- 6.4.加点措置の活用|ほかの補助金で活用できる認定や登録をフル活用する
- 6.5.スケジュールの管理|申請から事業化状況報告まで期日を管理する
- 7.新事業進出補助金に関するよくある質問(FAQ)
- 7.1.Q1:新事業進出補助金は個人事業主も申請できますか?
- 7.2.Q2:「新規性」とは何ですか?
- 7.3.Q3:給与支給総額とは何ですか?どのような経費が含まれますか?
- 7.4.Q4:従業員がいない(従業員数0名)の企業は申請できますか?
- 7.5.Q5:従業員数にパートタイムは含まれますか?
- 7.6.Q6:事業計画期間が3年間の場合、事業化状況報告は3年間ですか?それとも5年間必要ですか?
- 8.補助金申請の検討はF&M Clubにおまかせ
新事業進出補助金とは
新事業進出補助金とは、中小企業が新規事業へ進出するときの建物・機械装置など設備投資費用の一部が補助される制度です。第2回公募の申請期間は2025年11月10日から12月19日までです。
新事業進出補助金の補助率は1/2、補助上限額は9,000万円。建物費、機械装置費、広告宣伝費などが対象です。
新事業進出補助金の主な要件は、①付加価値額について年平均成長率+4.0%以上の増加、②給与支給総額について年平均成長率+2.5%以上の引き上げなどです。
新事業進出補助金と事業再構築補助金との違い|新事業進出補助金は大型投資・財務健全企業により向いている
新事業進出補助金は事業再構築補助金の後継といわれることがありますが、次のとおり内容がやや異なります。
事業再構築補助金の目的は、コロナ禍により影響を受ける事業からの転換を促すことであり、一方、新事業進出補助金の目的は、今後の社会情勢や事業環境の変化に対応した成長を支援することです。
また新事業進出補助金は、事業再構築補助金よりも補助率が低く、補助上限額が増えています。つまり、より大型の投資や自己資金を確保できる企業に向いているといえます。
【新事業進出補助金と事業再構築補助金との違い】
新事業進出補助金 | 事業再構築補助金 | |
対象となる取り組み | 新分野への進出や高付加価値化など新規事業への挑戦 | ポストコロナに対応した新市場進出や国内市場の縮小からの事業転換など |
補助率 | 2分の1 | 2分の1から3分の2 |
補助上限額 | 2,500万円から9,000万円 | 1,500万円から7,000万円 |
新事業進出補助金の補助対象となる要件|必須の基本要件5つと特定の場合における要件2つ
新事業進出補助金では、次の5つの基本要件と、特例を適用する場合などに求められる2つの要件を満たす事業計画書を提出し、審査通過、採択される必要があります。
① 新事業進出要件
② 付加価値額要件
③ 賃上げ要件
④ 事業場内最賃水準要件
⑤ ワークライフバランス要件
⑥ (事業実施のために融資を受ける場合)金融機関要件
⑦ (賃上げ特例による補助上限引き上げの特例を適用する場合)賃上げ特例要件
基本要件①新事業進出要件|新しい製品・サービスや顧客、売上高10%以上
「新事業進出指針」に掲げられている次の3つのすべてに該当することが必要です。単に自社にとっての新規性だけでなく、一般的にも普及度が低いことが求められます。
【新事業進出の基本要件】
① 申請する企業にとって新しい製品やサービスである
② 既存の事業と顧客層が異なる
③ 事業計画期間の最終年における新事業の売上高または付加価値額が、応募申請時の総売上高の10%または総付加価値額の15%を占める
【参考】新事業進出指針の手引き1.1版|中小企業基盤整備機構
【参考】新事業進出指針|中小企業基盤整備機構
基本要件②付加価値額要件|付加価値額の年平均成長率+4.0%以上
補助事業終了後3年間から5年間で付加価値額(または従業員1名あたり付加価値額)が年平均成長率+4.0%以上増加することが必要です。
基本要件③賃上げ要件|給与支給総額の年平均成長率+2.5%以上
補助事業終了後3年間から5年間、次の①と②のいずれかの賃上げをおこなうことが必要です。
【賃上げの基本要件】
- 従業員1名あたり給与支給総額の年平均成長率が、事業を実施する事業所がある都道府県における地域別最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上
- 給与支給総額が年平均成長率+2.5%以上増加
都道府県における地域別最低賃金の直近5年間の年平均成長率は下表のとおりです。
本要件が未達の場合、補助金の一部について返還を求められる可能性があります。

【引用】中小企業新事業進出補助金公募要領(第2回)1.1版|中小企業基盤整備機構
基本要件④事業場内最賃水準要件|地域別最低賃金+30円以上
補助事業終了後3年間から5年間、補助対象事業を実施する事業所の最低賃金が、毎年、地域別最低賃金より+30 円以上高い水準となることが必要です。
本要件が未達の場合、補助金の一部について返還を求められる可能性があります。
基本要件⑤ワークライフバランス要件|一般事業主行動計画の公表
公募申請時までに次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を作成し、厚生労働省の専用サイト『両立支援のひろば』において公表していることが必要です。
本要件は、従業員数100名以下の企業においても必須です。(従業員数101名以上の企業は作成が法的に義務づけられています)
【参考】両立支援のひろば|厚生労働省
追加要件⑥(融資を受ける予定の場合)金融機関要件|確認書の提出
補助事業を実施するために銀行など金融機関からの融資を受ける予定の場合、申請時に「金融機関による確認書」を添付する必要があります。
追加要件⑦(大幅賃上げ特例による補助上限引き上げの場合)賃上げ特例要件【改正あり】
大幅賃上げ特例の要件に該当する場合、補助上限額が引き上げされます。詳細については後述しています。
新事業進出補助金の補助率、補助上限額

新事業進出補助金第2回公募の補助率や補助上限額をまとめると次のとおりです。
なお下記の情報は経済産業省が発表した概要チラシに基づいており、今後、公募要領の発表までに変更される可能性があります。
新事業進出補助金の補助率|補助率2分の1で特例なし
新事業進出補助金の補助率は2分の1です。
補助率を引き上げる特例は設けられていません。
新事業進出補助金の補助上限額|2,500万円から9,000万円(従業員数・特例により異なる)
新事業進出補助金の補助上限額は2,500万円から9,000万円であり、従業員数区分によって異なります。
従業員数区分 | 補助上限額 |
従業員数20名以下 | 2,500万円 |
従業員数21名から50名以下 | 4,000万円 |
従業員数51名から100名以下 | 5,500万円 |
従業員数101名以上 | 7,000万円 |
補助上限額引き上げとなる「大幅賃上げ特例」とは【第2回公募より改正】
大幅賃上げ特例の要件に該当する場合、上記のとおり補助上限額が500万円から2,000万円引き上げられます。
大幅賃上げ特例の要件は補助事業終了後3年間から5年間(第1回公募時は事業実施期間内)で次の①と②の両方を満たすことです。
① 事業場内最低賃金について年額50円以上の水準での引き上げ
② 給与支給総額の年平均+6%以上増加
この2つの条件のいずれかでも未達の場合、補助上限額引き上げ分の補助金の返還を求められる可能性があります。
【参考】中小企業新事業進出補助金公募要領(第2回)1.1版|中小企業基盤整備機構
新事業進出補助金の補助対象経費
新事業進出補助金の補助対象経費は、建物費や機械装置費などです。構築物費は建物費に付随または隣接し、建物と一体的に使用されることが条件です。
新事業進出補助金は建物費または機械装置・システム構築費のいずれかが必須となっています。
【新事業進出補助金の対象となる経費】
(ハード費用)
建物費、構築物費、機械装置・システム構築費
(ソフト費用など)
技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費
【参考】中小企業新事業進出補助金公募要領(第2回)1.1版|中小企業基盤整備機構
新事業進出補助金の第2回公募 はいつから?手続きの流れは?
新事業進出補助金第2回公募の主なスケジュールは次のとおりです。
公募開始 | 2025年9月12日 |
公募申請受付開始 | 2025年11月10日 |
公募締め切り | 2025年12月19日 |
採択発表 | 2026年3月予定 |
交付申請 | 採択発表日から2か月以内 |
事業実施期間 | 交付決定日から14か月以内 |
事業化状況報告 | 補助事業完了後5年間 |
新事業進出補助金第2回の公募締め切りは2025年12月19日
新事業進出補助金の第2回公募締め切りは2025年12月19日(金曜日)18時です。
書面による申請は受け付けられず、電子申請による受付のみとなります。
新事業進出補助金の手続きの流れ・ステップ
新事業進出補助金の主な手続きの流れは次のとおりです。
新事業進出補助金において事前着手は禁止されています。事業実施期間(交付決定日から14か月以内)に対象設備の発注から納品までが完了するようスケジュールを管理しましょう。
【新事業進出補助金の応募・申請から受給までの流れ・ステップ】
- 応募申請
- 採択発表
- 交付申請
- 交付決定
- 補助事業の実施
- 実績報告
- 精算払請求
- 補助金交付
- 事業化状況報告
【引用】新事業進出補助金応募申請ガイド 第1.5版(2025年10月24日)|中小企業基盤整備機構
新事業進出補助金第2回公募における主な変更・改正点
2025年9月12日に中小企業庁から発表された第2回公募要領について、主な変更・改正点は次のとおりです。
賃上げ特例対象期間の変更|事業実施期間内から「補助事業終了後3年間から5年間」へ変更
新事業進出補助金において補助上限額が引き上げとなる「賃上げ特例」をおこなう期間について、第1回公募時の『補助事業実施期間内』が改正され、第2回公募要領から『補助事業終了後3年間から5年間』へ変更されました。
【参考】中小企業新事業進出補助金公募要領(第1回)1.3版|中小企業基盤整備機構
【参考】中小企業新事業進出補助金公募要領(第2回)1.1版|中小企業基盤整備機構
米国関税(トランプ関税)の影響|審査における考慮
米国関税措置の影響を受けているまたは受けることが見込まれる場合、その影響を事業計画書へ記載することが明記されました。
政府が発表した『米国関税措置を受けた緊急対応パッケージ』において、米国関税措置の影響を受けている企業は本補助金とものづくり補助金の審査において優先採択(審査において考慮)とされています。
減点項目の追加|『評価が低くなる事例』の例示
減点措置の項目として、新規性の審査項目における『評価が低くなる事例』3つが追加されました。
- 容易に製造が可能な新製品を製造する場合など
- 既存の製品に容易な改変を加えた新製品を製造する場合など
- 既存の製品を単に組み合わせて新製品を製造する場合など
【参考】新事業進出指針の手引き1.1版|中小企業基盤整備機構
新事業進出補助金の想定採択率は15%?採択されるための5つのポイント
新事業進出補助金は「補助上限額が9,000万円と高額」「建物費が対象」など、魅力の多い補助金です。自社の投資計画において、新事業進出補助金の申請を考えている企業は、事前に準備をしておきましょう。
新事業進出補助金の採択率については、事務局発表資料ではおおむね15%前後とされています。また、新事業進出補助金で採択されるために注意しておきたいポイントは次の5つです。
成長性、新規性(革新性)のアピール|既存の強みを活かし新製品・新顧客へ取り組む
新たに取り組む分野は成長市場であること、自社が競争に打ち勝ってゆく具体策などを計画書にわかりやすく説明しましょう。またDXにおける取り組みや賃上げの達成可能性、地域経済への貢献なども重視されます。
賃上げの見通し|補助事業実施までの賃上げを考慮する
賃上げ計画において注意しておきたいポイントは、賃上げ幅を計算するスタートの時点が補助事業実施期間の終了時であることです。
今後、補助事業を実施するまでの賃上げに加えて、補助事業実施後も持続的に賃上げできる計画となるように事業計画を検討しておきましょう。
外部専門家の活用|認定経営革新等支援機関などの活用がおすすめ
新事業進出補助金は認定経営革新等支援機関などの関与は必須ではありませんが、関与してもらうことが望ましいでしょう。
外部の専門家から客観的なアドバイスを受けることで計画書をブラッシュアップでき、また審査員から見ても、第三者からの意見が含まれた計画として評価される可能性が高まります。
加点措置の活用|ほかの補助金で活用できる認定や登録をフル活用する
新事業進出補助金の加点措置は全部で9つあります。申請までに認定取得や登録に取り組んでおきましょう。
なかでも「くるみん認定」「えるぼし認定」「健康経営優良法人2025認定」は、人材採用やほかの補助金申請においても有利となります。また「成長加速マッチングサービス」は登録のみで加点対象となる、多くの専門家とコンタクトできるなどのメリットがあります。
【参考】成長加速マッチングサービス|中小企業庁
スケジュールの管理|申請から事業化状況報告まで期日を管理する
新事業進出補助金はスケジュール管理が大切です。例として、申請時に必須である一般事業主行動計画の公開は1週間ほどかかるとされています。
また補助金の交付後においても、毎年、事業化状況報告が必要です。事業化状況報告は業績資料や賃金台帳など添付資料が複雑であり、忙しい経営者にとっては負担となります。
外部専門家のなかには、申請サポートに加え事業化状況報告など採択後の事務についてもサポートするサービスを提供している場合もあるため、活用を検討しましょう。
新事業進出補助金に関するよくある質問(FAQ)
新事業進出補助金についてのよくある質問とその回答は次の通りです。
Q1:新事業進出補助金は個人事業主も申請できますか?
A:はい、新事業進出補助金は個人事業主も申請できます。
Q2:「新規性」とは何ですか?
A:新事業進出補助金における新規性とは、「製品などの新規性」「市場の新規性」「新事業売上高」の3つです。大きくまとめると、「自社で製造したことがない製品」を、「従来と異なる顧客」へ販売し、「公募申請時の総売上高の10%以上となる」ことが求められます。詳しくは『新事業進出指針の手引き』に記載されています。
Q3:給与支給総額とは何ですか?どのような経費が含まれますか?
A:給与支給総額とは、従業員へ支払った給与や賃金、諸手当のことです。役員報酬、法定福利費、福利厚生費、退職金などは含まれません。
Q4:従業員がいない(従業員数0名)の企業は申請できますか?
A:いいえ、従業員数0名の企業は新事業進出補助金の対象外となります。
Q5:従業員数にパートタイムは含まれますか?
A:従業員数は、解雇予告が必要となる「常時使用する従業員」で計算します。短時間勤務のパートタイム従業員は、その就業時間を正社員の就業時間に換算した人数となります。
Q6:事業計画期間が3年間の場合、事業化状況報告は3年間ですか?それとも5年間必要ですか?
A: 事業計画期間が5年間未満であっても、事業化状況報告は5年間必要です。
【参考】新事業進出指針の手引き1.1版|中小企業基盤整備機構
補助金申請の検討はF&M Clubにおまかせ
新事業進出補助金は、新規事業へ進出することを通じて付加価値向上と賃上げに取り組む企業が対象となる補助金制度です。補助上限額が9,000万円と高額であるため、前向きな投資計画を検討している経営者様は、積極的に申請を検討しましょう。
「新事業進出補助金を活用して自社を成長させたい」
「従業員の採用と定着率の向上を図りたい」
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