ビジネスモデル俯瞰図とは?書き方・テンプレートを紹介
自社事業の課題を明確化し、改善案を実行するためにはビジネスモデル俯瞰図の作成が有効です。しかし、ビジネスモデル俯瞰図が具体的にどのようなものか、詳しく知らない方も多いでしょう。
ビジネスモデル俯瞰図は、商品・サービスが生み出されて顧客に届くまでのビジネス全体の流れを図式化したものです。自社業務の見直し・課題解決を効果的におこなえるほか、取引先・金融機関へ事業を説明する際も有効活用できます。
今回は、ビジネスモデル俯瞰図について書き方やテンプレートを中心に紹介します。本記事を読めば、ビジネスモデル俯瞰図の概要を理解してスムーズに作成が可能です。ビジネスモデル俯瞰図を活用し、自社の課題を改善して経営の安定化につなげましょう。
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そもそもビジネスモデルとは?
ビジネスモデルとは、企業が利益を生み出すための「仕組み」や「収益構造」のことです。簡単にいえば、「ビジネスでどうやってお金を稼ぐのか」を示した設計図です。
たとえば、コンビニエンスストアの場合、24時間営業で日用品を販売して立地の良さと利便性で集客をおこないます。さらに、フランチャイズ方式で店舗を増やして収益を上げていくことも可能です。
また、Amazonの場合は豊富な商品をオンラインで販売し、会員からの月額料金や出品者からの手数料で収益を確保する仕組みです。物流網の整備で迅速な配送を実現し、顧客満足度を高めています。上記のように、「誰に」「なにを」「どのように」提供し、「どこで」利益を得るのかをビジネスモデルで示しています。
ビジネスモデル俯瞰図とは?
ビジネスモデル俯瞰図とは、企業の事業活動全体をプロセスごとに図式化したものです。売上や利益がどのように生まれるのかを、ビジネスの商流を視覚的に一目で理解できるように整理した図解となります。
主要な構成要素として顧客・仕入れ先・業務委託先などが含まれ、各要素がビジネスの商流でどのように関連し合っているかを図式化して示します。たとえば、中小企業庁ではビジネスモデル俯瞰図の例を以下のように公開しています。
上記では、飲食店のビジネスモデルを例に俯瞰図を作成しています。飲食店は、食材・飲料を仕入れてから自店舗で料理として商品を顧客に提供し、収益を上げるビジネスモデルです。
上記のようにビジネスモデル俯瞰図で可視化すれば、ビジネスの流れを瞬時に把握できます。ビジネスモデル俯瞰図を作成すると、ビジネスの強みや弱み、改善すべき点が明確になり、経営戦略の立案や見直しに役立てられる点がメリットです。
ビジネスモデル俯瞰図を作成するメリット
ビジネスモデル俯瞰図を作成すれば、自社の事業構造を視覚的に把握できるだけでなく、以下のようなメリットが得られます。
- 取引先・金融機関への説明がスムーズにできる
- 自社業務の見直し・課題解決を効果的におこなえる
ビジネスモデル俯瞰図を作成し、自社のビジネスを効率的に運営しましょう。
取引先・金融機関への説明がスムーズにできる
ビジネスモデル俯瞰図があれば、複雑な事業内容でも第三者に分かりやすく説明できるのがメリットです。特に、新規取引先との商談や金融機関との融資交渉の場面で威力を発揮します。
たとえば、取引先との商談では「自社がどのような価値を提供し、どう取引関係を構築できるのか」を図で指し示しながら具体的な説明が可能です。また、取引先の位置づけや役割も明確に示せるため、WIN-WINの関係性を築きやすくなります。
金融機関との交渉においても事業の収益構造や将来性を視覚的に示せば、融資の必要性や返済能力をより説得力をもって伝えられます。特に、あまり認知されていない新しいビジネスを立ち上げるときなども、俯瞰図があると相手が理解しやすくなるのがメリットです。
自社業務の見直し・課題解決を効果的におこなえる
ビジネスモデル俯瞰図を作成すれば、自社の業務フローや収益構造を客観的に見つめ直せる点がメリットです。業務の非効率な部分や改善すべき課題が浮き彫りとなります。
たとえば、「商品やサービスの流れ」「お金の流れ」「情報の流れ」などを可視化すれば、重複している業務や無駄な工程を特定しやすくなります。また、利益率の低い事業領域やリソースが不足している部分なども明確になるため、経営資源の最適な配分を検討する判断材料として活用が可能です。
さらに、新たな事業機会やビジネスチャンスの発見にもつながります。既存の取引関係や業務フローを俯瞰すれば、新しい提携先と協業できる可能性や未開拓の市場が見えてくるケースもあります。俯瞰図は、経営戦略の立案や意思決定の重要なツールです。
ビジネスモデル俯瞰図を書く方法
ビジネスモデル俯瞰図の作成は、以下の手順で進めていきます。
- 自社のビジネスモデルに合わせて商流の始点・終点を決める
- 商流の大枠を作成する
- 仕入れ先・外注先の情報を記載する
- 得意先の情報を記載する
- 自社の情報を記載する
各ステップを丁寧におこなえば、より正確で実用的な俯瞰図が完成します。
自社のビジネスモデルに合わせて商流の始点・終点を決める
ビジネスモデル俯瞰図作成の第一歩は、商流の始点と終点を明確にすることです。商流とは商品やサービスが動く流れを指し、業態によって大きく異なります。
製造業の場合は原材料の仕入れから始まり、最終消費者への販売で終わるのが一般的です。小売業であれば仕入れ先からの商品調達が始点となり、店舗での販売が終点となります。
また、IT企業やサービス業ではシステム開発やサービス提供の開始時点を始点とし、納品や契約終了を終点とするケースが多くなります。商流の始点と終点を明確にすれば、間にある業務プロセスや取引関係を整理しやすいです。
商流の大枠を作成する
ビジネスモデルの始点・終点を決めたら、商流の大枠を作成しましょう。商流の大枠では、商品やサービスが流れる主要な経路を示します。具体的には、矢印を使って商品やサービス・お金の流れる方向を明確に示す形です。
まず、ビジネスモデル俯瞰図の中央に自社を配置し、左側(下側)に仕入れ先・右側(上側)に得意先を配置するのが基本です。そのうえで、主要な取引の流れを太い矢印で表現します。矢印で示す際、商品の流れは実線・金銭の流れは点線というように、性質の異なる流れは区別して表現するとより分かりやすいです。
また、外注先など取引で間接的に関わるパートナーの存在も忘れずに記載しましょう。商流の大枠を作成する段階では細かい要素は入れず、全体の流れを把握することに注力します。
仕入れ先・外注先の情報を記載する
配置した仕入れ先や外注先に関する具体的な情報を記載します。取引の重要度や規模に応じて、記載する情報の詳細さを変えていくと良いでしょう。
主要な仕入れ先については、取扱商品・取引条件・支払いサイトなどの具体的な情報を記載します。また、定期的に取引のある外注先やパートナー企業についても、「どのような業務を委託しているのか」「年間取引額はいくらか」などの重要な情報を漏らさず記載しましょう。
複数の仕入れ先がある場合は、業種や取引内容ごとにグループ化すると見やすくなります。また、特に重要な取引先はほかと区別できるように、枠の色を変える・太線で囲むなどの工夫も効果的です。
得意先の情報を記載する
得意先の情報は、自社の右側(上側)に配置します。得意先は事業の収益源となる重要な存在であるため、市場セグメントや顧客層ごとに整理して記載しましょう。
主要顧客については、年間取引額・主要取扱商品・決済条件・配送方法など取引に関する具体的な情報を記載します。また、新規開拓中の市場や将来の展開を考えている顧客層についても、区別して記載しておくのがおすすめです。
BtoB企業の場合は取引企業名を、BtoC企業の場合は顧客層や販売チャネルを記載します。また、売上比率や利益率などの数値情報も可能な範囲で記載すると、より実用的な俯瞰図となります。
自社の情報を記載する
自社の情報は図の中央に配置し、最も詳細に記載します。主要な業務プロセス・組織体制・システム基盤など、事業運営に関わる重要な要素を漏らさず記載することが重要です。
具体的には、主力商品やサービス・売上構成・利益率・在庫管理方法・品質管理体制・販売促進施策などを記載します。また、自社の強みとなる技術やノウハウ、他社と比較した優位性なども明記しておきましょう。
特に、収益を生み出す核となる業務や経営資源を多く投入している分野については、より詳細な情報を記載します。また、現状の課題や改善点などもあわせて記載しておくと、経営改善の指針としても活用できます。
ビジネスモデル俯瞰図をエクセルで作る方法
ビジネスモデル俯瞰図は、エクセルを活用して効率的に作成できます。以下では、具体的な作成方法について2つ紹介します。
- 経済産業省の「ローカルベンチマークシート」を利用する
- エクセルのテンプレートを探して利用する
上記の2つから、自社に合った方法でビジネスモデル俯瞰図を作成しましょう。
経済産業省の「ローカルベンチマークシート」を利用する
経済産業省が無料で公開している「ローカルベンチマークシート」は、ビジネスモデル俯瞰図作成に最適なツールです。「ローカルベンチマークシート」は、中小企業の経営状態を把握するために開発された標準的な枠組みを提供しています。
シートには、商流や業務フローを図示するための以下のようなテンプレートが含まれているのが特徴です。必要な項目を入力するだけで、基本的な俯瞰図を作成できます。
特に、取引先や商品・サービスの流れ、金銭の流れなどを体系的に整理できる構造になっています。さらに、財務情報の分析ができるシートも用意されており、金融機関への提出資料としても活用が可能です。ダウンロードは経済産業省のWebサイトから可能で、利用方法についての詳しい説明資料も提供されています。
エクセルのテンプレートを探して利用する
インターネット上には、ビジネスモデル俯瞰図のエクセル用テンプレートが多数公開されています。上記のテンプレートを活用すれば、ビジネスモデル俯瞰図をゼロから作成する手間を省けるのがメリットです。たとえば、中小企業庁の早期経営改善計画策定支援ページでは、ビジネスモデル俯瞰図に関連する「経営改善計画書」のエクセル(テンプレート)がダウンロードでき、サンプルを参考に作成できます。
テンプレートを選ぶ際は、自社の業態や規模に合ったものを選択することが重要です。製造業向け・小売業向け・サービス業向けなど、業種別に最適化されたテンプレートを探すと良いでしょう。また、シンプルなものから詳細な分析が可能なものまで、さまざまなレベルのテンプレートが存在するため、用途に応じて選択できます。
テンプレートを入手したら、自社の状況に合わせてカスタマイズしましょう。また、定期的な更新や修正が必要な場合も、エクセルならば簡単に対応が可能です。
ビジネスモデル俯瞰図とともに収益計画も作成する
ビジネスモデル俯瞰図に収益計画を組み合わせれば、より実践的な経営計画の立案が可能です。具体的には、俯瞰図で示した各取引先との取引額や主要商品・サービスの売上予測、必要経費などを数値化して計画を立てます。
たとえば、主要得意先ごとの月間売上目標・仕入先との取引予定額・固定費や変動費の内訳など、収益に関わる要素を具体的に数値化します。事業の収益性や成長性を定量的に把握でき、より説得力がある事業計画の作成が可能です。
また、収益計画を立てる過程で利益率の低い取引先やコスト削減が必要な業務プロセスなども明確にできます。経営改善のための具体的なアクションにつなげやすくなる点もメリットです。収益計画の作成方法については、以下の記事で詳しく解説しているため、気になる方はチェックしてください。
まとめ
ビジネスモデル俯瞰図とは、企業の事業活動を視覚的に表現した「経営の設計図」です。商品やサービスの流れ・取引先との関係性・収益構造などを1枚の図で表現し、事業の全体像を誰にでも分かりやすく伝えられます。
作成方法は、まず商流の始点と終点を決め、取引先や自社の情報を体系的に配置します。経済産業省の「ローカルベンチマークシート」などのテンプレートを活用すれば、効率的に作成が可能です。
さらに収益計画を組み合わせれば、より実践的な経営計画となり、取引先との商談や金融機関との交渉にも活用できます。自社の強みや課題も見えてくるため、経営改善の強力なツールとなるでしょう。
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