
代表取締役社長の退職金はいくら?支給額や決め方を解説
代表取締役にも定款や株主総会の決定に沿って退職金が支払われます。
会社への貢献度を踏まえた支払いとなり、高額な支払いであるケースも見受けられます。
今回は代表取締役社長の退職金と支払いの流れやタイミングについて解説します。
目次[非表示]
- 1.代表取締役社長も退職金を受け取れる
- 1.1.社長や役員にも役員退職金が支払われる
- 1.2.一般的な退職金との違い
- 2.中小企業などで役員退職金を支払う流れ
- 2.1.定款や株主総会で支給を決定
- 2.2.金額や支給方法など詳細の決定
- 2.3.退職金の支給
- 2.4.源泉所得税・住民税の納付
- 2.5.退職所得の源泉徴収票の交付
- 3.中小企業役員の退職金相場は?
- 3.1.一般的に功績倍率法により算出
- 3.2.過大役員退職金に注意
- 4.代表取締役へ退職金を支払うタイミングと方法
- 5.役員の退職金にかかる所得税の計算方法
- 5.1.①退職所得控除額を算出
- 5.2.②課税退職所得金額を算出
- 5.3.③課税所得に対する税率・控除額を確認
- 5.4.④所得税額を算出
- 6.財務状況の見直しはエフアンドエムにご相談ください
- 7.まとめ
代表取締役社長も退職金を受け取れる
退職金は労働者が会社を退職する際に受け取る金銭で、代表取締役社長などの役員にも支払われることが一般的です。
社長や役員にも役員退職金が支払われる
役員退職金は、役員が会社に貢献したことを評価して、功績や役割に応じた金額を支払います。
役員の貢献度によって、同じ役職や在職期間でも大きく変動することがあります。
また、役員退職金は一般的な退職金と比較すると支給額が高い傾向があります。
これは、会社の経営陣として負った、責任やリスクを報いる目的があるためです。
ただ、役員退職金は自由に支給できるわけではなく、支給額や条件は会社の定めるルールに沿って支給されます。
どんなに会社に貢献していても、ルールによっては支給額が少なくなることもありえます。
一般的な退職金との違い
一般的な退職金は社員の勤続年数に応じて支給されるもので、会社の規定に基づいて算定されます。
一方、役員退職金は役職によるもので、役員の業績や貢献度によって支給額が変動します。
また、一般的な退職金は退職する際に支払われますが、役員退職金は役員会や株主総会で承認された後に支払われることが一般的です。
また、役員退職金は会社の利益とのバランスが重要視されがちです。
業績が良好であれば役員退職金の支給が認められやすいですが、業績が悪化していると問題視されることがあります。
一般的な退職金は業績が悪化していても支払われることが大半であり、この点も大きな違いです。
中小企業などで役員退職金を支払う流れ
中小企業において役員退職金の支払いは、いくつかの手続きが必要です。
大まかな流れを解説します。
定款や株主総会で支給を決定
役員退職金の支給にあたっては、まず会社の定款や株主総会で支給を決定しなければなりません。
例えば、定款に役員退職金の支給要件や条件が記載されていれば、それに沿って支給が進められます。
また、記載がなくとも株主総会で議決されれば支給可能です。
金額や支給方法など詳細の決定
役員退職金の金額や支給方法は、会社の業績や役員の在任期間、貢献度などを考慮して決定されます。
金額や支給方法の決定は、株主総会での議決内容や定款に定められた基準を参考にしなければなりません。
客観的に支給額が適切であると判断できなければ、株主からの反発を受ける、税務調査の原因となる可能性があります。
また、支給方法は一括払いや分割払い、年金形式の定期給付などさまざまな選択肢が考えられます。
これらもすでに定められているルールがある場合はルールに準じ、ルールがない場合は株主総会での決定事項に従うことが重要です。
退職金の支給
役員退職金の詳細が決定されたら、実際に代表取締役へ退職金が支給されます。
いくつかの手続きを経て代表取締役が受け取ります。
一括払いなのか分割払いなのかなどによって、事務手続きの内容が変化するため、注意が必要です。
なお、退職金は上記の手続きが完了してから支給できます。
一般的な退職金のように、退職と同時に支給が確定するとは限りません。
源泉所得税・住民税の納付
役員退職金には源泉所得税や住民税が課されます。
会社は、退職金を支給する際にこれらの税金を源泉徴収しなければなりません。
退職金の額や世帯主であるかどうかなどを踏まえた計算が必要です。
また、源泉徴収であるため、会社はこれらの税金を納める義務があります。
他の従業員と同様に、代表取締役の退職金についても納税しましょう。
退職所得の源泉徴収票の交付
退職金が支給された役員には、退職所得の源泉徴収票が交付されます。
役員が確定申告するために必要な書類であるため、会社は適切に発行しなければなりません。
迅速かつ適切に手続きを進め、書類を交付するところまでが支給の手続きだと認識しましょう。
中小企業役員の退職金相場は?
中小企業の役員へ退職金を支払う際にはどのように算出すればよいか、疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。
計算方法には相場があるため、解説します。
一般的に功績倍率法により算出
一般的に代表取締役など役員の退職金は、功績倍率法と呼ばれる方法で算出します。
功績倍率法は、勤続年数、職務内容、役職、貢献度合いなどを考慮して、退職金額を計算する方法です。
功績倍率法では、報酬に一定の倍率をかけて退職金を算出します。
倍率は事前に定められていることが多く、代表取締役であることや業績の変化などによって決定される数値です。
また、特別な要素によって加減します。
客観的な基準に基づいて退職金が算出されるため、退職金の算出について公平性が保たれる点がメリットです。
また、仮に税務調査を受けたとしても、基準に沿った支給であると説明できます。
なお、最終的な月額報酬の3倍~5倍に勤続年数を乗じた金額が相場です。
過大役員退職金に注意
中小企業で役員へ退職金を支払う際、注意すべきことが過大役員退職金です。
役員退職金が過大であると、株主や従業員から批判を受けるため、適切に算出し支給しなければなりません。
また、役員退職金はそもそも高額になりやすく、加えて過大役員退職金になると株主総会で否決されるかもしれません。
否決されては代表取締役への退職金が支給できなくなり、手続きが長引いてしまうため、理解を得る意味でも適切な額にすることが重要です。
代表取締役へ退職金を支払うタイミングと方法
代表取締役や退職金を支払うタイミングと方法を解説します。
支払いタイミング
代表取締役への退職金の支払いタイミングは、退職が正式に決まった後、退職日までの間が一般的です。
退職金は、役員報酬などと一緒に支払われることが多く、退職日を含む月の給与支払い日に支払われると考えましょう。
ただ、状況によって退職金の支払いタイミングが異なる場合があるため、基準や株主総会での決定事項に準じることが大切です。
なお、退職金の支払いタイミングは、会社の規定や取締役との協議によって柔軟に変更できます。
基本的な支払いはタイミングから変更する場合は、書面などで決定事項を残しましょう。
支払い方法
退職金の支払い方法は、現金での振込が一般的です。
ただ、振込以外の方法で支払いを希望する場合、事前に相談しておくことで対応できます。
また、現金ではなく株式や社内債などの形で支払うことも可能です。
代表取締役と会社の間で合意できているならば、現金に固執する必要はありません。
ただ、現金以外での支給は税務面での取り扱いが難しい可能性があり、専門家に助言を受けることがおすすめです。
役員の退職金にかかる所得税の計算方法
役員退職金の所得税は、退職所得として特別な計算方法が適用されます。具体的には、退職金から「退職所得控除額」を差し引き、残額の1/2を「退職所得金額」として算出する流れです。
算出された退職所得金額に対して所得税の税率を適用し、最終的な税額を求めます。本章では、以下の手順で役員の退職金にかかる所得税の計算方法の詳細を説明します。
- 退職所得控除額を算出
- 課税退職所得金額を算出
- 課税所得に対する税率・控除額を確認
- 所得税額を算出
①退職所得控除額を算出
まず、勤続年数に応じて「退職所得控除額」を以下の計算式で算出します。
- 勤続年数が20年以下の場合:40万円×勤続年数(最低80万円)
- 勤続年数が20年を超える場合:800万円+70万円×(勤続年数−20年)
例えば、勤続25年の場合、退職所得控除額は800万円+70万円×(25年−20年)=1,150万円です。
②課税退職所得金額を算出
次に、受け取った退職金から前述の退職所得控除額を差し引き、残額を計算します。基本的には、算出された残額の1/2が課税対象の「退職所得金額」となります。
ただし、役員としての勤続年数が5年以下の場合、上記の1/2の特例は適用されません。例えば、退職金が2,000万円で勤続年数25年の場合、退職所得金額は以下のとおりです。
- (2,000万円−1,150万円)×1/2=425万円
③課税所得に対する税率・控除額を確認
算出した退職所得金額に対して、所得税の税率と控除額を適用します。所得税の税率は累進課税方式で、課税所得金額に応じて以下のように定められています。
課税退職所得金額 |
税率 |
控除額 |
1,000円から1,949,000円まで |
5% |
0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで |
10% |
97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで |
20% |
427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで |
23% |
636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで |
33% |
1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで |
40% |
2,796,000円 |
40,000,000円以上 |
45% |
4,796,000円 |
引用:所得税の税率|国税庁
例えば、退職所得金額が425万円の場合、税率20%、控除額427,500円が適用されます。
④所得税額を算出
最後に、退職所得金額に税率を適用して控除額を差し引いて所得税額を計算しましょう。また、算出した所得税額に復興特別所得税(所得税額の2.1%)も加算します。例えば、退職所得金額425万円の場合、所得税額は以下のとおりです。
- 4,250,000×20%−427,500円=422,500円
上記で算出された所得税に復興特別所得税を加算すると、以下のとおりとなります。
- 422,500円+(422,500円×0.021)=431,372円
財務状況の見直しはエフアンドエムにご相談ください
代表取締役に退職金を支払う際は財務状況とのバランスが重要です。
現金が少ない状況で社長へ退職金を支給すると、キャッシュフローに悪影響を与える可能性があります。
まず財務状況を見直したい場合、エフアンドエムへご相談ください。
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まとめ
代表取締役社長にも役員退職金として退職金の支給ができます。
定款に記載されている基準を踏まえて算出し、株主総会で議決されることで支給が可能です。
また、功績倍率法を利用して、適切な額を算出しなければなりません。
なお、代表取締役への退職金は高額になりやすく、会社のキャッシュフローに影響を与える可能性があります。
そのため、支払いに備えて財務状況を見直すことをおすすめします。
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