従業員5人の会社の社長年収は?相場・具体的な決め方などを解説
従業員5人など小規模の企業で、社長がどのくらい年収をもらうべきか迷う方もおおいでしょう。社長の年収は企業規模だけでなく業種・収益などにも左右されるため、経営状況に応じて適切な金額を設定することが大切です。
今回は中小企業の社長の年収について、相場・具体的な決め方なども解説します。適切な給与を設定して、経営を安定化させたい中小企業はぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.中小企業の社長の年収相場
- 2.中小企業の社長の年収でNGな決め方
- 2.1.生活費をもとに算出する
- 2.2.前職の給与をスライドさせる
- 2.3.0円で設定する
- 3.役員報酬を決める具体的な方法
- 3.1.付加価値分配率で算出
- 3.2.税金との兼ね合いで算出
- 3.3.利益・従業員への給与を考慮して算出
- 4.役員報酬を決める際のポイント
- 4.1.社員の給料との差を作りすぎない
- 4.2.経営状況を加味して報酬を決める
- 4.3.役員報酬は支払い方法で条件などに違いがある
- 5.役員報酬以外にも配当金で収入を得る方法もある
- 5.1.配当金には税金がかかる
- 5.2.配当金のメリット・デメリット
- 6.社長は経費として認められる範囲が広い
- 7.会社の資金を増やすためには財務管理・補助金の活用が不可欠
- 8.社長・従業員の年収アップには収益向上が大切!財務管理にはF&MClubがおすすめ
中小企業の社長の年収相場
国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、資本金2,000万円以下の企業における役員報酬の平均は647万円です。役員報酬は資本金の多い会社ほど向上する傾向にあり、具体的には以下のとおりです。
資本金 |
役員報酬平均 |
2,000万円以下 |
647万円 |
2,000万円以上 |
952.9万円 |
5,000万円以上 |
1232.6万円 |
1億円以上 |
1230.4万円 |
10億円以上 |
1758.3万円 |
引用:令和4年分 民間給与の実態調査結果|国税庁
国税庁の「民間給与実態統計調査」では、正社員の平均給与は資本金2,000万円以下の企業で415.1万円と報告されています。中小企業の社長の年収は、一般的な従業員の給与よりも高い傾向です。
ただし、実際の金額は企業の業績・規模・業種などにより大きく異なります。また、社長の報酬は固定給だけでなく、業績に連動したボーナス・株式報酬なども含まれるケースが多いため一概にはいえません。具体的な年収を知るためには、各企業の公開情報・業界団体などがおこなう統計調査を参照すると良いでしょう。
なお、中小企業庁が毎年おこなう「中小企業実態基本調査」では1企業当たりの売上高は1.8億円(前年比5.0%増)、経常利益は871万円(前年比31.4%増)です。上記の売上から社長・従業員の給料が支払われることとなります。
参考:中小企業実態基本調査 令和4年確報(令和3年決算実績) |e-Stat
中小企業の社長の年収でNGな決め方
中小企業の社長の年収でNGな決め方として、以下の3つが挙げられます。
- 生活費をもとに算出する
- 前職の給与をスライドさせる
- 0円で設定する
生活費をもとに算出する
社長の年収を自身の生活費に基づいて算出することは、ビジネスの視点から見て不適切です。たとえば、毎月生活費に60万円かかるから役員報酬を同額に設定するなどの具合です。
生活費は個々のライフスタイル・家庭状況に大きく依存し、企業の業績・規模とは無関係です。仮に生活費を基準として算出した場合、業績が低迷した際に役員報酬を下げにくくなってしまいます。
業績が低いのに役員報酬が高いままであると、経営を圧迫してしまう可能性が高いです。生活費に基づいて年収を決定すると利益を適切に再投資することが難しくなり、企業の成長を妨げる可能性もあります。
前職の給与をスライドさせる
前職の給与をそのままスライドさせて社長の年収を決定することも適切ではありません。社長・従業員への給与は、企業の売上・規模などによって大きく変わるためです。
大企業などで前職の給与が高水準であった場合、スライドさせてしまうと現企業の財務状況に負担をかける可能性があります。基本的には企業の利益など業績をベースに設定するのがおすすめです。
0円で設定する
社長の年収を0円に設定すれば経費削減につながるように思えますが、長期的には企業の成長を妨げる可能性があります。社長自身が適切な報酬を得られないとモチベーションを維持することが難しくなり、経営の質が低下する可能性があるためです。
また、企業が事業で利益を出していれば対価として報酬を受け取ることが普通です。仮に0円で無収入状態であれば、税務署から不審に思われて税務調査が入るなどのリスクも上昇してしまいます。役員報酬は適切な額を設定しましょう。
役員報酬を決める具体的な方法
役員報酬を決める具体的な方法として、大きく以下の3つが挙げられます。
- 付加価値分配率で算出
- 税金との兼ね合いで算出
- 利益・従業員への給与を考慮して算出
付加価値分配率で算出
付加価値分配率を用いて算出する方法は、企業が生み出す付加価値の一部を役員報酬として分配する考え方に基づいています。付加価値とは企業が提供する商品・サービスの売上から、生産に必要な原材料・部品などのコストを差し引いた額です。
付加価値分配率で算出する場合は企業の業績が良ければ役員報酬も増え、悪ければ減る業績連動型の報酬制度を実現できます。業績に応じて役員報酬が変動するため、ビジネス上の成果向上を促進して企業をスムーズに成長させやすい点が魅力です。
税金との兼ね合いで算出
税金との兼ね合いを考慮して役員報酬を算出する方法は、税制上の優遇措置を最大限活用することを目指しています。役員報酬は経費として計上できるため、適切な額を設定すれば法人税の負担を軽減することが可能です。
ただし、役員報酬が適正な範囲を超えて高額になると税務調査の際に問題となる可能性があります。役員報酬には所得税・住民税がかかるため、法人税とのバランスを考えて税負担を最小化できる額で設定しましょう。
利益・従業員への給与を考慮して算出
利益・従業員への給与を考慮して役員報酬を算出する方法は、企業全体の経済状況を反映することを目指しています。具体的には、企業の利益・従業員の平均給与・業界平均の役員報酬などを参考にして適切な金額を設定します。
企業内外の経済状況をバランス良く反映でき、公正な報酬制度を実現することが可能です。役員報酬を決定する際は、従業員の給与と差がつきすぎないように設定しましょう。社長・従業員の年収にあまりに差があると、不公平感が高まり人材流出につながってしまいます。
役員報酬を決める際のポイント
役員報酬を決める際のポイントとして、以下の2点を意識しましょう。
- 社員の給料との差を作りすぎない
- 経営状況を加味して報酬を決める
社員の給料との差を作りすぎない
役員報酬を決定する際の重要な考慮点は、社員の給与との格差を適切に保つことです。組織の健全な運営には、役員・社員間の給与格差が適度であることが求められます。社長・従業員の給与のバランスがうまく取れていれば、社員のモチベーションを維持して生産性の向上にもつながるためです。
役員報酬が社員の給与と比較して過度に高い場合、組織内の不満・不公平感を引き起こす可能性があります。組織の士気を低下させ、生産性を損なう点がデメリットです。したがって、役員報酬を決定する際には社員の給与との適切なバランスを保つことが重要です。
経営状況を加味して報酬を決める
役員報酬を決定する際のもうひとつの重要な要素は、組織の経営状況を考慮に入れることです。経営状況が良好であれば、役員報酬は増加させられます。しかし、経営状況が厳しい場合は一時的に役員報酬を減額して資金繰りの改善につなげることも考慮すべきです。
創業したばかりの企業は売上予測などが難しく、適切な役員報酬を判断しにくいケースも多いでしょう。役員報酬は未払い金として計上しておけば後払いでまとめて受け取れますが、事業年度開始から3カ月以内に決定しなければならないため注意が必要です。
役員報酬は支払い方法で条件などに違いがある
役員報酬は企業の経営陣に対する報酬体系であり、支払い方法・条件には多くの違いがあります。具体的には、以下3種類が役員報酬の支払い方法として挙げられます。
定額同額給与 |
事業年度間に毎月一定額の役員報酬を継続して支払う方法 |
事前確定届出給与 |
事前に税務署へ「事前確定届出給与に関する届出書」を提出した上で支払う方法 |
業績連動給与 |
企業の業績や株価に連動して支払う方法 |
上記の支払い方法では金額の変更可能時期に違いがあるため、注意が必要です。たとえば、定額同額給与の場合は原則として事業年度開始日から3カ月以内に変更する必要があります。一方で、事前確定届出給与の場合は「事業年度開始日より4カ月以内」または「株主総会などによる決議の1カ月以内」の早い方となります。
役員報酬以外にも配当金で収入を得る方法もある
社長は役員としての活動で得られる報酬以外にも、株式を保有して得られる配当金があります。配当金は企業が利益を出した際に、一部を株主に分配する金額です。
企業が成功すればするほど、社長が保有する株式から受け取る配当金も増えていきます。役員報酬とは異なる収入の形態であり、かかる税金額も通常の所得と違うケースがあります。
配当金には税金がかかる
配当金は収入の一部であるため、所得税・住民税がかかります。ただし、年間所得が1,000万円以下の場合、配当金額の10%が控除される仕組みです。
配当金の受け取りは、総合課税・分離課税を選択できます。総合課税を選んだ場合は、控除後の所得が900万円を超えると43%の税金が適用されます。分理解税の場合は先述の配当控除は適用されないものの、税率は一律20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)です。
配当金のメリット・デメリット
配当金にはメリット・デメリットがあります。メリットとしては企業の利益に直結するため、業績が良ければ高い収入を得られる点です。分離課税を選択すれば税率が20.315%となるため、役員報酬として拠出するよりも受け取り側の税負担が軽くなるメリットもあります。
デメリットとして配当金は企業の業績に左右されるため、収益が悪化すれば受け取れる金額も減少する可能性があります。配当金は経費として扱われず、法人としての節税メリットが薄い点もデメリットです。
社長は経費として認められる範囲が広い
社長は企業の運営に大きく携わっており、業務上必要な支出であれば経費として認められる範囲が広いです。たとえば、新規事業開拓・クライアントとのミーティングなど、社長がおこなう活動の多くは旅費・接待交際費などの経費として計上できます。会社名義で自宅を借りれば、家賃の50%以上は経費として計上できるケースもあります。
ほかにも、業務上必要であれば車・PCなどの備品も経費として計上可能です。会社が利益を上げていれば、適切な範囲で給料とは別に支払いが可能である点は社長ならではのメリットです。
しかし、経費は税務上の規定に従って適切な記録・報告が必要です。不適切な経費計上は、税務調査によるペナルティの対象となる可能性があります。したがって、経費計上には適切な法的知識・理解が必要となります。
会社の資金を増やすためには財務管理・補助金の活用が不可欠
年収を上げるためには会社の資金を増やす必要があり、財務管理・補助金の活用が不可欠です。財務管理は会社の収益・支出を適切に管理し、利益を最大化するための重要な手段です。具体的には、適切な予算設定・コストの削減・資金繰り計画の策定などが含まれます。
一方、補助金は政府・公的機関からの資金援助で特定のプロジェクト・活動を支援する制度です。補助金は返済の必要がなく、資金調達の負担を軽減できます。
財務管理・補助金を活用すれば会社の資金を効率的に増やし、ビジネスの成長・成功を実現可能です。企業の業績が安定的に向上していけば、社長の年収アップも期待できます。
社長・従業員の年収アップには収益向上が大切!財務管理にはF&MClubがおすすめ
社長・従業員の年収を上げるためには、会社の収益向上が大切です。収益を増やすためには新たなビジネスチャンスを見つけるだけでなく、既存のビジネスプロセスを効率化することも重要です。具体的には、コスト削減・生産性の向上・新製品やサービスの開発などが含まれます。
また、財務管理にはF&MClubがおすすめです。F&MClubでは財務管理の専門家が集まり、以下のサービスを企業に提供しています。
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