【2024年10月改定】最低賃金よりも正社員の給料が低い⁉違法とならない賃金見直し方法と補助金の活用を解説
2024年の最低賃金が改定され、全国平均で1,055円となりました。引き上げ額51円は過去最大です。最低賃金の引き上げは新規採用者だけではなく、既存の従業員へも影響します。
知らずにいると法令違反の最低賃金となってしまう給与決定方法や、違法とならない給与体系の見直し方法までを解説します。
目次[非表示]
- 1.2024年の最低賃金は1,055円【2024年10月改定】
- 1.1.最低賃金はいつ決まる?いつ変わる?
- 1.2.最低賃金は上昇が続いています
- 1.3.2029年までに最低賃金を1,500円へ!?
- 1.4.最低賃金引き上げの中小企業における影響
- 2.「最低賃金は正社員には関係ない」はウソ!正社員も対象です
- 3.月給の場合の最低賃金の計算方法
- 3.1.月給制の場合の最低賃金の計算例
- 3.2.固定残業代は最低賃金の対象外でも割増が必要
- 3.3.最低賃金の計算ツールを活用
- 4. 法令違反とならない給与決定方法とは
- 4.1.給与規定を整備しましょう
- 4.2. 月給も毎年確認が必要です
- 4.3.最低賃金以下は人手不足や信用失墜を招きます
- 4.4.勤怠管理や給与計算はシステムでミスを防止
- 4.5.人手不足、賃上げ対策は生産性向上投資を検討
- 5.賃上げに負けない!経営者が検討したい補助金と助成金5選
- 5.1.まず社内を整備する『IT導入補助金』
- 5.2. 省力化投資は中小企業が使いやすい『省力化投資補助金』
- 5.3.新製品で付加価値を上げるためには『ものづくり補助金』
- 5.4.最低賃金引き上げと改善投資が対象【業務改善助成金】
- 5.5.賃上げでも勤務時間を減らしたくない従業員へ『年収の壁』対策の助成金
- 6.賃金の値上げに耐えるために、助成金や補助金の受給漏れをなくしましょう
2024年の最低賃金は1,055円【2024年10月改定】
2023年10月に改定された最低賃金は1,055円(全国加重平均)です。2023年の1,004円から+51円、+5%の引き上げとなり、過去最大の引き上げ幅となりました。
最低賃金はいつ決まる?いつ変わる?
各都道府県の最低賃金は、毎年10月に厚生労働省より発表されます。最低賃金が決まるまでの流れと実施時期は次のとおりです。
例年7月から8月:中央最低賃金審査会から地方最低賃金審査会へ引き上げ額の目安を提示
例年8月:都道府県別の最低賃金額の公表
例年10月:最低賃金改定
【参考】最低賃金の決め方は?|厚生労働省
最低賃金は上昇が続いています
厚生労働省の資料によると、最低賃金(全国加重平均)は過去、常に上昇しています。2024年の最低賃金1,055円は2015年の798円と比べると32%の上昇です。
【引用】ひと目でわかる!最低賃金
2029年までに最低賃金を1,500円へ!?
石破総理は2024年10月4日におこなった所信表明演説の中で、『最低賃金について(略)、2020年代に全国平均1,500円』を目指すと発表しました。この発言を受けて2024年10月の衆院選においては、複数の政党が最低賃金1,500円以上の実現を目標に掲げています。
大手シンクタンクである大和総研の調べによると、仮に2029年までに最低賃金を1,500円へ引き上げるためには、今後毎年、過去最高を超える+7.3%の引き上げを継続する必要があると試算しています。
大幅な最低賃金の上昇を目指す動きに対して、企業の収益が低下する可能性があると指摘されています。
【引用】石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1,500円」は達成可能?|大和総研
最低賃金引き上げの中小企業における影響
最低賃金引き上げに伴い、中小企業においては次の影響があると予測されています。
- 人件費の上昇
- 企業収益の圧迫
- 人材不足の加速
特にサービス業など非正規従業員が多い業界における収益の悪化や大手企業への人材流出による人手不足の深刻化などが懸念されています。
「最低賃金は正社員には関係ない」はウソ!正社員も対象です
最低賃金は、最低賃金法によって守る義務があり、すべての企業がその水準以上の賃金を支払う義務があります。
最低賃金の対象となる従業員や計算方法について確認しておきましょう。
最低賃金が適用される従業員は全従業員
地域別最低賃金の適用対象は、すべての従業員です。正社員、パートタイム、アルバイト、嘱託契約、派遣社員などの雇用形態は問いません。
注意事項は以下の3つです。
-
派遣社員
派遣社員は派遣先の事業所がある都道府県の最低賃金が適用されます。 -
最低賃金の例外となる従業員
最低賃金の例外として認められる従業員は以下のとおりです。
・65歳以上の従業員または18歳未満の従業員
・雇用直後の一定期間未満の技能習得中の従業員
・従業員に個別の事情があることの都道府県労働局長の許可 -
特定(産業別)最低賃金
地域別最低賃金とは別に、各都道府県内の特定の業種について定める特定(産業別)最低賃金があります。地域別と特定(産業別)の最低賃金額のいずれか高い方が適用されます。
【参考】対象となる賃金は?|厚生労働省
最低賃金にボーナスや残業代は含まれません
最低賃金が適用される給料とは、企業が従業員へ毎月支払う基本的な賃金が対象です。賞与(ボーナス)、残業代、通勤手当などは最低賃金の対象外です。
【引用】対象となる賃金は?|厚生労働省
月給の場合の最低賃金の計算方法
月給の場合は最低賃金以下となっていることに気付かないこともあるため、最低賃金の改定時期に確認しておきましょう。
最低賃金の計算方法の原則は次のとおりです。
- 時間給:時間給≧最低賃金
- 日給:(日給÷1日あたり所定労働時間)≧最低賃金
- 月給:(月給÷1か月あたり所定労働時間)≧最低賃金
- 出来高払:(出来高による賃金÷総労働時間数)≧最低賃金
月給制の場合の最低賃金の計算例
月給制の従業員が最低賃金を下回っていないかを確認するための計算例を紹介します。
(例)月給制の正社員の最低賃金の計算方法の例
固定残業代は最低賃金の対象外でも割増が必要
時間外手当は最低賃金の対象外であり、固定残業代についても同じです。
ただし固定残業時間を超えて時間外労働した場合は超過分の残業代支給が必要です。
最低賃金の計算ツールを活用
最低賃金を下回っていないか計算するツールが公開されています。地域別に簡単にチェックすることができます。
法令違反とならない給与決定方法とは
毎年の最低賃金の改定を見過ごしていると従業員の給料が最低賃金以下となってしまい、法律違反となっていることもあります。
違法とならない給与決定方法は次のとおりです。
給与規定を整備しましょう
まず給与規程や就業規則を整えましょう。
給料体系は各社さまざまであるため、自社の経営内容や経営方針、就業形態、今後の人材育成を見据えて、他社の事例も参考にしながら整備することが重要です。
給料などの就業規則を整えるポイントは次のとおりです。
-
最新の法律に合っている
最新の労働法に合致していることが必要です。違反していると労使トラブルが発生することがあります。 -
会社と従業員を守る
就業規則を作る理由は、真面目にがんばる従業員と自社を守るためであるため、明確なルールを定めます。 -
従業員のモチベーションを高める
適正な報酬体系や人事考課体制は、従業員がまじめに頑張る意欲を高めます。 -
事務の労力を考慮する
賃上げや社会保険制度の改正ごとに見直しが必要となるため、労務管理などをおこなうバックオフィス業務の効率化も必要です。
月給も毎年確認が必要です
10年間以上にわたり、最低賃金の引き上げが続いています。
最低賃金は毎年見直しされるため、最低賃金改定時期にあわせて、月給制の従業員の給料が最低賃金を下回っていないか確認しておきましょう。
最低賃金以下は人手不足や信用失墜を招きます
最低賃金以下の従業員がいる場合、経営上の大きなトラブルが発生することあります。
- 正社員の時給がパートタイムやアルバイト以下となり、正社員が退職する
- 未払い給料などの労使トラブルや訴訟が発生する
- 労働基準監督署の強制調査がある、是正勧告が出される
- ブラック企業として風評がたち、従業員を採用しにくくなる
- 未払い給与をさかのぼって支払う必要がある
ブラック企業との風評がインターネットやSNSで広まると新規採用への応募者が躊躇するなど、採用難の時代に経営の痛手となりかねません。
また金融機関は融資先の法令違反を警戒しています。会社の悪い風評や法令違反は、融資の審査においてもマイナスのイメージを与えるため注意しましょう。
勤怠管理や給与計算はシステムでミスを防止
最低賃金だけでなく社会保険制度も、毎年のように見直しされます。また従業員の雇用形態や勤務形態についても多様化しています。
法改正が多く、計算も複雑な人事・労務管理については、勤怠管理システムや給料自動計算システムのクラウド化などの対策が有効です。
人手不足、賃上げ対策は生産性向上投資を検討
人件費の上昇における対策は販売価格への転嫁が有効ですが、限度があります。
また人手不足が常態化すると従業員が疲弊し、退職の原因ともなります。
人手不足対策は省人化投資による生産性向上が必要です。投資に必要な資金は補助金などを有効に活用しましょう。
賃上げに負けない!経営者が検討したい補助金と助成金5選
人材活用や労務管理の効率化のための投資には、各種の補助金・助成金制度を活用しましょう。
まず社内を整備する『IT導入補助金』
DX化やキャッシュレス化、インボイス対応などのシステム投資が対象です。インボイス対応類型はPCやタブレット、決済端末などのハードも補助対象です。
補助率は最大4/5、補助額は最大450万円です。(補助枠や使い途により異なります)
【引用】IT導入補助金チラシ(2024年9月時点版)|中小企業庁
省力化投資は中小企業が使いやすい『省力化投資補助金』
人手不足となっている中小企業の省力化投資を支援し、付加価値額や生産性の向上、賃上げを支援する補助金です。
省力化投資補助金は補助対象となる製品があらかじめ定められており、対象となるロボットやシステムなどをカタログから選んで申請します。
補助率は1/2、補助額は最大1,500万円です。(従業員数により異なります)
【引用】中小企業省力化投資補助金ご案内チラシ|中小企業省力化投資補助金事務局
新製品で付加価値を上げるためには『ものづくり補助金』
ものづくり補助金は卸・小売業、サービス業も対象です。
新商品開発や生産性を向上させる投資が対象で、補助率は最大2/3、補助上限額は最大1億円です。(補助枠により異なります)
【引用】ものづくり補助金公募要領(18次締切分)概要版|ものづくり補助金事務局
最低賃金引き上げと改善投資が対象【業務改善助成金】
業務改善助成金は、生産性向上のための機械設備やコンサルティング導入、人材育成をおこなうとともに、事業場内最低賃金を一定額以上へと引き上げる場合に投資額の一部が助成されます。
助成率は最大9/10、助成上限額は最大600万円です。(賃上げ対象となる従業員数と賃上げ幅により異なります)
2024年度の業務改善助成金の申請期限は2024年12月27日、事業完了期限は2025年1月31日です。業務改善助成金の申請を検討している場合は、早めに準備しましょう。
賃上げでも勤務時間を減らしたくない従業員へ『年収の壁』対策の助成金
最低賃金の引き上げに伴い時給を引き上げた場合、「社会保険料を払いたくない」「扶養から外れない範囲で働きたい」などの理由から、勤務時間を削減しなければならない従業員が発生する可能性があります。
上記のような『年収の壁』と呼ばれる、年収103万円・106万円・130万円を超えても、従業員の手取りが減らないよう、社会保険適用促進手当を支給する方法もあります。
また、社会保険適用促進手当を支給する場合は、助成金制度『キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)』を受給できる可能性もあります。
キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)は、新たに社会保険の適用対象となった従業員について、1名あたり最大50万円を助成する制度です。次の3つのコースがあります。
手当等支給メニュー
新たに社会保険の適用となる従業員の手取り収入が減らないように賃金の15%(または18%)以上の社会保険適用促進手当を支給する場合、事業主に対して対象となる従業員1名あたり最大50万円が助成されます。
【引用】キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)のご案内(2024年10月)|厚生労働省
- 労働時間延長メニュー
労働時間を延長したことにより社会保険を適用させることとなった場合、従業員1名あたり30万円が企業に対して助成されます。
週4時間以上の延長の場合は賃上げ要件が不要です。週4時間未満の延長の場合は賃金の増額との組み合わせが対象です。
【引用】キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)のご案内(2024年10月)|厚生労働省
- 併用メニュー
上記のメニューを併用する場合に1名あたり最大50万円が助成されます。
【引用】キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)のご案内(2024年10月)|厚生労働省
賃金の値上げに耐えるために、助成金や補助金の受給漏れをなくしましょう
最低賃金は2024年の1,055円に続いて、今後も引き上げが予測されています。
中小企業が人手不足と賃上げの2つの課題を解決するためには、就業規則の見直しや補助金を活かした生産性向上投資が求められていますが、すぐに対応することは難しいでしょう。
そこで、補助金や助成金、優遇制度を活用することをおすすめします。
例えば、非正規雇用から正規雇用になる従業員がいる場合は、キャリアアップ助成金の活用が可能です。
エフアンドエムでは、累計約38,000社支援のノウハウを生かし、活用可能な公的支援制度の提案や申請のサポートが月額3万円(税別)で可能です。
また、公的支援だけでなく労務管理や人材採用も含めたサービスもそのままの値段で対応可能であり、多くの企業様に活用いただいております。
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