役員報酬の適正額とは?算出方法と相場や税務調査を見据えた対応を解説
役員報酬には適正額があります。
適正額を踏まえて金額を設定しなければ、株主からの反発を招くだけでなく、税務署から指摘を受けるかもしれません。
本記事は役員報酬の適正額を算出する方法や相場、設定時のポイントを解説します。
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役員報酬の適正額を知るためには
役員報酬の適正額を知るためには、「役員報酬とは何か」と相場について理解することが大切です。
役員報酬とは
役員報酬とは、取締役や監査役など会社の役員に対して支払われる報酬を指します。
役員は会社の経営陣として、経営方針の立案から意思決定、従業員を牽引するなどの業務をおこなわなければなりません。
役員報酬はこれらの対価として支払われる報酬です。
役員報酬は基本報酬、業績報酬、株式報酬など複数の支払い方法から構成されます。
基本報酬は役員が担当する業務や責任に基づいて月額で支払われる報酬です。
適正額を考える際は、最初に基本報酬について検討しなければなりません。
業績報酬は会社の業績や役員個人の業績に応じて支払われる変動報酬です。
業績報酬も、基準を定めて支給することが求められます。
株式報酬は株式やストックオプションを報酬として支給する方法です。
役員が株主として利益を享受できるため、会社の価値を高めるモチベーションアップにつながります。
役員報酬の相場
役員報酬の相場は会社の規模に左右されがちです。
従業員が多い会社は報酬が高く、少ない会社は低くなります。
会社の規模によって売上額が変化し、役員報酬の適正額も変化するからです。
例えば、従業員が20人以下の会社では月額70万円ほどが相場とされています。
一方で、従業員が500人を超えるような会社は月額150万円以上と高額な報酬が相場です。
一例に過ぎませんが、規模によって相場や適正額が変化します。
創業間もない会社では20万円〜30万円が妥当な金額です。
従業員数、会社の売上は低くても、最低限、生活できるだけの役員報酬が支給される傾向にあります。
役員報酬の適正額の考え方は
役員報酬に適正額があるかどうかは、会社の業績や規模、役員の責任範囲など複数の要素から判断されます。
そのため、「この報酬金額は絶対に適正額だ」と言い切ることはできません。
ただし、適正額の考え方はあるため、こ解説します。
法人税法を踏まえると適正額がある
法人税法第34条には「役員給与の損金不算入」が定められています。
これは役員に対して不当に高額な役員報酬を支給すると、その部分を損金として認めない規定です。
「不当に高額な」の定義は曖昧ですが、法令を踏まえると役員報酬には適正額があると考えられます。
法律で適正額について触れられている理由は、役員報酬と会社の利益が大きく関係するからです。
役員報酬を高めれば、それだけ会社の利益を圧迫し法人税額を低減できます。
これは税制上、適切とはいえないため、法人税法で適正額の支給が定められています。
役員報酬が適正額かどうか判断する方法
役員報酬が適正額であるかどうかは2つの方法で判断できます。
実質基準
実質基準とは、役員が担当する業務や責任、役員の業績に対して報酬が適切であるかどうかを評価する方法です。
実質基準では、役員の業務範囲や責任の重さ、企業の業績や規模、同業他社の役員報酬などが考慮されます。
適正額を判断する際には、会社が業績に応じた報酬制度を設定しているかどうかが重要です。
評価基準があり、制度化されていなければ適正額であるか判断できません。
また、会社の業績や規模が大きく変化した場合は、役員報酬の見直しが必要です。
実質基準に基づいて適正額へと見直せるような制度化が求められます。
形式基準
形式基準は、役員報酬の決定プロセスが適切であるかどうかを評価する方法です。
この基準では以下の要素が適切であるかが注目されます。
- 役員報酬の決定に関与する者は誰か
- 決定までのプロセスが透明であるか
- 基準やルールは明確であるか
例えば、役員報酬を取締役会や報酬委員会により決定するプロセスが定められていたとします。
また、これらのプロセスで報酬額を決定するための基準も明文化されているとします。
これらのプロセスや基準がすべて適切に運用されていると確認できる場合、形式基準では適正額である判断が可能となります。
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適正な役員報酬額を設定する重要性
適正な役員報酬額を設定することには、重要な意味があります。
税務調査で指摘される可能性がある
「役員報酬の設定が適切でない」と税務調査で指摘される可能性があります。
他社と比較して過度に高い報酬や、業績に見合わない報酬が支払われている場合、税務署から疑問を抱かれやすいといえます。
「法人税を抑えるために役員報酬を適正額より高めている」と疑われかねません。
また、「役員報酬が適正額ではない」と指摘された場合、追徴課税を支払わなければならないことがあります。
過剰な報酬は損金として認められず、損金の変化によって法人税や法人住民税が追徴されることになりかねません。
このようなリスクを回避するためには、適正額に設定することが重要です。
会社や個人の税金・社会保険に影響する
役員報酬の額は、会社や個人の税金負担に影響を与えます。
役員報酬が高額であると、会社の法人税は下がり、個人の所得税は増えるはずです。
会社にも個人にも影響するため、役員報酬を検討する際には、税制上の優遇措置や節税対策も考慮しましょう。
また、役員報酬は社会保険料の算定にも影響を与えます。
一般的に報酬が高額であるほど標準報酬月額が高まり、社会保険料の負担が増えてしまいます。
短期的には手取り金額を左右し、長期的には年金の支給額などに影響します。
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財務状況の見直しはエフアンドエムにご相談ください
役員報酬を適正額として支払い続けるためには安定した財務業況を維持する必要があります。
そのため、確実に役員報酬を支払えるキャッシュフローを実現しなければなりません。
役員報酬の支払いを見据えて財務状況を見直したい場合は、エフアンドエムへご相談ください。
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まとめ
役員報酬には適正額があり、適正額を踏まえた報酬を支給することが求められます。
実質基準と形式基準を踏まえ、適切なプロセスで適正額を決定しましょう。
役員報酬は税金や社会保険料に影響するため、適正額を支給することが重要です。
適正額の役員報酬を支払い続けるためには定期的な財務業況の見直しが求められます。
会社の将来に不安を感じている経営者様は、ぜひ自社の財務状況の見直しから始めてみましょう。
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