
設備投資で経営力を向上!目的や採算性の判断基準、減価償却費との関係性を解説
設備投資は、企業が規模拡大するために重要です。設備投資の目的は事業のさらなる拡大、老朽化による買い替え、経営改善によるものがあります。
毎年会計年度に減価償却として費用計上しますが、固定資産とはどのような関連性があるのか、そして設備投資をおこなうに際し、どのような判断基準で設備投資を検討するのかについて説明します。
まず「知ること」と「5つのアクション」から始めてみましょう。
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目次[非表示]
- 1.設備投資の考え方とは?わかりやすく解説
- 1.1.設備投資とは
- 1.2.設備投資の目的
- 1.3.設備投資は減価償却費で経費となる?設備投資と経費との違い
- 1.4.財務諸表での確認方法
- 1.5.設備投資をおこなう前に必ず確認すること
- 2.設備投資と減価償却費の関係性
- 3.減価償却費の計算方法は「定額法」「定率法」「そのほか」の3種類
- 3.1.定額法
- 3.2.定率法
- 3.3.そのほかの償却法(特別償却、一括償却資産、少額減価償却資産の特例)
- 4.設備投資の減価償却費で節税できる?
- 4.1.特別償却(税制優遇制度)
- 4.2.中古資産の購入
- 4.3.30万円未満の資産購入
- 5.設備投資は減価償却費の範囲内ですべき?経営力アップにつながる設備投資の判断基準
- 6.F&M Clubでは経営力向上につながるサポートをおこなっています
- 7.設備投資:まとめ
設備投資の考え方とは?わかりやすく解説
設備投資は、固定資産を購入することで事業拡大などを図るためにおこないます。
企業はどのような意思決定で実施するのか、また経費との違いはどういった点があるのかを解説します。
設備投資とは
設備投資とは、企業が事業拡大を図るため必要な固定資産に投資することです。
具体的には、「土地」「建物」「機械」「備品」「車両」など目に見える「有形固定資産」 や、「ソフトウェア」「特許権」「商標権」など目に見えない「無形固定資産」 が該当します。
設備投資を続けていることは企業自体が成長していることを意味します。企業の成長ぶりを知りたい場合は、設備投資額の増減をチェックすることも有効な手段だといえるでしょう。
設備投資の目的
投資の目的はさまざまですが、主に三つの理由があります。
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売上拡大による設備投資
企業の売上、利益とも順調に推移し、現在の設備では増産に追いつかない場合、設備投資をおこない事業を拡大します。そのためには、市場のニーズを的確に把握することが重要です。 -
老朽化や経費削減による設備投資
長年使用した老朽化した設備を交換せずに使用すると、修理や点検などにより費用がかかるような場合があります。新しい機材を購入し設備投資すれば、生産効率の向上、維持費用の削減につながります。 -
経営改善の実施による設備投資
人手不足における対応など、より少ない従業員数で生産効率を上げる省力化、合理化投資があげられます。例えば、ロボットなど自動化設備を導入することで生産性の向上が可能です。
設備投資は減価償却費で経費となる?設備投資と経費との違い
設備投資と経費との違いは、購入しているモノが損得益計算書の「販売費・一般管理費」に含まれる「経費」であるのか、それとも貸借対照表の「有形固定資産」「無形固定資産」であるかの違いです。
確かに、キャッシュフロー面ではマイナスとなりますが、設備投資は有形(無形)固定資産の購入であるため経費ではありません。例えば、「現金1,000万円で建物を購入した場合、建物は経費でなく資産である」と考えるとわかりやすいでしょう。
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財務諸表での確認方法
「設備投資額」を確認するために、財務諸表のどこの項目を見たらいいでしょうか。
上場企業では、有価証券報告書に「有形固定資産等明細表」の項目があります。また「設備投資等の概要」で項目ごとの設備投資額を確認することが可能です。
一方、中小企業では、上場企業のように有価証券報告書を作成しないため、決算書に添付する確定申告書の次の項目から、減価償却資産の今期減価償却額、減価償却累計額の確認が可能です。
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設備投資をおこなう前に必ず確認すること
設備投資は無計画に実施して良いものではなく、十分に検討して根拠に基づいた意思決定が必要です。例えば、次の観点から確認しましょう。
- どの支出について削減が見込めるか
- 何年でいくらの削減につながるか
- 設備投資に充てる現金は持ち合わせているか
- 資金調達が必要ならば実現性はあるのか
「設備投資=コストの削減」とは断言できません。そのため、設備投資の前には「本当にコスト削減につながるか」を期間も含めて評価すべきです。また、資金繰りに影響が出ないかどうかも必ず確認しましょう。
設備投資と減価償却費の関係性
設備投資とは企業が資金を投じて建物や設備、機械などの固定資産を取得することです。固定資産は、決められた年数(法定耐用年数)に応じて、財務諸表上において資産の価値を減少させます。資産価値を減少させることを「減価償却」と呼びます。
ここでは、固定資産と減価償却との関連性について説明します。
設備投資は法定耐用年数で減価償却費を計算
国税庁によると、建物や機械装置などの資産は時の経過などによってその価値が減っていきます。このような資産を「減価償却資産」と呼びます。ただし、土地や骨とう品などのような時の経過により価値が減少しない資産は、減価償却資産ではありません。
減価償却資産の取得にかかった金額は、取得した時の経費ではなく、その資産が使用可能である期間にわたって分割して必要経費として計上します。経費として費用計上するときに減価償却費という勘定科目を使用します。使用可能期間、つまり「法定耐用年数」は財務省令で定められています。
有形固定資産の法定耐用年数の例は下記のとおりです。
固定資産 |
内容 |
法定耐用年数 |
建物 |
木造(事務所用) |
24年 |
木造モルタル造(事務所用) |
22年 |
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鉄筋コンクリート造(事務所用) |
50年 |
|
車両 |
自動車(一般用) |
4年 |
自動車(運送事業用) |
3年 |
|
器具・備品 |
事務机(金属製) |
15年 |
パソコン |
4年 |
設備投資と減価償却費、キャッシュフローとの関係性
設備投資と減価償却は、密接に関係しています。
設備投資した時点では経費となりません。ただしお金を使っているためキャッシュフロー(投資活動によるキャッシュフロー)としてはマイナスとなります。
減価償却費は決算書においては経費として計上しますが、実際にお金を支払っているわけではありません。このためキャッシュフロー(現金の流れ)を計算するときは、経費に含まれている減価償却費を利益に足し戻すことで、実際にお金として残る金額(利益)と支払っている金額(経費-減価償却費)を計算します。
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減価償却費の計算方法は「定額法」「定率法」「そのほか」の3種類
減価償却費の計算方法は「定額法」「定率法」「そのほか(特別償却、一括償却資産、少額減価償却資産の特例など)」の3つにわけられます。減価償却の計算方法とそれぞれのメリットデメリットは次のとおりです。
定額法
定額法は、減価償却資産の取得価額に一定の割合(償却率)を掛けて減価償却費を求めます。定額法による減価償却費は毎期、同額を計上することとなります。
メリットは、計算が容易であることです。また減価償却資産を購入した会計年度の減価償却費は、定率法よりも少なく利益を確保しやすくなります。
デメリットは、資産を購入した会計年度における節税効果が限られることです。
定率法
定率法は、取得価額から過去の減価償却費を控除した未償却残高に対して償却率を掛けて減価償却費を求めます。
定率法を採用する減価償却資産の未償却残高は会計年度ごとに減少し、計上する減価償却費も毎年減少します。未償却残高が一定額を下回ると毎期、同額を計上します。
メリットは、減価償却資産を購入した会計年度の減価償却費が定額法よりも多くなり、節税効果を得やすいことです。
デメリットは、定額法よりも計算に手間がかかることです。
そのほかの償却法(特別償却、一括償却資産、少額減価償却資産の特例)
定額法、定率法とは別に、減価償却費を計上できる方法があります。主な償却として次の3つがあります。
- 特別償却
特別償却とは、通常の減価償却費に加えて、取得価額の30%を減価償却費として計上できる特例のことです。経営力向上計画の認定対象設備など税制優遇制度として多く講じられています。
- 一括償却資産
一括償却とは、取得価格が10万円以上20万円未満の減価償却資産について、3年間にわたって3分の1ずつ均等に減価償却費を計上する方法です。
- 少額減価償却資産の特例
少額減価償却資産の特例とは、中小企業のみ認められる特例です。取得価額が10万円以上30万円未満の減価償却資産について、購入した会計年度に取得価額全額を減価償却費として計上できます。
設備投資の減価償却費で節税できる?
減価償却費は税務上の損金となるため課税所得が減り、節税効果があります。
ただし中古車の購入など節税として有名な手法の節税効果は、購入した会計年度に限られることがほとんどです。中長期的に節税効果があるかは、企業の次会計年度以降を考慮して検討する必要があります。
節税効果があるといわれている有名な手法は次のとおりです。
特別償却(税制優遇制度)
特別償却は投資した会計年度に多額の減価償却費を計上できる制度です。購入した会計年度に多額の利益を計上する見込みがある場合、その会計年度においては節税できる可能性があります。
ただし翌期以降は特別償却が少ないため、中長期的に見ると課税の繰り延べ効果であるといえます。
中小企業経営強化税制や中小企業投資促進税制などは特別償却と税額控除を選択することができます。黒字企業が節税したい場合は税額控除を選択するほうが有利となる可能性があります。
中古資産の購入
中古自動車など法定耐用年数が短い(購入当初に減価償却費として計上できる金額が多い)中古資産を購入し、定率法による減価償却費を増やす方法です。
この方法は、購入する会計年度における減価償却費が多いものの、翌期以降は減価償却費が急速に減少します。中長期的には特別償却と同じく課税の繰り延べ効果であるといえます。
30万円未満の資産購入
上記の少額減価償却資産の特例を活用し、会計年度末近くに30万円未満の器具や備品などを購入する方法が有名です。
この方法は、購入する会計年度においては節税効果がありますが、最終的には通常の減価償却と経費となる金額は同じです。節税目的で不要不急の資産を購入しないよう注意しましょう。
設備投資は減価償却費の範囲内ですべき?経営力アップにつながる設備投資の判断基準
設備投資を減価償却費の範囲内に抑えると、現在の設備を更新する以上の投資はできないこととなります。減価償却費は、過去の設備投資を法定耐用年数で分割して費用としているためです。
しかし企業を成長させるためには、工場の新設や機械の増設などに多額の資金を投じるべきタイミングがあります。
設備投資する際、「本当に投資に見合った収益が上がっているのだろうか」と不安になるかもしれません。この時の判断基準としては2つの観点があります。
- 投資対効果が見込めるか:削減されるコストの額・回収期間など
- 資金繰りに悪影響はないか:預貯金の残高・収入と支出のバランスなど
これらの観点を踏まえ、設備投資が適しているかを判断する基準として、次の3つの考え方があります。
回収期間法
回収期間法とは、設備資金に費やした資金がどれだけの期間で回収されるのかを分析する方法です。
回収期間は、次の計算式で求めます。
回収期間=設備投資額/各期の平均キャッシュフロー |
例えば、設備投資1,000万円、各期の平均キャッシュフローを200万円とすると、回収期間は5年です。
このように計算が単純でわかりやすい点がメリットです。
反面、次のようなデメリットもあります。
- 設備資金を回収後のキャッシュフローについては考慮されていない
この例であれば、回収期間5年目以降も設備として使用するなら、設備を使用する効果が判断できない点がデメリットです。
- 貨幣の時間価値を考慮していないため、判断することを誤る
毎期の平均キャッシュフローが200万円ですが、1期目の200万円と2期目の200万円とでは価値が異なるという点です。1期目の200万円は運用利息がつくため、現在の200万円以上の価値となります。
回収に必要な期間を算出することで、キャッシュフローへの影響を中長期的に評価できます。
もし、負担が大きいと感じるならば、余裕を持った金額や返済計画で融資を受けるなどの検討が必要です。
また、期間を踏まえて「本当に投資対効果があるのか」の評価も可能です。回収期間が10年など長期に及ぶならば、投資効果は薄いかもしれません。
現在価値法
現在価値法(NPV法)とは、将来の価値を現在の貨幣価値に置き換えて計算した金額が設備投資金額を上回っているかどうか判断する手法です。
例えば、毎年10%の利回りで運用でき、平均キャッシュフローを200万円とすると、1年後の200万円は、現在価値では(100%+10%)で割った1,818,181円です。つまり、1,818,181円は1年後200万円となります。
特徴として、貨幣の時間的価値を織り込んでいる点は回収期間法より優れていますが、毎年の利回りをいくらで設定するか判断が難しい点です。
内部収益率法
内部収益法(IRR法)とは、設備投資により将来生み出すキャッシュフロー利回り(内部収益率)を算出し、設備投資に関して企業が考えている内部収益率が上回っているのかどうかを判断する方法です。
設備投資に企業が求める利回りをどの水準に設定するのかがとてもシビアな問題であります。また、表計算ソフトでIRR関数を使用することにより、簡単に計算できます。
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設備投資:まとめ
設備投資は、企業が企業拡大を図るために必要な固定資産を購入することです。設備投資の目的は売上拡大、老朽化による買い替え、経営改善によるものがあります。
会計では年数が経過すると生産性の低下、資産の劣化などを考慮して減価償却し、固定資産税額より差し引くといった会計処理をおこないます。
減価償却は、それぞれの固定資産の法定耐用年数に応じて毎年費用として計上します。そのため、設備投資と減価償却とは密接に関わっています。
設備投資をおこなう判断基準として、回収期間法と現在価値法、内部収益法がありますが、現在価値法、内部収益法は設定利回りなど決定判断が難しく、中小企業では現在価値法を使用することが適切です。
設備投資には多額の資金が必要です。将来に向けた業績の見通しから、投入した資金が回収できるかを十分検討し、設備投資をおこないましょう。
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