
先端設備等導入計画とは?制度概要や申請要件と流れを解説
「先端設備等導入計画(制度)」とは、中小企業の設備投資を支援し、労働生産性の向上を図ることを目的とした制度です。
生産性向上に向けた設備投資等をおこなう計画、「先端設備等導入計画」を策定し、認定を受けると、国から補助支援を受けられます。
今回は先端設備等導入計画の制度や要件、利用の流れについて解説します。
目次[非表示]
- 1.先端設備等導入計画は「中小企業等経営強化法」に基づく施策
- 1.1.制度の概要
- 1.2.支援策(税制措置・金融支援)
- 1.3.投資利益率の概要と計算
- 2.先端設備等導入計画の主な要件
- 2.1.中小事業者等であること
- 2.2.適用期間を満たすこと
- 2.3.設備条件を満たすこと
- 3.今までの支援制度との違い
- 4.先端設備等導入計画を申請する流れ
- 4.1.制度の利用を検討/事前確認・準備
- 4.2.「先端設備等導入計画」の作成
- 4.3.認定経営革新等支援機関による確認
- 4.4.従業員への賃上げ方針表明
- 4.5.申請・認定
- 5.まとめ
先端設備等導入計画は「中小企業等経営強化法」に基づく施策
先端設備等導入計画は、中小企業等経営強化法と呼ばれる法律に基づく、国を挙げての施策です。
制度の概要
「先端設備等導入計画」は、中小企業等経営強化法に規定された中小企業者が、先端の設備投資によって生産性の向上を図るための計画を指します。
市区町村が「導入促進基本計画」の同意を受けていると、この計画について認定を受けられる仕組みです。
認定を受けた場合は、以下に解説する税制支援などの支援措置を受けることができます。
支援策(税制措置・金融支援)
先端設備等導入計画は、認定を受けた場合、以下の支援策を活用できます。
税制優遇 |
認定された計画に基づき、導入した一定の設備について、 |
金融支援 |
民間金融機関の融資に対する信用保証に関する支援を受けられます。 |
中小企業が市区町村から認定を受けた一定の設備を新規取得した場合、新規取得設備にかかる固定資産税の課税標準が以下のとおり変更されます。
- 基本:3年間2分の1
また、従業員に対する賃上げ方針の表明を含んでいる場合は、以下のとおり変更されます。 - 令和6年3月末までに取得した設備:5年間3分の1
- 令和7年3月末までに取得した設備:4年間3分の1
また、認定された事業者は資金調達に際して債務保証についての保証を受けられる仕組みです。
中小企業信用保険法の特例として、信用保証協会による信用保証を、普通保険等通常枠とは別枠で受けられるようになっています。
【参考】先端設備等導入計画策定の手引き(令和5年度税制改正後)l 中小企業庁
投資利益率の概要と計算
今回の申請から、投資利益率を考慮する必要があります。投資利益率とは、設備投資額に対して、営業利益や減価償却費がどの程度増加したかを割合で示したものです。式で示すと以下のとおりです。
投資利益率 = (営業利益 + 減価償却費) の増加額 / 設備投資額
計画を立てる際には、この投資利益率が年平均で5%以上になるようにしなければなりません。5%未満の効果しか見込まれない計画については、認定を受けることが不可能です。
先端設備等導入計画の主な要件
先端設備等導入計画の認定を受けるためには要件を満たすことが求められます。これから先端設備等導入計画の認定を受けるために、要件を確認しておきましょう。
【参考】経営サポート「先端設備等導入制度による支援」l 中小企業庁
【参考】先端設備等導入計画策定の手引き(令和5年度税制改正後)l 中小企業庁
中小事業者等であること
中小事業者等とは、資本金もしくは出資金の額が1億円以下の法人を指します。
なお、資本金もしくは出資金を有しない法人ならば、常時使用する従業員数が1,000人以下の法人です。また、常時使用する従業員数が1,000人以下の個人も含まれます。
【参考】先端設備等導入計画策定の手引き(令和5年度税制改正後)l 中小企業庁
適用期間を満たすこと
先端設備等の取得期間は、令和6年4月1日から令和7年3月31日に限られています。特例はありません。
設備条件を満たすこと
対象となる設備は、年平均の投資利益率が5%以上となることが見込まれる必要があります。
また、投資計画において、目的を達成するために必要不可欠な設備のみです。他にも、最低価額について以下の基準があります。
設備の種類 |
最低価額 |
機械装置 |
160万円以上 |
工具 |
30万円以上 |
工具備品 |
30万円以上 |
建物附属設備 |
60万円以上 |
【引用】先端設備等導入計画策定の手引き(令和5年度税制改正後)l 中小企業庁
今までの支援制度との違い
2023年4月まで実施されていた先端設備等導入計画の制度と現在の制度には違いがあるため、以下のとおりまとめています。
前回まで |
今回 |
|
必要書類 |
計画書 工業会等による証明書 |
計画書 認定支援機関からの確認書 賃上げ方針の確認書 |
要件 |
対象設備が最低価額と 工業会等による証明書が発行されること |
対象設備が最低価額を満たすこと 年平均5%以上の |
税制措置 |
固定資産税軽減 |
固定資産税軽減(2分の1) |
適用期間 |
令和5年3月31日までに取得 |
令和7年3月31日までに取得 |
申請のルール |
なし |
押印が不要 |
【参考】先端設備等導入計画策定の手引き(令和5年度税制改正後)l 中小企業庁
先端設備等導入計画を申請する流れ
先端設備等導入計画を活用するならば、以下の流れで申請を進めましょう。
制度の利用を検討/事前確認・準備
最初に、新たに導入する設備が所在する市区町村が「導入促進基本計画」を策定しているかを確認しなければなりません。すべての市区町村で利用できるのではないため、中小企業庁のWebで最新情報の確認が必須です。
なお、認定を受けられるかどうかは、新規取得する設備を設置する市区町村で考えなければなりません。
また、認定を受けるためには、該当する新規取得設備の取得日より前に「先端設備等導入計画」の策定・認定が必要です。
すでに取得した設備を対象とした計画は認められません。計画が認められるためには時間を要するため、設備の取得までのタイムラインを意識することが大切です。
【参考】先端設備等導入計画策定の手引き(令和5年度税制改正後)l 中小企業庁
「先端設備等導入計画」の作成
市区町村が策定した「導入促進基本計画」を踏まえて計画を作成します。
すべての市区町村で同じ方針ではないため、申請先の内容を確認することが重要です。また、提出書類の様式が市区町村で定められているため、これらについても確認しておきましょう。
認定経営革新等支援機関による確認
「先端設備等導入計画」を作成したならば、認定経営革新等支援機関に確認を依頼しなければなりません。
中小企業庁より認定経営革新等支援機関一覧が公開されているため、こちらを参考にします。内容について、問題がないと判断されなければ、市区町村への申請は不可能です。
税制措置を受けたいと考えるならば、新規取得設備にかかる投資計画について、認定経営革新等支援機関に確認を依頼する必要があります。申請内容によっては「先端設備等導入計画」と「投資計画」の2種類の計画を確認してもらう流れです。
【参考】先端設備等導入計画策定の手引き(令和5年度税制改正後)l 中小企業庁
従業員への賃上げ方針表明
税制措置を受けるにあたって、従業員の賃上げ方針を採用するならば、これを表明しなければなりません。
賃上げ方針を策定し、従業員あるいは従業員代表へ表明しましょう。表明に対しては、従業員から賃上げ方針の表明を受けた事実を書面などで残してもらう必要があります。
申請・認定
書類の作成と確認などが完了すれば、市区町村長に認定申請書を提出します。
市区町村ごとに、必要な添付書類が定められているため、これらも添えて申請するようにしましょう。受理されれば審査が開始されます。申請が認められ、認定を受けたならば、市区町村長から認定書が交付される流れです。
なお、認定された後は、税制措置・金融支援を受けながら、計画に沿った活動に取り組まなければなりません。生産性向上や賃上げを実現できるように活動していきます。
まとめ
中小企業の労働生産性の向上、企業の発展のためには、新たな設備投資は有効です。
国による設備投資支援制度をうまく活用し、企業の生産性向上に役立てましょう。
先端設備等導入計画をはじめ、支援制度について日頃から、習慣的に情報収集をし、制度について理解、把握することが大切です。
先端設備等導入計画を活用し、設備投資にかかる費用(税金)をおさえ、賢く設備投資をしましょう。