人手不足企業への支援策!106万円・130万円の壁を越えても扶養となる支援策とは
パートタイムなどの短時間勤務の従業員が、社会保険料の負担や扶養に入ったまま働く時間を増やすための支援制度『年収の壁・支援強化パッケージ』が開始されています。
本記事では人手不足解消策の支援策である『年収の壁・支援強化パッケージ』の活用法を解説します。
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106万円の壁、130万円の壁とは
『106万円の壁』『130万円の壁』といわれる『年収の壁』とは、パートタイム従業員などの短時間従業員が、社会保険料の負担や扶養から外れることで収入が減ってしまうことを避けるため勤務時間を抑制する年収のことです。
扶養に入っている従業員が最も気にする年収が106万円と130万円です。
106万円の壁、130万円の壁に該当する従業員の条件は次のとおりです。(従業員数の条件は2024年9月30日までの基準です)
【引用】年収の壁、突破へ|首相官邸
社会保険料負担が発生する106万円の壁
従業員数101名以上の企業の場合、パートタイムやアルバイトの従業員が年収106万円以上となると、厚生年金保険と健康保険への加入負担が発生し、従業員の手取り収入が減少します。
被扶養者(国民年金の第3号被保険者)自身の年収が106万円以上の場合、厚生年金保険料などの本人負担は月12,500円です。また同額の会社負担も発生します。
【引用】「年収の壁」への当面の対応策|厚生労働省
なお2024年10月以降は対象となる企業の従業員数が引き下げられます。従業員数51名以上100名以下の企業が新たに対象となります。
年金負担が発生する130万円の壁
年収130万円以上となると、国民年金保険料と国民健康保険料の合計で月22,700円の本人負担が発生します。
さらに、従業員が60歳以上および障害年金受給要件に該当する場合は、年収180万円以上で健康保険の加入義務が発生します。
ほかにもある年収の壁をまとめると全部で6種類
年収の壁は『106万円』『130万円』だけではありません。主な年収の壁は次のとおりです。
年収の壁 |
従業員における影響 |
100万円 |
・住民税の負担が発生 |
103万円 |
・所得税の負担が発生 |
106万円 |
・社会保険の扶養から外れる。 |
130万円 |
国民年金、国民健康保険料が発生 |
150万円 |
配偶者特別控除の控除額が減少 |
201万円 |
配偶者特別控除がなくなる |
【参考】タックスアンサー No.1800 パート収入はいくらまで所得税がかからないか|国税庁
106万円の壁を越えても働く従業員を支援する会社への補助金
従業員数101名以上の企業(2024年10月1日からは従業員数51名以上)のパートタイム従業員が年収106万円を超えても働きやすくする支援策が講じられています。
【引用】『年収の壁・支援強化パッケージ』概要リーフレット|厚生労働省
支援策の内容は次のとおりです。
- キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)
- 社会保険適用促進手当の支給時における社会保険料算定対象からの除外
【引用】『年収の壁・支援強化パッケージ』概要リーフレット|厚生労働省
キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)は次の3つのメニューにわかれています。
-
手当等支給メニュー
社会保険適用促進手当の支給が対象となります。
新たに社会保険の対象となる従業員の収入を増やすために、従業員負担額を社会保険適用促進手当として支給する企業へ、3年間で1名あたり最大50万円が助成されます。 -
労働時間延長メニュー
勤務時間の延長と賃上げの組み合わせが対象です。
所定労働時間の延長させることで社会保険の対象となる従業員がいる企業へ、1名あたり最大30万円が助成されます。
週所定労働時間を4時間以上増やす場合は賃上げは不要です。 -
併用メニュー
1年目に手当等支給メニューに取り組み、2年目に労働時間延長メニューに取り組む企業が対象です。
キャリアアップ助成金は、事前にキャリアアップ計画書を提出する必要があります。社会保険適用促進手当の支給などの取り組みを6か月おこなうごとに、2か月以内に支給申請するなど、受給できる条件が複雑であるため、詳しい専門家への相談がおすすめです。
社会保険適用促進手当とは、従業員が新たに社会保険適用となる場合の従業員負担額を企業が追加支給する手当のことです。給料や賞与とは別に支給する費用があります。追加支給額が標準報酬月額、標準賞与額の15%以上となるとキャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)の対象となります。
130万円を超えても扶養の範囲内!『被扶養者認定の円滑化』とは
『被扶養者認定の円滑化』とは、パートタイム従業員の半数以上が勤務時間の上限と考えている『130万円の壁』を超えても扶養から外れない特例です。2023年10月20日から導入されています。
『被扶養者認定の円滑化』とは
『被扶養者認定の円滑化』とは、人手不足などにより一時的に勤務時間が増える『一時的な収入変動』により扶養の範囲を超える収入となったことを証明することで、扶養に入ったままとする特例制度です。
この制度のポイントは次の3点です。
- 人手不足などによる一時的な収入増加
- 収入増加の上限額なし
- 一時的であることを事業主が証明
【引用】パート・アルバイトで働く「130万円の壁」でお困りの皆様へ(リーフレット)|厚生労働省
この特例を適用するための手続きは次のとおりです。
- 健康保険組合などによる被扶養者の資格確認(または新たに被扶養者の認定をうける際)時に作成
- 提出先の確認頻度にあわせた期間について、事業主が『被扶養者の収入確認に当たっての「一時的な収入変動」にかかる事業主の証明書』を作成
(例1)毎年11月に直近1年間の収入証明書を提出している従業員
直近1年間について作成
(例2)被扶養者の通算年収が130万円以上となったときに提出するが必要な従業員
通算した期間について作成
(例3)毎年11月に被扶養者の課税証明書を提出している従業員
課税証明書の対象期間(前年の所得)と同様に、前年について作成 - 被保険者が健康保険組合へ提出
- 健康保険組合が審査
最長2年間まで認められる『一時的な収入変動』
『一時的な収入変動』とは、人手不足や売上増加に伴う残業の増加や臨時給与の支給などが理由です。基本給があがったなど継続的な収入の増加は対象外です。
また従業員ごとに原則として連続2回までとされています。つまり被扶養者の年収確認が年1回の従業員の場合、連続する2年間が上限となります。
対象となる従業員の範囲、対象とならないフリーランス
対象となる従業員は主婦などの配偶者(国民年金第3号被保険者)、学生など社会保険の被扶養者についても対象です。
対象外となる従業員とはフリーランスや自営業者などです。特定の事業主との雇用関係がない場合は対象となりません。
なおフリーランスの収入と給与収入の両方がある従業員については、給与収入が一時的に増加したことによって年収が増加した場合は対象となります。
人手不足対策は待ったなし!人手不足企業が検討すべき対策
当面だけでなく『2030年問題』など長期的に人手不足が続くといわれており、企業は対策を講じておく必要があります。中小企業における主な人手不足対策は次のとおりです。
人材採用の見直し
人材採用のスタートである求人方法を見直しします。おすすめは求人票の見直しです。例えばハローワークの求人票を見直すときのポイントは次のとおりです。
- 更新により新着情報として扱われるようにする
- 閲覧する求職者が多い職種と仕事内容に力を入れる
- 仕事内容欄の360字、特に冒頭で仕事内容をわかりやすく記載する
- 仕事内容は一日が想像できるほど具体的に記入する
- 会社の雰囲気や従業員の業務内容がわかる写真を掲載する
求人票の記載内容を見直すときは、詳しい専門家の添削サービスの利用などがおすすめです。
【関連動画】給与は悪くないのに応募が来ない!?求人票の内容を改善する方法はありますか?|F&M Club
労働環境の改善
従業員が安心して働くことができる環境づくりは、人材採用と従業員の定着率向上につながります。また就業規程が最新の労働法に準拠していないと助成金を受給できない可能性があることに注意します。
就業規程の整備は以下の観点が大切です。
- 自社の業務にあった内容とする
- 最新の労働法にあわせる
- ハラスメント防止など従業員の安心につながる内容を盛り込む
- マイカー通勤規定など関連規定とあわせて整備する
省人化・省力化のための投資
人手不足の解消に時間がかかる可能性などを想定し、省力化投資、省人化投資に取り組みます。例えば必要な人員が少なく済む自動化ラインを設置する、従業員の身体的な負荷を軽減する省力化機械を導入するなどです。
また作業現場や店頭だけでなく、自社の総務などバックオフィス業務のIT化による生産性向上も検討しましょう。
投資に必要な資金は補助金や助成金の活用を優先的に検討します。『ものづくり補助金』『IT導入補助金』『業務改善助成金』などがあげられます。
人材採用、働き方改革における対応は専門家を活用
人材採用などは助成金が数多く設けられています。助成金は制度の種類が多いことに加えて、適用要件が細かく定められていることが多くあります。
自社の取り組みが対象となる助成金を調べる、助成金の申請書を作成するなどの負担が重いため、専門家の活用が忙しい経営者の助けとなります。
まとめ
106万円の壁、130万円の壁など年収の壁を越えて従業員が働くことができる環境が整いつつあります。
人手不足に悩む企業においては人材採用の強化とともに、現在の従業員に有効に活躍してもらう方法を検討しましょう。
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