
赤字決算で会社はどうなる?業績の立て直しや税金の扱いについて徹底解説
赤字決算になると、すぐに会社が潰れるのではないかと不安になる方も多いでしょう。赤字決算でも自己資金が十分にあれば、経営は存続できます。ただし、長期にわたって赤字が続けば自己資金が枯渇して債務不履行となり倒産につながってしまいます。
今回は赤字決算について概要・メリット・デメリット・脱却方法などを解説します。赤字決算からいち早く脱却し、自社の経営を安定化させたい経営者はぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.赤字決算の会社がすぐには潰れない理由
- 2.赤字決算とは?資金ショート、債務超過、黒字倒産との違い
- 3.赤字の種類は4つ!決算書の赤字はどこを見るとよい?
- 4.赤字でも潰れない会社の特徴
- 4.1.自己資金が十分にある
- 4.2.前年は利益が出ている
- 4.3.事業以外の収入源がある
- 5.会社の約6割が赤字!赤字決算のメリットデメリット
- 6.赤字決算になるメリット
- 6.1.法人税軽減につながる
- 6.2.赤字分を繰り越せる
- 6.3.法人税の還付が受けられる
- 7.赤字決算になるデメリット
- 8.赤字決算で支払う・免除される税金
- 9.3期連続赤字は倒産リスク大!赤字決算から業績を立て直す方法
- 9.1.事業を改善して売上を向上させる
- 9.2.キャッシュフローの管理を徹底する
- 9.3.コストを削減する
- 9.4.過剰在庫を処分する
- 9.5.リストラを実行する
- 10.赤字決算でも資金調達は可能!資金調達方法別のメリットデメリット
- 11.赤字決算・赤字会社に関するよくある質問
- 11.1.赤字決算の個人事業主は確定申告が不要?
- 11.2.赤字決算は決算書のどこを見ればいい?
- 11.3.中小企業がわざと赤字決算とするからくりは?
- 11.4.3期連続赤字の決算だとどうなる?
- 12.赤字からの業績立て直しはF&MClubがサポート
赤字決算の会社がすぐには潰れない理由
赤字決算となった会社がすぐに潰れるわけではありません。会社が借り入れや事業以外の収入など赤字を補う資金調達ができていれば潰れることなく、事業を継続できます。
また市場の変動・新製品の開発・事業拡大など、さまざまな要因で一時的に赤字決算となった後は、適切な対策をおこなうことで会社を立て直すことができます。
赤字経営であってもすぐに会社が潰れるとは限らないものの、黒字の会社であっても資金が不足すると潰れてしまうこととなるため、経営者は資金不足とならないよう十分に注意することが大切です。
赤字決算とは?資金ショート、債務超過、黒字倒産との違い
赤字決算とは、会社の損益計算書において利益がマイナスとなった状態のことです。会社が一定期間(通常は1年)において支出が収入を上回る状況となったことを指します。
赤字決算と似た用語として、「資金ショート」「債務超過」「黒字倒産」の3つがあります。
資金ショート
資金ショートとは、会社が直近の支払いすらできないほど手元の資金がない状況です。収入よりも支出が多い状態を指す赤字と異なります。
資金ショートの原因は、「売上が予想よりも低かった」「予期せぬ大きな出費が発生した」などです。また黒字の会社であっても「取引先からの支払いが遅れた」場合などに資金ショートとなることがあります。資金ショートは会社経営にとって危機的で、最悪の場合は倒産につながる可能性があります。
債務超過
債務超過とは、会社の負債が資産を上回る状況です。会社のプラスの財産(資産)をすべて現金化してもマイナスの財産(負債)が残る状態を指しています。
債務超過となっている会社は、金融機関から融資を受けることが難しくなり、倒産に至る可能性が高まります。
黒字倒産
黒字倒産とは、事業で利益が出ていて黒字であるのにもかかわらず、資金繰りの失敗などで会社が潰れる状況を指します。
黒字倒産が起こる主な理由は、資金繰りに失敗してしまった場合、多額の負債があり返済が追いつかなかった場合などです。
黒字倒産を回避するためには入出金の状況を把握し、余裕をもったキャッシュフロー計画を立てて売掛金の回収を早めながら支払いを遅くするなどの対策が有効です。
赤字の種類は4つ!決算書の赤字はどこを見るとよい?
会社の「赤字」には4つの種類があります。
「売上総利益の赤字」「営業利益の赤字(営業損失)」「経常利益の赤字(損失)」「当期利益の赤字(当期純損失)」など、赤字となっている利益によって会社の状況が異なります。
売上総利益の赤字
売上総利益の赤字とは、売上から売上原価を引いた金額がマイナスとなっている状況です。下記の計算式で求められます。
-
売上総利益=売上高-売上原価
売上総利益が赤字の場合は売上原価より安く売っている状態となっています。販売するほど赤字が拡大する恐れがあります。事業が成り立っていない証拠でもあるため、早急に改善が必要です。
営業損失
営業損失とは、本業での営業利益が得られていない状況です。下記の計算式で求められる営業損益がマイナスな状態を指します。
- 営業利益=売上総利益 -販管費および一般管理費
営業損失となっている会社は、本業による儲け(売上総利益)よりも販売費および一般管理費が多い状況です。「売上を増やす」「原価や経費を削減する」などの取り組みをおこなう必要があります。
経常損失
経常損失とは、営業損益に営業外収益をプラスして営業外費用を差し引いて計算できる経常損益がマイナスとなっている状況です。 計算式は以下のとおりです。
- 経常損失=営業損益+営業外収益-営業外費用
通常の事業活動全体で損失が出た状態を示します。
当期純損失
当期純損失とは、税引前当期純利益(純損失)から法人税などの税金と、法人税等調整額を差し引いた後の金額がマイナスの状況です。計算式は以下のとおりです。
- 当期純損失=税引前当期純利益(損失)-法人税など
本業で利益が出ていても、多額の退職金や固定資産の売却などで多額の損失が発生した場合にマイナスとなることがあります。
赤字でも潰れない会社の特徴
赤字でも潰れない会社の特徴として主に以下の3つが挙げられます。
自己資金が十分にある
自己資金とは会社が自分の力で集めたお金を指し、株主からの出資金・事業活動から生じた利益などが含まれます。自己資金が十分にあれば、会社が一時的な赤字を出しても支払いをおこなえるためすぐには倒産しません。また、自己資金が豊富な会社は新たな事業投資をおこなう余裕があり、赤字からの立ち直りも期待できます。
前年は利益が出ている
前年に利益が出ている場合は、一時的な要因で赤字となった可能性があります。前年の成功を元に事業戦略を見直し、赤字からの立ち直りを図ることも可能です。
事業以外の収入源がある
事業以外の収入源があると、主力事業が一時的に赤字を計上したとしても損失の補填が可能です。事業以外の収入源とは、投資収益・不動産の賃料収入などが挙げられます。
会社の約6割が赤字!赤字決算のメリットデメリット
2024年6月に国税庁が発表した「国税庁統計法人税表」によると、赤字決算となった会社の割合は64.8%です。
経営者同士の会話で「節税のため、わざと赤字にする」と聞いたことがある人もいるでしょう。赤字決算となることで次のようなメリットとデメリットが生じます。
【赤字決算のメリット】
- 法人税負担が軽くなる
- 法人税還付を受けることができる
【赤字決算のデメリット】
- 金融機関、取引先などから自社への信用が低下する可能性がある
- 借り入れ時の条件が悪くなる、融資を受けられない可能性がある
- 従業員が不安を感じる、離職が増加するなど社内が不安定となる可能性がある
- 経営者の個人保証を求められる、解除できないなどの可能性がある
赤字決算になるメリット
赤字決算は会社に何か問題が発生している状態を意味しますが、以下のとおり赤字決算になるメリットもあります。
法人税軽減につながる
赤字決算の会社は法人税が軽減されます。法人税は会社の利益に対して課税されるためです。
赤字分を繰り越せる
赤字決算の会社は、ある年において発生した赤字を翌年以降に繰り越して将来の利益と相殺できる「繰越欠損控除」制度があります。
繰越欠損控除を利用すると、損失を最大10年にわたって利益と相殺でき、法人税額を減額できます。ただし、資本金が1億円を超える法人は年ごとに控除できる金額に制限があるため注意が必要です。
法人税の還付が受けられる
資本金1億円以下の法人が赤字を出した場合、前期に納付した法人税の一部が返金される制度を利用できます。還付される金額は、前期に支払った法人税額が上限です。前期よりも前に支払った法人税は、還付の対象となりません。
赤字決算になるデメリット
赤字決算になるデメリットは主に、以下の2つが考えられます。
信用度が低くなり融資を受けられない可能性がある
赤字決算の会社は金融機関から融資を受けられない可能性があるほか、融資を受けられたとしても利率が上がるなどの可能性もあります。
また信用調査の結果、取引先から自社への信用が低下し、与信枠の縮小や支払いサイトの短縮など取引に影響を及ぼす可能性があります。
赤字が継続して債務超過になれば倒産する
債務超過が続くと取引先への支払いが難しくなり、最終的には倒産する可能性があります。赤字決算が続いている会社は早期に改善することが必須です。
赤字決算で支払う・免除される税金
赤字決算の会社は基本的に法人税を支払う必要がありません。赤字決算の場合、課税対象となる利益がないためです。
しかし、赤字決算でも支払う必要がある税金はいくつかあり、代表例は以下の表のとおりです。
赤字決算で免除される税金 |
赤字決算でも支払う税金 |
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3期連続赤字は倒産リスク大!赤字決算から業績を立て直す方法
会社は赤字が続くと債務超過に陥り、借り入れなど資金調達が困難となって、資金不足により倒産する可能性が高まります。赤字決算から立て直す主な方法として以下の5つが挙げられます。
事業を改善して売上を向上させる
売上を増やすためには顧客のニーズに応える製品・サービスを提供する必要があります。また広告宣伝の強化や販売価格の引き上げなども有効です。
キャッシュフローの管理を徹底する
キャッシュフローとは、会社の現金の流れを指します。売掛金の回収を早める・買掛金の支払いを遅らせるなどキャッシュフローの管理を強化することで現金を確保できます。
コストを削減する
コスト削減は生産コスト・人件費・運営費の改善など事業全体にわたる取り組みが必要です。具体的な対策として、生産効率の向上・無駄な経費の削減・人員配置の最適化などが考えられます。
ただし、コスト削減は製品の品質・サービスのレベルを維持しながらおこなうことがポイントです。
過剰在庫を処分する
過剰在庫の処分は保管コストの削減などに効果があります。
在庫管理の改善・需要予測の精度向上・生産計画の最適化などにより、過剰在庫を防ぐ取り組みをおこないましょう。
リストラを実行する
リストラとは組織の再構築・人員削減をおこなって経費を削減し、経営効率を向上させる取り組みです。ただし、リストラは従業員の士気や自社の社会的評価に悪影響を与える可能性があるため慎重な計画・実行が必要です。
赤字決算でも資金調達は可能!資金調達方法別のメリットデメリット
赤字決算であってもさまざまな方法で資金調達が可能です。具体的な3つの方法とそれぞれのメリットデメリットは以下のとおりです。
補助金・助成金
補助金や助成金を申請し受給する方法です。設備投資が対象となる補助金や賃上げが対象となる助成金など数多くの公的支援策が講じられています。
メリットは、原則として返済が不要の資金を得られることです。デメリットは、自社が受給できる可能性がある制度を探すために時間がかかる、申請書類の作成が負担となる、補助金は審査に通過する(採択される)ことが必要であるなどです。
不動産担保ローン
不動産担保ローンとは、不動産を担保として融資を受ける方法です。メリットは赤字会社であっても借り入れできる可能性があることです。デメリットは、万が一返済不能になった場合は担保とした不動産を失うことです。
リースバック
リースバックとは、不動産を売却し資金化する方法のひとつです。不動産売却と同時に賃貸借契約を締結します。メリットは売却後も同じ不動産を利用できる、一時に多額の資金化が可能などです。デメリットは、リースバックできる不動産が限られる、賃借料を支払う必要があるなどです。
ファクタリング
ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社に売却し資金化する方法です。
メリットは、未回収の売掛金を即座に現金化できる、負債が増えないなどです。デメリットは、債務者である取引先の信用度が低い場合は利用できない可能性があることです。
赤字決算・赤字会社に関するよくある質問
赤字決算や赤字会社についてのよくある質問は次のとおりです。
赤字決算の個人事業主は確定申告が不要?
個人事業主が赤字の場合は確定申告する義務はありません。しかし赤字決算であっても確定申告することで以下のメリットがあります。
- 損失の繰越による将来の節税
- 所得証明書の発行
- 国民健康保険料の軽減措置
赤字決算は決算書のどこを見ればいい?
会社の決算書のうち損益計算書の利益を見ます。売上総利益、営業利益、経常利益、当期利益の4種類のうち、いずれの利益が赤字となっているかによって会社に対する見方が異なります。本記事の解説を参考に、赤字の見方と問題点を理解することがおすすめです。
中小企業がわざと赤字決算とするからくりは?
会社がわざと赤字決算とする主な理由は、法人税の負担を軽くするためといわれています。
会社が赤字決算となることで税負担は軽くなるものの、資金調達が難しくなる可能性があるなど、デメリットもあります。わざと赤字決算とする節税方法は原則としておすすめできないといえるでしょう。
3期連続赤字の決算だとどうなる?
3期間以上連続して赤字決算となると、金融機関から融資を受けられなくなる可能性が高くなります。長期間にわたって赤字が続く会社は、構造的に課題がある、改善が進んでいないなどと厳しく見られるためです。
また、信用調査の内容を見た取引先が自社に対して不安を感じ、取引条件が悪くなる可能性もあります。
赤字からの業績立て直しはF&MClubがサポート
赤字決算でもすぐに会社が倒産するわけではありませんが、赤字が長期間続けば倒産してしまいます。赤字経営から早期に脱却して安定的な経営に改善させましょう。
しかし、経営者自身で資金繰りの問題を解決することは非常に困難といえるでしょう。
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