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社会保険料の改定とは?算定・月変の違いと実務上の注意点を解説

株式会社エフアンドエム

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社会保険料は従業員の給与をもとに決まる「標準報酬月額」によって計算されます。ただ、給与が昇給・降給・手当変更などで変動した場合、実際の給与と報酬月額にズレが生じるかもしれません。そのため、定時決定、いわゆる「算定」や、随時改定、いわゆる「月変」による見直しが必要です。

 

本記事では、社会保険料の改定に関する基本ルールと、実務で間違いやすい固定的賃金・遡及払い・支払基礎日数の判断ポイントを解説します。

目次

社会保険料の改定とは

社会保険料の改定とは、健康保険・厚生年金保険の保険料計算に使う標準報酬月額を見直す手続きです。標準報酬月額が実際の給与水準と大きくずれたままだと、会社と従業員の保険料負担が実態に合わなくなります。

標準報酬月額を見直す手続き

標準報酬月額とは、従業員の報酬を一定の等級に当てはめた金額です。社会保険料は、毎月の給与額そのものではなく、この標準報酬月額をもとに計算されます。

 

給与が上がったのに標準報酬月額が低いままだと、保険料が実態より少なくなるのです。反対に、給与が下がったのに標準報酬月額が高いままだと、従業員と会社の負担が重くなります。そのため、毎年1回の定期的な見直しが「算定」です。一方、年の途中で大きな給与変動があった場合に行う見直しを「月変」といいます。

算定と月変の違い

算定は、原則として全被保険者を対象に、年1回、標準報酬月額を見直す手続きです。日本年金機構は以下のように説明しています。

 

7月1日現在で使用している全被保険者について、4月・5月・6月の3か月間の報酬月額を届け出て、標準報酬月額を毎年1回決定し直す手続き

 

決定後の標準報酬月額は、9月から翌年8月まで適用される仕組みです。

 

一方、月変は、昇給・降給・手当変更などにより固定的賃金が変動した際に発生するものです。実際の給与と標準報酬月額に大きなズレが生じた場合に、年度途中で標準報酬月額を見直します。

 

【出典】算定基礎届(報酬月額の届出を行うとき)|日本年金機構

社会保険料の算定とは

算定は、正式には「定時決定」といい、社会保険料の年1回の定期メンテナンスにあたる手続きです。毎年の算定によって、従業員の標準報酬月額を実際の給与水準に近づけます。

4月・5月・6月に支払われた給与で決まる

算定では、その年の4月・5月・6月に実際に支払われた報酬のうち、支払基礎日数等の要件を満たす月の平均額を用い、標準報酬月額を決定します。ここで重要なことは、「4月・5月・6月に働いた分」ではなく、「4月・5月・6月に支払われた給与」を見る点です。

 

たとえば、月末締め翌月払いの会社では、4月支給給与が3月勤務分であることもあります。労働月と支給月を混同すると、算定対象月の判断を誤るため注意してください。

固定的賃金の変動は要件ではない

算定は年1回の定期的な見直しであるため、月変のように固定的賃金の変動は要件になりません。昇給や降給がなくても、対象者について4月・5月・6月の支給額をもとに標準報酬月額を見直します。

 

そのため、4月から6月に残業が多く、残業手当を含む報酬平均が等級の境界を超えた場合には、標準報酬月額が上がることがあります。その結果、9月以降の社会保険料が増えることがありえるのです。したがって、給与計算担当者は、単に3か月分の給与を平均するだけでは不十分です。支払基礎日数や一時的な報酬の扱いも確認しなければなりません。

【出典】定時決定(算定基礎届)|日本年金機構

社会保険料の月変とは

月変は、正式には「随時改定」といいます。年の途中で給与が大きく変わった場合に行う標準報酬月額の見直しです。算定と異なり、一定の要件をすべて満たした場合に対象となります。

月変の3要件

月変では、まず固定的賃金の変動が必要です。固定的賃金とは、基本給、役職手当、住宅手当、通勤手当など、支給額や支給率が決まっている報酬を指します。

要件

内容

固定的賃金の変動

基本給・手当・通勤手当・契約時間など、固定的な報酬に変動がある

支払基礎日数

変動月以後3か月間の支払基礎日数が基準を満たしている

2等級以上の差

3か月平均を等級表に当てはめた結果、従前と2等級以上の差がある

この3要件に加え、原則として、固定的賃金が上がった場合は平均報酬も上がり、固定的賃金が下がった場合は平均報酬も下がるという変動方向の一致が必要です。

なお、標準報酬月額の上限または下限にまたがる一定のケースでは、1等級差でも随時改定の対象となります。

改定は4か月目から適用される

月変では、変動した賃金が実際に支払われた月を起算月とし、その後3か月間の給与を確認します。その3か月平均で2等級以上の差が生じた場合には対応が必要です。そして、4か月目から新しい標準報酬月額が適用されます。

 

たとえば、4月支給給与で固定的賃金が変わった場合を考えましょう。このとき、4月・5月・6月の3か月を確認します。そして、要件を満たせば7月分から改定される仕組みです。

 

なお、7月・8月・9月のいずれかに月変の対象となる場合は、月変が優先されます。その年は算定ではなく、月変で決定された標準報酬月額が翌年8月まで適用されるのです。

【出典】随時改定(月額変更届)|日本年金機構

月変で注意すべき固定的賃金の落とし穴

月変で特に判断を誤りやすい部分が、固定的賃金の範囲です。固定的賃金は、基本給や手当額が変わった場合だけを指すわけではありません。

残業単価の変動も対象になり得る

残業において注意すべき点は、単に残業時間が増えたことではありません。残業代そのものは、通常、毎月変動する非固定的な報酬です。

 

注意が必要なポイントは、基本給が変わらないケースに潜んでいます。たとえば、会社カレンダーの変更などで年間所定労働時間が変わり、1時間あたりの残業単価が変動するケースです。この場合、残業単価の変動が固定的賃金の変動とみなされ、月変のトリガーになる可能性があります。

契約時間の変更にも注意する

時給額が同じ場合でも注意が必要です。契約上の所定労働時間が変われば、1日あたりまたは月あたりの固定給が変動します。たとえば、パート従業員の契約時間が1日6時間から7時間に変わった場合、時給単価が同じでも固定的な賃金は増えるのです。

 

パート・アルバイトの労働条件の変更が多い会社は特に注意しましょう。契約時間の変更と月変判定をセットで確認する運用が必要です。また、給与計算システムでは自動判定しにくい場合もあります。そのため、担当者が労働条件通知書や雇用契約書の変更内容まで確認することが重要です。

※会社のカレンダー変更や、時給者の「1日の契約労働時間の変更」があった月は、残業手当の「単価」が変わっていないか必ず確認しましょう。

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遡及払いは算定と月変で扱いが違う

昇給や手当変更が過去にさかのぼって決まり、差額が後から支払われることがあります。この遡及払いは、算定と月変で扱いが異なるため注意が必要です。

算定では3月以前分を除外する

本来であれば3月以前の給与(例:翌月払いの会社で、4月支給日に支払われた『2月勤務分(本来は3月支給)』の昇給差額など)として支払われるべきだったケースを考えます。昇給差額が4月から6月に支払われた場合、その遡及支払い分は除外して計算が必要です。

 

ここで重要なことは、社会保険では「いつ働いたか」ではなく、「いつの給与として支払われる予定だったか」で判断するという原則です。「3月以前分」とは、3月に働いた分という意味ではありません。3月以前に支払われる予定だった給与分を指します。

月変では実際に支払われた月が変動月になる

月変では、遡及差額が実際に支払われた月を変動月として扱います。たとえば、5月に4月分の昇給差額が支払われた場合、5月が変動月です。

 

ただし、3か月平均を計算する際には、遡及支払い分を除外します。この扱いを誤ると、月変の対象判定や改定後の等級を誤ることになりかねません。そのため、遡及支払いが発生した場合は、算定なのか月変なのかを分けて確認しましょう。

支払基礎日数の判定基準

算定や月変では、給与額だけでなく支払基礎日数の確認も必要です。支払基礎日数とは、報酬計算の基礎となった日数を指しますが、算定と月変では取扱いのルールが明確に異なります。

一般の被保険者は17日以上

一般の被保険者では、支払基礎日数17日以上が重要な基準です。4月・5月・6月のうち、支払基礎日数が17日未満の月は、算定の対象から除外されます。

 

日本年金機構も、算定において、4月・5月・6月の3か月間のうち支払基礎日数がいずれも17日未満の場合の扱いを示しています。

 

入退社、休職、欠勤控除がある従業員では、支払基礎日数を誤りやすいため注意が必要です。

パート従業員は加入条件によって基準が異なる

パートやアルバイトとして働く従業員は、どの条件で社会保険に加入しているかによって、支払基礎日数の基準が異なります。

対象者

定時決定(算定)

随時改定(月変)

一般の被保険者

4月・5月・6月のうち、17日以上の月を対象

変動月以後の3か月すべてが17日以上

正社員の4分の3以上働くパート等(正社員が週40時間なら週30時間以上が目安)

17日以上の月を対象。3か月すべて17日未満の場合は、15日以上17日未満の月を対象

変動月以後の3か月すべてが17日以上

週20時間以上などの条件を満たして社会保険に入るパート等

4月・5月・6月のうち、11日以上の月を対象

変動月以後の3か月すべてが11日以上

同じ「パート」でも、正社員の4分の3以上働いて社会保険に加入する人と、週20時間以上などの条件を満たして加入する人では、支払基礎日数の基準が異なります。雇用形態の名称だけでなく、どの加入条件で社会保険に入っているかを確認することが重要です。

 

また、月の途中で加入区分が変わった場合は、給与の締め日時点の区分で判断します。締め日時点で一般の被保険者であれば17日以上、週20時間以上などの条件で加入するパート等であれば11日以上が基準です。

 

一般の被保険者とパート等の区分が変わる場合は、「被保険者区分変更届」などの提出が必要です。そのため、勤務時間や雇用区分の変更履歴も確認しましょう。

まとめ

社会保険料の改定は、標準報酬月額を実際の給与水準に近づけるための重要な手続きです。年1回の定時決定である算定と、給与が大きく変動したときに行う随時改定である月変を正しく区別する必要があります。

 

算定は、4月・5月・6月に実際に支払われた給与をもとに標準報酬月額を決め、原則として9月分から翌年8月分まで適用される仕組みです。一方、月変は、固定的賃金の変動、変動後3か月の支払基礎日数、従前との原則2等級以上の差、固定的賃金と平均報酬の変動方向の一致などの要件を満たした場合に、4か月目から標準報酬月額を改定します。

 

実務で特に見落としやすい点は、次の3つです。

  • 残業単価や契約時間の変更が月変のトリガーになり得ること
  • 遡及払いの扱いが算定と月変で異なること
  • 支払基礎日数の基準が雇用区分によって変わること

社会保険料の改定ミスは、従業員の保険料負担や会社負担に影響します。算定・月変の時期には、給与データだけでなく、昇給履歴、手当変更、契約時間、遡及支払い、雇用区分を確認しましょう。そのうえで、必要に応じて社会保険労務士などの専門家に相談しながら進めることが大切です。

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