銀行の格付けとは?仕組みから自社の格付けを有利にする方法を解説!
格付けとは、銀行などの金融機関が決算書を統計的に分析した点数付けのことです。点数に応じてランク付けする「格付け」とそれに応じた「債務者区分」は、融資の可否や金利などを大きく左右します。
本記事では、金融機関がおこなう格付けの内容と自社の改善への活用方法について解説します。
目次 |
1.金融機関の格付けとは 1.1決算書に基づく定量的な分析 1.2決算書のココが見られています 2.CRDスコアとは 2.1CRDスコアとは 2.2多くの金融機関で採用 3.銀行の格付けと債務者区分の関係 4.債務超過解消年数、債務償還年数がカギ 4.1債務超過解消年数とは 4.2債務償還年数とは 4.3債務者区分が融資の生命線!? 5.銀行の格付けを活用して自社の経営を改善 6.金融機関の格付けを有利にする方法 6.1財務改善 6.2資金繰り表 6.3事業計画書 6.4定性情報も積極的に説明 7.自社の健康診断と資金繰り改善はエフアンドエムにご相談ください 8.まとめ |
金融機関の格付けとは
金融機関は融資先から受け取った決算書をデータ化し、統計的に分析します。分析結果は点数化され、点数に応じておよそ10から12の「格」に区分します。この区分する作業を「格付け」といいます。区分の数は金融機関によって異なります。
格付けは金融機関の内部で独自に計算する方法と、統計機関であるCRDのスコアを採用する方法があります。
決算書に基づく定量的な分析
格付け作業は、通常2期分の決算書で算出します。この時点では決算書に表れない競争力や今後の改善の可能性はあまり加味されません。
算出された点数のまま格付けする場合と、さらに会社の強みや改善計画の効果を加味する補正作業をおこなう場合があります。
決算書のココが見られています
決算書のすべての勘定科目がデータ化されるわけではありません。財務分析で重要な指標を構成する以下の勘定科目が中心となります。
(貸借対照表)
現金預金、売掛金や受取手形、棚卸資産やこれら以外の流動資産
償却資産、借入金、純資産の部の合計など
(損益計算書)
売上高、営業利益、経常利益、当期利益、減価償却費、支払利息など
一般的ではない勘定科目を使用している場合や決算書上の表示方法が他社と大きく異なる場合は、うまくデータ化されないこともあります。
CRDスコアとは
CRDスコアとは、金融機関が受け取った決算書のデータを分析し、「評点」「デフォルト確率」という数値として算出する手法の1つです。算出作業は、金融機関や信用保証協会と連携した一般社団法人CRD協会がおこないます。
CRDスコアとは
CRDスコアは次の流れで計算されています。
- 全国の銀行、信用保証協会などが受け取った決算書をデータ化する
- 蓄積されたデータから、倒産した企業の特徴(予兆)を分析する
- 融資先のデータと倒産した企業の特徴を突合し、点数と倒産の可能性を表示する
CRDスコアは膨大な情報から統計的に算出されるため、データの精度が高いといわれています。
多くの金融機関で採用
CRDスコアを計算するモデルのうち、モデル3(法人用)とモデル4(個人事業主用)は多くの金融機関が採用しており、信用保証協会51、民間金融機関96、政府系金融機関4など合計168金融機関が利用しています。(2022年4月1日時点)
信用保証協会においてはすべての協会で採用されており、CRDスコアの点数が融資に影響を与えます。
銀行の格付けと債務者区分の関係
金融機関がおこなう格付けは10から12の数値やアルファベットで表示され、格によって6つの債務者区分にわけられます。信用保証協会ではCRDスコアを9区分にわけて保証料率を決定しています。
下記はりそなグループにおける格付けと債務者区分の例です。同グループでは格付けを12区分に分けて、対応した債務者区分としています。金融機関によっては上位から1格、2格とも表示されます。
格付けの表示 |
意味 |
債務者区分 |
SA |
超優良 |
正常先
|
A |
優良 |
|
B |
良好 |
|
C |
水準以上 |
|
D |
水準 |
|
E |
水準比低位 |
|
F |
要注意I |
要注意先
|
G |
要注意II |
|
H |
要管理先 |
要管理先 |
I |
破綻懸念先 |
破綻懸念先 |
J |
実質破綻先 |
実質破綻先 |
K |
破綻先 |
破綻先 |
債務超過解消年数、債務償還年数がカギ
格付けと債務者区分を判定する時に重要な指標が「債務超過解消年数」「債務償還年数」です。
債務超過解消年数とは
債務超過解消年数とは、債務超過(純資産の部がマイナス)が資産超過(純資産の部がプラス)となるまでに必要な年数のことです。
簡便に債務超過÷当期利益などで計算します。
債務超過の解消に必要な年数が2年または3年を超えると債務者区分を引き下げされる可能性があります。
債務償還年数とは
債務償還年数は、利益で借入金を返済するために必要な年数を表します。
計算式は、(借入金―運転資金)÷(経常利益―法人税等+減価償却費)などが主流です。利益は当期利益で計算する場合もあります。
債務償還年数が10年を超えると資金繰りの改善が必要となる水準です。
債務者区分が融資の生命線!?
債務者区分は定量的に分析された格付けと、定性的な内容を加味して決定されます。
債務者区分は融資の可否に影響する、格付けで金利などの条件が決まる、と考えるとわかりやすいです。
一般的に、債務者区分が要注意先の場合は融資の審査が厳しくなります。さらに要管理先となると融資が困難な可能性が高くなります。
最新の決算が赤字の場合は、債務者区分が要注意先以下となることがあります。『赤字決算の翌年は、次の決算が出るまで融資が下りない』『融資の金利が急に高くなった』という事態を避ける工夫が必要です。
銀行の格付けを活用して自社の経営を改善
自社の格付けは公開されませんが、金融機関の担当者との会話や信用保証協会の保証料率から推測することもできます。
以下は東京信用保証協会の料率表です。料率区分は『一般社団法人CRD協会のリスク評価モデルにより判定される区分』と明示されています。
料率区分 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
保証料率(年、%) |
1.90 |
1.75 |
1.55 |
1.35 |
1.15 |
1.00 |
0.80 |
0.60 |
0.45 |
(責任共有一般保証制度、保証金額1,000万円超の無担保での料率)
【引用】信用保証料率表|東京信用保証協会
格付けは決算の数値を分析したものであり、会社にとっては年に1度の健康診断と同じです。決算書を提出するだけでなく、自社への評価や改善すべき点を指摘してもらうことで、自社の経営改善に役立てることができます。
【決算書の提出を経営改善に役立てるポイント】
- 金融機関と議論し、改善点を指摘してもらうツールとして活用する
- 金融機関の独自の財務分析レポートで改善点を協議する
- 同業他社との比較など、自社の強み弱みを客観的に評価してもらう