2030年問題とは?労働力減少による中小企業への影響と対策を解説
2030年問題とは少子化と高齢化の同時進行により、さまざまな分野で表面化する問題の総称です。
2030年問題はその前に起きる2025年問題よりも大きな影響があると予測されており、今から対策しておくことがすすめられます。
本記事では2023年問題の概要と企業への影響、中小企業で検討したい対策について解説します。
目次[非表示]
- 1.2030年問題とは
- 2.2030年問題はより深刻。2025年問題と2030年問題との違い
- 2.1.2025年問題とは
- 2.2.2025年問題と2030年問題との違い
- 2.3.さらに待ち構える2040年問題、2054年問題
- 3.2030年問題の企業への影響
- 4.2030年問題に向けて企業が検討すべき対策
- 4.1.パートタイム、シニア世代など多様な人材の確保
- 4.2.働き方改革、賃上げなど労働環境の整備
- 4.3.価格転嫁、賃上げ、前向きな投資のサイクル
- 4.4.省人化・省力化投資
- 5.人手不足対策などで活用を検討したい補助金・助成金はこの3つ
- 5.1.キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」
- 5.2.ものづくり補助金
- 5.3.省力化投資補助事業
- 6.まとめ
2030年問題とは
2030年は高齢化率が30.8%、人口の3分の1が高齢者となる予測です。生産年齢人口(15歳以上65歳未満)が急減少し、65歳以上の高齢者が労働力人口の4分の1を占めることとなります。
【引用】我が国の人口について|厚生労働省
労働力不足はコロナ前からの予測より深刻化し、2030年時点の労働力不足は883万人、必要とされる労働需要人口7,312万人のうち12.1%が不足すると予測されています。
イメージとして、従業員数50名の企業は43名で維持しなくてはならない人手不足となります。
【引用】「女性と経済」に関する勉強会 第2回 資料2|首相官邸
2030年問題による主な影響は大きくまとめると次のとおりです。
- 社会保険料の増大
- 人材不足の深刻化
- 人件費の高騰
- 経済成長の停滞
2030年問題はより深刻。2025年問題と2030年問題との違い
2030年問題が発生するより前の2025年に注目されている『2025年問題』がありますが、2030年問題はより深刻であるといわれています。
2025年問題とは
2025年問題とは、1947年から1949年生まれの団塊の世代の約800万人のすべての人が75歳以上の後期高齢者となる時期に起こる問題の総称です。
2025年には65歳から74歳の前期高齢者人口が3分の1、75歳以上の後期高齢者が5分の1を占めることとなるため、主に次の影響が予測されています。
- 高齢となったシニア人材が引退する
- 後期高齢者の増加による医療、介護分野の人手不足
- 現役世代が負担する社会保障費用が増大
- 高齢経営者の引退に伴う廃業の増加
2025年問題のポイントは、人口が多い団塊の世代が後期高齢者(75歳)となる点です。
後期高齢者は病気やケガのリスクが高く、医療費の自己負担割合が10%(一定以上の所得がある場合は20%、所得が145万円以上は30%)と公費負担割合が高くなっています。
注目されている社会保障費用の増大以外にも、高齢となった経営者の引退に伴う廃業の増加が懸念されています。
【引用】中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題|中小企業庁
2025年問題と2030年問題との違い
2030年は75歳以上人口の増加が落ち着き、2030年問題は、団塊のジュニア世代よりもさらに若い世代が高齢化する時期を指しています。
2030年問題は2025年問題よりも急激に労働力不足が続くことが大きな違いです。
さらに待ち構える2040年問題、2054年問題
2030年問題のあとに懸念されているものが、2040年問題と2054年問題です。
2040年問題とは、団塊ジュニア世代(1971年から1974年生まれ)のすべてが65歳以上となり、総人口の35%が高齢者ことによる影響を総称します。2040年問題のポイントは、生産年齢人口が大幅に減少した状態となる点です。
2040年は団塊ジュニア世代(1971年から1974年生まれ)のすべてが65歳以上となり、全人口のうち35%が高齢者となります。また2025年から2040年にかけての15年間で、生産年齢人口が1,000万人から1,200万人減少していると推測されています。
2054年問題はさらに高齢化が進行します。2030年頃に75歳以上の高齢者人口の増加が落ち着くものの、2054年まで現役世代が減少し続けると予測されています。
2030年問題の企業への影響
2030年からは労働力人口の減少幅が拡大するため、多くの企業への影響が懸念されます。
2030年問題で予測される企業への影響
2030年問題による企業への影響は次のとおりです。
- 社会保険料の企業負担額の増加、従業員の手取り収入の減少
- 人手不足が悪化し、現在の80%ほどの従業員数による経営を余儀なくされる
- 人件費の高騰
- 人口減少による売上の低迷
- 医療、介護分野など分野における人手不足の深刻化
- 介護による従業員の離職増加や勤務時間の減少
2030年問題の影響が大きい業界は『建築』『宿泊』『医療・介護』『IT』
2030年問題の影響が特に大きいと予測されている業界は人手による作業・サービスが多い分野です。またIT化やAI化をすすめるための人材も不足するといわれており、影響が大きいと予測されている分野は次のとおりです。
- 建築分野
- 宿泊分野
- 医療、介護分野
- IT分野
建築分野や宿泊分野はIT化が難しいことに加えて離職率が高く、現在も人手不足が続いています。生産年齢人口の減少で人手不足が深刻化する可能性があります。
医療、介護分野は人手不足に加えて、高齢者の増加による需要の増加が予測されます。
IT分野については、生産性向上のための情報化投資による需要増加に加えて、社内IT人材を確保するニーズが強まるため人材獲得競争が激しくなるといわれています。
2030年問題に向けて企業が検討すべき対策
2030年問題に備える企業の対策は主に次のとおりです。
パートタイム、シニア世代など多様な人材の確保
新規採用の強化に加えて、パートタイム従業員やシニア人材の確保が重要となります。
働き方改革、賃上げなど労働環境の整備
人材確保の有効な対策の1つが賃上げです。2024年も賃上げが予測されており、周辺や同業者の給与水準をにらんだ賃上げが必要となります。
また人手不足対策としてパートタイム従業員やシニア人材の活用があげられます。
女性や高齢者はライフスタイルにあった働き方を望む割合が高いため、社内の見直しが必要です。
- 短時間勤務など勤務形態を多様化する
- 作業内容を簡素化・標準化し、作業しやすくする
- 機械化など作業者への身体的な負荷を軽減する
- IT研修を実施する
価格転嫁、賃上げ、前向きな投資のサイクル
人手不足、原料価格や人件費が高騰する時期においても経営が円滑な企業は、価格転嫁により改善した利益を賃上げや設備投資にまわすサイクルができています。
日本商工会議所が実施した調査によると、賃上げした企業のうち業績が改善しないまま賃上げに踏み切った企業が63.8%となっている一方、価格転嫁ができたことによる業績改善を理由に賃上げした企業は77.3%に上ります。
また設備投資についても価格転嫁による業績の改善を理由に設備投資をおこなう企業が増加しています。
【引用】国内投資拡大のための官民連携フォーラム(2023年10月4日)資料12|内閣官房
省人化・省力化投資
人手不足における対策、パートタイム従業員やシニア人材などが働きやすい職場環境づくりにつながる投資として、省人化・省力化投資が重要です。
現場作業者の負担軽減だけでなく、営業を効率化するシステム、総務・経理部門のIT化投資などバックオフィス業務の効率化が可能となる投資についても検討しましょう。
人手不足対策などで活用を検討したい補助金・助成金はこの3つ
人手不足における対応や非熟練従業員を活用するための投資に必要となるお金については、補助金や助成金を活用しましょう。おすすめの制度は次の3つです。
キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」
2023年10月にキャリアアップ助成金が拡充され、新たに設けられたコースです。
人手不足でパートタイム従業員など非正規従業員の勤務時間を増加させるときに、新たに社会保険を適用することとなった従業員1名あたり最大50万円が助成されます。
このコースのうち『労働時間延長メニュー』は賃上げを必要とせず、週所定労働時間が4時間以上増える場合に1名あたり30万円(人数制限なし)が助成されます。
【引用】キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)のご案内(リーフレット)|厚生労働省
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、生産性向上や革新的な製品の開発、生産プロセスの省力化などの投資が補助対象です。
17次公募は従来から変更があり、省力化(オーダーメイド枠)のみ公募されています。
ものづくり補助金(省力化(オーダーメイド枠))の概要は次のとおりで、補助上限額は750万円から1億円(従業員数により異なります)、補助率は最大3分の2です。
17次公募の期限は2024年3月1日金曜日の17時までです。
従業員規模 |
補助上限額 |
補助上限額 |
補助率 |
5名以下 |
750万円 |
1,000万円 |
2分の1
小規模事業者などは3分の2 |
6名から20名 |
1,500万円 |
2,000万円 |
|
21名から50名 |
3,000万円 |
4,000万円 |
|
51名から99名 |
5,000万円 |
6,500万円 |
|
100名上 |
8,000万円 |
1億円 |
(備考)補助率は補助金額1,500万円までは2分の1もしくは3分の2、1,500万円を超える部分は3分の1。
【引用】ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 17次公募要領概要版|ものづくり補助金事務局
省力化投資補助事業
省力化投資補助事業は『中小企業省力化投資補助枠(カタログ型)』という補助金となる予定です。
ものづくり補助金(省力化(オーダーメイド枠))よりも簡易な省力化投資を、対象となる機器を所定のカタログから選択する方式となる予定です。
中小企業省力化投資補助枠(カタログ型)の補助率は2分の1、補助上限額は最大1,500万円です。
従業員数 |
補助上限額 |
補助上限額 |
補助率 |
5名以下 |
200万円 |
300万円 |
2分の1
|
6名以上20名以下 |
500万円 |
750万円 |
|
21名以上 |
1,000万円 |
1,500万円 |
【引用】令和5年度補正予算の事業概要(PR資料)|経済産業省
まとめ
2030年問題とは、生産年齢人口が急速に減少し大幅な労働力不足となることで、さまざまな問題が発生すると予測されている内容です。そのあとも2040年問題など労働力不足が長く続く予測であり、企業は早い段階からの対策が必要です。
2030年問題など人手不足における対策としては、人材採用・人材育成の拡充、生産性向上投資などの取組みがあげられ、必要となる費用は補助金や助成金をフルに活用することがおすすめです。
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