2024年の景気は鈍化!?検討したい人手不足と金利上昇の対策を解説
2024年の景況見通しは回復が鈍化する『踊り場』と予測されています。懸念材料としては『人手不足』『金利上昇』が急増しており、対策が求められます。
本記事では2024年景況見通しから中小企業が検討したい人手不足と金利上昇における対策を解説します。
目次[非表示]
- 1.2024年の景気見通しは『踊り場』となる予想
- 2.人手不足と金利上昇が中小企業へあたえる影響
- 2.1.人手不足の影響は大きい
- 2.2.金利上昇は資金繰りと業績の悪化をもたらす
- 3.中小企業が人手不足対策で検討したい補助金・助成金3選
- 4.中小企業が備えておきたい金利上昇における対策
- 4.1.借り入れを減らす
- 4.2.借り入れの金利を見直す
- 4.3.借り換えする
- 5.まとめ
2024年の景気見通しは『踊り場』となる予想
2023年12月20日に民間信用調査会社である帝国データバンクが2024年景況見通しのアンケート結果を発表しました。
このアンケートによると、2024年の景気が『回復』と回答した企業は12.8%となり、2023年景況見通し時点における11.5%から+1.3%ポイントの増加です。
一方、『悪化』と回答した企業は20.3%となり、前回調査から-5.0%ポイントの減少となりました。
景況見通しの『悪化』を予測する企業が減る一方、景気回復が停滞する『踊り場』と回答した企業が42.1%へ増加しており、足踏み感が強まる景況見通しとなっています。
【引用】2024 年の景気見通しに対する企業の意識調査|帝国データバンク
同時期におこなわれた日本政策金融公庫による2024年景況見通し調査結果においても、上記と同様の結果です。最終需要分野別に業況判断D.I.をみると、『電機・電子関連』が28.5%へ急回復の予測です。また活発な設備投資を期待して『設備投資関連』が14.6%へ回復する見通しです。
2024年の景気の5大懸念要因
2024年の景気見通しにおける懸念材料として、主に以下の5つがあげられています。
- 原油・素材価格の上昇 59.0%
- 人手不足 40.5%
- 為替(円安)37.4%
- 物価上昇(インフレ)26.7%
- 金利(の上昇)17.8%
『原油・素材価格(の上昇)』がトップとなる59.0%を占めたものの、前年の調査からは-13.7%ポイントの大きな減少です。
かわって『人手不足』が前回調査から+14.4%ポイント急増の40.5%となり、次いで『金利(の上昇)』が17.8%(前回から+6.4%ポイントの増加)です。
【引用】2024 年の景気見通しに対する企業の意識調査|帝国データバンク
2024年に厳しくなる原因は人手不足と金利上昇
2024年も引き続き人手不足が予測されています。また日銀の金融緩和政策の見直しに伴い金利が上昇しつつあるなど、中小企業の経営は予断を許さない状況が続きます。
人手不足はすべての業種において懸念材料となっています。不安要素として『人材の不足、育成難』をあげた企業を分野別にみると、建築分野79.5%、食生活分野66.2%など多くの分野にわたります。
需要分野別にみた今後の不安要素(%)
金利上昇はすべての業種に影響します。特に影響が大きい可能性が高い業種としては、不動産業や専門サービス業、宿泊業など借入金月商倍率が高い業種、金利上昇で売上減少が予測される建築業などがあげられます。
【引用】2023年3月期「企業の借入金」状況調査|東京商工リサーチ
人手不足と金利上昇が中小企業へあたえる影響
人手不足と金利上昇は企業の経営に大きな影響をあたえます。
人手不足の影響は大きい
人手不足における対応は『現有人員でやりくり』が77.2%を占めています。人手不足が長期化すると従業員の負荷が高止まりし、長時間労働の増加による人件費の上昇や従業員の離職により一層の人手不足となる危険性などがあります。
現在の従業員で対応しているものの、『納期遅れや品質・サービスの低下』や『事業の拡大を見送った』『事業を縮小・廃止した』など、売上機会を逸失する影響が出ています。
【引用】人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査(2023年9月)|日本商工会議所
金利上昇は資金繰りと業績の悪化をもたらす
金利上昇の影響は損益へのダメージと資金繰りの悪化であり、主に次の内容があげられます。
- 借入金の利率が上昇し、支払利息が増加する(損益が悪化する)
- 支払利息の増加でキャッシュが減る(資金繰りが厳しくなる)
- 設備投資に伴う借入コストが増加する(投資の効果が少なくなる)
- 設備投資や住宅の購入が減少し、関連業界の受注が減る(売上が減る)
金利上昇局面で特に注意が必要な点は、急に資金繰りが悪化する可能性がある点です。
借入が変動金利である場合、借入が増えなくとも支払利息が増加します。また借入利率の見直しの直後から支払利息が増加するため、直ちに支出が増加します。
中小企業が人手不足対策で検討したい補助金・助成金3選
人手不足において中小企業が取り組みを検討したい主な対策は次の4つです。
- 求人方法や求人票の見直しによる採用の強化
- 労働環境の改善などによる従業員の定着率の向上
- パートタイムやシニア従業員などの活用
- 省力化・省人化
上記の取り組みに必要となる費用や投資については利息がかからない補助金や助成金を活用します。
多くある補助金・助成金制度の中でおすすめの補助金・助成金は下記の3つです。
省人化投資補助事業
2023年度補正予算により新設される予定である『中小企業省力化投資補助枠(カタログ型)』という補助金です。この補助金は人手不足対策としておこなう省人化投資が対象です。例えば宿泊・飲食業における自動清掃ロボットの導入などが」あげられています。対象となる機器を所定のカタログから選択する方式が予定されています。
補助率は2分の1、補助上限額は最大1,500万円です。
従業員数 |
補助上限額 |
補助上限額 |
補助率 |
5名以下 |
200万円 |
300万円 |
2分の1 |
6名以上20名以下 |
500万円 |
750万円 |
|
21名以上 |
1,000万円 |
1,500万円 |
【引用】令和5年度補正予算の事業概要(PR資料)|経済産業省
ものづくり補助金(省力化(オーダーメイド枠))
ものづくり補助金は製造業だけでなく、卸・小売業やサービス業も対象です。
中小企業の生産性向上や革新的な製品の開発、生産プロセスの省力化などに必要な投資が補助されます。
17次公募は省力化(オーダーメイド枠)のみが対象です。補助上限額は750万円から1億円(従業員数により異なります)、補助率は最大3分の2です。公募期限は2024年3月1日金曜日の17時までです。
従業員規模 |
補助上限額 |
補助上限額 |
補助率 |
5名以下 |
750万円 |
1,000万円 |
2分の1 小規模事業者などは3分の2 |
6名から20名 |
1,500万円 |
2,000万円 |
|
21名から50名 |
3,000万円 |
4,000万円 |
|
51名から99名 |
5,000万円 |
6,500万円 |
|
100名上 |
8,000万円 |
1億円 |
【引用】ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 17次公募要領概要版|ものづくり補助金事務局
キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」
従業員の勤務時間増加などにより、新たに社会保険を適用することとなった従業員1名あたり最大50万円が助成される制度です。例えば人手不足でパートタイム従業員の労働時間を増やすことで社会保険を新たに適用することとなる場合です。
このコースには『手当等支給メニュー』『労働時間延長メニュー』『併用メニュー』の3種類があります。
なかでも『労働時間延長メニュー』は、賃上げをしなくとも週所定労働時間が4時間以上増える場合に1名あたり30万円が支給される(人数制限なし)ため、申請を検討したい制度です。
【引用】キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)のご案内(リーフレット)|厚生労働省
中小企業が備えておきたい金利上昇における対策
長期金利はすでに上昇しています。多くの経営者は金利上昇を未経験であるため、早めの対策がおすすめです。主な金利上昇対策は次のとおりです。
【引用】主要年限レート推移|日本相互証券
借り入れを減らす
支払利息は借入残高×利率です。借入残高を減らすことで支払利息は減少します。借入残高を減らす主な方法は次のとおりです。
- 利益を増やす(運転資金の借入を減らす)
- 在庫を減らす(運転資金を減らす)
- 不動産や有価証券などを売却する
- 設備投資に必要な資金は借入よりも補助金や助成金を活用する
借り入れの金利を見直す
金利が上昇しても自社の借入の利率が上昇しないようにすることが可能です。現在の借入が変動利率の場合、固定金利に変更する方法があります。
ただし固定金利は変動金利よりも高いことが多いため、金利上昇が緩やかな場合は支払利息が増加する可能性があることに注意します。
借り換えする
現在返済している借入を別の借入に切り替える時に、変動利率の借入を固定利率の借入に変えることで、金利の上昇に備えることが可能です。
借り換えする時に現在の返済期間よりもより長い返済期間とすることで元金返済額を減らすことができるなど資金繰り改善効果を期待することも可能となります。
まとめ
2024年の景況はゆるやかな改善が鈍化すると予測されています。景気における懸念材料の中でも『人手不足』と『金利上昇』への注目が高まっています。
金利上昇は予測が難しいことに加えて、事前に対策することが可能です。
人手不足は長期化すると予測されているうえ、企業経営にあたえる影響が大きいため、同業者に後れを取らないよう対策する必要があります。
人手不足対策においては、応募者が集まる求人票を作るテクニック、補助金・助成金の審査に通過する申請書の書き方などのノウハウが有効であるため、専門家の活用が望ましいです。
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