新卒の離職率は3年で4割!退職代行で加速する早期離職を防ぐ方法とは
企業を退職する決断が増えると言われる5月、4月に入社したばかりの新卒従業員が退職代行サービスによる離職を申し出たことなどが話題となっています。
入社後3年以内に約4割が退職する時代における、経営者が早期離職を防ぐ方法について解説します。
目次[非表示]
- 1.新卒就職者の3年以内離職率は約4割!1年で1割超が早期離職
- 2.若い世代の離職理由
- 3.若者に人気?退職代行サービスとは
- 3.1.退職代行サービスとは
- 3.2.退職代行サービスは従業員の意思の代弁のみ
- 3.3.退職代行サービスの認知度は72%!しかし利用率は2%
- 4.退職代行サービスを使われた場合の会社における対応ポイント
- 4.1.退職代行サービス業者による交渉は違法
- 4.2.本人への圧力は避ける
- 4.3.有給休暇の取得義務に注意
- 4.4.ほかの従業員への負担の軽減
- 4.5.退職代行サービスで会社の課題を再点検
- 5.退職代行サービスよりも対応が難しい『静かな退職』とは
- 6.早期離職を防ぐ対策
- 6.1.入社後のギャップを抑える採用活動
- 6.2.定期的なフォローアップ
- 6.3.労働環境の見直し
- 6.4.多様な働き方の導入
- 6.5.若い世代の価値観への理解
- 6.6.仕事にやりがいを持たせる
- 6.7.スキルアップ、キャリアデザインを示す
- 7.人材定着と採用強化のノウハウはF&M Clubにあります
新卒就職者の3年以内離職率は約4割!1年で1割超が早期離職
厚生労働省の調査によると、新規高卒就職者の約4割が就職後3年以内に離職(早期離職)しており、新規大卒就職者についても3割を超えています。
【引用】新規学卒就職者の離職状況(2020年3月卒業)|厚生労働省
新卒の3年以内離職率は高卒37.0%、大卒32.3%
厚生労働省が調査した2020年3月卒業の新卒就職者に関する3年以内離職の状況によると、高卒者の3年以内離職率は37.0%、大卒者についても32.3%です。
高卒・大卒ともに、入社後3年間で毎年1割を超える退職者が発生しています。
【引用】新規学卒就職者の離職状況(2020年3月卒業)|厚生労働省より作成
離職率が高い業種は宿泊業・飲食サービス業、サービス業など
業種別でみると早期離職率が最も高い業種は、宿泊業・飲食サービス業、次いで生活関連サービス業・娯楽業、教育・学習支援業です。これらの業種においては高卒・大卒ともに入社後3年以内に約半数が離職しています。
【引用】新規学卒就職者の離職状況(2020年3月卒業)|厚生労働省より作成
従業員数により離職率に差がある
離職率を企業規模(従業員数)でみると、小規模企業ほど離職率が高くなっています。
【引用】新規学卒就職者の離職状況(2020年3月卒業)|厚生労働省より作成
若い世代の離職理由
新卒者など、若い世代が離職する主な理由は『人間関係』『労働時間・休日条件』『給料』そして『仕事への興味』の4つです。
新卒1年以内の離職理由は『人間関係』がトップ
新卒入社した職場を離職する理由のトップは『人間関係がよくなかった』という理由であり、入社後1年未満で離職した人の離職理由(重複回答)のうち約40%を占めています。
初めて勤務した職場の |
離職理由として |
3か月未満 |
38.7% |
6か月未満 |
37.4% |
1年未満 |
43.1% |
2年未満 |
28.9% |
3年未満 |
26.6% |
若い世代の退職理由『労働時間・休日条件』『人間関係』『給料』『仕事への興味』
厚生労働省がまとめた雇用動向調査結果の概況によると、20歳代の従業員の離職理由の上位は次の4つです。
- 労働時間・休日などの労働条件
- 職場の人間関係
- 給料などの収入
- 仕事の内容に興味を持てなかった
離職した理由の上位
|
||||
転職者の年齢層 |
労働時間・休日など |
職場の人間関係 |
賃金が少なかった |
仕事に興味を持てない |
(男性) | ||||
19歳以下 |
16.2% |
11.7% |
9.7% |
5.1% |
20歳から24歳 |
14.3% |
6.0% |
5.4% |
9.6% |
25歳から29歳 |
16.9% |
8.9% |
8.5% |
4.4% |
(女性) | ||||
19歳以下 |
2.9% |
10.9% |
7.5% |
20.2% |
20歳から24歳 |
13.5% |
8.5% |
7.4% |
6.1% |
25歳から29歳 |
11.1% |
7.4% |
9.8% |
4.9% |
Z世代は会社と合わない場合躊躇なく辞める
統計的には新卒者の3年以内離職率はさほど変わっていません。
『Z世代』(1990年代後半から2010年代の生まれ)の若い社員が『すぐ辞める』と言われる主な理由は次のとおりであるといわれています。
- スピード離職(入社直後など極端に早い離職)の発生
- 退職代行サービスの利用など人任せの印象を与える退職手段の利用増加
- 長期的な目標に向けた忍耐力が欠け、安易に辞めてしまう人が目立つ
若者に人気?退職代行サービスとは
Z世代における利用が急増しているとみられる退職方法が『退職代行サービス』の利用です。
特に入社後1か月を経過する5月のゴールデンウイーク前後は、新卒従業員が退職代行サービスを利用することが急増するといわれています。
退職代行サービスとは
退職代行サービスとは、従業員本人に代わって勤務先へ退職意思を伝え、退職手続きをおこなうサービスのことです。
退職代行サービスを利用する主な理由として「退職を言い出しにくい」「すぐに退職したい(退職を引き止められたくない、引き継ぎが面倒)」などがあげられています。
退職代行サービスは従業員の意思の代弁のみ
従業員が退職代行サービスを利用するケースは今後増加すると予測されています。
退職代行サービス業者がおこなえる業務は「従業員の離職意思を勤務先へ伝えること」「退職に伴う事務を代行すること」のみです。
退職代行サービスの認知度は72%!しかし利用率は2%
大手転職サイト運営会社エン・ジャパンが実施したアンケートによると、退職代行サービスの認知度は72%ですが、実際に利用した人の割合は2%にとどまっており、退職代行サービスを使わない理由としては「自分で言うべき」「会社や同僚に失礼」などがあげられています。
【引用】「退職代行」実態調査(2023年版)|エン・ジャパン株式会社
退職代行サービスを使われた場合の会社における対応ポイント
従業員が退職代行サービスを利用して退職意思を表示することは従業員の自由であり、倫理的・感情的な面は別として、法律的に会社側が退職代行を拒否することは困難です。
ただし退職代行サービスを使われた場合、会社側が慎重に対応しないと思わぬトラブルが発生する可能性があるため注意しましょう。
退職代行サービス業者による交渉は違法
退職代行業者が可能なサービスは“伝言役”のみであり、未払い残業代の交渉などが含まれる場合は、弁護士や労働組合などのみが代行可能です。
会社側においては、交渉が代行できない業者と交渉しないように注意し、トラブル防止のため、退職代行業者から連絡を受けた場合は、次の3点を確認しましょう。
①従業員本人からの委任状など
②未払い残業代や退職金支払いなど退職条件の交渉の有無
③退職代行業者が弁護士または労働組合であるか
本人への圧力は避ける
従業員からの退職意思があった後は、該当従業員へ圧力をかける行為は避けましょう。具体的には次の3つです。
- 退職代行サービスの利用による懲戒処分は困難
道義的・倫理的な心情を除くと、退職代行サービスの利用は違法ではありません。
退職代行の利用を理由とする懲戒処分は無効となり、トラブルに発展する可能性が高くなります。
従業員に対して懲戒処分をおこなう際は、退職代行サービスの利用以外の面で該当する事項を理由とする必要があります。
- 従業員当人への叱責はパワハラ(安全配慮義務違反)認定のリスク
当人への叱責や連絡の強要などはパワハラに該当し、安全配慮義務違反となる可能性があります。
- 従業員当人宅への押しかけは慰謝料請求されるリスク
自宅への訪問など強引に接触した場合、従業員が精神的苦痛を受けたとして慰謝料を請求するリスクがあります。
有給休暇の取得義務に注意
退職申し出と同時に未消化の有給休暇の取得を申し出るケースが多いと言われます。
退職代行にかかわらず、従業員が有給休暇の取得条件を満たしている場合は、申し出に応じて取得させることが無難です。その際の注意点は次の2点です。
- 退職意思を申し出ている従業員について、時季変更権により有給休暇を消化させない行為は認められない可能性が高い
- 有給休暇の買い取り制度が社内規程にない場合、法律上、買い取り義務はない
ほかの従業員への負担の軽減
退職代行サービスを利用された場合、後任者への引き継ぎができないケースが多いと想定されます。
急な退職による欠員に対しては、ほかの部署からの異動や応援派遣などにより迅速にカバーしましょう。ほかの従業員の負担が重くなり、不満が高まる可能性があるためです。
退職代行サービスで会社の課題を再点検
退職代行サービスを利用する主な理由は、退職の意志を「言い出しにくい職場環境」や「上司との関係」などです。
次の例のように、従業員がコミュニケーションをとりにくい職場環境となっていないか、自社の職場環境を再確認しましょう。
- 人手不足により退職意思を言い出しにくい
- パワハラなどがあり、会社(社員)と接触したくない
- 退職は逃げ、負け組などの雰囲気が強すぎる
退職代行サービスよりも対応が難しい『静かな退職』とは
退職代行サービスとともに近年増加している問題が『静かな退職』です。
静かな退職とは、従業員が必要最低限の業務のみを淡々とこなしている状態を指します。
現実的な離職は発生していないものの、会社にとっては生産性の低下やほかの従業員への負荷の増大などの影響があり、次のような対策が必要です。
- 従業員満足度調査など、モチベーションを損なっている課題を見つける
- 透明性、満足度が高い人事評価制度の導入
- 従業員のキャリアやワーク・ライフバランスに応じた勤務形態の導入
早期離職を防ぐ対策
従業員の早期離職を防ぎ、定着率を高めるための主な対応として次の7つがあげられます。
入社後のギャップを抑える採用活動
採用段階から、自社の先輩従業員の紹介や仕事内容を具体的にイメージできる情報を発信します。
入社後に「入社前と話が違う、ギャップがある」と感じてすぐに退職する”スピード離職”や”配属ガチャ”による早期離職を抑制するためです。
配属ガチャとは、新卒入社した従業員が、希望する勤務地や部署へ配属されるとは限らないことを表す流行語です。自身の希望を優先するZ世代は配属希望がかなわないと落胆し、早期に離職することがあります。
大手転職サイトであるエン・ジャパンの調べによると、入社後のギャップとして感じる主な項目は『職場の雰囲気』(29%)、『仕事の内容』(24%)の2つが目立ちます。
【引用】「就業前後のギャップ」に関する調査レポート(2022年版)|エン・ジャパン株式会社
上記の『入社後ギャップ』を抑制する取り組み例は次のとおりです。
- 採用活動時点から、入社後がイメージできる情報を発信する
- インターンなど入社前の体験を導入
- 先輩従業員との座談会
- 現在在籍している従業員の適性診断で自社に合う人物像を把握しておく
- 採用試験へ適性診断を組み込む
定期的なフォローアップ
Z世代は勤務先におけるコミュニケーションに対して受け身となることが多くなります。
また教育においても「(自分から何も言わなくても)会社のほうから自分へ、すべて丁寧に教えてくれる(のが当然)」という姿勢も珍しくありません。
早期離職を防ぐためには、新卒従業員がコミュニケーションをとりやすい体制づくりが必要です。
具体的には、新卒従業員に仕事を教えるチューター制度、先輩社員を相談相手としたメンター制度、社内研修制度の確立と定期的なフィードバックなどです。
労働環境の見直し
若い世代の従業員は、収入の多さよりも残業の少なさ、年間休日数の多さ、土日祝日が休みであることなどを重視します。
自社において長時間労働が多い場合は、業務の効率化や生産性向上投資などによる改善を図りましょう。
多様な働き方の導入
「この会社ではワーク・ライフバランスを実現できない」と感じて離職する新卒者・若い従業員も増えています。リモートワークやフレックスタイム制度、バースデー休暇、週休3日制など、若い世代が好む勤務体制や福利厚生の導入を検討しましょう。
若い世代の価値観への理解
経営者世代と平成・令和を中心とするZ世代の価値観は異なるため、世代の違いにより考え方や行動が違うことを理解しておくことが大切です。
新卒従業員の主な特徴は次のとおりです。
- 最新のシステムや手法を好む
- 対面でのコミュニケーションを好む
- 上下関係に厳しい職場環境になじみにくい
- 変化や柔軟性に富む
仕事にやりがいを持たせる
若い従業員は、自身の仕事の成果や組織への貢献について不安を感じることがあります。
上司から積極的に期待の言葉をかけることで、従業員の自己肯定感を高めてあげることが有効です。
若い従業員の頑張りを正しく称賛してあげることでモチベーションを上げ、従業員の定着率向上へつなげましょう。
スキルアップ、キャリアデザインを示す
若い従業員に対して、自社で培うことができるスキル、将来のキャリアなどを明示してあげることも大切です。
リクルートが発表した『新入社員意識調査2023』によると、社会人と働くうえで大切にしたいことのトップは「スキルや知識を身につけること」(48.5%)となっています。
【引用】新入社員意識調査2023|株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
また若い従業員向けのキャリアデザイン研修の導入なども効果があり、自身の将来について考える機会を与えることで、中長期的な視点での成長を見通させることができます。
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