投資活動によるキャッシュフローとは?分析方法や計算方法、見方のポイントを解説
投資活動によるキャッシュフローは、キャッシュフロー計算書のうちのひとつです。
投資活動によるキャッシュフローは、設備投資など企業の将来を左右する行動を表しています。
本記事では、投資活動によるキャッシュフローの計算方法と分析、見方の簡単なポイントをわかりやすく解説します。
目次[非表示]
- 1.投資活動によるキャッシュフローとは
- 2.投資活動によるキャッシュフローの項目
- 2.1.定期預金の預け入れ、払い戻し
- 2.2.固定資産の取得、売却
- 2.3.投資有価証券の取得、売却
- 2.4.貸付の実行、回収
- 2.5.売却益の計上方法
- 3.投資活動によるキャッシュフローの分析方法
- 3.1.投資キャッシュフローがプラスの場合
- 3.2.投資キャッシュフローがマイナスの場合
- 3.3.投資の評価は他の指標と組み合わせる
- 4.投資活動によるキャッシュフローは企業の方向を示します
- 5.投資活動によるキャッシュフローはマイナスで良い
- 5.1.良い投資パターン
- 5.2.ハイリスクの投資パターン
- 5.3.望ましくない投資パターン
- 6.投資活動によるキャッシュフローを評価するポイント
- 7.キャッシュフローの改善はF&M Clubがサポートします
- 8.まとめ
投資活動によるキャッシュフローとは
投資活動によるキャッシュフローは投資によるお金の支出や、投資したものを売却した収入を示します。
具体的には次の内容が含まれます。
- 不動産など固定資産の購入
- 保有している固定資産の売却
- 資産運用を目的とする有価証券への投資
- 有価証券の売却
- 他社や関連会社などへの投資、融資
- 投資や融資の回収
キャッシュフロー計算書の一部であるため、資産の購入など、お金が出ていく流れを-(マイナス)で表示します。
固定資産の売却など、お金が入ってくる流れを+(プラス)で表します。
投資活動によるキャッシュフローの項目
投資活動によるキャッシュフローとして計算する項目(サンプル)は次のとおりです。
【参考】会計ツール集|中小企業庁
対象となる行動と表示方法は次のとおりです。
定期預金の預け入れ、払い戻し
+(プラス)の活動 |
-(マイナス)の活動 |
定期預金の払い戻し |
定期預金の預け入れ |
定期預金のうち、預入期間3か月間超がキャッシュフロー計算の対象です。
まず、定期預金への預け入れは、「定期預金の預入による支出」と言い換えられます。
つまり、お金が社外に出ていく流れであり、キャッシュフロー計算では-(マイナス)です。
続いて、解約して払い戻した時は、「定期預金の払戻による収入」として、+(プラス)で表示します。
なお、期間3か月以下の定期預金は現金や普通預金と同じ扱いです。
また、期間3か月以上の定期預金で満期までの期間が3か月以下となった場合であっても、投資活動によるキャッシュフローで取り扱います。
固定資産の取得、売却
+(プラス)の活動 |
-(マイナス)の活動 |
不動産や機械などの有形固定資産の売却 |
不動産や機械などの有形固定資産の購入 |
不動産や機械などの有形固定資産を購入または売却した時のお金の出入りが対象です。
無形固定資産の取得や、建築工事への仮払金である建設仮勘定も含みます。
有形固定資産を購入した時は、「有形固定資産の取得による支出」の項目において、-(マイナス)で表示します。
売却した時は、「有形固定資産の取得による支出」の+(プラス)となります。
投資有価証券の取得、売却
+(プラス)の活動 |
-(マイナス)の活動 |
投資有価証券の売却 |
投資有価証券の取得 |
投資有価証券の購入や売却による収入が対象です。
有価証券を購入した時は、「投資有価証券の取得による支出」の項目で、-(マイナス)で表示します。
売却した時は「投資有価証券の売却による収入」の項目において、+(プラス)とします。
貸付の実行、回収
+(プラス)の活動 |
-(マイナス)の活動 |
貸付金の回収 |
貸付 |
関連会社への貸付の実行や、貸付したお金の返済を受けた場合の項目です。
貸付した時は、「貸付による支出」の項目で、-(マイナス)で表示します。
有価証券を売却した時は「貸付金の回収による収入」の項目において、+(プラス)とします。
売却益の計上方法
固定資産の売却益は、営業活動によるキャッシュフローからマイナスしなければなりません。
これは、固定資産の売却益が、売却によって得た現金の一部であるからです。
そのため、当期利益に含まれている売却益を除外して、投資活動によるキャッシュフローの項目で収入の全部を計上します。
例 簿価100の土地を200で売却した場合
(損益計算書) |
(キャッシュフロー計算書) |
||
(略) |
Ⅰ営業活動によるキャッシュフロー |
250 |
|
経常利益 |
150 |
税引前当期純利益 |
-100 |
売却益 |
100 |
固定資産売却益 |
150 |
税引前当期純利益 |
250 |
営業活動によるキャッシュフロー |
|
(略) |
|||
Ⅱ投資活動によるキャッシュフロー |
|||
固定資産売却収入 |
200 |
||
投資活動によるキャッシュフロー |
200 |
投資活動によるキャッシュフローの分析方法
投資活動によるキャッシュフローは、将来も収益をあげるための投資にかけたお金を表しています。
プラスの場合とマイナスの場合のどちらであるかによって評価が変わります。
投資キャッシュフローがプラスの場合
投資キャッシュフローがプラスならば、 資産の売却や回収でお金が入ってきている状態です。
追加の投資をしていない、成長の踊り場状態にある企業、または資産売却を進めて事業が縮小に向かっている企業で見られます。
例えば、会社の規模を小さくするために工場で利用している機器を売却すると、投資活動によるキャッシュフローはプラスになるはずです。
意図的に会社の規模を小さくしているならば良いですが、やむを得ず資産を売却しているならば、キャッシュフロー面で危険であると予想されます。
また、資産を売却していなくとも、関連会社への投資目的で保有していた有価証券を売却すると、キャッシュフローがプラスになるでしょう。
この場合は、今までに投資した金額が手元に戻ってきた状態であり、配当なども含めて利益が出ているならば会社に良い影響を与えていると考えられます。
投資キャッシュフローがマイナスの場合
投資キャッシュフローがマイナスならば、 資産への投資をおこない事業が拡大しています。
ただし、投資の裏付けとなっている資金の調達が、本業の儲けによる投資か借入による投資であるかにも注目します。
例えば、工場の規模を大きくするために大規模な投資を実施すると、投資活動によるキャッシュフローはマイナスになります。
導入した機器によっては、莫大なマイナスになる可能性はありますが、会社の成長を見越した積極的な投資であるケースが大半です。
他にも、事業の成長に期待して他社に投資する場合は、証券を購入するため投資活動によるキャッシュフローがマイナスになります。
ただ、その企業が成長すれば配当などを受け取れる可能性が高く、中長期的に見ると良い活動だといえるでしょう。
投資の評価は他の指標と組み合わせる
投資活動によるキャッシュフローがマイナスであれば、今後に向けた前向きな投資をおこなっている状態といえます。
ただし、投資活動によるキャッシュフローのマイナスが大きいと、財務活動によるキャッシュフローが増加する、つまり借金を増やしながら投資している状況です。
投資活動によるキャッシュフローの評価は、他の指標と組み合わせます。
具体的には、営業キャッシュフロー、フリーキャッシュフロー、財務活動によるキャッシュフローと比較します。
投資活動によるキャッシュフローは企業の方向を示します
投資活動によるキャッシュフローは、営業活動によるキャッシュフロー、財務活動によるキャッシュフローと比較することで企業の方向性を掴めます。
キャッシュフロー計算書の基本的な構造は次のとおりです。
数値例 |
||
(Ⅰ) |
営業活動によるキャッシュフロー |
100 |
(Ⅱ) |
投資活動によるキャッシュフロー |
-70 |
(Ⅰ+Ⅱ) |
フリーキャッシュフロー |
30 |
(Ⅲ) |
財務活動によるキャッシュフロー |
-20 |
(Ⅳ) (Ⅰ+Ⅱ+Ⅲ) |
キャッシュの増減 |
10 |
(Ⅴ) |
期首の現金預金の残高 |
150 |
(Ⅵ) (Ⅳ+Ⅴ) |
期末の現金預金の残高 |
160 |
投資活動によるキャッシュフローはマイナスであるから良いとは限りません。
他のキャッシュフローと組み合わせた評価の例を下記にまとめています。
投資CF |
営業CF |
フリーCF |
財務CF |
考え方の例 |
+ |
+ |
+ |
+ |
投資回収しているが負債も増加 |
+ |
+ |
+ |
― |
儲けと投資回収で財務改善 |
+ |
― |
+ |
+ |
資産売却と負債で赤字を補填 |
+ |
― |
+ |
― |
資産売却で負債を削減 |
+ |
― |
― |
+ |
資産売却と借入でも赤字 |
+ |
― |
― |
― |
資産売却で事業を維持 |
― |
+ |
+ |
+ |
本業の儲けの範囲で投資 |
― |
+ |
+ |
― |
儲けで投資しつつ財務も改善 |
― |
+ |
― |
+ |
利益以上に投資して借入で調達 |
― |
+ |
― |
― |
利益以上に投資したが負債は削減 |
― |
― |
― |
+ |
負債で維持、事業転換中 |
― |
― |
― |
― |
資金減少が続いている |
・「営業CF」営業活動によるキャッシュフロー:本業の儲けを表します
・「投資CF」投資活動によるキャッシュフロー
・「フリーCF」フリーキャッシュフロー(営業CFと投資CFの合計)
・「財務CF」財務活動によるキャッシュフロー:借入金による資金調達の増減を示します
・「+」キャッシュフローがプラス
・「―」キャッシュフローがマイナス
上記のように、投資活動によるキャッシュフローがプラスかマイナスかだけでなく、その他のキャッシュフロー項目と比較することで、企業の状況を理解できます。
投資活動によるキャッシュフローはマイナスで良い
将来の利益に結び付く設備投資は必要です。
投資を積極的におこなうと、投資活動によるキャッシュフローはマイナスとなります。
しかし、投資活動によるキャッシュフローがマイナスであっても、良いパターンと望ましくないパターンがあります。
良い投資パターン
キャッシュフロー |
投資CF |
営業CF |
フリーCF |
財務CF |
+/- |
― |
+ |
+ |
― |
数値例 |
-70 |
100 |
30 |
-20 |
営業活動によるキャッシュフロー(儲けの範囲)内で投資と負債の返済ができています。
投資が経営に大きなインパクトを与えている状況はなく、投資の恩恵を最大限受けられていると考えて良いでしょう。
理想的な経営状態といえます。
ハイリスクの投資パターン
キャッシュフロー |
投資CF |
営業CF |
フリーCF |
財務CF |
+/- |
― |
― |
― |
+ |
数値例 |
-70 |
-50 |
-100 |
100 |
本業が赤字で、借入により投資しているパターンです。
事業の主軸を転換している場合、急成長の途中で赤字だが金融機関やベンチャーキャピタルなどからの資金支援が得られている企業などで見られます。
借入により財務が悪化する可能性がありますが、投資が成功すれば将来の経営改善が期待できます。
ただ、借入の場合は元本の返済や利息の支払いが生じるため、キャッシュフロー全体が悪化することになりかねません。
また、最終的に借入金は返済する必要があり、投資が失敗してしまった場合には借入金と返済の義務だけが残ってしまうため注意が必要です。
望ましくない投資パターン
キャッシュフロー |
投資CF |
営業CF |
フリーCF |
財務CF |
+/- |
+ |
― |
― |
― |
数値例 |
20 |
-50 |
-30 |
-50 |
本業のキャッシュフローは赤字で、投資した資産を売却してもキャッシュフローが足りません。
さらに現金預金で借入を返済しているパターンです。
本業が経営不振で資産売却を進めている企業などに見られます。
この状況は根本的なキャッシュフローの改善が求められ、月単位でお金の出入りを把握することが大切です。
可能な限り不要な支出、つまり経費の削減に取り組み、キャッシュフローの健全化を目指さなければなりません。
現金が不足して借入している状況で、投資した資産もすべて売却してしまったならば、倒産を避けられなくなってしまいます。
投資活動によるキャッシュフローを評価するポイント
投資活動によるキャッシュフローは「このような状態だから良い」と断言できるものではありません。
上記の例でも触れたように、成長期や拡大期、あるいは営業不振で倒産の予兆があるなど、企業の状況を踏まえることがポイントです。
また、定期預金の預け入れや払い出しも投資キャッシュフローに含まれると解説しました。
そのため、仮に投資キャッシュフローがマイナスでも、定期預金に潤沢な残高があれば差し支えないこともありえます。
単純にプラスであるかどうかを評価するのではなく、その中身を多角的に評価することが重要です。
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まとめ
投資活動によるキャッシュフローは、将来への投資や資金運用による現金の増減を表します。
投資活動によるキャッシュフローがマイナスの企業は、設備投資に積極的な会社という評価ができますが、本業の利益以上の投資は財務の悪化を招くこともあります。
投資活動によるキャッシュフローの評価は、フリーキャッシュフローなど他の指標を組み合わせると有効です。
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