社⻑はキャッシュフローをこう⾒なさい!キャッシュフローの改善ポイントも解説
キャッシュフローの見方をご存じでしょうか。社長がキャッシュフローの見方を知らなければ、当然ながらキャッシュフローを改善できず、資金繰り悪化や黒字倒産のリスクを招きかねません。
特に中小企業は資金が潤沢ではないケースも多いため、キャッシュフロー計算書や資金繰り表を利用することで現金の状況を把握すべきです。
本記事では、キャッシュフロー計算書の基本や、キャッシュフローを改善するポイントについて解説します。(※間接法を用いてキャッシュフローを解説)
目次[非表示]
- 1.なぜキャッシュフロー計算書が重要なのか
- 1.1.キャッシュフロー計算書にはなにが記載されているのか
- 1.2.営業キャッシュフローは本業の儲けに関連するお金
- 1.3.投資キャッシュフローは事業投資などに関連するお金
- 1.4.財務キャッシュフローは資金調達に関連するお金
- 1.5.フリーキャッシュフロー(FCF)がプラスなら借入金は減っていく
- 2.キャッシュフローを改善するためには、まず営業キャッシュフローを確認する
- 2.1.売掛金が大きい場合は回収サイクルを短くする
- 2.2.在庫の増加は回転率を上げる
- 2.3.買掛金は支払いサイクルを長くする
- 2.4.CCC(Cash Conversion Cycle)を短くするという考え方
- 3.キャッシュフロー計算書は2種類の作成方法がある
- 4.F&M Clubと導入事例
- 5.まとめ
なぜキャッシュフロー計算書が重要なのか
大企業も中小企業も事業を継続できるかどうかは、現金(キャッシュ)があるかどうかで決まるといっても過言ではありません。キャッシュフローが重要な理由はここにあります。
「利益は出ているのに現金が足りない…」という状態は、黒字倒産の原因となります。キャッシュフロー計算書によって、事業活動によって現金を生み出せているか、現金が足りない理由はなぜなのかを把握することは事業を継続していく上で重要なポイントです。
キャッシュフローを改善することが事業の継続にも関わってくるという意味でも、キャッシュフロー計算書が重要な役割を果たしていることが理解できます。
キャッシュフロー計算書にはなにが記載されているのか
キャッシュフローを日本語にすると「キャッシュ(お金)の流れ」ですが、キャッシュフロー計算書で実際にわかることはお金の流れではなく、後述する「営業活動」「投資活動」「財務活動」によって生じたお金の増減です。
営業キャッシュフローは本業の儲けに関連するお金
営業キャッシュフローは、その企業の事業から生み出されたキャッシュです。その企業の事業活動であるため、原則としてプラスの値であることが正しい状態といえます。
営業キャッシュフローは当期純利益をスタートとして、売掛金や在庫の増加はキャッシュフローを減少(―)、買掛金の増加はキャッシュフローを増加(+)させるような形で調整します。
営業キャッシュフローがマイナスである場合、その経営は健全ではないため、原因の特定や対策を早急に検討しなければなりません。
投資キャッシュフローは事業投資などに関連するお金
投資キャッシュフローは設備投資や有価証券への投資、貸付などによって発生するキャッシュの動きです。
キャッシュフロー計算書ではお金が減少することはマイナス(―)となるため、積極的に設備投資をすれば、投資キャッシュフローはマイナス(―)となります。逆に、固定資産や有価証券などを売却するとキャッシュが入ってくるため、プラス(+)です。
財務キャッシュフローは資金調達に関連するお金
財務キャッシュフローは金融機関からの借入金や、株主からの資金調達などによって発生するキャッシュの増減です。
財務キャッシュフローも金融機関から借り入れれば、キャッシュが増えるためプラス、逆に借入金を返済すればキャッシュがなくなるためマイナスとなります。
財務キャッシュフローに関しては、プラス・マイナスどちらが望ましいということはなく、企業の状況により異なります。例えば、成長過程の企業であれば、金融機関から借り入れて(財務キャッシュフローはプラス)、売上を伸ばすことは望ましいです。経営が安定している企業であれば、余裕資金から借入金を返済(財務キャッシュフローはマイナス)することは正しい姿といえます。
フリーキャッシュフロー(FCF)がプラスなら借入金は減っていく
フリーキャッシュフロー(FCF)の定義はいくつかありますが、最も簡単な定義は「営業キャッシュフロー」と「投資キャッシュフロー」の合計で、企業が自由に使えるキャッシュの意味で使われます。
フリーキャッシュフローも原則としてプラスであることが望ましいです。自社の企業活動によって生み出されたキャッシュと、将来の事業拡大に向けての投資するキャッシュを合わせてもキャッシュが余っている状態ということです。
成長ステージであれば、積極的な借入で財務キャッシュフローがプラスになることはあります。しかし、フリーキャッシュフローがプラスの場合は、借入金の返済もできる(財務キャッシュフローはマイナス)ため、安定期に入った時に借入金を減らすことが可能です。
少なくとも「資金がショートするから資金調達する」といった考えでは、いつまで経っても借入金を返済できません。「今後のために設備投資が必要」という場合も、設備投資の効果はすぐに表れるものではなく、フリーキャッシュフローの状況をよく見極め、綿密な事業計画を立てる必要があります。
また、借入金返済のリスケジュールを実行した企業は追加の借入が難しく、営業キャッシュフローを立て直し、フリーキャッシュフローをプラスにしなければなりません。
キャッシュフロー計算書を作成している場合は、数期分のフリーキャッシュフローを確認して自社の状況を確認してみてください。
キャッシュフローを改善するためには、まず営業キャッシュフローを確認する
営業キャッシュフローの説明で述べた通り、営業キャッシュフローがマイナスの状況は企業活動の意味が無いともいえるため、原因の究明と対策が急務です。
基本的な考え方として、回収はできる限り早く、支払いはできる限り遅くすることで自社にキャッシュが残るようにしておきましょう。
売掛金が大きい場合は回収サイクルを短くする
売掛金が大きいことは、「商品自体は売れているが、現金の回収までに時間がかかるお金が多い」状況です。「利益が出ているけど現金がない」状態で、黒字倒産の原因にもなります。
売掛金の回収は、一般的に取引先ごとで決まっているため、簡単には変更できませんが、取引先と交渉して契約を見直してもらうことも有効な手段です。少なくとも請求書の発送や督促などを迅速におこない、確実に回収する姿勢を取引先に理解してもらいましょう。
状況によってはファクタリング(売上債権の早期現金化)の利用を検討する必要もあります。
在庫の増加は回転率を上げる
在庫の増加も営業キャッシュフローのマイナスにつながるため、在庫の回転率を上げ、在庫を減らすことは営業キャッシュフローの改善に役立ちます。
ただし、在庫がまったくないと売上機会の損失につながるため、在庫が少なければいいわけではなく、適切な在庫を保持しなければなりません。
適切な在庫回転率は企業によって異なるため正解はありませんが、在庫回転率を計算して自社の状況を把握しておきましょう。在庫回転率は以下のように求めます。
在庫回転率 = 売上原価 ÷ 平均在庫金額 |
売上原価 : 期首商品棚卸高 + 当期仕入高 ― 期末商品棚卸高 |
買掛金は支払いサイクルを長くする
買掛金は売掛金とは逆で、支払期間が長いほどキャッシュを保持している期間が長くなります。買掛金のサイクルも取引先との取り決めがあるため、簡単に変更できません。ただ、必要であれば、支払期間を延ばしてもらうように取引先と交渉する価値はあります。とはいえ、単純に支払期間を延ばしてもらうことは企業の信頼がゆらぐかもしれません。
企業の締日近くでは買掛金での仕入れをおさえ、締日を超えてからの仕入れにするだけで1カ月支払いサイクルが伸びます。実際にはこのように単純にはいきませんが、仕入れの状況、締日のタイミング、請求のタイミングなどを再度確認して、支払いサイクルを伸ばす方法がないかを検討してみてください。
CCC(Cash Conversion Cycle)を短くするという考え方
CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)は、商品を仕入れ、販売してから現金を回収するまでの期間を指し、以下のように計算します。
CCC = 売上債権回転日数 + 在庫回転日数 ― 仕入債務回転日数 |
具体的には、
- 商品を仕入れ、30日後に代金を支払った
- 仕入れた商品は40日後に販売した
- 販売した商品の代金を50日後に回収した
この場合、50日+40日―30日=60日がキャッシュ・コンバージョン・サイクルとなります。
要は、代金を払った30日後から、最後に商品代金を回収した日までのキャッシュがない状態の日数です。この期間が短いほど会社にキャッシュが残っている状態が長いことを意味し、望ましいといえます。
業種やビジネス形態により、売上債権回転日数がゼロ(例えば小売りなどの現金商売)であったり、マイナス(スクールビジネスなど前受け金として事前に代金を受領するビジネス)であったりしますが、CCCを短くしていく仕組みを作り出すことがキャッシュの多い企業に近づきます。
キャッシュフロー計算書は2種類の作成方法がある
この記事ではキャッシュフロー計算書の記載方法を「間接法」の前提で進めました。実際にはキャッシュフロー計算書には「直接法」と「間接法」の2種類が存在します。
「直接法」と「間接法」では、営業キャッシュフローの作成の仕方が異なります。
「直接法」では主要な取引(営業収入、原材料、人件費など)ごとにキャッシュフローの総額を記載します。一方、「間接法」では損益計算書の税引前当期純利益から減価償却費や売掛金、買掛金といった項目を調整してキャッシュフローを記載します。
「間接法」のほうが簡単で多くの企業が採用していますが、「直接法」のほうがわかりやすいといわれることもあるため、どちらを選んでもメリットとデメリットがあります。
決算書としてキャッシュフロー計算書を作成する義務のない中小企業の場合は、作成する目的や作成の難易度などを考慮して検討してください。
「直接法」と「間接法」については、下記記事でも解説しています。
F&M Clubと導入事例
株式会社エフアンドエムでは、さまざまな経営課題の解決をサポートする「F&M Club」を提供しています。
中小企業でよくある経営課題の1つに、資金繰りの問題があります。売上は上がっているのにキャッシュが残らないと困っていた企業がF&M Clubを導入してキャッシュフローが改善し、従業員の退職者減少という効果まで生み出しました。
F&M Clubによるキャッシュフロー分析や信用保証協会と同じスコアリングシステムを活用するCRD格付を実施。融資をまとめたり、運転資金と設備投資での融資の受け方を見直したりした結果、キャッシュフローが大幅に改善しました。
まとめ
利益がでていてもキャッシュがなければ倒産してしまうように、事業を継続していく上でキャッシュフロー計算書は重要な財務諸表です。しかし、キャッシュフロー計算書は損益計算書や貸借対照表ほどには中小企業にまで浸透していない状況です。
これは、キャッシュフロー計算書がどうなっていれば企業として良い状態なのか、どこを見れば判断できるのかが直感的にわかりにくいためでしょう。「ここは見なくても大丈夫です」「現在の状況を判断するためにはここが重要です」といったことをアドバイスしてくれる人がいれば、変わってくるかもしれません。
F&M Clubでは、企業の資金繰り改善をおこなうために、財務状況の分析や資金繰り表の作成、施策の提案と導入などのサービスを専門スタッフがおこなっています。ぜひお気軽にご相談ください。