キャッシュフロー計算書は正しく作成できていますか?経営者必見!徹底解説
キャッシュフロー計算書を正しく作成することは、「貸借対照表」「損益計算書」では表れない「手元に現金がいくら残っているか」を検証する上で非常に重要です。
なぜなら表面上決算が黒字であっても、手元に現金がなくなり債務返済が出来ず、倒産に追い込まれるという「黒字倒産」するケースがあるためです。
*国内だけでなく海外も含めた4億件を超える企業情報を提供している東京商工リサーチによると、2020年の倒産件数は7,773件。そのうち約半数の46.8%が黒字倒産というリサーチ結果もでています。(※)
黒字倒産を防ぐためには「手元に現金がいくら残っているのか」を把握できるキャッシュフロー計算書を正しく作成し、企業の安全性を確認することが大切です。
この記事では、更なる企業活動の健全化のために、キャッシュフロー計算書の概要を解説します。
※【参照記事】「倒産企業の財務データ分析」調査|東京商工リサーチ
目次[非表示]
- 1.キャッシュフロー計算書とは
- 1.1.(1)営業活動によるキャッシュフロー
- 1.2.(2)投資活動によるキャッシュフロー
- 1.3.(3)財務活動によるキャッシュフロー
- 1.4.キャッシュフロー計算書が必要な理由
- 2.キャッシュフロー計算書の種類
- 2.1.直接法
- 2.2.▼直接法のメリット
- 2.2.1.▼直接法のデメリット
- 2.3. 間接法
- 2.4.▼間接法のメリット
- 3.キャッシュフロー計算書の作り方
- 3.1.必要書類を準備する
- 3.2.項目ごとに金額を整理する
- 3.3.フォーマットに金額を入力する
- 4.キャッシュフロー計算書から経営状況を読み取る
- 5.キャッシュフロー計算書作成時の注意点
- 6.キャッシュフロー計算書の作り方:まとめ
キャッシュフロー計算書とは
キャッシュフロー計算書とは、一定期間に「いくら現金が手元に入りいくら手元から出て行ったのか」を表した計算書です。
貸借対照表や損益計算書と比べ、現金そのものの流れをつかんだツールであるため、より実質的かつ現実的な指標といえます。
キャッシュフロー計算書は、以下3つの区分で構成されています。それぞれの区分ごとに、企業の色々な方向から経営実態を知ることができます。
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(1)営業活動によるキャッシュフロー
3つのキャッシュフローの中で最も重要なものです。
仕入れや販売など、本業での営業活動で発生した現金の増減を示します。営業活動によるキャッシュフローがプラスであれば、健全な営業活動がなされていることを示します。逆にマイナスであれば、経営状態が悪く、民事再生や会社更生の手続きに入る可能性があります。
(2)投資活動によるキャッシュフロー
主に設備投資に関するキャッシュフローの増減を示します。
設備投資とは、自社の現金を投資して資材を購入するなどして将来大きくさせる行為です。投資活動によるキャッシュフローは、マイナスの方が、会社が積極的に設備投資をして成長していることを示しています。逆にプラスであれば、本業が行き詰まり、止むを得ず設備を売却してキャッシュフローをプラスにして経営を凌いだことを示しており、良くない兆候です。
(3)財務活動によるキャッシュフロー
金融機関からの借り入れや返済による現金増減を示します。
借り入れといえばマイナスのイメージがありますがキャッシュフローとしてはプラスです。逆に返済をすればキャッシュフローは手元から現金がなくなるため、マイナスとなります。
キャッシュフロー計算書が必要な理由
キャッシュフロー計算書を正確に理解することで、会社の問題点を明らかにすることができます。
先述した三つの 区分のキャッシュフローには、当然プラスマイナスのパターンがあり、全てで8つのパターン(2×2×2=8)があります。
最も良いパターンとしては、営業区分がプラス、投資区分がマイナス、財務区分がマイナスのパターンです。本業でのキャッシュフローのプラスの部分が投資や借金の返済に まわされており健全な財務状況といえます。
最も悪いパターンとしては、営業部分がマイナス、投資区分がプラス、 財務区分がプラスのパターンで、これは本業でのキャッシュフローがマイナスとなっている状態です。これを補うために資産を売却したり、金融機関から借金をしたりすることで経営を成り立たせているという可能性が考えられます。
このようにキャッシュフローを分析することで、企業がどのような体質を持っているかを知ることができます。
キャッシュフローの分析は、経営実態を把握できるだけではなく、どのように改善すれば良いのかも分かる点が特徴です。キャッシュフロー計算書が正確につけられていない場合、経営状態を改善するためのポイントが見つけられず、倒産につながる危険性もあります。
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キャッシュフロー計算書の種類
キャッシュフロー計算書の表示方法には直接法と間接法があります。
一般的には間接法を用いる企業が大半を占めています。
直接法
▼直接法のメリット
主要項目ごとの収入または支出(営業収入、商品仕入、給料の支払い、経費の支払いなど)を総額で表示しています。
そのため営業キャッシュフローの全容を把握できるという利点があるだけでなく、将来のキャッシュフローの見通しもよくなります。分かりやすさを重視する企業には最適の方法です。
▼直接法のデメリット
使用項目ごとの集計に手間がかかり、作成に時間を要します。
日本の会計基準では、企業の規模にかかわらず、「直接法」「間接法」のどちらを取り入れても良いという規定となっています。そのため上場企業でも、「直接法」を採用している場合は、ごく少数です。
間接法
▼間接法のメリット
期首から期末の時点での売掛金や買掛金在庫の増減が表示されています。
営業活動などによるキャッシュフローの増減の原因をつかみやすいことが、メリットとして挙げられます。
また、各項目を計上することによって算出されるため、直接法のように取引ごとの膨大なデータを用意する必要がありません。簡便に作成できる方法であるという点もメリットとなります。
▼間接法のデメリット
直接法に比べ経費計上項目が一定ではないため、見やすさに難があります。取引ごとの細かな増減は記載しないこともあり、収支の全容を把握することも難しくなります。
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キャッシュフロー計算書の作り方
ここからは、キャッシュフロー計算書の作り方について解説します。比較的多く利用されている、間接法によるキャッシュフロー計算書の作り方を見ていきます。
必要書類を準備する
貸借対照表(前期と当期)、損益計算書(当期)、固定資産や有価証券の取引がわかるもの、 株式引受や増資を行った場合はその関係資料などを準備します。
項目ごとに金額を整理する
準備した書類から以下の項目に割り振ります。
営業活動の項目 |
減価償却費 、貸倒引当金、棚卸資産、売掛金、受取手形、買掛金、支払手形、利息 |
投資活動の項目 |
固定資産、有価証券、固定資産売却益・売却損、有価証券売却益・売却損 |
財務活動の項目 |
金融機関からの借入金(短期・長期)、自社株式、配当金 |
フォーマットに金額を入力する
キャッシュフロー計算書テンプレート(Excel)は、日本公認会計士協会など公的機関のツールを利用して作成することも可能です。また、さまざまなコンテンツが用意されているため、経営者や担当者の経験などに合わせた相応しいツールがすぐに見つかります。
テンプレートや雛形を使えば、電卓をたたくような計算は必要なく、初めて挑戦する方でも簡単に作成できます。
キャッシュフロー計算書から経営状況を読み取る
キャッシュフロー計算書に示される3つの活動区分それぞれが、プラスかマイナスか をチェックします。
1.営業活動によるキャッシュフローがプラスであるかどうかを見ます。
本業が儲かっているかどうか判断する視点であるため極めて重要な項目です。
本項目がプラスの場合、資金調達もしやすくなるといわれています。
2.投資活動によるキャッシュフローがマイナスであるかどうかを見ます。
本項目がプラスになっていれば、資産を売却していることが考えられるため、自社の規模が縮小していないかをチェックすることができます。
3.財務活動によるキャッシュフローをチェックします。
基本的にはマイナスが望ましいですが、適正なキャッシュフローを確保するためには、ある程度の借入も、必要な場合があります。
キャッシュフロー計算書は、あくまでも手元に現金がいくらあるかを見る指標であるため、 この3区分の項目のバランスが一番大事です。
そのためキャッシュフローの組み合わせによって、企業の経営状態を判断することが多くなります。
各項目のプラスやマイナスの組み合わせによって、ベンチャー企業なのか、業歴の長い安定企業なのか、積極投資の成長企業なのか、または業績が悪化している会社なのかなどを、判断することができます。
キャッシュフロー計算書作成時の注意点
キャッシュフロー計算書を作る意味は、経営者として会社を発展させるため、より良い資金繰り計画を立てることにあります。
冒頭でも申し上げましたが、利益は上がっているのに手元に現金が無く債務不履行に陥り、黒字倒産になってしまうケースがあるとお伝えしました。
その原因としては、「支払いは1日でも遅く回収は1日でも早く」という経理の鉄則を守っていなかった可能性があります。
経営者はいわゆる「がめつく」なくてはなりません。
支払い条件が不利であったり回収条件も取引先に有利になったりするケースが数多くあるため、それらの条件を改善することこそ経営者の手腕といえるでしょう。
少しでもキャッシュフロー改善の質を上げるために、地道に交渉を続け、相見積もりを取ることによって取引先に牽制をかけ、支払い・回収条件を見直していく必要があります。
キャッシュフロー計算書の作り方:まとめ
キャッシュフロー計算書とは何か、どのような種類があるのか、どのように作成していくのかについて解説しました。
貸借対照表や損益計算書と並んで、「財務3表」と言われるキャッシュフロー計算書は手元に現金がいくら残っているかという企業の安全性を見る重要な指標です。
キャッシュフロー計算書を適切に作成し、企業の資金繰りに有効活用しましょう。