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キャッシュフローの考え方は?経営者が知るべき重要性やリスク分析をわかりやすく解説

「キャッシュフローとは、よく耳にするけど具体的にどうしたらいいの」、「キャッシュフローって難しそう」とよく耳にします。この記事では、どうしてキャッシュフローが重要であるかについて説明します。

キャッシュフローとは、その名の通リ「おカネの流れ」です。会社がいくら売上や利益を追求しても、手元に現金預金が残っていなければ、支払いが不可能となり事業を続けることができなくなります。この事態を回避するために、経営者はキャッシュフローに関し、どうすればいいのかについて解説します。


目次[非表示]

  1. 1.キャッシュフローとは
  2. 2.キャッシュフローが重要な理由
    1. 2.1.手元の現金の状況を知ることの重要性
  3. 3.経営が良好な企業のキャッシュフローとは
    1. 3.1.営業活動によるキャッシュフロー
    2. 3.2.投資活動によるキャッシュフロー
    3. 3.3.財務活動によるキャッシュフロー
    4. 3.4.3つの活動によるキャッシュフローイメージ
  4. 4.キャッシュフローの悪化による経営リスク
    1. 4.1.売掛債権の長期化
    2. 4.2.売上の急激な増加
    3. 4.3.在庫の増加
  5. 5.キャッシュフローがマイナスの場合
    1. 5.1.黒字倒産のリスク
  6. 6.キャッシュフローを改善するためには
    1. 6.1.利益を増やす
    2. 6.2.売掛債権を減らすか短期で回収を図る
    3. 6.3.在庫を減らす
    4. 6.4.買掛債務の長期化を図る
    5. 6.5.遊休資産の売却
    6. 6.6.資金調達を行う
      1. 6.6.1.▼アセットファイナンス
      2. 6.6.2.▼デットファイナンス
      3. 6.6.3.▼エクイティファイナンス
    7. 6.7.リスケジュールを行う
  7. 7.資金繰り表を作成する
  8. 8.常にキャッシュフローを良い状態にしましょう
  9. 9.キャッシュフローの重要性:まとめ

キャッシュフローとは

キャッシュフローとは、文字通り事業活動におけるおカネ(現金預金)の流れ(フロー)です。また、キャッシュフローでは、以下の3つの活動区分に分けられます。


  • 営業活動によるキャッシュフロー
  • 投資活動によるキャッシュフロー
  • 財務活動によるキャッシュフロー

また、それぞれの活動区分で前期比増加、減少を示します。

  キャッシュフローとは?わかりやすく、メリットや活用方法をご紹介 | 株式会社エフアンドエム キャッシュフローとは、経営にかかわるお金(キャッシュ)の流れ(フロー)です。売上の入金で、支払や返済のすべてを賄うことが理想ですが、現実には資金不足になることもあります。支払に必要なお金が用意できない事態になると、仕入代金の支払が遅れたり、従業員への給料が遅配となり、最悪の場合、資金不足(資金ショート)で経営を続けることができなくなります。 このような資金ショートを避けるためには、どのようにして現金や預金を確保したのかの流れ(キャッシュフロー)を把握し、資金不足にならないように予測しながら経営することが必要です。 本記事では、キャッシュフローとはなにか、キャッシュフロー計算書とはなにか、キャッシュフローの経営への活用方法まで解説します。 株式会社エフアンドエム


  経営者が知っておくべきキャッシュフロー計算書の見方とは 事業継続には『利益』だけではなく『キャッシュ』が大切です。経営者は営業・投資・財務のキャッシュフローの3つを重点的に確認しましょう。直接法や間接法など各キャッシュフローに適した計算方法や見方をわかりやすく解説します。 株式会社エフアンドエム


キャッシュフローが重要な理由


キャッシュフローには3種類あることについて説明しましたが、どうしてキャッシュフローは重要なのでしょうか。

キャッシュフローの重要性について解説します。


手元の現金の状況を知ることの重要性

売上や利益については把握しているものの、手元の現金については把握できていない経営者がたくさんいます。

特に、経理担当者や税理士任せといわれる経営者が多くいます。

このような状態で、経営者が金融機関などに運転資金の融資の申込みをしても、前向きな回答を得られるかは微妙です。

一方、手元の現金・預金の状況を把握した経営者が融資申込を行った場合、金融機関は間違いなく経営者の管理能力ついて一目置くこととなります。

経営者が自社の資金管理をしっかり把握すれば、会社のリスクを最小限に抑えることが可能となります。


経営が良好な企業のキャッシュフローとは

経営者がキャッシュフローを把握するということは重要ですが、経営が良好であるのかどうかについては、3つのキャッシュフローを総合的に見て判断しなければなりません。


営業活動によるキャッシュフロー

「営業活動によるキャッシュフロー」は、本業でのキャッシュフローについて示されており、損益計算書の現金・預金版ともいえます。

そのため、営業活動によるキャッシュフローが増えれば現金預金における当期純利益が増加したこととなります。

経営者は、営業活動によるキャッシュフローを増加するように事業運営しなければなりません。


投資活動によるキャッシュフロー

「投資活動によるキャッシュフロー」は、市場で取引されている株式や社債などの購入や売却、設備投資などによる現金の流れをいいます。

営業活動によるキャッシュフローでは、本業が良好であれば資金が増加することとなりますが、投資活動によるキャッシュフローについては、内容を見ないと判断できないケースがあります。

例えば、投資活動で資金が減少となった場合、投資先が設備投資のため減少しているか、あるいは利殖目的での株式購入による減少なのかで内容が変わるため、注意する必要があります。


財務活動によるキャッシュフロー

「財務活動によるキャッシュフロー」は、会社が金融機関などからの借入や返済、社債の発行や償還など、営業活動及び投資活動を維持するために資金を調達したり、返済したりすることをいいます。

営業活動が順調である場合、設備投資を考えて規模を拡大することを検討していれば財務活動によるキャッシュフローは増加します。

一方、営業活動が順調であって、負債の減少を考えている場合、財務活動によるキャッシュフローは減少します。

このように、財務活動によるキャッシュフローの増加・減少は、経営者の決定意思がダイレクトに反映します。


3つの活動によるキャッシュフローイメージ

営業活動、投資活動、財務活動のプラス、マイナスを組み合わせた、キャッシュフローイメージが、以下の表です。全部で8パターンあり、それぞれの事業イメージについて記しています。

(増加:+、減少:-)

▼キャッシュフローの8パターン


営業活動によるCF
投資活動によるCF
財務活動によるCF
事業活動イメージ(例)
営業活動が順調で資産を売却し、かつ資金調達を行った。事業転換の可能性あり。
営業活動及び資産を売却して得た資金で借入金の返済を行った。スリム化を図っている。
営業活動で得た資金及び資金調達での資金で設備投資を行った。積極的な投資と考えられる。

営業活動で得た資金で返済を行い、同時に設備投資を行った。優良企業。

営業活動が不調で資産売却や借入により資金調達を行った。要注意企業。

営業活動が不調で、資産売却資金で借入金の返済を行った。推移注視。

営業活動が不調であるが、資金調達により設備投資を行った。営業活動のマイナスが一過性あるいは企業再建可能性。

営業活動が不調であるにもかかわらず、借入金の返済を行い、かつ設備投資を行った。過去に相当儲けていた可能性あり。

キャッシュフローの悪化による経営リスク

キャッシュフローが悪化するということは、倒産リスクが高くなりますが、具体的にどのようなことが考えられるのでしょうか。主に営業活動についてみていきます。


売掛債権の長期化

売上の増加を図ることを第一義に考えている経営者の中には、売上をいくら増加するか、と同時に、どの企業と取引を行うのかを考える経営者もいます。

その際、取引先との力関係より、回収条件として売掛サイトが通常より長期間であったり、企業によっては受取手形を受け取ったりする場合があり、売掛債権のサイトの長期化につながります。


売上の急激な増加

売上が急激に増加することが、キャッシュフローの悪化の要因となります。

「売上の増加はいいことでは」と思われるかもしれません。

確かに、売上の増加は長期スパンで判断すればプラス要因であることは間違いありません。しかし、短期間で急激に増加すれば、売掛債権の回収が仕入資金や人件費などの支払に追いつかない可能性があるため支払不能となり、信用の失墜につながることとなります。


在庫の増加

会社が仕入を行うも、販売できずに在庫商品となることもあります。

商品によっては、商品が劣化し商品価値を失う恐れがある場合があるため、注意する必要があります。



キャッシュフローがマイナスの場合

キャッシュフローがマイナスである場合、どのようなことが起こるのでしょうか。

代表的なものとして、黒字倒産があります。


黒字倒産のリスク

「黒字」と「倒産」は、相反する言葉ですが、「黒字倒産」とは、帳簿上黒字計上しているにもかかわらず、手持ち現金が不足して仕入資金や従業員の給与、金融機関などの借入金などが支払えなくなり事業運営ができなくなる状況のことをいいます。

東京商工リサーチの「倒産企業の財務データ分析」によると、毎年倒産企業の半数近くが黒字倒産であることを示しています。

倒産時決算
2016年
2017年
2018年
2019年

2020年

赤字
49.8%
53.7%
52.3%
52.8%
53.2%
黒字
50.1%
46.3%
47.7%
47.2%
46.8%

【参考】「倒産企業の財務データ分析」調査|東京商工リサーチ


キャッシュフローを改善するためには


利益を計上していても倒産することがあると同時に、手持ち現金を確保する重要性についても理解いただけたのではないでしょうか。

キャッシュフローを改善するには、どのような方法があるかについて、解説します。


利益を増やす

企業活動の根幹である売上を伸ばすことは最も重要です。

売上を増やして利益を計上することで、対外的に信用を得ることができます。

金融機関などは、さまざまな角度から企業分析を行いますが、まず一番に「利益をあげているのか」、「売上はどう推移しているのか」をチェックします。


売掛債権を減らすか短期で回収を図る

売上の増加に比例して売掛債権は増加します。

売上の一部を現金で支払ってもらうような交渉や、受取手形をもらっている場合は、売上金に対する手形の比率を小さくしてもらうなどして、手形支払期日のサイトを短縮につなげます。

このように、売掛債権の回転期間は、短縮化を図るように心がける必要があります。


在庫を減らす

売掛債権や買掛債務の回転期間に目が行きがちですが、在庫管理もキャッシュフローを考える上で重要です。

「売上に対して在庫はいくらあるのか」を十分把握することで、必要以上の在庫を抱え込まなくなります。


買掛債務の長期化を図る

仕入の際に発生するのが買掛債務です。

買掛債務の回転期間の長期化を図ることで、キャッシュフローの改善を図ることができます。

例えば、仕入の一部を現金で支払っている場合、全額買掛金にて対応してもらうことや、支払手形を振り出すことで、買掛債務の長期化を図ることも検討材料のひとつといえます。


遊休資産の売却

キャッシュフローの見直しは、営業活動だけではありません。

投資活動によるキャッシュフローにも注視しなければなりません。

例えば、会社が所有している資産で、不動産など会社の収益に見合っていない資産(遊休資産)を売却して資金化を検討することも、キャッシュフロー改善においては重要な選択のひとつです。

その際の注意点として、購入価格より高く売れた場合、売却益が発生し納税する可能性があります。そのため、納税の際に発生するキャッシュの減少についても考えておかねばなりません。


資金調達を行う

利益計上した決算であれば、対外的に信用を得られることが高くなります。

そのため資金調達が容易に行える可能性がでてきます。

資金調達には主に3つの方法があります。


▼アセットファイナンス

会社の資産、特に流動資産の売却により資金調達を行う方法です。

受取手形を売却して資金化を図る「手形割引」、および売掛金を売却して資金化を図る「ファクタリング」があります。

手形割引、ファクタリングの特徴は下記の通りです。



メリット
デメリット
手形割引
資金化の短縮
不渡手形となれば支払う義務がある(遡求権)
ファクタリング
審査に通りやすい
手数料が高い


▼デットファイナンス

会社は負債を発生させることにより資金調達を行う方法です。

金融機関からの融資や社債の発行があります。

メリットとして、負債の増加であるため、経営権が変更したりする恐れがないことがあげられ、デメリットとして、返済(社債の場合償還)義務があります。


▼エクイティファイナンス

自己資本を充実させることで資金調達を行う方法で、公募(時価発行増資)や第三者割当増資などがあります。

メリットとして、返済する必要がない資金を調達できる点があげられ、デメリットとして、一定割合の株式を保有されれば経営上の意思決定に重要な影響を受け、株式の過半数を保有されると経営権が奪われる点があります。


リスケジュールを行う

営業活動で収益があげられない場合もあります。

その際は、返済金額の減額、または一定期間元本据置の措置を取ることも有効です。

金融機関と相談することが必要となります。



資金繰り表を作成する

キャッシュフローを改善するための着眼点について説明しました。

では、キャッシュフローを改善するためには会社はどのようなことを実践すれば良いのでしょうか。それは、資金繰り表を作成することです。

資金繰り表を作成することにより、毎月の入金、出金を把握することができ、出金から逆算して売上の目標を設定することも可能となり、会社は黒字倒産を回避することができます。


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常にキャッシュフローを良い状態にしましょう

経営者がキャッシュフローについて知っておきたい重要性や考え方について説明しました。

キャッシュフローには、営業活動、投資活動、財務活動の3つのキャッシュフローがあり、会社の意思決定により、それぞれ増加、または減少がリンクされています。

手持ち現金を考えずに売上や利益を追求すると、黒字倒産になってしまうことを経営者は知っておかなければならず、キャッシュフローの改善を行う必要があります。

日々の現金管理については、資金繰り表を作成して把握する必要があり、出費から逆算して売上目標を設定することで、手持ち現金が枯渇して倒産するリスクの回避につながります。

会社にとって現金は血液と同じです。

常にキャッシュフローを管理し、円滑な事業運営に役立てましょう。

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キャッシュフローの重要性:まとめ

  • 経営者の中には手持現金の重要性を理解していない人がいる
  • キャッシュフローには3つの区分があり、それぞれ事業運営でリンクしている
  • 黒字倒産を回避するためには、キャッシュフローの見直しが必要
  • キャッシュフローを認識するためには、資金繰り表を作成する








宮本建一
宮本建一
大阪府立大学経済学部卒業後、第二地方銀行に勤務し、預金業務、融資業務に従事。銀行破綻後、消費者金融会社で債権回収業務に従事。その後信用組合へ転職。融資業務、経理、内部監査、審査管理等に従事。退職後、ライターとして活動中。主に資金調達関連、事業承継関連、不動産関連記事を執筆。FP2級技能士。AFP。趣味はマラソン、楽器演奏。
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