キャッシュフローの作成方法とは?基礎から読み方まで解説
会社経営では帳簿上の利益が出ているものの、キャッシュ不足によって経営危機や黒字倒産に陥る企業も多いです。
キャッシュフロー計算書を作成する理由は、企業のキャッシュを把握することです。本記事では、キャッシュフローの作成方法や読み取り方について解説します。
目次[非表示]
- 1.キャッシュフロー計算書を作成する理由は現金の把握
- 1.1.資金繰り表との違い
- 1.2.貸借対照表、損益計算書との関係
- 2. キャッシュフロー計算書の項目は3つ
- 2.1.営業活動によるキャッシュフロー
- 2.2.投資活動によるキャッシュフロー
- 2.3.財務活動によるキャッシュフロー
- 3.キャッシュフロー計算書の種類
- 4.キャッシュフロー計算書の簡単な作り方を解説
- 4.1.必要な資料とキャッシュフロー計算書のひな形(テンプレート)の準備
- 4.2.項目別に分類
- 4.3.金額を記入
- 4.4.注意点
- 5.キャッシュフロー計算書の読み方
- 6.F&M Clubの資金繰り改善支援サービスでキャッシュフローを改善
- 6.1.どんな企業が資金繰り改善が必要か
- 7.まとめ
キャッシュフロー計算書を作成する理由は現金の把握
キャッシュフロー計算書は、重要な財務資料のひとつで、「貸借対照表」や「損益計算書」と合わせて財務3表と呼ばれています。キャッシュフロー計算書と資金繰り表との違いや、貸借対照表や損益計算書との関係について紹介します。
資金繰り表との違い
キャッシュフロー計算書と資金繰り表は、時系列に違いがあります。
キャッシュフロー計算書は、企業会計を報告するために作成されるものであるため、一会計年度の現金の増減を表します。つまり、作成するタイミングは決算時となります。
資金繰り表は、現在から将来に向けて企業の現金残高がどうなるかを予測するために作成します。つまり、新規事業を始めるタイミングなどです。
会社のキャッシュを把握する点は変わらないものの、キャッシュフロー計算書は過去の報告として、資金繰り表は現在から将来に向けて予測するために作成されるという違いがあります。
貸借対照表、損益計算書との関係
キャッシュフロー計算書と同じく重要な財務資料である貸借対照表と損益計算書は、密接に関係しています。
貸借対照表との関係
貸借対照表は、期末時点の資産や負債、純資産の財務状況を表す資料です。
貸借対照表の資産は、現金や普通預金、売掛金などの流動資産や建物、土地などの固定資産があります。また、負債は、買掛金や未払金などの流動負債や、長期借入金などの固定負債です。純資産は、資産と負債を差し引いた金額で、企業の自己資本を表しています。
キャッシュフロー計算書にある営業活動によるキャッシュフローは、貸借対照表の流動資産や流動負債と対応しており、投資活動によるキャッシュフローは、固定資産や純資産に対応します。また、財務活動によるキャッシュフローは、固定負債に対応するなど、貸借対照表とキャッシュフロー計算書は密接な関係があります。
損益計算書との関係
損益計算書は、一定期間の企業の業績を表す資料です。一定期間の収益と費用を表す損益計算書に対して、キャッシュフロー計算書は、一定期間の現金の増減を表すため似ている部分があるでしょう。しかし、会計処理方法に大きな違いがあります。
キャッシュフロー計算書は、「現金主義」による会計処理で、実際に現金収入や現金による支出があった場合に記入します。損益計算書は、「発生主義」による会計処理で、収入や支出が発生した時点で記入するため、同じ会計期間内の現金収支が一致することはありません。
損益計算書で営業利益が出ているのに、営業活動によるキャッシュフローが赤字になることがあります。その場合、売掛金の回収が遅れている可能性が考えられます。キャッシュフロー計算書は、損益計算書が企業の業績を示す一方、現金の増減を示すことで補完する役割を表したものとなります。
キャッシュフロー計算書の項目は3つ
営業活動によるキャッシュフロー
営業活動によるキャッシュフローは、本業によって生じたキャッシュの増減を表します。キャッシュフローの額が大きくなることで、得られるキャッシュが多くなります。例えば、現金で売上になればプラス、仕入れはマイナスです。また、売掛金を現金で回収すればプラスになるものの、現金が回収できなければ収入になりません。
その他、銀行口座の受取利息や法人税の支払いも営業活動によるキャッシュフローに含まれます。
投資活動によるキャッシュフロー
投資活動によるキャッシュフローは、将来の収益を獲得するために設備投資・資産運用などの投資活動した際のキャッシュの増減です。投資活動は、企業が所有する不動産や設備などを売却するとプラスになり、事業拡大のために設備や車両などを購入することでマイナスとなります。
財務活動によるキャッシュフロー
財務活動によるキャッシュフローは、資金調達によるキャッシュの増減を表します。財務活動の主なものとして、金融機関からの融資や株式の発行による現金収入がプラスとなり、借入金の返済や配当金の支払いによる現金支出がマイナスとなります。
キャッシュフロー計算書の種類
キャッシュフロー計算書は、「直接法」と「間接法」の2種類の記載方法があり、営業活動によるキャッシュフローの表示方法が変わります。
直接法によるキャッシュフロー計算書とは
直接法は、主要な取引ごとに総額を記入する方法で、営業活動の収支の内訳を記入するため、現金の流れを正確に把握できます。例えば、商品を販売して得た利益と商品の仕入れ価格を相殺して記入すると、金額はわかるもののキャッシュの流れはわかりません。
直接法では、取引ごとで記入するためキャッシュの流れがわかりやすくなります。ただし、総額を算出するためには、正確な記入が求められるため時間がかかって注意が必要です。
間接法によるキャッシュフロー計算書とは
間接法は、現金が動く部分だけを計算する方法で、損益計算書から作成できます。損益計算書の税引前当期純利益をもとにして、キャッシュの減少を伴わない非資金損益項目や、来期にキャッシュが動く売掛金、買掛金、棚卸資産などを調整して表示します。
間接法は、直接法と比べると手間がかからないため、キャッシュフロー計算書を作成する際に採用されることが多いです。ただし、取引ごとに総額の算出をおこなっていないため、内訳が不明なままとなり、正確なキャッシュフローを把握できない問題点もあります。
キャッシュフロー計算書の簡単な作り方を解説
キャッシュフロー計算書を実際に作成するための手順を紹介します。
必要な資料とキャッシュフロー計算書のひな形(テンプレート)の準備
キャッシュフロー計算書のひな形(テンプレート)を用意しましょう。ひな形(テンプレート)は日本公認会計士協会や中小企業庁、経団連などの公的機関においてダウンロードが可能です。
また、キャッシュフロー計算書の作成に必要な資料は、間接法と直接法では異なります。
間接法でキャッシュフロー計算書を作成する場合、貸借対照表の前期分と当期分、損益計算書の当期分、固定資産や有価証券の取引などがあれば作成が可能です。直接法では、商品の販売や仕入れを示す資料や、経費や給与の支払いにおいても個々の資料を準備する必要があります。
直接法でキャッシュフロー計算書を作成する場合、資料を準備しなければならないため、時間と手間がかかります。
項目別に分類
キャッシュフロー計算書の項目が次のとおりです。
営業活動
|
収入 |
売掛金、受取手形、棚卸資産など |
支出 |
買掛金、支払手形、前受金など |
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投資活動 |
収入 |
有価証券の売却、不動産の売却など |
支出 |
有価証券の購入、不動産の購入など |
|
財務活動
|
収入 |
社債の増加、借入金の増加、自己株式の処分など |
支出 |
社債の返済、借入金の返済、自己株式の取得など |
金額を記入
キャッシュフロー計算書の必要書類や項目別の分類方法がわかれば、実際に金額を記入します。
注意点
エクセルで作成する方法は、無償で使用することができ、会計に慣れている人であれば利便性は高いでしょう。ただし、会計に慣れている人しか使えない複雑なエクセルとならないよう注意してください。作成者が会社を退職したから、誰も操作できない可能性もあるため注意が必要です。
キャッシュフロー計算書の読み方
キャッシュフロー計算書を正確に記入すると、キャッシュの状況が把握できるため、キャッシュ不足や黒字倒産のリスクを事前に予測することができます。また、企業経営の手法として、キャッシュを増やすことを目的としたキャッシュフロー経営もあるため、キャッシュの流れを意識することは重要といえます。
キャッシュフロー計算書でわかることは、営業活動によるキャッシュフローの場合、例えば、売掛金の回収の遅れや買掛金の支払いが早まるなどで、キャッシュ不足になることがわかります。資金回収がうまくいっていないと、キャッシュ不足に陥る原因となるため改善が必要です。
投資活動によるキャッシュフローは、一般的にプラスになると本業が資金繰り難になっている可能性を示し、マイナスは本業が好調であることを示します。経営状況を判断して適切に売却したり、購入したりするといいでしょう。
財務活動によるキャッシュフローは、金融機関の借入金返済が、営業活動によるキャッシュフローを上回る金額を返済している場合、キャッシュ不足に陥る可能性が高くなるため、借換えなどの方法で改善が必要となるでしょう。
キャッシュフロー計算書のそれぞれの数値は、企業経営の安定性や問題点を分析するために活用ができます。
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まとめ
会社を安定的に経営するためには、利益を出すことも大切ですが、キャッシュがどのくらいあるのかを把握することも同じぐらいに大切です。キャッシュ不足によって、資金繰り難に陥り、改善できなければ黒字倒産になってしまいます。
キャッシュ不足に陥らないためには、キャッシュフロー計算書を適切に作成して、企業のキャッシュ状況を的確に把握することです。問題があれば、早期に改善することもできるため、まずはキャッシュフロー計算書を作成するといいでしょう。
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