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財務諸表とは?企業経営に欠かせない財務資料についてわかりやすく解説

会社の財務内容、ご存じですか。税理士任せにしていませんか。

この記事では、企業経営に欠かせない財務諸表について説明し、決算書の違いや財務三表について、また財務諸表が重要な理由や、分析することでどのようなことがわかるのかについて解説します。

これまで財務諸表にあまり関心がなかった経営者の方は、ぜひ最後まで読み、参考にしてください。


目次[非表示]

  1. 1.財務諸表とは
    1. 1.1.財務諸表とは
    2. 1.2.財務諸表と決算書の違い
  2. 2.財務三表について
    1. 2.1.貸借対照表
      1. 2.1.1.▼資産
      2. 2.1.2.▼負債
      3. 2.1.3.▼自己資本
    2. 2.2.損益計算書
    3. 2.3.キャッシュフロー決算書
      1. 2.3.1.▼営業活動によるキャッシュフロー
      2. 2.3.2.▼投資活動によるキャッシュフロー
      3. 2.3.3.▼財務活動によるキャッシュフロー
  3. 3.財務諸表が重要な理由
    1. 3.1.株主への報告
    2. 3.2.借入先への経営状況の開示
  4. 4.財務諸表から分析できること
    1. 4.1.収益性
      1. 4.1.1.▼総資本経常利益率
      2. 4.1.2.▼売上高総利益率
      3. 4.1.3.▼株主資本利益率(%)
    2. 4.2.生産性
      1. 4.2.1.▼労働生産性
      2. 4.2.2.▼労働分配率
    3. 4.3.安全性
      1. 4.3.1.▼自己(株主)資本比率
      2. 4.3.2.▼流動比率
      3. 4.3.3.▼固定比率
    4. 4.4.運転資金、売掛回転期間、棚卸回転期間、買掛回転期間
      1. 4.4.1.▼運転資金
      2. 4.4.2.▼売掛債権回転期間
      3. 4.4.3.▼棚卸資産回転期間
      4. 4.4.4.▼買掛債務回転期間
  5. 5.財務諸表:まとめ

財務諸表とは

会社の通知表といわれている財務諸表

そこにはどのようなことが記されているのか、決算書とはどのような違いがあるのかについて説明します。

財務諸表とは

財務諸表とは、1年間の会社の成績表のことをいいます。

どれだけの資産を使い、同時に資金をいくら調達し、どれだけの費用をかけて売上を計上し、そしていくら儲け、儲けの中からどれだけ株主に配当して会社にいくら残ったのかを示しているのが財務諸表です。

財務諸表といわれるものには、

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • キャッシュフロー計算書
  • 株主資本等変動計算書
  • 附属明細表

があります。


財務諸表と決算書の違い

財務諸表は、上場企業などを対象とした金融商品取引法で定められている書類のことをいいます。また、すべての会社に対し、会社法が適用され、計算書類等という名称で呼ばれています。


法律名
名称
構成する書類
対象
金融商品取引法
財務諸表

・貸借対照表

・損益計算書

・キャッシュフロー計算書

・株主資本等変動計算書

・附属明細表

上場企業など
会社法
計算書類等

・貸借対照表

・損益計算書

・株主資本等変動計算書

・個別注記表

すべての会社

一般的には


  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • キャッシュフロー計算書

のことを「決算書」と呼んでおり、広い意味では財務諸表も決算書も同じです。

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財務三表について

財務三表である「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」についての概略を説明します。

貸借対照表

貸借対照表とは、会社の財政状況を示した書類で、バランスシートとも呼ばれます。

  • 左側に資産、右側に負債、自己資本を記載します。
  • 常に、資産=負債+自己資本 とならなければなりません。
  • また、貸借対照表では「ワンイヤールール」として、1年以内に資金化されるのか、完済しなければいけないのかによって「流動資産(負債)」「固定資産(負債)」と分けて表示されます。

▼資産

  • 左側に表し、「流動資産」「固定資産」に分けて示します。
  • 流動資産には、「現金」「受取手形」「売掛金」「未収入金」などがあります。
  • 固定資産には、「土地」「建物」「車両」「機械」などがあります。

▼負債

  • 右側に表し、「流動負債」「固定負債」に分けて示します。
  • 流動負債には「支払手形」「買掛金」「未払金」「短期借入金」などがあります。
  • 固定負債には、「長期借入金」「社債」などがあります。

▼自己資本

  • 株主が出資している「資本金」、過去より利益が蓄積されている「利益剰余金」が示されています。
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損益計算書

損益計算書は、会社がどれだけ売上をあげてどれだけ利益を計上したのかを表す書類です。

損益計算書には5つの利益があります。


売上総利益=売上高-売上原価

売上から原価を差し引きます。一般的に「粗利(益)」と呼ばれています。


営業利益=売上総利益―販売費および一般管理費(販管費)

売上総利益より人件費や水道光熱費、広告宣伝費など、仕入以外の販売にかかった費用を差し引きます。


経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用

営業利益より預金利息や雑収入など売上以外の収入および借入金の支払利息など仕入、販管費以外の費用を加減します。

税引前当期純利益=経常利益+特別利益-特別損失

経常利益より固定資産の売却益(損)など通常の業務では発生しない一時的な利益および損失を加減します。


当期純利益=税引前当期純利益-法人税、住民税および事業税(±法人税等調整額)

税引前当期純利益より法人税、住民税、事業税を差し引き、税効果会計により法人税等調整額を加減して当期純利益を算出します。



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キャッシュフロー決算書

キャッシュフローとは、文字通り事業活動におけるおカネ(現金預金)の流れ(フロー)のことで、次の3つの活動で示されます。

▼営業活動によるキャッシュフロー

本業でのキャッシュフローについて表されており、損益計算書の現金預金版ともいえ、キャッシュフローが増えれば現金預金における当期純利益が増加していることを意味します。

▼投資活動によるキャッシュフロー

株式や社債などの購入や売却、設備投資などによっての現金の流れをいいます。

設備投資を積極的に行えばキャッシュフローは減少し、資産売却を行えばキャッシュフローは増加します。

▼財務活動によるキャッシュフロー

営業活動および投資活動を維持するために、資金を調達または返済により増加あるいは減少します。

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財務諸表が重要な理由


財務諸表、財務三表について説明しましたが、どうして重要なのでしょうか。


株主への報告

株主は利益から配当金を受け取る権利があり、そのため、会社は決算状況を報告する必要があります。安心して出資を行ってもらうために、財務三表はとても重要な書類です。

借入先への経営状況の開示

融資を受けている金融機関にも、会社がどのような決算内容であるかを知る権利があるため、会社は金融機関に決算書を提出します。

金融機関は決算書を分析して会社の財務内容を把握し、経営状況に問題がないかチェックします。

また、新たに資金調達を検討する場合などにも現状を理解してもらうため、会社にとっても、大変重要な書類であります。





財務諸表から分析できること

1年間の成績表である財務諸表より、どのような企業分析ができるのでしょうか。

財務諸表からは、主に次の5つの要素が読み取れます。

ただし、金融機関は融資の判断に通常3期分を使って分析します。


収益性

売上に対してどれくらいの儲けがあるのか、株主資本に対して利益がいくらかなど、資産や売上に対する利益の割合を分析します。

代表的な分析手法として次の3つがあります。

▼総資本経常利益率

総資本経常利益率(%)=経常利益÷総資本×100

総資本経常利益率とは、会社が所有している資産を総動員させていくら経常利益を計上したのかを示す指標です。

▼売上高総利益率

売上高総利益率(%)=売上総利益÷売上高×100

売上に対する売上総利益(売上高-売上原価)の割合をいい、一般的に「粗利率」、「粗利」と呼ばれています。業種によって割合が異なります。

▼株主資本利益率(%)

株主資本利益率 =当期純利益 ÷ 株主資本 × 100%

株主資本利益率はROE(Return On Equity)とも呼ばれ、株主資本に対する利益の割合であり、投資家が経営者の業績を評価するのに利用されます。

ROEは10%以上が目安となります。


生産性

同じ生産量であっても、従業員1人あたりや時間あたり、機械1台あたりなど「ヒト」や「時間」、「モノ」単位で計算することにより、単位あたりの生産量、すなわち生産性が表されることとなります。生産性は、効率的に生産されているかどうかの指標となります。

主な指標として次の2つがあります。

▼労働生産性

労働生産性=生産量÷労働者数(または労働時間)

労働者1人(1時間)あたりの生産量、または労働時間あたりの生産量を数値化することで生産性の効率化を図ることが可能となります。

▼労働分配率

労働分配率(%) = 人件費 ÷ 付加価値 × 100

人件費にどれだけ付加価値を分配できるのかを示す指標です。

付加価値とは会社が新たに生み出した価値のことで、人件費が高くて労働分配率が高ければ従業員のモチベーションは上がるものの、利益を圧迫することとなるため、逆に、利益の確保のため人件費を抑制すれば従業員の士気は下がり労働分配率は低下します。


安全性

会社が継続して経営できるかを判断する指標となります。

特に金融機関は融資した資金が確実に返済できるかの判断材料として重視します。

▼自己(株主)資本比率

自己(株主)資本比率(%)=自己(株主)資本÷総資産

安全性を示す重要な指標です。自己資本は返済する必要のない資本であるため、潤沢であればそれだけ安全性が高いといえます。

▼流動比率

流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100

流動資産(受取手形や売掛金など1年以内に現金化される資産)が流動負債(支払手形や買掛金など1年以内に返済する負債)に対する割合で、流動資産で流動負債をカバーできている場合は、100%を超えます。

▼固定比率

固定比率(%)=固定資産÷自己資本×100

土地や建物、機械設備、ソフトウェアなどすぐに現金化されない固定資産が自己資本でどれだけ賄えているのかを示す指標です。

固定資産が自己資本で賄えている状態が望ましく、固定比率は低いほうが、安全性が高いといわれています。

運転資金、売掛回転期間、棚卸回転期間、買掛回転期間

事業運営上、運転資金は必要不可欠です。

売上が現金化されるまでの期間や商品が販売されるまでの期間、仕入から支払までの期間を財務諸表より算出することができます。

▼運転資金

運転資金=売掛債権(受取手形+売掛金)+商品-買掛債務(支払手形+買掛金)

販売して入金待ちの状態の売掛債権にまだ売れていない商品を加え、これから支払う買掛債務を差し引いて運転資金を計算します。

  会社経営に必須の運転資金とは?資金繰り表から所要運転資金を察知しよう 運転資金とは、企業が事業をおこなううえで必要な資金です。資金繰り表を作成して、所要運転資金を察知するためには、所要運転資金の算出方法や読み取るべき数値を理解しておきましょう。所要運転資金を察知する3つのポイントを解説します。 株式会社エフアンドエム


▼売掛債権回転期間

売掛債権回転期間(月数)=売掛債権(受取手形+売掛金)÷売上高÷12

売掛債権を月商(売上高÷12)で割ることで、売掛債権が回収できる期間を示す指標です。

▼棚卸資産回転期間

棚卸資産回転期間(月数)=商品÷仕入÷12

商品を月あたりの仕入(仕入÷12)で割ることで、商品がどれくらいの期間で販売されているのかを示す指標です。

▼買掛債務回転期間

買掛債務回転期間(月数)=買掛債務(支払手形+買掛金)÷仕入÷12

買掛債務を月あたりの仕入(仕入÷12)で割ることで、どれくらいの期間で支払をおこなっているのかを示す指標です。


財務諸表:まとめ

財務諸表について説明しました。

会社の数字を把握するためには、財務諸表が重要であることにお気づきいただけたのではないでしょうか。

健全な経営を続けるためには、財務諸表の理解が不可欠です。

会社の実態を数字で理解し、財務諸表に関心を持つことが大切です。



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宮本建一
宮本建一
大阪府立大学経済学部卒業後、第二地方銀行に勤務し、預金業務、融資業務に従事。銀行破綻後、消費者金融会社で債権回収業務に従事。その後信用組合へ転職。融資業務、経理、内部監査、審査管理等に従事。退職後、ライターとして活動中。主に資金調達関連、事業承継関連、不動産関連記事を執筆。FP2級技能士。AFP。趣味はマラソン、楽器演奏。
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