設備投資を計画する上で重要な考え方とは?投資の妥当性の評価や注意点を解説
設備投資をおこなう妥当性を計画時に示せなければ、投資の無駄となるかもしれません。設備投資は、売上拡大や生産性の向上を目的としておこないます。
売上拡大のための設備投資とは、企業の売上が好調で現在の設備で対応しきれない場合に、機材などを導入することです。生産性の向上を目的とした設備投資は、設備の老朽化や少ない人員で対応できる設備などを導入するためにおこないます。
いずれの場合も設備投資の計画段階で、投資の妥当性を示せていなければなりません。
本記事では、設備投資計画の考え方や、妥当性の評価、注意点などを解説します。
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設備投資の判断基準はキャッシュフローがプラスになること
設備投資とは、売上拡大や生産性向上を図るために、必要な固定資産に投資することです。具体的な投資先は、「土地」「建物」「機械」「車両」「備品」などの有形固定資産や、「ソフトウェア」「特許権」「商標権」「営業権(のれん)」などの無形固定資産が該当します。
設備投資には、高額なキャッシュが必要となるため、企業は安定的に利益を出さなさければなりません。設備投資後は、一定期間、キャッシュフローが悪化した状態となります。その後、設備投資によって利益が上がり、キャッシュを生み出すことで投資費用を回収可能です。もちろん、設備投資した費用が回収できなければ、投資の無駄となってしまいます。
つまり、設備投資の判断基準として、キャッシュフローがどのくらいの期間でプラスになるかを、計画時に示す必要があるでしょう。
設備投資する妥当性の計算方法
設備投資に見合った収益を見込めるかを判断するために、3つの基準があります。
投資利益率法
投資利益率とは、設備投資に対しての収益性を分析する方法です。
以下の計算式で求められます。
投資利益率=利益÷設備投資費用×100 |
例えば、設備投資費用5,000万円で、設備投資で得られた利益総額が2億円の場合。
2億円÷5,000万円×100=400%
つまり、400%の利益率となります。数字が高ければ高いほど、設備投資が上手くいっていることが分かります。しかし、各期のキャッシュフローは投資利益率法では、考慮されていないため分かりません。
回収期間法
回収期間法とは、設備投資の投資費用を回収するために要する期間を分析する方法です。
回収期間は、以下の計算式で求められます。
回収期間=設備投資費用÷各期の平均キャッシュフロー |
例えば、設備投資費用5,000万円で、各期の平均キャッシュフローを2,000万円とする場合。
5,000万円÷2,000万円=2.5
つまり、2年半で回収できます。
回収期間法は、単純計算として活用可能です。しかし、回収期間が長い設備投資では、外部環境の変化による影響を受けるため、平均のキャッシュフローも変わります。
当初想定していたキャッシュフローよりも低くなれば、その分、回収期間も伸びるでしょう。その影響は、実際に設備投資した後でなければ分かりません。
正味現在価値法(NPV法)
正味現在価値法とは、設備投資によってもたらされる各期のキャッシュフローを現在の貨幣価値に置き換え、設備投資費用を差し引くことで算出する方法です。
キャッシュフローの現在価値は、以下の計算式で求められます。
キャッシュフローの現在価値=キャッシュフロー÷1÷(1+資本コスト)年数 |
例えば、キャッシュフローを2,000万円、資本コスト(資金調達にかかるコスト)を1.5%として計算します。
- 1年目:2,000万円÷1÷(1+1.5%)=1,970万円
- 2年目:2,000万円÷1÷(1+1.5%)2=1,941万円
- 3年目:2,000万円÷1÷(1+1.5%)3=1,912万円
つまり、3年間を合算すると5,823万円です。
次に正味現在価値は、以下の計算式で求められます。
正味現在価値=キャッシュフローの現在価値-設備投資費用 |
設備投資費用を5,000万円とすると、
5,823万円-5,000万円=823万円
つまり、正味現在価値がプラスになっているため、その投資は採用可能といえるでしょう。正味現在価値が大きければ、設備投資に対する費用対効果は高くなります。ただし、設備投資に対する利益率は算出できないため、注意してください。
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設備投資計画の注意点
設備投資計画を立案する際、投資に見合った収益を見込むために、投資利益率法や回収期間法、正味現在価値法を活用してシミュレーションをおこないましょう。シミュレーションに基づき、投資費用の回収時期や、設備投資にプラスとなるキャッシュフロー、利益率、利益額を算出して収益予測を立てる必要があります。
設備投資は、金融機関から融資を受けて実施することも多いです。しっかりとシミュレーションし、収益予測を立てられなければ、融資も難しくなります。また、金融機関からの融資は、短期で借り入れるよりも、長期にして毎月の返済額を抑えることも重要です。
設備投資した固定資産は、時間の経過によって価値が減少していきます。固定資産にかかった費用は、一度に経費とするのではなく、分割して経費計上しなければなりません。
減価償却には、法定耐用年数や定額法、定率法といった方法があります。
- 法定耐用年数:建物・機械などの減価償却資産としての耐用年数のことで、法人税などの税金を計算する上での基礎とされる
- 定額法:取得価格を耐用年数で割って算出する方法で、減価償却費が定額となる
- 定率法:取得価格が耐用年数に応じて一定の割合で減少するように算出する方法で、時間の経過とともに小さくなる
設備投資の流れ
設備投資は、金額が大きく長期間にわたって使用するため、計画の策定から資金調達、実行まで一つひとつのプロセスを経ておこなわれます。
設備投資計画の策定
企業の設備投資は、1つだけではなく複数抱えていることが多いです。しかし、すべてに対して設備投資できるわけではないため、必然的に優先順位を決めて資金調達をおこなわなければなりません。
設備投資の優先順位を考えるにあたって、現状改善の設備投資と、収益性を高める設備投資の2つに分かれます。結論からいえば、現状改善の設備投資を優先した方がいいでしょう。
現状改善の設備投資とは、現状の設備を更新しないと、故障の原因や製造に支障が出るような場合です。早めに対処しなければ、売上損失や従業員のケガといったリスクが発生してしまいます。
一方の、収益性を高める設備投資は、業績が好調で設備を増やせば、さらなる利益が見込めるような場合です。早めに対処することで、売上増を見込めるでしょう。
設備投資がどのくらい収益を見込めるか、すでに解説した投資利益率法や回収期間法、正味現在価値法を活用してシミュレーションします。
実際に設備投資計画を策定していくと、1年で終わるものもあれば、期をまたいで策定するものもあります。毎年度の予算編成の段階で、効果的な設備投資ができるように考えておくことが重要です。
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資金調達
設備等計画を策定したら、新規設備を導入するために、複数の会社から見積もりを取り、相見積もりによって設備投資費用を確定させます。設備投資計画の社内決裁ができれば、資金調達を実行に移しましょう。
資金調達で金融機関から融資を受ける場合、策定した設備投資計画をもとに、事業計画を作成し、必要書類をそろえて審査を受けます。
審査では、企業の財務状況や過去の返済状況などを見られ、融資額や返済計画が妥当と判断されれば、融資を受けられるでしょう。
計画の実行
設備投資計画に沿って予算の執行や金融機関からの融資を受けて、実行します。実行にあたって、固定資産の耐用年数や減価償却方法を決定して、会計処理もおこないましょう。
賃上げ圧力と増税、原材料高騰…経営者を取り巻く環境への対応が急務です
生産性向上や売上拡大を目的として設備投資をおこなっても、円安や物価高など企業を取り巻く状況が悪化しているため、さらなる準備が必要です。
この状況でも、倒産につながらない大企業の手法から、中小企業が生き残る術をこちらでお伝えします。
設備投資の補助金と助成金
経済産業省などの各省庁では、中小企業の業務改善などを支援するために補助金を準備しています。補助金と助成金の違いは、助成金が条件を満たしていれば受給できるのに対し、補助金は条件を満たしていても申請後に審査があり、基準を満たしていなければ受給できない点です。
補助金
経済産業省において、設備投資に活用できる補助金として、「事業再構築補助金」や「IT導入補助金」などがあります。
事業再構築補助金とは、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、売上の回復が期待できない中で、新分野への展開や、事業再編などの取り組み、売上拡大といった、事業再構築を考えている中小企業などを支援する補助金です。
IT導入補助金は、中小企業などを対象にITツールを導入する経費の一部を補助することを目的としています。
助成金
助成金は、地方自治体などによってさまざまです。一例として、公益財団法人東京都中小企業振興公社がおこなっている「生産性向上のためのデジタル技術活用促進助成金」を挙げられるでしょう。
生産性向上のためのデジタル技術活用促進助成金は、デジタル技術アドバイザーによる支援を受けて、機器・システムなどの導入を検討している東京都内の中小企業を対象としています。主な助成対象は、機器・ロボット導入費やシステム構築費、ソフトウェア導入費などです。
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事業の売上・効率向上には設備投資が必要ですが、設備投資が投資に見合った結果を生むかどうかは、必ずシミュレーションをして確認しましょう。
また、設備投資には多額の資金が必要となるため、しっかりした資金調達が大切です。
しかし、物価の高騰や水道・光熱費が上昇している昨今では、資金調達がかなり難しいでしょう。
そのため、設備投資の資金として、活用できる補助金や助成金を調べて利用しましょう。
ただ、現在申請が可能な補助金や助成金の数は非常に多く、1つずつ自社が申請可能か確認することは不可能に近いです。
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