人事考課制度がもたらす企業価値への影響【中小企業経営者必見】
人事考課表制度導入にハードルを感じることが多く、導入したとしても見直しがされないまま長期間放置されているケースが見受けられます。
評価基準が不明瞭な場合、従業員は評価に対して不満を持ち、長期雇用が難しくなります。
今回は人事考課表のメリットやポイントについて解説いたします。
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人事考課は従業員の不満解消に最適
従業員を雇用し、指揮命令を介して労務の提供を受領する場合、終身雇用制度が事実上困難となっていながらも一定期間以上は働いてもらう必要があります。
離職率が高い企業の場合、採用後のオリエンテーションや慣れるまでの期間を考慮すると、短期離職は(オリエンテーションなどにかけた時間が)サンクコスト化してしまいます。
従業員が離職を決断する理由は何らかの不満が解消されておらず、かつ、解消の見込みが乏しい場合です。また、自身の存在価値が見いだせない場合や貢献度の割合に対して組織から認められていないと感じる場合も組織に対して不信感を持ちやすくなります。
だからとって、評価に値する従業員も、評価に値しない従業員も画一的に評価することことは適切とは言い難く、可能な限り客観的な評価基準に基づき一定水準以上の貢献度に対して評価することが、従業員の納得感を醸成し、企業の繁栄につながります。
なぜ優秀な社員から退職するのか?
近年は働き方改革の影響もあり、多様化の時代が到来しています。
必ずしも新卒で入社した会社で定年を迎えるということが一般的ではなくなっています。中には入社前に既に転職を考えているケースもあるほどです。
「三種の神器」と崇められた終身雇用制度、年功序列賃金、企業内労組が機能しなくなり、欧米に比べれば一部ではあるもののメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への移行の必要性が叫ばれていることが挙げられます。
終身雇用制度等が保障されていない現代では「自分のキャリアは自分が創る」という発想が普遍化していることが挙げられます。
そのことが事実であれば、自分自身のキャリアを客観視できる優秀な社員から退職していくという現象が起こってしまいます。
すなわち、流動的な時代背景だからこそ、優秀な社員であればあるほど既存の会社にしがみつく必要性が乏しく、より働きやすい職場環境で自身のキャリアを成長させていくを優先します。
給与水準に問題はないか?
従業員目線では給与水準のばらつきがポイントとなります。
給与は労働条件の重要な位置づけであり、扶養親族を有する従業員であれば給与の重要度は増します。そこで、杓子定規で給与額が設定されているような企業の場合、納得感を得ることは難しくなります。
また、経営者が従業員に期待することと従業員の目標との乖離がある場合、優秀な社員が退職を考え始めるきっかけとなりえます。本来、「目標」は「手段」に比べて乖離することは少ないことが一般的です。
例えば新規開拓による売上増ではなくて、「既存客の問い合わせでたまたま売上があがった」などが挙げられます。当然何が正解かはその時点で答えは出ません。
上記の売上の例は一例となりますが、長い職業生活の中で組織内での価値観の相違等は軌道修正することが適切です。
定期的な面談や人事考課を盛り込むことで「大惨事(例えば高スペック従業員の立て続け退職)」になる前にリスクを回避することができます。
賞与の支給には人事評価が必須
賞与については労働基準法上、支払い義務はありませんが、従業員の就労意欲の向上、長期的雇用のためのインセンティブとして支給する企業は少なくありません。
そこで、具体的な人事評価がない(どんな根拠があるか疑義が生じている)状態では幹部社員の人材育成に支障が出てしまうことがあります。
賞与は毎月支給されるものではなく、年に2~3回程度の支給が一般的です。
そこで、人事評価がなく、不可解と言わざるを得ない支給をしてしまうと従業員との信頼関係に亀裂が生じてしまいます。生産性のある働き方の根幹には信頼関係が不可欠であり、従業員目線では賞与は日々の働きに対する評価(フィードバック)と捉えています。
また、コロナ禍により、不確実性の高い時代になっていることから、企業規模に対してあまりにも達成困難な人事評価に基づく賞与基準(例えば支給率をあまりにも高く設定してしまう)を設定してしまうと持続的な経営が困難となることから、長期的な視点で検討することが重要です。
雇用を守りながらも従業員の就労意欲の向上に繋がる施策が望まれます。
人事考課表の具体例とは
それでは、人事考課表の書き方や例文を確認しましょう。
一例として製造業において人事考課表を用いて評価する場合、どのような点に留意すべきかを確認しましょう。生産性向上や機械の不具合(定期的な点検などにより)を発生させなかったことや、分あたりの製品の製造数が上がったかなどが挙げられます。
また、製造業においては同時に安全を保つことも重要視すべきであり、一つの事故が従業員の命を奪ってしまうことにも繋がります。生産性向上だけでなく、同時に安全に対する評価基準を盛り込むことも適切でしょう。
次に事務職を例に挙げると総務経理業務において月あたりの残業時間を〇時間以下に下げることができたなど、労働生産性を上げることを重視することが一般的です。
また、ほぼ毎年、周辺業務の法律改正が行われることから、社員教育、資格試験合格なども評価の基準に加えることもよいでしょう。
人事考課とは評価する管理職が変わったとしても可能な限り評価者の主観に左右されないように各々の企業内での客観的な評価基準を定めたものです。
そこで、「人事考課表」に目標を定め、ゴールを目指すためのアプローチの仕方がずれていないかを定期的にチェックすることも重要です。
上述した職種に限らず、曖昧な評価基準は評価の形骸化を招き、組織によっては人事考課表を導入するメリットが乏しくなってきます。よって、導入後も定期的なメンテナンスが必要です。
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人事考課表は運用と定期的な見直しが大切
人事考課表は一度作成したら終わりではなく、定期的に修正を加えることが大切です。現在は同じ職場内に昭和、平成、令和と過ごした学生時代が3世代にまたがる時代であり、多様化の時代であっても考え方の相違は必ず発生します。
また、人事考課表は会社としての評価基準の基軸となる客観的な指標であり、一朝一夕に出来上がるものではありません。
専門家からの指導を受けてもその会社の風土や経営指針は独自性があって然るべきであり、定期的な修正が必要と言えます。