賃上げ・働き方改革の波を乗り切れ!補助金・助成金の活用法を徹底解説
賃上げや時間外労働時間の上限導入などに伴い人件費が上昇しています。収益を確保するためには、補助金を活用した投資により生産性を向上させることが必要です。
本記事では、生産性を向上させる投資や賃上げなどの給与体系の見直しで利用できる補助金・助成金の活用法を解説します。
目次[非表示]
- 1.賃上げ、働き方改革における対応は「生産性の向上」と「補助金・助成金の活用」
- 2.賃上げ時の補助金における優遇
- 2.1.事業再構築補助金における優遇
- 2.2.ものづくり補助金での優遇
- 2.3.事業承継・引継ぎ補助金の優遇
- 3.働き方改革における対応は助成金を活用
- 4.税制優遇制度もあります
- 5.補助金・助成金は事前の準備が必須
- 5.1.効率的に調べる方法
- 5.2.事前に計画を作成
- 5.3.補助金はポイントをおさえて申請
- 5.4.助成金は就業規則に注意
- 5.5.経営力向上計画の併用も検討
- 6.補助金・助成金や税制優遇制度は専門家を活用
- 7.まとめ
賃上げ、働き方改革における対応は「生産性の向上」と「補助金・助成金の活用」
働き方改革に伴う経営への影響は次の3点です。
- 量の不足 …… 人手不足
- 時間の制約 …… 時間外労働時間の上限導入、有給休暇取得の義務化
- 単価の上昇 …… 最低賃金引き上げなど給与水準見直し
限られた従業員数で増加したコストを吸収するためには、生産性の向上が不可欠です。
生産性の向上とは、精算事務のキャッシュレス化、社会保険などのバックオフィス業務のDX化も含みます。
生産性の向上に必要となる資金の調達は、返済が不要な補助金や助成金を優先的に活用します。
賃上げ時の補助金における優遇
補助金においては、賃上げを計画する事業者を優遇する内容が多くあります。有名な補助金における優遇策は次のとおりです。
事業再構築補助金における優遇
「成長枠」と「グリーン成長枠」において、①補助率の引き上げと②(上乗せ枠への申請による)補助上限額の拡大があります。
①補助率引き上げ要件(「成長枠」と「グリーン成長枠」)
- 事業場内の最低賃金の引き上げ45円以上
- 給与支給総額6%以上の増加
の2つを充足する中小企業は補助率が3分の2へ引き上げされます。
第10回 (「成長枠」) |
||
補助金額 | ||
従業員数 |
20名以下 |
100万円から2,000万円まで |
21名から50名 |
100万円から4,000万円まで |
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51名から100名 |
100万円から5,000万円まで |
|
101名以上 |
100万円から7,000万円まで |
|
補助率 | ||
中小企業者等 |
2分の1 補助率引き上げ要件を充たす場合は3分の2 |
|
中堅企業等 |
3分の1 補助率引き上げ要件を充たす場合は2分の1 |
【引用】事業再構築補助金 公募要領(第10回)|事業再構築補助金事務局
②補助上限額の上乗せ(「大規模賃金引上促進枠」「卒業促進枠」)
「成長枠」「グリーン成長枠」の上乗せ枠である「大規模賃金引上促進枠」「卒業促進枠」の申請が可能です。
- 「大規模賃金引上促進枠」
事業終了後3年から5年の間、事業場内最低賃金を年額45円以上引き上げる
事業終了後3年から5年の間、従業員数を年率平均1.5%以上増員させる
の2つを充足する
- 「卒業促進枠」
事業終了後3年から5年間で法人規模が次のとおり拡大することが必要です。
申請時点で中小企業 → 特定事業者、中堅企業、大企業の規模
申請時点で特定事業者 → 中堅企業、大企業の規模
申請時点で中堅企業 → 大企業の規模
「大規模賃金引上促進枠」と「卒業促進枠」の内容は以下のとおりです。
「成長枠」 |
「グリーン成長枠」
|
|||
補助率 |
補助金額 (上乗せ) |
補助率 |
補助金額 (上乗せ) |
|
「大規模賃金引上促進枠」 |
中小企業者等 中堅企業等 |
100万円から3,000万円 |
中小企業者等 2分の1 中堅企業等 3分の1 |
100万円から 3,000万円 |
「卒業促進枠」 |
中小企業者等 2分の1 中堅企業等 3分の1 |
「成長枠」の補助金額と同額を上乗せ |
中小企業者等 2分の1 中堅企業等 3分の1 |
「グリーン成長枠」の補助金額と同額を上乗せ |
上乗せ枠である「大規模賃金引上促進枠」と「卒業促進枠」は次の点に注意します。
- 「成長枠」または「グリーン成長枠」の申請と同時に申請
- 「成長枠」または「グリーン成長枠」補助対象と、「大規模賃金引上促進枠」または「卒業促進枠」の補助対象は別とする
- 「大規模賃金引上促進枠」と「卒業促進枠」のいずれかのみ申請可能
【引用】事業再構築補助金 公募要領(第10回)|事業再構築補助金事務局
事業再構築補助金は第10回公募(応募期限2023年6月30日)から大きく改正され、成長枠(旧通常枠)については申請できる業種が制限されています。
飲食業など対象外となる業種の場合は、ものづくり補助金などを検討します。
ものづくり補助金での優遇
ものづくり補助金(正式名称 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)においては、一定の賃上げで補助金額の上限が100万円から最大1,000万円の上乗せされます。
【引用】ものづくり・商業・サービス補助金 公募要領概要版 第15次締切分|ものづくり補助金事務局
事業承継・引継ぎ補助金の優遇
事業承継やM&Aなどを支援する補助金制度です。第5次公募では賃上げをおこなう場合の補助上限額が引き上げされました。
【引用】事業承継・引継ぎ補助金 経営革新事業 5次公募|事業承継・引継ぎ補助金事務局
働き方改革における対応は助成金を活用
賃上げを伴う給料体系の見直しや従業員のスキルアップへの取り組みなど、従業員への投資は助成金を活用します。
働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休取得促進コース)
生産性を向上させる投資によって勤務時間の短縮や年次有給休暇の取得を促進する計画について、成果目標ごとの補助金額の合計で最大730万円が助成される制度です。
成果目標 |
上限額 |
①月60時間を超える36協定の時間外・休日労働時間の縮減 |
100万円から200万円 |
②年次有給休暇の計画的付与制度の導入 |
25万円 |
③年次有給休暇の時間単位での取得制度と特別休暇制度の導入 |
25万円 |
④(追加目標)時間あたり賃金額の3%または5%以上の引き上げ (従業員数30名以下の場合) |
30万円から480万円 |
助成額
・成果目標①から③の上限額の合計額と追加目標④の加算額の合計額
・対象経費の合計額×補助率4分の3
のいずれか低い額
【参考】「働き方改革推進支援助成金」労働時間短縮・年休促進支援コースのご案内|厚生労働省
業務改善助成金(通常コース)
設備投資や人材育成をおこない、事業場内最低賃金を30円以上引き上げる企業に対して、最大600万円が助成されます。
助成上限額は賃金引き上げ対象となる従業員数と賃金引き上げ幅により異なります。
従業員数が30名未満の事業者は補助上限額が優遇されています。
【引用】業務改善助成金のご案内|厚生労働省
税制優遇制度もあります
補助金や助成金以外に、税金を軽減できる支援策もあります。
賃上げ促進税制による法人税(所得税)の税額控除
賃上げに伴う給与等支給額の増加分について法人税(個人事業主の場合は所得税)の税額控除(控除率は最大で40%)が受けられます。
【引用】中小企業向け賃上げ促進税制ご利用ガイドブック|中小企業庁
先端設備等導入計画における固定資産税の減額
労働生産性が年平均3%以上向上させるために必要な設備投資について、3年間の固定資産税の減額が受けられます。計画内に賃上げを含める場合は、最大5年間に亘り、固定資産税が3分の1に軽減されます。
補助金・助成金は事前の準備が必須
補助金や助成金を受給するための注意点は次の3つです。
- 受給するためには申請が必要
- 制度ごとに公募条件や期間が異なり、随時変更される
- 計画内容に着手する前に審査を通過することが原則
補助金や助成金の活用は、事前の情報収集と着手前の申請などの事前準備が必須です。
効率的に調べる方法
補助金や助成金は10,000種類以上あるとも言われており、それぞれに申請要件があります。自社で受給できる補助金や助成金を調べるためには、検索ツールの使用が効率的です。
事前に計画を作成
補助金や助成金は、着手する前の事前申請が原則です。
自社の経営計画や投資計画を検討したうえで、利用する制度にあわせた様式の計画書を作成します。
補助金はポイントをおさえて申請
補助金は審査を経て採択された申請だけが受給できます。
補助金ごとに審査の着眼点が異なるため、制度にあわせた採択される申請書を作成するノウハウが必要です。
助成金は就業規則に注意
助成金は要件に合致していれば支給されることが殆どです。
ただし助成金は厚生労働省の管轄が多いため、申請時に就業規則を添付することが多くなります。就業規則を作成していない場合、就業規則が古いままで労働法の改正に合致していない場合は申請が通らないこととなります。
経営力向上計画の併用も検討
一部の補助金制度や補助金制度に該当しない場合は、経営力向上計画の認定を同時に検討します。経営力向上計画の認定を受けると、即時償却または税額控除の税制優遇措置があります。
【引用】中小企業等経営強化法にもとづく支援措置活用の手引き|中小企業庁
この税制優遇制度は一部の補助金との併用が可能です。
【引用】中小企業経営強化税制Q&A集(ABCD類型共通)|中小企業庁
補助金・助成金や税制優遇制度は専門家を活用
補助金や助成金の申請、税制優遇制度の相談は専門家の活用が効果的です。
補助金や助成金の受給漏れを防ぐポイントは次の3つです。
【補助金や助成金の受給漏れを防ぐポイント】
- 自社に合った公的支援策を事前に確認
- 補助金で「採択されるポイント」を踏まえた申請書類の作成
- 助成金は「落ちない」ために就業規則を見直すなどの事前準備
自社で的確に計画書を作成する、あるいは相次ぐ労働法の改正を踏まえた就業規則の見直しをおこなうと時間がかかるため、専門家を活用しましょう。
補助金など公的支援策の申請は、株式会社エフアンドエムにお気軽にご相談ください。
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【F&Mの主な公的支援策サポート】
-
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まとめ
働き方改革と人手不足で人件費の上昇は避けられません。限られた人数で人件費の上昇をカバーし利益を確保するためには、生産性の向上と社員のスキルアップが必要です。
中小企業の生産性向上のための取り組みに対しては多くの補助金や助成金が用意されているため、積極的に活用します。受給できるようにするためには事前準備と審査に通る書類の作成ノウハウが必要です。
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