融資の決定打!スコアリング項目の債務償還年数を解説
新型コロナウイルスや円安などの影響により、依然として厳しい状況下に置かれている中小企業も多いでしょう。
そのような外部環境が厳しい状況下において、金融機関による融資は企業の資金繰り不安の改善に有効的といえます。
金融機関による融資を受ける際に重要となるスコアリングは、さまざまな基準によって判断されますが、中でも「債務償還年数」は特に重要な項目のひとつです。
金融機関による融資において重要となる「債務償還年数」および「スコアリング」について解説します。
目次[非表示]
- 1.資金繰り改善に金融機関による融資は有効
- 2.融資の判断基準に重要なスコアリングとは
- 2.1.スコアリング(信用格付け)とは
- 2.2.定量分析の4つの判断要素
- 2.3.金融機関は企業のここをみている
- 3.スコアリングで重要な債務償還年数とは
- 3.1.債務償還年数とは
- 3.2.債務償還年数は7年以内が望ましい
- 3.3.債務償還年数の注意点
- 4.債務償還年数を改善するためには
- 5.F&M Clubの資金繰り改善
- 6.まとめ
資金繰り改善に金融機関による融資は有効
企業が良好な経営をおこなっていく上で、設備投資や運転資金は必要不可欠です。
金融機関による融資は、多額の資金を借入れることができるため、事業転換や事業拡大など、必要なタイミングに借り入れることで、好機を逃さず資金繰り改善に役立てられます。
金融機関による融資を受けるべき理由
現在は事業が安定している場合であっても、いつ何が起こるかわからず、いつ資金繰りが悪化するかわからない時代です。
そのため、最悪の事態に備えて金融機関による融資により、安定した資金を確保しておくことも、良好な経営をおこなっていく上で重要といえます。
また、金融機関による融資が受けられる企業は、金融機関から優良企業として評価されている企業です。
そのため、財務基盤が整っていない企業や、今後、キャッシュフローが悪化していく前兆があるような企業は、当然融資は受けられません。
借りたいときに借りられなくなる前に「借りられるときに借りておく」ことも必要な判断です。
融資の判断基準に重要なスコアリングとは
金融機関による融資は財務基盤の安定、資金繰り改善に有効的な手段といえますが、審査が厳しく、希望通りの融資を受けられるとは限りません。
金融機関による融資を活用するためには「どのような基準によって判断されているのか」を正しく理解・把握し、必要に応じた財務改善をおこなう必要があります。
スコアリング(信用格付け)とは
スコアリング(信用格付け)とは、各金融機関が定めた、企業を判断する際のランク分けであり、企業の信用状態を10〜12段階で評価しています。
スコアリングでは、数値が小さいほど良いスコアであり、経営状態が良好であると判断され、融資審査も通りやすいです。
スコアリングでは、決算書などの数値データを元にしておこなう「定量分析」と、経営者の資質などの質的データを元にしておこなう「定性分析」によって数値決定されています。
金融機関によってスコアリング方法はさまざまですが、多くの企業が決算書による定量的判定に重点を置いています。
定量分析の4つの判断要素
定量分析(決算書)では、主に以下の4つの要素が重視されています。
【定量分析の4つの判断要素】
- 収益性
- 安全性
- 成長性
- 返済能力
収益性
収益性の判断では、特に「売上高経営利益率」が重視されています。
売上高経営利益率とは、売上高に対する経営利益の割合であり、企業の収益性を計る尺度です。
【売上高経営利益率の計算式】
売上高経営利益率=経営利益÷売上高×100
安全性
企業が倒産し、融資の回収が不可能となるリスクを回避するために、金融機関は企業の安全性を重視しています。
安全性を判断するひとつの指標が「自己資本比率」です。
自己資本比率とは、返済不要の自己資本が総資本の何割を占めるかを表す数値であり、自己資本比率が高いほど、他人資本に影響せず、安定した経営をおこなっていると判断されます。
【自己資本比率の計算式】
自己資本比率=自己資本÷総資本×100
成長性
金融機関は融資返済による利息で収益を上げるため、今後も成長性が見込める企業に融資をおこないます。
成長性では、前期および前々期から今期までの「売上高」「経営利益」「営業利益」「総資産」「純資産」「従業員数」などを判断要素として判断しています。
返済能力
当然のことですが、返済能力がないと判断される企業に対し、金融機関は融資をおこないません。
返済能力の判断で重要視されていることは「債務償還年数」です。
債務償還年数については、後ほど詳しく説明します。
金融機関は企業のここをみている
スコアリングでは、上記で述べたようにさまざまな要素から判断されています。
企業が特におさえるべきポイントとしては「生産性向上と改善」と「債務償還年数」が重要です。
生産性向上力とは、少ない投入資源でこれまで以上の成果・生産物を生み出せる能力であり、金融機関が企業を判断する際の重要な要素となります。
また、生産性向上に向けて「改善する姿勢」がみられることも、企業経営が悪化した場合に立て直せる能力として、重要な判断要素となるでしょう。
そして先述した「債務償還年数」は、スコアリングの判断基準の中でも特に重要といえるため、自社の指標を正しく理解しておく必要があります。
スコアリングで重要な債務償還年数とは
優良企業と判断されるためには、スコアリングにおいて重要である債務償還年数が適切な数値(年数)である必要があります。
債務償還年数について正しく理解しておきましょう。
債務償還年数とは
債務償還年数とは「借入を返済する際、何年必要となるか」を判断する、目安となる年数です。
債務償還年数は以下の計算式によって求められます。
【債務償還年数の計算式】
債務償還年数=借入金÷(経営利益+減価償却費−法人税等)
経営利益+減価償却費にあたる項目が一般的にキャッシュフローと呼ばれている項目です。
例:借入金が1億円、キャッシュフローから法人税などを引いた金額が5,000万円の場合
債務償還年数=1億円÷5,000万円=2年
となり、債務償還年数は2年と判断されます。
借入金が多い(少ない)ほど債務償還年数は長く(短く)、キャッシュフローが多い(少ない)ほど債務償還年数は短く(長く)なります。
債務償還年数は7年以内が望ましい
債務償還年数は当然、年数が長いほどマイナス評価となります。
一般的には「10年を超えると危険信号」であると判断され「7年以内」が望ましいとされています。
ただし、債務償還年数の目安は業種によって差があり、大規模な設備投資が必要な製造業などの場合は、10年を超える場合でも健全な年数として判断されることもあります。
債務償還年数の注意点
債務償還年数は、金融機関が企業を判断する際の重要な指標となりますが、年数を短くすることに意識しすぎることは要注意です。
例えば、債務償還年数を短くするために「繰り上げ返済」をおこない、手元資金に余裕がなくなった状況で、予期せぬ事態により経営状況(キャッシュフロー)が悪化してしまうようでは意味がありません。
債務償還年数を改善することは大切ですが、改善をおこなう際は経営危機に陥るリスクを回避した方法でおこないましょう。
債務償還年数を改善するためには
債務償還年数を改善するためには 、計算式の分母にあたるキャッシュフローの経営利益と減価償却費をそれぞれ大きく計上することで改善につながります。
そのため債務償還年数を改善する方法として「利益の最大化」と「減価償却費の計上」の2つの改善策があげられます。
利益の最大化
利益(売上−経費)を大きくするためには、売上を上げることももちろん大切ですが「経費の適正化(削減)」を図ることも重要です。
例えば、仕入れ先の再検討や接待交際費の見直しなどをおこなうことで、仕入れにかかるコストの削減や、不必要なコストの削減につながります。
経営上「本当に必要な経費であるか」を見直し、必要に応じて改善しましょう。
減価償却費の計上
事業経営のために必要な物品を購入し、経費として計上することは、節税対策として有利であり、多くの企業が節税対策を実施しています。
しかし、節税対策(経費として計上する)ことは、利益を圧縮する(キャッシュフローを減少させる)ことであり「債務償還年数」の観点からすると相反してしまうため、節税のしすぎには注意が必要です。
債務償還年数の改善策では、購入した物品費を「消耗品費用」などの経費ではなく「減価償却費」として計上することで、キャッシュフローの増加につながり、債務償還年数が短くなります。
ただし、減価償却費については細かい決まりなどもあるため、自身での判断が難しい場合は、税理士に相談するなどして実施するようにしましょう。
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まとめ
金融機関による融資は、企業の経営資金の確保および資金繰り改善に有効的な手段です。
必要なときに必要な金融機関による融資を受けられる優良企業であるためには、財務状況が健全でなければなりません。
決算書(スコアリング)を見直し、必要に応じて財務改善(資金繰り改善)をおこないましょう。