
就業規則を見直しませんか?労働法の変更点を把握してトラブル回避!
就業規則を見直ししていない場合、採用難や労働トラブルの発生だけでなく、法令違反となっていることもあります。最近の労働法改正にあわせた就業規則の見直しは労使トラブルの防止に役立ちます。
本記事では、最近の労働法改正のポイントと労使トラブルへの対策について解説します。
目次[非表示]
- 1.労働法の最近の改正ポイント8点
- 1.1.時間外労働の上限規制
- 1.2.勤務間インターバル制度
- 1.3.有給休暇の取得義務
- 1.4.月60時間以上の時間外労働に関する割増賃金率引き上げ
- 1.5.同一労働、同一賃金
- 1.6.フレックスタイム制の柔軟化
- 1.7.高度プロフェッショナル制度
- 1.8.産業医の機能強化
- 2. 『就業規則が古いと会社が訴えられる』可能性があります
- 3.『ブラック企業』は人手不足が加速
- 3.1.『ブラック企業』といわれると
- 3.2.SNSにも注意
- 3.3.取引先や金融機関からもチェックされます
- 4.身近にある労働トラブル
- 4.1.社員の給料が最低賃金未満
- 4.2.服務規程の不備で懲戒できない
- 4.3.マイカー通勤でトラブル
- 4.4.ハラスメントを防止できない
- 5.就業規則の見直しは専門家へ相談
- 6.まとめ
労働法の最近の改正ポイント8点
労働法とは、労働基準法や最低賃金法などの多くの法律の総称です。働き方改革でさまざまな法改正がおこなわれています。最近の労働法の改正ポイントは次の8点です。
時間外労働の上限規制
時間外労働時間の上限が法律で定められました。中小企業も2020年4月から対象です。
休日労働を含まない時間外労働時間の上限は、原則として月45時間かつ年360時間です。
臨時的な特別の事情がある場合は、労使間の合意に基づいて年720時間以内とすることも可能です。
上限を超えた場合は罰則があり、違法性の判定は法定外労働時間で計算します。
勤務間インターバル制度
勤務終了後、次の勤務開始時間までの間に一定以上の休息時間(インターバル時間)を設ける制度です。2019年4月から導入され、努力義務とされています。
【引用】勤務間インターバル制度とは|働き方・休み方改善ポータルサイト
有給休暇の取得義務
年10日以上の年次有給休暇を与えている従業員が有給休暇を年5日以上取得することが、事業主に義務づけされています。2019年4月から導入され、違反時には罰則があります。
対象となる従業員は管理監督者や有期雇用の従業員も含まれます。
年次有給休暇の時季指定方法や付与対象となる従業員の範囲は就業規則への記載が必要です。
また従業員ごとに『年次有給休暇取得管理簿』を作成し、3年間保存する義務があります。
【引用】年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説|厚生労働省
月60時間以上の時間外労働に関する割増賃金率引き上げ
従業員の時間外労働時間が月60時間を超える部分については、割増賃金率は50%以上が必要です。2023年4月から中小企業も対象です。
自社の割増賃金率を変更する時は、就業規則の記載内容の変更が必要です。
【引用】月60時間超の時間外労働における割増賃金率|厚生労働省
同一労働、同一賃金
正社員や非正規雇用の従業員などの雇用条件にかかわりなく、同一の作業内容については同一の賃金とする義務です。2021年4月から中小企業においても適用されています。
パートタイマーや派遣従業員も対象となり、教育訓練や福利厚生も含まれます。
法的な拘束力や罰則はありませんが、厚生労働省のガイドラインにあわせた賃金体系の導入が望ましいです。
フレックスタイム制の柔軟化
制度が柔軟化され、労働時間を調整することができる期間は、従来の1か月単位から最大3か月単位での調整が可能となりました。
フレックスタイム制の導入や変更については、就業規則への記載と労使協定が必要です。
【引用】フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き|厚生労働省
高度プロフェッショナル制度
労働時間規制や割増賃金の対象外とすることができる制度です。金融工学など一定の専門知識を持った年収1,075万円以上の社員であるなどの条件があります。
事業主は対象となる社員の健康確保のための措置をおこなう必要があります。
【参考】高度プロフェッショナル制度について|厚生労働省
産業医の機能強化
事業主は従業員の勤務時間を客観的に把握し、勤務時間の記録を3年間保存する義務があります。
把握した勤務時間をもとに、時間外勤務時間が月80時間以上の従業員は医師による面談が義務化されました。
同時に、産業医から事業主に対しての勧告も導入されています。
【参考】労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準|厚生労働省
『就業規則が古いと会社が訴えられる』可能性があります
就業規則を見直ししていない場合、従業員との労働トラブルが発生し、訴訟に発展する可能性もあります。例えば次の事例があります。
- 懲戒解雇された元従業員が不当解雇を主張する
- 長時間労働で過労死した従業員の家族が会社を訴える
- サービス残業時間の残業代の支払いを求める
- 退職者が在籍期間中に応じた賞与の支払いを求める
『ブラック企業』は人手不足が加速
ここ数年で『ブラック企業』という言葉が広まりました。一般的には労働時間が非常に長い、残業代が支給されない、ハラスメント行為が横行しているなどの企業を指します。
インターネット上において名指しで広まることもあるほか、簡単なアンケートに回答するだけでわかるとされる『ブラック企業診断』なども登場しています。
『ブラック企業』といわれると
ブラック企業といわれると、次のような影響が発生することがあります。
- 面接希望者が減り、採用が難しくなる
- 従業員の離職が増加する
- 取引先や周囲からの信用が低下する
SNSにも注意
ブラック企業の噂は口コミ、インターネット、従業員が投稿するSNSなどから広まります。
求職者の多くは、面接予定の企業の雰囲気や労働環境に関する従業員のSNS投稿の内容などをチェックします。その結果、在籍している社員の部分的な感想が広まることがあります。
取引先や金融機関からもチェックされます
厚生労働省では『労働基準関係法令違反にかかる公表事案』において、労働法に違反した会社名や所在地を公開しています。通称『ブラック企業リスト』とも呼ばれています。
取引先や金融機関の中には、取引先における法令違反をチェックしている企業も多くあります。公的なホームページに法令違反として掲載されると、自社の社会的な信用力が低下する可能性があります。
また上記のブラック企業リストを使用したアプリケーションである『ブラックアラート』などもあり、ブラック企業であるとの噂が急速に広まる可能性が高くなっています。
身近にある労働トラブル
労働トラブルは年間120万件以上発生しています。中でも就業規則を見直ししていない場合、次のようなトラブルが発生します。
【参考】2021年度個別労働紛争解決制度の施行状況|厚生労働省
社員の給料が最低賃金未満
最低賃金の引き上げにより、正社員の給与が最低賃金未満となっていることがあります。月給制の正社員は時間給に換算し、最低賃金の改正時に確認しておきます。
服務規程の不備で懲戒できない
職場のルールを守らない、ハラスメント行為をおこなう、勤務態度が著しく不良であるなどの「問題社員」「迷惑社員」がいることがあります。
改善指導に従わない従業員であっても、就業規則が不十分では解雇や懲戒処分をおこなうことは現実的には難しくなります。また懲戒処分の不服を主張して従業員が会社を訴える可能性もあります。
マイカー通勤でトラブル
通勤途中に社員が交通事故を起こす、帰宅中に飲酒運転をしたなどがあります。事故発生時に、会社が損害賠償責任を問われる可能性もあります。
ハラスメントを防止できない
労働トラブルに関する相談のうち最も多い内容がハラスメントです。
就業規則にハラスメントを抑止する内容を記載していない場合、ハラスメント行為をおこなう従業員への処分が難しくなり、従業員の離職などを招きます。
2022年4月に、事業主がハラスメント対策を講じることが法的に義務づけされています。罰則などはありませんが、厚生労働省から指導を受ける可能性があります。
就業規則の見直しは専門家へ相談
従業員が10名未満で就業規則の作成義務がない会社においても作成することが望ましいです。また作成済であっても定期的に見直しをおこないます。
【就業規則を見直す時のポイント】
- 最低賃金など労働法の改正への適合
- パートタイムやアルバイトの従業員を対象とした就業規則の作成
- 従業員の健康維持のための措置
- 従業員からの必要な書類の提出義務
- 勤務規定や懲戒規定、損害賠償規定
- 懲戒処分の理由や程度の明確化
- マイナンバーや個人情報、社内情報の取り扱い
就業規則を見直しする時は、記載内容や文言などを考慮する必要があるため、専門家のアドバイスが効果的です。
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さまざまな労働トラブル事例を参考に、就業規則の作成のサポートから記載文言へのアドバイスまで、貴社にあった就業規則の見直しを支援します。
まとめ
働き方の多様化や労働法の改正にあわせて、就業規則を定期的に見直すことが大切です。
就業規則の見直しは法律へ対応するだけでなく、従業員が働きやすく、真面目な従業員と自社の経営を守るための内容を網羅することが必要です。
就業規則に記載する内容や言葉の使いかたなどは専門家の意見を参考とすることで、労働トラブルの防止につながります。
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