
就業規則の例を紹介!自社で作成するときのポイント・注意点も解説
就業規則をひな形どおりに作成するだけでは、思わぬトラブルに見舞われることがあります。厚生労働省のモデル就業規則などのひな形がインターネット上で簡単に入手できますが、自社の業種や雇用形態に応じた修正、法改正に伴う更新が必要です。
本記事では、就業規則を自社で作成するときのポイント、業種別の注意点を解説します。
目次[非表示]
- 1.就業規則とは?
- 2.就業規則の例
- 2.1.労働時間・休暇に関する事項
- 2.2.賃金の計算に関する事項
- 2.3.退職に関する事項
- 3.就業規則を作成するときのポイント・注意点
- 3.1.記載が必要な事項
- 3.2.業種によって注意点が異なる
- 3.3.法令または労働協約に反してはならない
- 3.4.事業場の実態に合ったものとする
- 3.5.わかりやすく明確な内容にする
- 3.6.従業員代表の意見を聴く
- 3.7.労働基準監督署長への届出
- 3.8.従業員に就業規則を周知させる
- 4.F&M Clubで自社に最適な就業規則を作成
就業規則とは?
従業員の給料や勤務条件、職場のルールなどを定めた規則集のことを就業規則といい、従業員10名以上の事業場においては、法的な作成義務があります。
また就業規則を作成しておくことで、会社側と従業員側の双方が守るべきルールが明らかとなり、労働トラブルの回避に役立ちます。
就業規則の作成が義務となる企業
就業規則の作成義務とは、就業規則を作成する義務と管轄する労働基準監督へ届出する義務の2つです。
就業規則の作成を法的に義務づけられている企業とは、常時10名以上の従業員がいる事業場です。従業員数はパートタイム、アルバイトなどの雇用形態を問いません。また企業全体ではなく事業場単位で判断し、個人事業主の事業場についても作成対象となります。
就業規則は義務でなくとも作成すべき!就業規則を作成するメリット
就業規則を作成する義務がない企業であっても、就業規則を作成することで企業と従業員の双方にメリットがあります。
就業規則を作成するメリットは次のとおりです。
- 従業員が落ち着いて働くことができる
給料や休日など勤務条件を明確とすることで、「何時から何時まで働く」「賃金はいくら」などが明確となり、従業員が安心して働けます。
- 服務規程で従業員が安心できる
服務規程とは、遅刻・早退やハラスメント防止、守秘義務など職場におけるルールのことです。職場において従業員が「すべきこと」「してはいけないこと」が明確となるため、従業員が安心して仕事に従事することができます。
- 労働トラブルを防止できる
就業規則を作成しておくことで“問題社員(モンスター社員)”など、周囲に良くない影響を与える従業員への指導や処分する際の基準と根拠が明確となり、労働トラブル防止に役立ちます。
就業規則の例
就業規則を作成する際に最も重要な項目は「労働時間・休暇」「賃金」「退職」の3つです。
この3項目の記載例について、厚生労働省の『モデル就業規則(2023年7月版)』を参考に紹介します。
労働時間・休暇に関する事項
就業規則を作成する際に必ず記載しなくてはならない事項です。従業員の給料や休日に関する記載に不備がある場合、労働トラブルが起きるリスクが高まります。
下記は所定労働時間が8時間、完全週休2日制の場合における規程の例です。
始業・終業時刻と所定労働時間は明記しておきます。その理由は、例えば従業員が1時間遅刻したため終業時刻後に1時間残業した場合において割増賃金が発生しないなどが明らかとなるためです。
賃金の計算に関する事項
賃金については計算方法や支払方法について細かな記載が重要です。
モデル就業規則においては各種手当の項目がありますが、会社の実情に合わせた規定へ修正しておきましょう。就業規則の作成後に各種手当を廃止するなどの不利益変更をおこなう場合は従業員全員から同意書を取得することが望ましいなど手続きが煩雑となるためです。
退職に関する事項
退職事由や解雇事由についても明確に記載します。退職に関する事項は必ず記載が必要です。
解雇事由は必ず記載が必要な事項ではありませんが、労働トラブルを防止するために明確に記載しておくことが望ましいです。
また、休職に関する事項も修正しておきましょう。モデル就業規則においては休職期間が長く、その間は雇用を維持する義務が発生してしまいます。さらに休職期間中も賃金支払義務がある文言となっているため、自社に合わせた修正が必要です。
就業規則を作成するときのポイント・注意点
就業規則を作成する際のポイントは次の8つです。
① 記載しなくてはならない事項、記載しておきたい事項を盛り込む
② 業種(自社の事業内容)に応じた内容とする
③ 法令の改正や労働協約を守る
④ 事業場の実情を反映させる
⑤ わかりやすさ、明確さでトラブルを防止する
⑥ 従業員の意見を聴く
⑦ 労働基準監督署への届出が必要
⑧ 従業員への周知をおこなう
記載が必要な事項
就業規則に記載する事項は次の3つに区分されます。
- 必ず記載が必要な事項『絶対的必要記載事項』
- 自社の制度とする場合は記載しなくてはならない『相対的必要記載事項』
- 記載するか任意となる『任意的記載事項』
絶対的必要記載事項とは次の内容です。
- 始業および終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに従業員を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
- 賃金(臨時の賃金などを除く)の決定、計算および支払の方法、賃金の締切りおよび支払の時期並びに昇給に関する事項
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
相対的必要記載事項とは次の内容を指します。
- 退職手当に関する取り決め
- 臨時の賃金・最低賃金
- 食費などの費用負担
- 安全衛生
- 職業訓練
- 災害補償・業務外の傷病扶助
- 表彰、制裁
- そのほかすべての従業員に適用する事項
業種によって注意点が異なる
就業規則は業種によって盛り込む内容が異なります。業種ごとの注意点は以下のとおりです。
- 建築業
安全管理規定は必須といえます。また多様な雇用形態や悪天候時で工事できない場合などを想定した規定が必要です。
- 飲食店、美容院など(サービス業)
人の入れ替わりが多いため、労務管理に関する規定を充実させましょう。
また変形労働時間制やバイトテロを防ぐ服務規程なども大切です。
- 運送業
ドライバーの労働時間の管理などが重要です。飲酒運転などに関する懲戒基準なども盛り込んでおきましょう。
- 製造業
安全衛生に関する規定のほか、特許権などの知的財産権や情報漏えいに備えた規定の整備が望ましいです。
法令または労働協約に反してはならない
就業規則は、関係する法令や労働協約に違反する内容とすることはできません。
違反する部分については無効な取り決めとなります。
近年は、労働基準法などの労働法が相次いで改正されています。法改正に合わせて、自社の就業規則が、直近の改正内容に準じていることを確認しておきましょう。
事業場の実態に合ったものとする
就業規則は職場のルール集です。インターネット上のひな型をそのまま使用するなど、自社の労働条件や給料体系に合っていない就業規則を作成した場合、労働トラブルが発生する可能性があります。
わかりやすく明確な内容にする
就業規則の記載内容が不明瞭であると、解釈をめぐって労働トラブルとなる可能性があります。
(良くない例)
×『ボーナスは、算定対象期間を1月1日から6月30日とし、7月20日に支給する。』
上記の例の場合、4月に入社したばかりの従業員や6月30日に退職した従業員に対してボーナスを支給するかなどがわかりにくい状態となっています。
(より良い例)
『ボーナスは、算定対象期間を1月1日から6月30日の全期間に在籍した従業員に対し、7月20日に支給する(支給日に在籍している従業員に限る)。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事情がある場合には、支給しないことがある。』
上記の例のように、具体的な在籍期間、「やむを得ない事情がある場合」などを記載しておくことで、トラブル回避につながります。
従業員代表の意見を聴く
就業規則を作成するときは従業員代表から意見を聴くことが義務づけられています。
就業規則を変更する場合も同じです。
従業員代表とは、労働組合または労働組合がない場合は従業員の過半数を代表する者とされています。
労働基準監督署長への届出
就業規則を作成または変更した場合、従業員代表者の意見書を添付して、事業場ごとに管轄する労働基準監督署へ届出する義務があります。
従業員に就業規則を周知させる
就業規則を作成した後は従業員へ周知する義務があります。周知方法は特に決められておらず、例として次の方法が示されています。
- 見やすい場所に掲示する、または備え付ける
- 書面で従業員へ交付する
- 社内システムに保存し従業員が閲覧できる状態とする
F&M Clubで自社に最適な就業規則を作成
就業規則は会社と従業員のルール集です。適切に活用することで、会社と従業員を守るツールとなります。
自社で就業規則を作成した際、ひな型をそのまま使っている場合は、業種ごとの注意点が抜け落ちており、トラブル発生時に対応できない可能性があります。
自社の事情に合う就業規則の整備は、累計約38,000社が利用するF&M Clubがサポートします。
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