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副業ルール見直しとは?副業・兼業社員の労働時間通算が見直しされます

副業している社員について、主業の勤務先と副業の勤務先の労働時間を通算するルールが見直しされ、月単位での総労働時間の把握のみへ簡素化される予定です。

本記事では、副業する社員の労働時間管理のルール、副業を認める場合に自社で注意すべき点について解説します。



目次[非表示]

  1. 1.副業・兼業する社員の労働時間の管理ルール見直しとは?いつから?
    1. 1.1.副業・兼業する社員の労働時間の管理ルール見直しとは
    2. 1.2.副業・兼業する社員の労働時間の管理ルール見直しは2026年からの予定
  2. 2.雇用型副業で働く社員についての注意点
    1. 2.1.非雇用型副業(業務委託、フリーランスとして副業する)
    2. 2.2.雇用型副業(他社で雇用されて副業する)
    3. 2.3.雇用型で副業する社員に関する4つの注意点
    4. 2.4.副業社員の労働時間の通算とは
  3. 3.副業先における労働時間の管理が必要
    1. 3.1.副業社員の労働時間の通算の原則的な取り扱い
    2. 3.2.副業社員の労働時間の通算が不要となるケース
  4. 4.副業先における労働時間の管理は2種類
    1. 4.1.原則ルール
    2. 4.2.管理モデル
  5. 5.副業・兼業を認める場合の注意点
    1. 5.1.副業・兼業を認める基準を定める
    2. 5.2.副業する従業員から集める情報
    3. 5.3.社員の副業は禁止できる?
    4. 5.4.競業避止義務、秘密保持義務
    5. 5.5.確定申告
    6. 5.6.社会保険料
  6. 6.人材採用・労務管理はF&M Clubがサポート


副業・兼業する社員の労働時間の管理ルール見直しとは?いつから?

副業している社員の労働時間を管理する基本的なルールとは、主業の勤務先と副業の勤務先の両方が、主業の労働時間と副業の労働時間をあわせて管理することです。
厚生労働省によると、主業の労働時間と副業の労働時間を細かく管理するルールを廃止し、月単位での総労働時間の把握のみとする方向で検討していると発表しています。


副業・兼業する社員の労働時間の管理ルール見直しとは

今回の見直しでは、社員の健康管理のために「月単位で総労働時間を把握する」のみに簡素化される予定です。
副業している社員については、主業である勤務先と副業の勤務先の両方において、主業と副業の労働時間を日・週単位で把握する必要があるため、労務管理が負担となり、副業が浸透しない要因となっているとの意見が出ていました。

副業時間の管理ルールの見直しにより、社員の副業を促進することがねらいとされています。
また同時に、副業を認めるときに判断が難しかった「競業他社における副業を禁止する」目安についても見直すとしています。

【参考】労働基準関係法制研究会(第13回)|厚生労働省


副業・兼業する社員の労働時間の管理ルール見直しは2026年からの予定

副業社員における労働時間を通算するルールの簡素化は、2024年末までに報告書が取りまとめられ、2026年以降に実施されると予測されています

雇用型副業で働く社員についての注意点

社員の副業形態は大きく分けて「非雇用型」「非雇用型」があり、それぞれ企業が注意すべき点があります。

非雇用型副業(業務委託、フリーランスとして副業する)

非雇用型副業とは、業務委託などにより働く形態です。代表例は正社員が休日に個人事業主として他社と請負契約を結んで働く場合です。
業務委託などによる副業は雇用契約ではないため、基本的に労働基準法など労働法の適用を受けません。ただし副業している社員は副業収入を確定申告する必要があります。


雇用型副業(他社で雇用されて副業する)

雇用型副業の場合は、社員が副業する企業と雇用契約を結ぶこととなります。
社員は自社との関係においても副業先との関係においても労働基準法など労働法が適用されます。


雇用型で副業する社員に関する4つの注意点

雇用型副業は労働基準法以外についても下記のとおり注意点があります。
なかでも主業の労働時間と副業の労働時間を合算して管理する『労働時間の通算』が重要です。

  •  社会保険料は「二以上事業所勤務届」が必要

副業先が健康保険・厚生年金保険の加入事業所である場合、社員自身が『健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届』を提出する必要があります。

  •  雇用保険は1社のみ加入

社員が雇用保険に加入できる企業は1社のみです。副業の勤務先と重複して加入することはできません。

  • 確定申告が必要

副業により複数の企業から収入を得ている社員は確定申告が必要です。主たる勤務先では副業収入とあわせて年末調整することができないためです。

  • 労働時間の通算

社員の副業時間についても自社で把握する必要があります。詳細は以下に解説します。


副業社員の労働時間の通算とは

副業の労働時間との通算とは、主業の労働時間と副業の労働時間を通算して管理することです。自社における所定労働時間が5時間であっても、副業先で3時間労働すれば合計8時間の労働時間となります。

副業時間の管理に関する基本的なルールとして、労働基準法において『事業場を異にする場合、労働時間の適用に関する規定の適用については通算する』とされています。この義務は主業の勤務先と副業の勤務先の両方に適用されます。


副業先における労働時間の管理が必要


雇用型副業している社員の副業時間は本業の勤務先においても把握する必要があります。主業の労働時間と副業の労働時間を通算して週40時間、1日8時間を超えた場合は時間外労働となり、割増賃金の支払い義務が発生します。

割増賃金を主業・副業のどちらで負担するかなど、複雑となるため確認しておきましょう。

【参考】副業・兼業の促進に関するガイドライン(2022年7月改定)|厚生労働省


副業社員の労働時間の通算の原則的な取り扱い

副業による労働時間との通算は次の流れでおこないます。

  • STEP1:所定労働時間の通算

社員の雇用契約を結んだ先後の順で所定労働時間を通算します。実際に労働した時間の順ではありません。
下記の使用者Aとは先に雇用契約した企業です。使用者Bは使用者Aの後に働くこととなった副業先のことです。

  •  STEP2:所定外労働時間の通算

所定外労働時間は、実際に所定外労働時間が発生した順となります。


【引用】副業・兼業時の労働時間の通算のポイント|厚生労働省


副業社員の労働時間の通算が不要となるケース

副業形態が労働基準法の適用外となる非雇用型の場合、あるいは労働基準法における労働時間規制が適用されない副業である場合は、労働時間の通算は不要です。主なケースは次のとおりです。

(労働基準法が適用されない)

  •  社員が個人事業主として副業している
  •  副業が共同経営や家業である

(労働時間規制が適用されない)

  • 副業先において管理監督者である
  • 副業が農業などの一次産業である

【参考】副業・兼業の促進に関するガイドライン(2022年7月改定)|厚生労働省



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副業先における労働時間の管理は2種類

副業時間の管理と時間外割増賃金の支払いについては「原則ルール」「管理モデル」の2種類があります。

原則ルール

原則ルールによる副業時間の通算は以下のとおりです。


【事例】
〇主業先A(先に労働契約を締結している企業。下記イメージ図の使用者A)
 ①所定労働時間3時間
 ③所定外労働時間3時間


〇副業先B(後に労働契約を締結した企業。下記イメージ図の使用者B)
 ②所定労働時間3時間
 ④所定外労働時間2時間


〇主業先と副業先における労働時間の合計は11時間


【労働時間の通算】

  1. 所定労働時間の通算
    ①(主業先Aの3時間) + ②(副業先Bの3時間) = 6時間
  2. 所定外労働時間の通算
    ③(主業先Aの3時間) + ④(副業先Bの2時間) = 5時間
  3. 法定外労働時間(1日8時間を超え、割増賃金が必要となる時間)の通算
    ・先に勤務した主業先Aの所定外労働時間3時間
    - 法定外労働時間の残余2時間
    = 主業先Aにおける法定外労働は1時間
    ・後に勤務した副業先Bの所定外労働時間2時間はすべて法定外労働時間となる
     
    このように主業先と副業先の労働時間を正確に把握し、時間外労働手当を算出する必要があり、事務が複雑となります。



【引用】副業・兼業における労働時間の通算について(労働時間通算の原則的な方法)|厚生労働省


管理モデル

上記の原則ルールの複雑さを解消する通算方法が「管理モデル」です。
管理モデルをわかりやすく表現すると、後から雇用契約した副業先が時間外割増賃金を支払う方法です。

管理モデルにおいては、本業(先に雇用契約した)勤務先と副業(後から雇用契約した)勤務先がそれぞれ定めた労働時間内で労働させる限り、他社での労働時間の把握が不要となります。


【引用】副業・兼業における労働時間の通算について(簡便な労働時間管理の方法「管理モデル」)|厚生労働省


副業・兼業を認める場合の注意点

社員の副業を容認することで労働時間の通算が負担となりますが、自社で得られないスキルを社員が身に付けることができるなどのメリットがあります。
自社において副業や兼業を認めるときは次の点に注意が必要です。


副業・兼業を認める基準を定める

社員の副業を認める場合は基準を明確とし、就業規則などに明記します。検討すべき事項は主に次のとおりです。

  • 副業を禁止する業務(自社と競合する業務など)
  • 副業として認める勤務形態(非雇用型であることなど)
  • 副業の申請方法と承認の手続き
  • 副業にあたっての労働時間
  • 社員の健康状態を把握するための仕組み


副業する従業員から集める情報

社員から副業の申し出があった場合、副業先や副業による労働時間、健康管理に必要となる次の情報を提出してもらいます。

  • 副業先(副業先の企業名、業務内容、勤務場所など)
  • 副業の条件(雇用形態、労働時間、勤務日数など)
  • 自社の情報を漏洩しないこと
  • 本業である自社における業務に支障が出ないようにすること


社員の副業は禁止できる?

企業が社員の副業を禁止することは、特別な場合を除いて法律上は認められていません。自社の労働時間外に社員がおこなう行動を企業が制約する理由がないためです。
特別な場合として以下の3つの例があげられます。

  • 副業により社員の疲労度が高くなり、本業に影響がある
  • 副業の内容が本業の勤務先の信用や信頼を損なう可能性がある
  • 本業と副業が競業する


競業避止義務、秘密保持義務

社員の副業先が自社のライバル企業であるなどの場合があります。自社と競業する業務を禁止する競業避止義務、自社の秘密情報が漏洩しない秘密保持義務などを定めておくことが大切です。


確定申告

副業している社員については確定申告が必要です。主業の勤務先における年末調整だけでないことを社員へ説明しておきましょう。


社会保険料

副業する社員は当人が「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出する必要があります。当人から提出されていなければならないことを説明しておきましょう。


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社員の副業容認は、企業にとっても人材確保やスキルアップなどのメリットがありますが、競業防止などの対策が必要です。
社員の副業を解禁する前に、自社における就業規則の見直しなどの整備をおこないましょう。
 
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