労働トラブルへの対処方法は?トラブルの具体例や未然に防ぐ方法も紹介
近年、職場でのハラスメントを中心に労働トラブルが増加しています。しかし、自社で労働トラブルが起きた際に、どのように対処すべきか分からない企業も多いのではないでしょうか。
労働トラブルが起きた際は、関係者からトラブルの状況をヒアリングした上で、必要に応じて専門家に相談しましょう。また、労働トラブルを未然に防ぐために、就業規則を見直すなどの対策も必要です。
今回は、労働トラブルへの対処方法についてトラブルの具体例や未然に防ぐ方法も紹介します。本記事を読めば、労働トラブルに対して迅速に対処できます。労働トラブルへの対処はもちろん、未然に防ぐ対策も講じて従業員が安心して働ける職場環境を整備しましょう。
目次[非表示]
- 1.労働トラブルとは?
- 2.労働トラブルが起こる理由
- 3.労働トラブルの具体例
- 3.1.労働時間・休暇取得に対するトラブル
- 3.2.賃金に対するトラブル
- 3.3.解雇に対するトラブル
- 3.4.労働者災害に対するトラブル
- 3.5.ハラスメントに対するトラブル
- 4.労働トラブルへの対処方法
- 5.労働トラブルを予防する方法
- 5.1.雇用契約書・就業規則を見直す
- 5.2.改定した就業規則は全社員に周知させる
- 5.3.労働災害を未然に防ぐ措置を徹底する
- 5.4.普段から正確な労務管理をおこなう
- 6.まとめ
労働トラブルとは?
労働トラブルとは、職場において労働者と使用者(会社)の間で発生するさまざまな問題や紛争を指します。具体的な労働トラブルとして、以下があげられます。
- 賃金未払い・残業代の不払い
- 一方的な労働条件の変更
- パワーハラスメントやセクハラ
- 不当解雇
ほかにも、近年では長時間労働やメンタルヘルス問題に関連するトラブルも増加している傾向です。上記のようなトラブルが発生した場合、まずは会社の人事部門と当事者の話し合いで解決を試みます。深刻な場合は、弁護士に相談して解決策を提示してもらうことも選択肢のひとつです。
労働トラブルが起こる理由
労働トラブルが起こる主な理由は、労使間のコミュニケーション不足と労働関連法規に対する理解不足です。たとえば、会社側が経営効率を優先するあまり、従業員の権利や働きやすい環境づくりを軽視してしまうケースがあります。また、従業員側が自身の権利や義務について十分な知識がなく、不当な扱いを受けても気づかないケースもあります。
さらに、近年の働き方改革や労働法制の変更により、新しいルールにおける対応が追いついていないことも原因のひとつです。特に、中小企業では、人事担当者の専門知識が不足している・適切な労務管理体制が整っていないケースも少なくありません。
また、価値観の多様化により、従来の日本型雇用の慣行と若手社員の期待との間にギャップが生じ、トラブルのきっかけとなるケースもあります。
労働トラブルの具体例
労働トラブルの具体例として、以下の5つがあげられます。
- 労働時間・休暇取得に対するトラブル
- 賃金に対するトラブル
- 解雇に対するトラブル
- 労働災害に対するトラブル
- ハラスメントに対するトラブル
上記トラブルが起きた場合は、企業として適切な対応を取りましょう。
労働時間・休暇取得に対するトラブル
ひとつ目は、労働時間や休暇取得に関するトラブルです。最も多いケースは、サービス残業の強要です。具体的には残業代を支払わないために、タイムカードを早めに打刻させる・残業申請を認めないなどの行為が該当します。
また、有休の取得を実質的に制限されるケースも頻発しているのが現状です。「人手不足・繁忙期であるため」という理由で、有休取得を認めない・取得すると不利益な扱いを受けるなどの事例が報告されています。
さらに、「休憩時間を適切に取得させない」「勤務時間外でも常時連絡が取れる状態を強制する」など働く人の休息を阻害するトラブルも増加している傾向です。
賃金に対するトラブル
2つ目は、賃金に関するトラブルです。具体例としては、地域別最低賃金を下回る賃金での雇用など最低賃金法違反が該当します。また、約束した給与が支払われない・一方的な給与カットを強いられるなどのケースも後を絶ちません。
残業代の計算方法を巡るトラブルも多発しています。管理職扱いにして残業代を支払わない、深夜や休日労働の割増賃金を正しく計算しないなどの事例が報告されています。
賞与や退職金に関するトラブルも増加している傾向です。支給条件が明確でない・正社員と非正規社員で不当な差別があるなどのケースが見られます。また、昇給や昇格の基準が不透明で差別的な扱いを受けているというトラブルも発生しています。
解雇に対するトラブル
3つ目は、解雇を巡るトラブルです。たとえば、前触れもなく突然解雇通告されるなどもトラブルのひとつです。
法律では、合理的な理由がある場合でも解雇する際には少なくとも30日前に予告しなければなりません。また、予告せずに解雇する場合は30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。しかし、上記の手続きを無視した即日解雇や口頭での一方的な解雇通告などが後を絶ちません。
また、正当な理由のない解雇も問題となっています。病気休職中の従業員の解雇、妊娠・出産を理由とした解雇など法律で禁止されている事例も多いです。特に、パワーハラスメントなどで退職に追い込むケースもあり、近年社会的に問題視されています。
労働者災害に対するトラブル
4つ目は、労働者災害に関するトラブルです。最も深刻なトラブルは、労働者災害における対応の不備があげられます。
たとえば、会社側が労働者災害申請を妨害する・プライベートでのけがや病気として処理するよう強要するケースです。また、復職後に不当な配置転換をおこなうなど、労働者災害被害者への不利益な取り扱いも問題となっています。
過労死・過労自殺に関連するトラブルも増加している傾向です。長時間労働や過度なストレスによる健康被害が発生しているにもかかわらず、会社側が適切な対策を取らない・労働者災害認定に協力しないなどの事例が見られます。
ハラスメントに対するトラブル
5つ目は、職場におけるハラスメントです。働く人のメンタルヘルスや職場環境に深刻な影響を与える問題として注目されています。
パワーハラスメントは、近年報告が多いトラブルです。上司からの過度な叱責や無理な要求・人格を否定する言動など、優位な立場を利用したさまざまな嫌がらせが報告されています。パワハラの定義や境界線が曖昧なため、適切な対応が取られないケースも多く見られます。
セクシュアルハラスメントも、依然として深刻な問題です。身体接触や性的な言動だけでなく、妊娠・出産・育児に関連する不利益な取り扱い(マタニティハラスメント)なども含まれます。相談窓口が整備されていないなど、被害者が声を上げにくい環境も問題を複雑化させています。
労働トラブルへの対処方法
労働トラブルが起きた際の対処法として、以下の2つがあげられます。
- ①関係者からトラブルの状況をヒアリングする
- ②弁護士・社会保険労務士などの専門家に相談する
上記の方法を参考に、労働トラブルへ適切に対処しましょう。
①関係者からトラブルの状況をヒアリングする
労働トラブル発生時の最初のステップとして、関係者からの詳細なヒアリングを実施しましょう。まず、トラブルの当事者から具体的な状況を確認します。聞き取りをおこなう際、以下の点を明確にすることが重要です。
- いつ、どこで、なにが起きたのか
- 誰が関与しているのか
- どのような経緯でトラブルが発生したのか
- これまでにどのような対応が取られたのか
ヒアリングの際は、トラブルに応じた客観的な証拠の収集も並行しておこないましょう。たとえば、パワーハラスメントが問題となっている場合は、当事者間でやり取りしたメールやLINEの記録などが重要な証拠となります。
また、トラブルを目撃した第三者からの証言も重要です。同僚・上司・他部署の従業員など状況を知る人物からも情報を集めれば、より正確な実態の把握が可能です。
ヒアリングでは、事実関係を冷静に整理することを心がけましょう。得られた情報は必ず文書化し、時系列で整理しておくことが対応に役立ちます。
②弁護士・社会保険労務士などの専門家に相談する
関係者のヒアリングで状況を整理できたら、トラブルの内容に応じて弁護士・社会保険労務士などの専門家に相談しましょう。弁護士への相談は、特に法的な対応が必要な場合に有効です。弁護士は、具体的に以下のような支援を提供できます。
- 労働関連法規に基づく権利の確認
- 交渉や調停の代理人としての活動
- 訴訟に関する助言や代理
- 示談交渉の進め方についてのアドバイス
社会保険労務士は、労務管理の専門家として以下のような支援が可能です。
- 労働条件や社会保険に関する相談
- 労働基準監督署への各種手続きの支援
- 就業規則や労働契約の確認と改善提案
- 労使間の調整や話し合いの支援
専門家に相談する際は、事前に収集した証拠や記録を整理して持参することが重要です。また、相談料金や今後の進め方について最初に確認しておくことをおすすめします。
労働トラブルを予防する方法
労働トラブルを予防する方法として、以下の4つがあげられます。
- 雇用契約書・就業規則を見直す
- 改定した就業規則は全社員に周知させる
- 労働災害を未然に防ぐ措置を徹底する
- 普段から正確な労務管理をおこなう
労働トラブルを未然に防げるよう、上記対策を普段から講じておきましょう。
雇用契約書・就業規則を見直す
まず、雇用契約書・就業規則を見直しましょう。労働トラブルの多くは、労働条件・労働時間・賃金に関する認識のズレから発生します。そのため、雇用契約書や就業規則は定期的に見直し、法改正や会社の状況に合わせて更新することが重要です。
特に、契約内容が曖昧・不明瞭な部分があると、後々のトラブルに発展する可能性が高まります。また、労働基準法などの法的要件を満たしているか・労働時間や休暇の規定が現行法に準拠しているかも確認が必要です。定期的な見直しにより、労働条件を適切に管理してトラブルの発生を防げます。
改定した就業規則は全社員に周知させる
就業規則を見直し、改定した場合には全社員に周知させることが不可欠です。単に文書を配付するだけではなく、説明会などを開催して社員が内容をしっかりと把握できるようにしましょう。特に、就業規則の改定は社員の権利や義務に関わるため、内容の変更が十分に認識されていないと労働トラブルの原因となります。
また、従業員にとって不明瞭な点や疑問点があれば、随時問合せを受けられる体制を整えることも必要です。全社員が就業規則を正しく理解して守ることが、トラブルの予防につながります。
労働災害を未然に防ぐ措置を徹底する
労働災害を防ぐためには、安全・衛生管理の徹底が必要です。特に、危険を伴う業種や作業現場では、定期的な安全点検を実施して危険を最小限に抑える努力が求められます。
また、労働災害が発生しやすい状況や作業を事前に特定すれば、リスクを評価して予防策の強化が可能です。安全装備の配備や使用の徹底、作業手順の見直しなどを日常的におこなうと、労働災害を未然に防げます。社員が安心して働ける職場の提供は、企業の責任です。
普段から正確な労務管理をおこなう
正確な労務管理は、労働トラブルを未然に防ぐために欠かせない要素です。労働時間の適切な管理・残業や休暇の記録・給与の正確な計算は、すべて労務管理の一環です。
正確に労務管理をおこなえば、トラブルの芽を未然に摘めます。特に、過重労働や未払い賃金に関するトラブルは、企業にとって大きなリスクです。労働者が適切な労働条件の下で働けるよう日常的に労務管理を徹底し、トラブルの発生を防ぐ体制を整えることが重要です。
まとめ
労働トラブルを未然に防ぐためには、雇用契約書や就業規則の定期的な見直しと社員への周知が重要です。契約内容の曖昧さや法令違反を防ぐため、就業規則は法改正に合わせて更新し、全社員に説明会などの機会を設けて理解を促しましょう。
また、労働災害を防ぐための安全対策や日常的な労務管理も欠かせません。正確な労働時間の管理や給与計算を徹底し、社員が安心して働ける環境を整えることがトラブル防止の鍵となります。
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