労働トラブルは企業経営に大きな悪影響、事例や予防策について解説
近年、働き方改革の促進や、労働法の強化により、人々の「働き方」に関する考えや捉え方は大きく変化しています。そのため、過重労働やハラスメントなどの労働トラブル(労働問題)に対する警戒力も強まっています。企業内で起こる労働トラブルは、従業員だけでなく、企業の経営にも大きく影響を及ぼすため、労働トラブルについての認識を深め、正しい対応策を理解しましょう。
目次[非表示]
- 1.労働トラブルとは
- 1.1.企業経営に悪影響
- 2.よくある労働問題の種類
- 2.1.パワハラ・セクハラによるトラブル
- 2.1.1.パワハラとは
- 2.1.2.パワハラとみなされる行為
- 2.1.3.セクハラとは
- 2.1.4.セクハラとみなされる行為
- 2.2.そのほかのハラスメントによるトラブル
- 2.3.休暇制度をめぐるトラブル
- 2.4.長時間労働によるトラブル
- 2.5.採用・解雇関連によるトラブル
- 2.6.待遇関連によるトラブル
- 3.労働トラブルを予防するためには
- 3.1.就業規則の管理と周知
- 3.2.雇用契約書の作成および管理
- 3.3.社員教育
- 4.まとめ
労働トラブルとは
労働トラブル(労働問題)とは、企業と従業員の間で起こる問題であり、トラブルによっては事業経営に大きな悪影響を及ぼすため、どのような問題が労働トラブルに該当するのか認識し、適切な対応策を講じる必要があります。
企業経営に悪影響
労働トラブルは、問題が生じた場合に適切な処置や対応を怠ると、「従業員のやる気の低下および労働生産性の低下」、「離職者の増加」、「組織として成り立たなくなる」などの事態を招いてしまいます。
よくある労働問題の種類
企業内で起こりやすい、よくある労働問題を解説します。
パワハラ・セクハラによるトラブル
パワハラやセクハラによるトラブルは、企業が職場内の安全性の配慮や労働環境の整備に対する違反として責任を問われる場合もあるため、「当事者同士の問題」と軽視するわけにはいきません。
パワハラやセクハラによる問題の発生、申告があった場合は、必要に応じて調査を実施し、被害者と加害者のそれぞれに、適切なケアや処置をおこなう必要があります。
パワハラとは
パワハラ(パワーハラスメント)とは、職務上の地位や人間関係などの立場や優位性を利用し、業務の適正範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える行為および職場環境を悪化させる行為です。
パワハラは、上司から部下による行為のイメージがもたれがちですが、目上の立場に限らず、部下から上司、後輩から先輩など、あらゆる関係性や立場において、成り立つ行為です。
パワハラとみなされる行為
パワハラとみなされる行為は、主に「言動が業務改善や、社員教育などのために、適切なものであるか」、「当事者に対する人格批判の要素を含んでいるか」を基準に判断されます。
- 殴る、蹴るなどの身体的な攻撃
- 悪口や侮辱、暴言、無視などによる精神的な攻撃
- 過度なノルマ、多大な業務量などの無理な要求
- 休日に行事に強制参加させる、個人的な情報を聞き出すなどのプライバシーの侵害
セクハラとは
セクハラ(セクシュアルハラスメント)とは、職場において、従業員の意に反する性的な言動がおこなわれることです。
性的な言動を拒否する、抵抗することで、解雇や減給など従業員にとって不利益な行動を取ること、従業員が業務遂行するうえで、悪影響が生じるような性的な言動を指します。
また、職場の定義とは広範囲にわたり、会社内だけでなく、業務上必要とされる出張先や、宴会の場なども対象となります。
セクハラとみなされる行為
セクハラとみなされる行為は、主に「当事者の意に反する行為であるか」、「職場環境に悪影響を及ぼす行為であるか」を基準に判断されます。
- 性的言動や体を触るなどの行為による精神的苦痛
- 勤務時間外の食事などの強要や、連絡先や個人情報、プライベートについて執拗に聞くなどのプライバシーの侵害
- 性的な言動などを拒否したことを理由に、解雇や減給などをおこなう行為
そのほかのハラスメントによるトラブル
近年では、ハラスメントとみなされる「嫌がらせ」や「いじめ」について、問題視する傾向が強まっており、ハラスメントの種類も広範囲にわたります。
ジェンハラ
ジェンハラ(ジェンダーハラスメント)とは、「男はこうあるべき」、「女はこうあるべき」などの、性別における固定概念による嫌がらせです。
「男性が力仕事をすべき」、「女性が来客対応すべき」、「管理職は男性が務める」、「女性が子育てをすべき」などの考え方は、ジェンハラとしてみなされます。
マタハラ
マタハラ(マタニティハラスメント)とは、妊娠や出産、育児などを理由とした嫌がらせなどの行為です。
「妊娠・出産・育児による休暇や、休業に対する嫌味」、「産休や育休制度を希望する従業員に対し、解雇や退職を強いるなどの行為」、「出産や育児を理由に、降格や減給など、不当な扱いをおこなう行為」などが、マタハラに該当します。
休暇制度をめぐるトラブル
有給休暇など、休暇制度をめぐるトラブルでは、有給休暇取得日の支払い額や、取得日、取得の許可などをめぐる問題が発生することもあります。
「有給休暇は権利、義務であるのに、取得させてもらえない」、「妥当な支払額が支給されない」、「有給取得可能日が更新されない」などのトラブルが該当します。
長時間労働によるトラブル
長時間の残業や、休日労働、残業代の未払い問題(サービス残業)も、労働トラブルに発展しやすい問題です。
使用者(事業主)は、労働基準法で定められた規定に基づき、労働者に規定を超えた範囲での、長時間労働や、休日出勤をさせてはいけないものとされています。
また、残業代についても、所定の支払条件に基づいた賃金を支払うことが義務づけられています。
さらに長時間労働や残業代未払い問題は、労働基準監督署の調査対象となる可能性が高く、、適切な管理がおこなわれていないと、企業の評判や信頼を失うような問題へと発展する恐れがあります。
採用・解雇関連によるトラブル
採用や解雇に関する問題においても、労働トラブルが多く発生しやすい傾向があります。
求人票の記載内容と実際の労働条件の相違や、試用期間終了時における本採用の取り消しなどに関する場面で、トラブルが発生しやすいといえます。
「採用時の条件と違う職種での労働」や「不当な理由での本採用拒否や解雇」などのおこないは、労働者の不当な扱いとしてみなされます。
待遇関連によるトラブル
待遇関連によるトラブルの多くは、賃金に関する問題が多く、特に正社員とパートタイマーなど、雇用形態による待遇格差によるトラブルが多いといえます。
近年では働き方の多様性が広がり、不当な待遇格差を禁止する、同一労働同一賃金(パートタイム有期雇用労働法)の定めなど、パートタイマーの働き方も見直されています。
パートタイマーなど有期雇用契約社員を雇用する企業は、待遇格差をめぐるトラブルが起きないよう、労働法など規定を理解し、把握しておきましょう。
労働トラブルを予防するためには
労働トラブルは、あらゆる場面で発生する可能性があり、企業にとって大きなリスクとなります。労働トラブルを予防するためには、あらかじめ、職場環境を整備しておくことが大切です。
就業規則の管理と周知
就業規則や社内ルールを整備し、社内で定めた規定や禁止事項を、予め従業員に周知させることで、従業員の行動制限や社内規定の理解を促し、トラブル回避へと繋がります。
雇用契約書の作成および管理
雇用に関するトラブルは、雇用契約書や誓約書の書面を作成し、従業員が承認することで、会社が定める規定について承諾した証となり、トラブル回避へと繋がります。
社員教育
社内規定を遵守するための社員教育は、労働トラブルの予防策として有効です。
特に「ハラスメント」や「管理職の役割」などに関する研修は、ハラスメントにあたる禁止事項の認識、管理職(リーダー)の在り方など社内環境を整えるために必要な社員教育です。
まとめ
労働トラブルは、企業が良好な経営をおこなううえで避けるべき問題であり、労働トラブルを予防するためには、就業規則の管理と周知、社員教育が大切です。