建設業の倒産ラッシュ⁉2024年は過去10年で最多の見込み
2024年1月から10月までに発生した建設業の倒産件数は1,566件となり、過去10年で最多ペースとなる見込みです。建設業の倒産が急増している主な理由は人手不足とみられ、今後も建設業の倒産件数は高い水準で続くと予測されています。
本記事では、建設業の倒産件数が多い理由と倒産しないための対策を解説します。
目次[非表示]
- 1.2024年の建設業の倒産件数は過去10年で最多となる見込み
- 2.建設業の倒産が増えている主な理由
- 2.1.職人不足・採用難
- 2.2.賃金高騰
- 2.3.長時間労働規制
- 2.4.建設資材の高止まり・運送費の上昇
- 2.5.住宅着工の鈍化
- 3.建設業の人手不足倒産を防ぐために必要な対策とは
- 3.1.従業員の処遇改善
- 3.2.採用方法の見直し
- 3.3.受注金額の見直し
- 3.4.DXによる生産性向上
- 3.5.資金繰りの見直し
- 4.F&M Clubは人手不足対策・労務管理・資金繰りまですべてをサポート
2024年の建設業の倒産件数は過去10年で最多となる見込み
帝国データバンクは2024年1月から10月までの建設業の倒産件数が1,566件であると発表しました。(負債総額1,000万円以上の法的整理が対象)
主な理由は人手不足であるとみられ、人件費を引き上げる体力に乏しい中小零細建設業者の倒産件数が高い水準で続く可能性があるとしています。
【参考】「建設業」の倒産動向(2024年1-10月)|株式会社帝国データバンク
建設業倒産件数(2024年1月から10月)は8年ぶり高水準
2024年10月までの建設業の倒産件数1,566件は、前年同月時点(2023年1月から10月まで)の1,369件に比べ、14.4%の増加です。過去8年間で最多となった2023年を上回る倒産件数となっています。
2024年通年での建設業倒産は過去10年で最多の見込み
2023年(通年)の建設業の倒産件数は1,671件であり、過去8年間で最多でした。
2024年は2023年を上回るペースで建設業の倒産が発生しているため、2024年通年の倒産件数は過去10年で最多となる見込みです。
【引用】「建設業」の倒産動向(2024年1-10月)|株式会社帝国データバンク
建設業の倒産が増えている主な理由
建設業の倒産が急増している理由は、人手不足など、主に以下の理由です。
職人不足・採用難
建設業倒産理由のひとつには「人手不足(職人不足・採用難)」があげられ、建設業は新規採用において必要な従業員数を確保しにくい状態が続いています。
帝国データバンクの調べによると、人手不足であると感じている建設業者の割合は69.6%(2024年10月)に達しています。
【参考】人手不足に対する企業の動向調査(2024年10月)|株式会社帝国データバンク
賃金高騰
建設業界は人手不足の影響で人件費が急上昇しています。2024年1月以降、建設業界における現金給与総額は全産業平均を超えて急激に増加が続いており、人件費が企業収益を圧迫しているとみられます。
【引用】「建設業」の倒産動向(2024年1-10月)|株式会社帝国データバンク
長時間労働規制
建設業においても2024年4月から残業時間の上限規制が適用されています。このため人手不足を残業でカバーできず、工期延長が発生しているとみられます。工期を延長すると、その間の建築資材や人件費などの支出が増え、加えて売上の入金が遅れるなど、資金繰りの圧迫要因が重なってしまいます。
建設資材の高止まり・運送費の上昇
生コンクリートや鋼管などの建設資材価格は高止まりが続いています。さらに、建設業と同様に人手不足の影響を強く受けている運送費の上昇が加わっています。
建設業界の主要資材の高騰状況を、埼玉県の『価格交渉支援ツール』を活用して示した場合、主要資材の多くが急激に上昇し、現在も高止まりしていることがわかります。
【引用】価格交渉支援ツール(11月14日Ver)|埼玉県から作成
住宅着工の鈍化
建築価格や金利引き上げの影響により2024年の戸建て住宅などの着工件数は減少しており、今後も減少が続くと予測されています。
このため都心部の再開発工事や災害復旧工事の恩恵を受けにくい中小零細建設業者は、工事の減少と人件費上昇のダブルパンチに悩まされる可能性があります。
【引用】2024~2040年度の新設住宅着工戸数|株式会社野村総合研究所
建設業の人手不足倒産を防ぐために必要な対策とは
さまざまな業界で深刻である人手不足問題は、建設業にとっても非常に深刻です。
企業の売上を支える従業員の不足が慢性化すると“人手不足倒産”に至る原因となります。
人手不足倒産を防ぐための主な対策は次のとおりです。
従業員の処遇改善
賃上げだけでなく、休日数の増加などの待遇改善に取り組むことで、従業員定着率の改善や新規採用の促進などの効果を期待できます。
従業員の処遇を改善する主な取り組み例は次のとおりです。
- 残業時間の削減
- 土日祝日の休業、年間休日数の増加(目安は120日以上といわれています)
- 教育訓練、リスキリングなど従業員の成長を促す制度の整備
- 目標管理制度などの導入
なお年間休日の変更などは、就業規則の改正が必要となることがあります。就業規則を見直す際、自社の就業規則が最新の労働法に合致しているか確認しておきましょう。
採用方法の見直し
新規採用を強化するためには、自社の採用方法を再点検しましょう。
見直しの際は、自社が求める求人像と求人票の内容が、利用者層と合っているかなどを点検します。主な対応は次のとおりです。
- 自社ホームページを開設・整備する
- 自社が求める人材像を明確化し、求人票などに的確に表現する
- 募集する仕事の内容は、初見の人であってもイメージできるような表現にする
- 仕事のやりがいや、仕事を通じて身に付けることができるスキルなどを強調する
- 面接や求人情報、採用サイトなどにおいて、自社の雰囲気や働き方が伝わる情報を提供する
- 求人媒体の主な利用者層を把握し、自社の求人像に合った媒体を選択する
受注金額の見直し
「賃下げ」は人手不足対策のひとつですが、賃上げには原資の確保が重要となります。
資材や人件費が上昇する中、企業収益を確保するためには、販売価格の見直しなど、値上げ交渉に取り組む必要があるでしょう。
DXによる生産性向上
人手不足が慢性化し、既存の従業員が疲弊している可能性があるため、賃上げや販売価格の見直しとともに、自社の生産性を高める努力が必要です。
人手不足時代における生産性の向上策として、業務のDX化を検討しましょう。投資に必要な資金については、補助金・助成金の活用を検討します。
例として、建設業における生産性向上の取り組み事例は次のとおりです。
- ドローンやICT建機を活用し、作業を省人化
- 勤怠管理システムを導入し、労務管理を効率化
- 給与計算システムを導入し、バックオフィス業務を効率化
- 施工管理システムを導入し、管理時間を短縮化
資金繰りの見直し
人手不足による倒産など、企業の主な倒産原因は“資金繰りの破綻”です。また、政府は2024年11月以降に振り出す約束手形のサイトを原則60日以内とする方針を打ち出しているため、企業によっては支払手形の短縮に伴い運転資金を確保する必要に迫られています。
自社の資金繰りを管理するためには、資金繰り表の作成が欠かせません。
資金繰り表の作成に自信がない場合などは、顧問税理士など外部専門家のアドバイスを活用しましょう。
F&M Clubは人手不足対策・労務管理・資金繰りまですべてをサポート
建設業の倒産が高水準となっており、2024年は過去10年間で最多となると予測されています。
建設業の倒産件数が急増している主な原因である人手不足と人件費の上昇は、建設業以外の業種についても共通であり、今後はほかの業種においても倒産が増える可能性があります。
自社が倒産しないためには、人材採用の強化と従業員定着率の向上、生産性向上による付加価値の上昇などに取り組む必要があります。
「自社の経営について見直したい」「就業規則を見直したい」「人材採用・人材育成をすすめたい」などの課題やお悩みは、F&M Clubへご相談ください。
F&M Clubは、累計約38,000社の中小企業を支援してきたエフアンドエムの豊富なノウハウを活用した支援を受けられる【月額30,000円(税別)】のサービスです。
生産性向上のための補助金・助成金申請のサポート、労務管理や資金繰りの改善など、経営者様が相談しにくいお悩みも、お気軽に相談できるサポート体制が整っています。
経営者様のお悩みごとはF&M Clubへお気軽にご相談ください。