年収103万円の壁は123万円へ引き上げ!いつから?人手不足企業への影響は?
政府・与党は税制改正大綱において「年収の103万円の壁」を123万円へ引き上げることを決定しました。また、扶養の範囲内となる「子の年収」についても150万円以下に緩和される予定です。
本記事では「年収103万円の壁」から123万円への引き上げについて、中小企業への影響、人手不足企業がとるべき今後の対策などについて解説します。
目次[非表示]
- 1.「年収103万円の壁」は控除額123万円へ引き上げ
- 2.年収103万円の壁から123万円へ壁の引き上げはいつから?効果は?
- 2.1.年収103万円の壁の見直しは2025年分所得(2025年の年末調整)から
- 2.2.年収103万円の壁見直しで社員の手取り増加は年5,000円?
- 2.3.年収の壁の見直しによる中小企業への影響は?
- 3.年収の壁130万円・150万円・201万円は継続
- 3.1.106万円の壁は撤廃
- 3.2.130万円の壁
- 3.3.150万円の壁
- 3.4.201万円の壁
- 4.年収の壁見直しで中小企業に求められる「採用力」「バックオフィス業務の効率化」
- 5.中小企業のバックオフィス業務の効率化はF&M Clubがサポート
「年収103万円の壁」は控除額123万円へ引き上げ
2024年12月20日、政府・与党は令和7年税制改正大綱を決定し、注目されていた「年収103万円の壁」について、123万円へ引き上げる方針を示しました。本件については今後、2025年の通常国会において審議される予定です。
年収103万円の壁とは
「年収103万円の壁」とは、年収103万円を超えると所得税が発生し、手取りが減ることを避けるために「勤務時間を自主的に抑制する就業調整が起こること」を指します。この103万円とは、所得税における基礎控除48万円と給与所得控除55万円の合計額です。
今回の見直しにより、「年収103万円の壁」となっている控除額が、合計123万円へ引き上げられる予定です。
年収103万円の壁から123万円の壁への概要
「年収103万円の壁」を123万円とすることで、年収123万円までは所得税が非課税となります。ただし住民税については、給与所得控除を10万円引き上げるのみとなります。
今回の「年収103万円の壁」引き上げにおける内訳は次のとおりです。
【年収103万円の壁→123万円への引き上げの内訳(所得税)】
年収103万円の壁(控除合計額) |
もうひとつの103万円の壁:特定扶養控除は150万円へ
学生世代の子がいる親が対象となる特定扶養控除は、子の年収103万円までであった収入制限を150万円へ引き上げる予定です。
子の年収が150万円を超えても、188万円までは新設予定の「特定親族特別控除」(仮称)により段階的な控除が講じられる予定であると報じられています。
年収103万円の壁から123万円へ壁の引き上げはいつから?効果は?
「年収103万円の壁」を123万円へ見直す改正は、2025年の所得からの予定です。
年収103万円の壁の見直しは2025年分所得(2025年の年末調整)から
2025年の所得から適用され、2025年分は年末調整などで対応される予定です。
年収103万円の壁見直しで社員の手取り増加は年5,000円?
第一生命経済研究所の試算によると、今回の「年収103万円の壁」を123万円へ引き上げることによる「手取り増加効果」は限定的であるといえます。
例えば、3人世帯の場合(フルタイム1名、配偶者は収入なし、子は中学生以下)のケースでは、年収400万円で年間約5,000円、年収600万円で年間約1万円、年収800万円で年間約2万円の手取り増加となる試算です。
【引用】「年収の壁 103 万円→123 万円」へのコメント|第一生命経済研究所
年収の壁の見直しによる中小企業への影響は?
近年の賃上げにより、勤務時間を削減していたパートタイム従業員や、学生アルバイトが多い企業にとっては、今回の「年収103万円の壁」の見直しは、人手不足が緩和される効果が期待されています。
2024年12月にエフアンドエムネットが実施したアンケートによると、年収の壁の撤廃や年収上限が引き上げられた場合の回答として「もっと働きたい」(37.3%)「どちらといえばもっと働きたい」(42.0%)という声があがっています。
【引用】年収の壁に関するアンケート調査(2024年12月)|エフアンドエム
しかし、企業においてはメリットだけでなく、デメリットも想定されています。年収の壁の見直しや撤廃による企業側のデメリットは次のとおりです。
- 人件費の上昇
- 社会保険料の企業側負担額の増加
- 所得税控除額の変更など事務コストの増加
- 勤務シフト調整などをおこなった場合、人材が流出する可能性の上昇
年収の壁130万円・150万円・201万円は継続
今回の年収の壁見直しは「年収103万円の壁」についてです。しかし、年収の壁はほかにも106万円・130万円・150万円・201万円と4つあり、そのうち106万円の壁(厚生年金保険への加入)については、2026年10月に廃止とする方針が打ち出されています。
上記の「年収の壁」4つの概要は次のとおりです。
106万円の壁は撤廃
「年収106万円の壁」は、勤務先の事業所が従業員数(厚生年金被保険者数)51名以上の場合、厚生年金保険への加入が必要となる年収です。
厚生労働省は下記のとおり、2026年10月から収入金額の要件を撤廃、2027年10月からは事業所の規模要件を撤廃する方針です。ただし週所定勤務時間20時間以上で加入義務が発生する要件は維持される予定であるため、時給単価が高い求人に人が集まりやすくなる可能性があります。
【年収106万円の壁の撤廃内容】
短時間勤務従業員の厚生年金加入要件 |
見直しの内容 |
従業員数51名以上の事業所 |
2027年10月から撤廃 |
年収106万円(賃金月額88,000円)以上 |
2026年10月から撤廃 |
週所定勤務時間が20時間以上 |
維持 |
2か月以上の雇用見込み |
維持 |
学生ではない |
維持 |
【参考】被用者保険の適用拡大および第3号被保険者制度を念頭に置いたいわゆる「年収の壁」への対応について②(2024年12月10日)|厚生労働省年金局
130万円の壁
「年収130万円の壁」は被扶養者が扶養から外れてしまう年収です。
健康保険や厚生年金の被扶養者は年収130万円未満とされており、扶養から外れた場合、社会保険料を支払う必要があります。
150万円の壁
「年収150万円の壁」は配偶者特別控除の控除額が減り始める年収です。
配偶者の年収が150万円を超えた場合、配偶者特別控除額が段階的に縮小し、税負担が増加します。
201万円の壁
「年収201万円の壁」は配偶者特別控除が適用されなくなる年収です。
配偶者の年収が201万円を超えた場合、配偶者特別控除の適用がなくなり、控除を受けられなくなり、課税所得が増加し、税負担がさらに重くなります。
年収の壁見直しで中小企業に求められる「採用力」「バックオフィス業務の効率化」
年収の壁が見直されると、中小企業は「採用力」や、「バックオフィス業務の効率化」がより一層求められることとなります。
「採用力」を高めるためには、給与だけでなく「働きがい」など、職場としての魅力を高め、自社が望む人材に対して適切にアピールすることが必要です。
具体的な取り組み例は次のとおりです。
- 就業規則を整備する
- 求人票について専門家からアドバイスを受ける
- 自社で活躍している従業員の適性診断をおこない、自社に合う人物像を客観的に把握する
「バックオフィス業務の効率化」については、デジタル化・IT化が効果的です。システム投資にかかる資金は、補助金や助成金をフル活用しましょう。
中小企業が取り組みやすい効率化の例は次のとおりです。
- 勤怠管理ソフトを導入し、紙のタイムカードを廃止する
- クラウドの勤怠管理システムを導入する
- 文書作成、文書管理をデジタル化(ペーパーレス化)する
- プレゼン資料や営業資料作成に生成AIを活用する
中小企業のバックオフィス業務の効率化はF&M Clubがサポート
「年収103万円の壁」が123万円へ引き上げされるなど社会保険制度は頻繁に改正され、その都度、社内の業務フローを見直す必要があります。
「人手不足でバックオフィス業務の人手が足りない」「業務効率化に向けたシステム導入に使える補助金を探したい」など、中小企業経営者様の課題解決は、F&M Clubがサポートします。
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