
トランプ関税で日本の中小企業が潰れる?影響と対策をわかりやすく解説
第2次トランプ政権が打ち出した「トランプ関税」は、日本を含め多くの国へ衝撃を与えています。トランプ関税の発表後、米中両国間で報復関税が発動されるなど事態が複雑化しており、今後、日本の中小企業についても輸出の鈍化・設備投資や個人消費の低迷・そして倒産件数の増加などの影響があると予測されています。
本記事では、トランプ関税の内容と日本の中小企業が受ける影響、中小企業が検討しておきたい対策について解説します。
目次[非表示]
- 1.関税とは
- 2.トランプ関税とは
- 2.1.トランプ関税は大きく4種類
- 2.2.トランプ関税の主な動き
- 2.3.世界経済の下振れリスク
- 2.4.対米輸出・対中輸出の減少リスク
- 3.トランプ関税の影響を受ける日本企業は約1万3,000社!倒産件数は増加するとの予測
- 3.1.トランプ関税で輸出に影響が出る日本企業は約1万3,000社との予測
- 3.2.影響が懸念される業界は「自動車」「機械」など幅広い
- 3.3.トランプ関税で日本国内企業の倒産件数は約3%以上増加の予測
- 3.4.国内設備投資、個人消費などに影響する可能性
- 4.トランプ政権の影響に負けないための中小企業における対応策
- 4.1.輸出先の分散
- 4.2.サプライチェーンの見直し
- 4.3.DX化、AIの活用
- 4.4.生産性の向上・新分野への挑戦
- 4.5.設備投資などに利用できる公的支援策を活用
- 5.公的支援策の活用はF&M Clubがサポート
関税とは
「関税」とは、外国から輸入される商品の価格や量に応じて、輸入した企業が納める税金のことです。
関税は誰が払う?
関税を支払う義務がある人は、外国から商品を輸入した企業や個人であることがほとんどです。
例として、アメリカから商品を輸入したときの関税は、輸入した日本の企業や個人が日本国政府へ納付します。
関税は何のため?
関税を設ける主な目的は「税金(国の収入)を増やす」「自国の産業を保護する」の2つです。
-
税金(国の収入)を増やす
関税は輸入する商品の量や金額に応じて決まります。輸入が増加すると、輸入した自国へ納付される税金が増えることとなります。
-
自国の産業を保護するため
関税が高いほど輸入品のコストが上昇します。消費者が、価格が高い輸入品よりも価格が安い自国の商品を選ぶことが増えることで、国内の産業を守ることができます。
トランプ関税とは
「トランプ関税」とは、2025年1月20日に発足した第2次トランプ政権が発表した一連の関税措置のことです。第2次トランプ政権は関税率を引き上げることでアメリカ国内の産業活性化と輸出の増加を図り、貿易赤字の解消につなげることを目的としているといわれています。
「トランプ関税」の主な措置は次の4つです。
- 中国、カナダ、メキシコへの追加関税
- 鉄鋼・アルミニウム製品に関する追加関税
- 自動車・自動車部品に関する追加関税
- 貿易相手国ごとの追加関税
トランプ関税は大きく4種類
トランプ関税の内容を大きく分けると「国別関税」「品目別関税」「ベースライン関税(一律関税)」「相互関税」の4つです。
- 「国別関税」:特定の国や地域からの輸入品すべてが対象となる関税
- 「品目別関税」:鉄鋼や自動車などアメリカが輸入する特定の品目が対象となる関税
- 「ベースライン関税」(一律関税):すべての国・地域からの輸入が対象となる一律10%の関税
- 「相互関税」:アメリカが輸入している相手国がアメリカ製品を輸入するときの関税率や非関税障壁(輸入規制など)を考慮して決定される関税
トランプ関税の主な動き
トランプ関税はめまぐるしく動いています。今までの主な動きをまとめると次のとおりです。
2025年4月5日
ベースライン関税として一律10%の関税を開始。
2025年4月9日
日本、中国、EUなどについて上乗せ関税を開始。ベースライン関税率に上乗せ関税率を合わせた相互関税率は、日本24%、EU20%、中国34%など。
同日、日本を含む一部の国・地域に90日間の一時停止を発表。
2025年4月16日時点でまとめると、主なトランプ関税の内容は次のとおりです。
(日本)ベースライン関税10%のみ適用
(中国)2025年2月から3月にかけて実施された追加関税と米中両国の報復関税により145%の上乗せ関税率
(カナダ、メキシコ)2025年3月4日から一部を除き追加関税25%
(鉄鋼・アルミニウム製品)2025年3月12日から品目別関税25%
(自動車・自動車部品)2025年4月3日から品目別関税25%
トランプ関税が与える影響
トランプ関税による経済面の主なリスクとして、次の3つがあげられます。
世界経済の下振れリスク
アメリカが輸入関税の強化を進める場合、世界的に経済が下振れする可能性があります。三菱総合研究所が2025年1月に発表した試算によると、アメリカが中国から輸入する商品に+10%、メキシコおよびカナダからの輸入品について+25%の追加関税を課す場合、アメリカのGDPを-0.6%ポイント下押しする可能性があると試算しています。
また中国からの輸入品についての追加関税を+60%、そのほかの国からの輸入について一律+20%の追加関税をおこなう場合、アメリカのGDPを-1.7%ポイント、世界のGDPを-1.0%ポイント下押しする可能性があると試算しています。
【参考】トランプ2.0の米国・世界経済への影響と日本に求められる備え|三菱総合研究所
対米輸出・対中輸出の減少リスク
アメリカが追加関税を強化すると、アメリカの企業が輸入する商品のコストが増え、アメリカ国内での販売価格が上昇します。このためアメリカ国内でインフレの進行や個人消費の低迷などが起き、日本からアメリカへの輸出が停滞するなど日本の景気が悪化する可能性があると予測されています。
またカナダ、メキシコ、中国などアメリカへの輸出が多い国の輸出が鈍化すると当地の景気が悪化し、それらの国々への日本からの輸出が減少する可能性があります。
2025年4月22日に日本貿易振興機構(ジェトロ)が発表したアンケートによると、『日本からのアメリカへの輸出が減少する』と回答した割合が63.1%となっています。
【引用】米国トランプ政権の追加関税に関するクイック・アンケート調査結果|日本貿易振興機構(ジェトロ)
為替相場の急変リスク
トランプ政権はアメリカ国内の企業と個人向けの減税をおこなうことで景気を改善させる方針です。アメリカの景気回復によっては金利が引き上げられ、ドル高円安が進む可能性があります。円安が進行すると日本が輸入する商品の価格が上昇する可能性が高まります。
上記とは逆に、ドル安円高となる可能性が考えられます。トランプ関税によってアメリカ国内の輸入価格が上昇してアメリカ国内の景気が悪化すると、ドル売り(ドル安)となる可能性があります。
当面はトランプ関税の動きやアメリカ国内における影響をめぐり、為替相場の方向性が定まりにくくなると予測されています。
トランプ関税の影響を受ける日本企業は約1万3,000社!倒産件数は増加するとの予測
トランプ大統領の関税政策が日本企業に与える主な影響は次の3つです。
- アメリカへの直接輸出が不利となる
- メキシコ、カナダ、中国などを経由したアメリカへの輸出が不利となる
- アメリカへの輸出が多いメキシコや中国などの景気悪化により、日本からの輸出が鈍化する
トランプ関税で輸出に影響が出る日本企業は約1万3,000社との予測
2025年2月に帝国データバンクが発表した調査結果によると、トランプ大統領の関税政策の影響を受ける日本企業は約1万3,000社です。この数字は、アメリカ・中国・カナダ・メキシコへ直接輸出している企業数であり、中国向け輸出企業数が9,850社、北米向けが5,412社となっています。
業種別ではアメリカ向けが多い製造業と中国向けが多い卸売業が目立ちます。特に中国向けの輸出が多い企業は、売上高の約半分となる42.3%、アメリカ向けが多い企業は売上高の約1/3となる28.6%を占めており、影響が危惧されています。
【参考】米国の対中・対北米追加関税に対する日本企業の影響調査(2025年2月7日)|帝国データバンク
影響が懸念される業界は「自動車」「機械」など幅広い
トランプ関税による影響を最も受けやすいと予測される業界は、自動車などアメリカ向け輸出が多い業界です。
経済産業省がトランプ関税の影響をまとめた資料によると、日本からアメリカへの輸出が多い業界は「自動車・自動車部品」であり、今後の影響を注視するとしています。
【引用】米国の関税措置に対する国内対応について(2025年4月11日)|経済産業省
トランプ関税で日本国内企業の倒産件数は約3%以上増加の予測
帝国データバンクは2025年4月16日、トランプ関税が継続すると日本国内の企業倒産件数が3%以上増加するとの試算を発表しました。関税率ごとの日本国内倒産件数の試算結果は次のとおりです。
想定シナリオ |
実質GDP成長率 (従来予想比) |
国内倒産件数 (従来予想比) |
従来予想 |
1.2% |
10,235件 |
相互関税10%が |
0.7% |
10,574件 |
相互関税10%が |
0.9% |
10,489件 |
相互関税24%が継続 |
0.7% |
10,687件 |
(従来予想比)
【引用】トランプ関税が日本経済に与える影響(2025年4月16日)|帝国データバンク
国内設備投資、個人消費などに影響する可能性
トランプ関税により、日本国内における設備投資の抑制や賃上げの見送りなどの影響が出る可能性があります。
東京商工リサーチがおこなったアンケートによると、トランプ関税における対応のトップは「特になし」(65.1%)です。今後の動静を注視している経営者が多いとみられています。
対応すると回答した企業の中で多い回答は「在庫を減らす」(9.7%)、「設備投資を取りやめる」(9.0%)となっています。
また「今年の賃上げをとりやめる」(2.7%)、「来年の賃上げを見送る」(4.8%)などの回答があげられています。
【参考】「トランプ関税」に関するアンケート調査(2025年4月)|東京商工リサーチ
トランプ政権の影響に負けないための中小企業における対応策
当面の間、トランプ関税(相互関税)の猶予期間である90日間を経過後の姿を予測できない不確実な状況が続きます。日本の中小企業においてもトランプ大統領の政策に影響されない対応策を考えておくことが必要です。
上記の日本貿易振興機構がおこなったアンケートによると、トランプ関税における主な対応策は「価格転嫁」(38.8%)、「コスト削減」(28.9%)、「アメリカ以外の国への販路開拓」(25.3%)などです。
トランプ関税における対応を含め今後の自社の経営を改善させる主な取組みとして次の5つがあげられます。
【引用】米国トランプ政権の追加関税に関するクイック・アンケート調査結果|日本貿易振興機構(ジェトロ)
輸出先の分散
アメリカ・中国など以外の国への輸出拡大があげられます。中国以外のアジア各国やEUなどに対する輸出を増やすことで、アメリカの輸入関税による影響を低減できる可能性があります。
サプライチェーンの見直し
中国やメキシコなどで生産し、アメリカへ輸出するビジネスモデルを見直すことがあげられます。生産拠点を中国から東南アジア諸国やインド、アメリカ国内などへ移すことで、追加関税を回避できる可能性があります。
DX化、AIの活用
DX化やAIの活用があげられます。例えばDX化やAI活用により、需要予測の精度を向上させる、在庫管理を強化するなどです。またECサイトを拡充し、日本国内で販売を増やす、越境ECを活用して輸出販路を広げる、などが考えられます。
生産性の向上・新分野への挑戦
省人化投資による生産性向上、コスト削減、新製品販売への取り組みによる付加価値向上などがあげられます。
トランプ関税による影響が危惧される自動車・自動車部品業界に対しては、経済産業省がおこなっている『ミカタプロジェクト』の活用を検討できます。本プロジェクトに参加する企業がトランプ関税による影響を受けた場合、ものづくり補助金や新事業進出補助金において優先採択される可能性があります。
【引用】米国の自動車関税発効等を受けた短期の支援策(2025年4月3日)|経済産業省
【参考】自動車産業「ミカタプロジェクト」のページ|経済産業省
設備投資などに利用できる公的支援策を活用
新たな輸出先の開拓、生産性向上投資にかかる資金の調達、新製品の開発などは、補助金や助成金、専門家派遣制度など公的支援策の活用を検討できます。取り組み内容別に主な公的支援策をまとめると次のとおりです。
取り組みの例 |
公的支援策の例 |
関税や輸出入に関する情報を知りたい |
日本貿易振興機構(ジェトロ) |
海外に現地法人を設立したい |
海外展開ハンズオン支援事業 |
省人化投資をおこないたい |
中小企業省力化投資補助金 |
新製品開発のために投資したい |
ものづくり補助金 |
関税により輸出契約を破棄された |
日本貿易保険(NEXI)の貿易保険 |
資金調達したい |
地方公共団体や金融機関の特別融資 |
【参考】
海外展開ハンズオン支援|中小企業基盤整備機構
中小企業省力化投資補助金チラシ|中小企業庁
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金チラシ|中小企業庁 米国の自動車関税引き上げにより影響を受けるお客様への支援について|日本貿易保険 米国追加関税措置の影響に対応する融資制度の創設について|名古屋市
公的支援策の活用はF&M Clubがサポート
トランプ関税により、自動車業界など日本の中小企業においても大きな影響を受ける可能性があります。中小企業経営者は、トランプ政権の動向に情報感度を高めておくとともに、政策に対応できるよう、自社の経営を見直すことが重要です。
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