
トランプ大統領の影響で日本の中小企業が潰れる?影響と対策をわかりやすく解説
2025年1月20日に第2次トランプ政権が発足しました。再選したトランプ大統領は関税見直しから始めており、今後、アメリカ・メキシコ・カナダ・中国など向けの輸出が多い日本企業が影響を受ける可能性があります。
本記事では、トランプ大統領の主な経済政策によって日本の中小企業が受ける影響や、中小企業が検討しておきたい対策について解説します。
目次[非表示]
- 1.第2次トランプ政権の主な経済政策
- 1.1.輸入関税の強化
- 1.2.国内減税・規制緩和・国内産業優遇
- 1.3.ガス・石炭産業の活性化
- 2.トランプ大統領の政策による主なリスク
- 2.1.世界経済の下振れリスク
- 2.2.対米輸出・対中輸出の減少リスク
- 2.3.円安進行による原材料価格上昇リスク
- 3.トランプ政策の影響を受ける日本企業は約1万3,000社
- 4.トランプ政権の影響に負けないための中小企業の対応策
- 4.1.輸出先の分散
- 4.2.サプライチェーンの見直し
- 4.3.DX化、AIの活用
- 4.4.生産性の向上
- 4.5.設備投資などに利用できる公的支援策を活用
- 5.公的支援策の活用はF&M Clubがサポート
第2次トランプ政権の主な経済政策
2025年1月20日にドナルド・トランプ氏が2度目のアメリカ大統領として再選され、第2次トランプ政権が動き始めました。
第1次トランプ政権は国内減税から着手しましたが、第2次トランプ政権はアメリカへの輸入品にかける関税の見直しから始めています。
第2次トランプ政権の主な経済政策のうち日本の中小企業経営者が特に注目しておきたい項目は「関税」「アメリカ国内経済の活性化」「エネルギー政策の見直し」の3つです。
輸入関税の強化
トランプ大統領は2月13日に「相互関税」導入を指示する文書に署名し、2月18日に正式決定を発表しました。「相互関税」とは、アメリカの輸出先となる国が課している関税と同水準まで、その国からアメリカが輸入するときの関税を引き上げるものです。対象国は日本、中国、EUなどすべての貿易相手国です。またアメリカ製品の輸入に不利となる非関税障壁(付加価値税(VAT)、補助金、規制、為替レート、知的財産権の不備など)についても考慮対象に含むとしており、今後、具体的な検討に入るとされています。
また2025年4月2日に「自動車関税」が発表される予定です。2月18日にトランプ大統領が発言した内容によると、現行の乗用車の関税2.5%を、1年間かけて25%へ引き上げる予定であり、対象国については言及されていません。乗用車の関税が大幅に引き上げされると、日本からアメリカ向けの自動車輸出に影響があると予測されます。また自動車だけでなく半導体や医薬品などについても同時に追加関税が発表されるといわれています。
トランプ大統領は中国からの輸入品について+10%の追加関税を課すと発表し、カナダとメキシコについても+25%の追加関税を3月5日まで延期している状況です。中国、メキシコ、カナダなどはアメリカの追加関税に対して追加関税を課すと表明しており、今後、関税引き上げが各国に広がる可能性があります。
国内減税・規制緩和・国内産業優遇
トランプ大統領は、アメリカ国内の企業向け減税や個人所得税の減税、規制緩和、国内製造業を優遇するさまざまな方針を打ち出しています。
アメリカ国内企業向けの減税策としては、法人税率を21%から15%へと引き下げすると表明しています。日本企業にとってはアメリカで事業をおこなっている現地法人が減税の恩恵を受ける、アメリカ国内での消費が活発化するなどが期待されている一方、アメリカへ輸出している日本企業にとっては現地企業との競争が厳しくなる可能性があります。
ガス・石炭産業の活性化
第2次トランプ政権はガス・石炭産業の活性化を掲げ、1月20日に正式に大統領令への署名がなされました。
この大統領令の中にはガソリン自動車の販売規制の撤廃、EV(電気自動車)向け一部補助金やエネルギー開発規制の見直しなどが盛り込まれています。
脱炭素に向けた環境規制が変更されることで、エネルギーコストの低下などのメリットがある一方、脱炭素をアピールする製品については、競争が激しくなる可能性があります。
トランプ大統領の政策による主なリスク
トランプ大統領の政策による経済面の主なリスクとして、次の3つがあげられます。
世界経済の下振れリスク
アメリカが輸入関税の強化を進める場合、世界的に経済が下振れする可能性があります。三菱総合研究所が発表した試算によると、アメリカが中国から輸入する商品に+10%、メキシコおよびカナダからの輸入品について+25%の追加関税を課す場合、アメリカのGDPを-0.6%ポイント下押しする可能性があると試算しています。
また中国からの輸入品についての追加関税を+60%、そのほかの国からの輸入について一律+20%の追加関税をおこなう場合、アメリカのGDPを-1.7%ポイント、世界のGDPを-1.0%ポイント下押しする可能性があると試算しています。
【参考】トランプ2.0の米国・世界経済への影響と日本に求められる備え|三菱総合研究所
対米輸出・対中輸出の減少リスク
アメリカが追加関税を強化すると、日本からアメリカへの輸出が停滞し、日本の景気が悪化する可能性があります。特に「自動車関税」については日本企業への影響が大きくなります。
またカナダ、メキシコ、中国などアメリカへの輸出が多い国の輸出が鈍化すると当地の景気が悪化し、それらの国々への日本からの輸出が減少する可能性があります。
円安進行による原材料価格上昇リスク
トランプ政権はアメリカ国内の企業と個人向けの減税をおこなうことで景気を改善させる方針です。アメリカの景気回復によっては金利が引き上げられ、ドル高円安が進む可能性があります。円安が進行すると日本が輸入する商品の価格が上昇する可能性が高まります。
トランプ政策の影響を受ける日本企業は約1万3,000社
トランプ大統領の関税政策が日本企業に与える主な影響は次の3つです。
- アメリカへの直接輸出が不利となる
- メキシコ、カナダ、中国などを経由したアメリカへの輸出が不利となる
- アメリカへの輸出が多いメキシコや中国などの景気悪化により、日本からの輸出が鈍化する
帝国データバンクの発表によると、トランプ大統領の関税政策の影響を受ける日本企業は約1万3,000社とされています。この数字は、アメリカ・中国・カナダ・メキシコへ直接輸出している企業数であり、中国向け輸出企業数が9,850社、北米向けが5,412社となっています。
業種別ではアメリカ向けが多い製造業と中国向けが多い卸売業が目立ちます。特に中国向けの輸出が多い企業は、売上高の約半分となる42.3%、アメリカ向けが多い企業は売上高の約1/3となる28.6%を占めており、影響が危惧されています。
トランプ政権の影響に負けないための中小企業の対応策
日本の中小企業がトランプ大統領の政策に影響されない対応策として、次の5つがあげられます。
輸出先の分散
北米・中国など以外の国への輸出拡大があげられます。中国以外のアジア各国やEUなどに対する輸出を増やすことで、アメリカの輸入関税による影響を低減できる可能性があります。
サプライチェーンの見直し
中国やメキシコなどで生産し、アメリカへ輸出するビジネスモデルを見直すことがあげられます。生産拠点を中国から東南アジア諸国やインド、アメリカ国内などへ移すことで、追加関税を回避できる可能性があります。
DX化、AIの活用
DX化やAIの活用があげられます。例えばDX化やAI活用により、需要予測の精度を向上させる、在庫管理を強化するなどです。またECサイトを拡充し、日本国内で販売を増やす、越境ECを活用して輸出販路を広げる、などが考えられます。
生産性の向上
省人化投資による生産性向上、コスト削減、新製品販売への取り組みによる付加価値向上などがあげられます。アメリカの景気回復と金利上昇によりドル高円安が進むと、日本で輸入品の価格が上昇する可能性があるためです。
設備投資などに利用できる公的支援策を活用
新たな輸出先の開拓、生産性向上投資にかかる資金の調達、新製品の開発などは、補助金や助成金、専門家派遣制度など公的支援策の活用を検討できます。取り組み内容別に主な公的支援策をまとめると次のとおりです。
取り組みの例 |
公的支援策の例 |
円安を活かして輸出を始めたい |
新規輸出1万者支援プログラム |
海外に現地法人を設立したい |
海外展開ハンズオン支援事業 |
省人化投資をおこないたい |
中小企業省力化投資補助金(一般型、カタログ型) |
新製品開発のために投資したい |
ものづくり補助金 |
【参考】
新規輸出1万者プログラム|JETRO(ジェトロ)
海外展開ハンズオン支援|中小企業基盤整備機構
中小企業省力化投資補助金 総合案内チラシ(2025年2月14日)|省力化投資補助金事務局
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金チラシ|中小企業庁
公的支援策の活用はF&M Clubがサポート
トランプ大統領による政策では、関税の見直しなど、日本企業に影響を与える政策が発表されており、中小企業においても影響を受ける可能性があります。中小企業経営者は、トランプ政権の動向に情報感度を高めておくとともに、政策に対応できるよう、自社の経営を見直すことが重要です。
「自社で活用できる補助金などを調べたいが、時間がない」
「自社で資金繰りを改善したいが、どうすればいいかわからない」
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