
下請法の2025年改正で手形支払を禁止へ!改正ポイントと中小企業における影響と対策とは
下請法と関係法令が2025年に改正される予定です。改正内容は手形による代金支払の禁止、運送(発送)を対象取引に追加、従業員数が多い企業を規制対象とするなど、中小企業に大きな影響があると予測されています。
本記事では、2025年に予定されている下請法などの改正ポイント、中小企業における影響と対策について解説します。
目次[非表示]
- 1.下請法・下請振興法の2025年改正ポイントは大きく5つ
- 1.1.下請法改正ポイント①用語や名称の変更:『下請』から「委託」「受託」へ変更
- 1.2.下請法改正ポイント②支払方法の制限:手形などによる代金支払の禁止
- 1.3.下請法改正ポイント③適用範囲の拡大その1:資本金基準に加えて従業員数基準を追加
- 1.4.下請法改正ポイント③適用範囲の拡大その2:運送(発送)、木型や治具などを追加
- 1.5.下請法改正ポイント③適用範囲の拡大その3:中小企業同士の取引を追加
- 1.6.下請法改正ポイント④価格協議の徹底:協議を適切におこなわない代金額決定の禁止
- 1.7.下請法改正ポイント⑤そのほかの改正
- 1.7.1.事業を所管する省庁の強化
- 1.7.2.遅延利息の対象に減額を追加
- 1.7.3.国・地方公共団体の責務規程を新設
- 1.7.4.多段階の事業者が連携した取り組みへの支援
- 2.下請法の改正はいつから
- 3.下請法改正による中小企業への影響と対策とは
- 3.1.中小企業のメリットデメリット
- 3.2.下請法改正に伴う中小企業における対策
- 4.下請法改正対策や資金繰り改善はF&M Clubがサポート
下請法・下請振興法の2025年改正ポイントは大きく5つ
下請法と下請振興法などの関係法令が2025年に改正され、手形による代金支払が禁止される予定です。そのほか下請取引の対象として「従業員数300名超の企業を追加する」「適用される取引として運送(発送)を加える」など幅広く改正されます。
2025年の下請法などの改正内容を大きく分けると次の5つです。
【2025年の下請法改正予定】
- 改正ポイント①用語や名称の変更:「下請」から「委託」「受託」へ変更
- 改正ポイント②支払方法の制限:手形などによる代金支払の禁止
- 改正ポイント③適用範囲の拡大:従業員数基準の新設、運送の追加など
- 改正ポイント④価格協議の徹底:協議を適切におこなわない代金額決定の禁止
- 改正ポイント⑤そのほかの改正
【参考】下請法・下請振興法改正法案の概要(2025年3月)|公正取引員会、中小企業庁
【参考】法案および理由|公正取引委員会
下請法改正ポイント①用語や名称の変更:『下請』から「委託」「受託」へ変更
2025年の下請法などの改正にあわせて、法律名や用語が変わります。従来の「下請」という用語が「委託」「受託」へ見直しされます。
従来 |
改正後 |
下請中小企業 |
受託中小企業 |
親事業者 |
委託事業者 |
下請中小企業振興法 |
受託中小企業振興法 |
下請代金支払遅延等防止法 |
製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律 |
下請法改正ポイント②支払方法の制限:手形などによる代金支払の禁止
下請法上、手形による代金支払が禁止されます。手形だけでなく、でんさい(電子記録債権)やファクタリングなど、支払期日に現金化できない支払方法についても同様に禁止となります。
【引用】下請法・下請振興法改正法案の概要(2025年3月)|公正取引員会、中小企業庁
下請法改正ポイント③適用範囲の拡大その1:資本金基準に加えて従業員数基準を追加
下請法の適用基準について、従来の資本金額に基づく基準に加えて、下記のとおり「従業員数300名(または100名)超」が、基準として追加されます。
- 製造委託・修理委託の場合:従業員数300名超の企業とそれ以下の企業の取引
- 役務提供委託などの場合:従業員数100名超の企業とそれ以下の企業の取引
下請法改正ポイント③適用範囲の拡大その2:運送(発送)、木型や治具などを追加
適用対象となる取引として、商品を発送するための運送委託が追加されます。
また製造委託の範囲が拡大され、従来の金型に加えて、木型や治具(工作物保持具そのほかの特殊な工具)が対象となります。
【引用】下請法・下請振興法改正法案の概要(2025年3月)|公正取引員会、中小企業庁
下請法改正ポイント③適用範囲の拡大その3:中小企業同士の取引を追加
下請法の対象外となる中小企業同士の取引であっても、従業員数の大小関係によって下請振興法上の指導対象となります。
【引用】下請法・下請振興法改正法案の概要(2025年3月)|公正取引員会、中小企業庁
下請法改正ポイント④価格協議の徹底:協議を適切におこなわない代金額決定の禁止
委託事業者が受託中小企業からの価格協議に応じないことや、委託事業者が受託中小企業へ必要な説明や情報提供をしないなど一方的に代金額を決定することが禁止されます。
【引用】下請法・下請振興法改正法案の概要(2025年3月)|公正取引員会、中小企業庁
下請法改正ポイント⑤そのほかの改正
2025年の下請法改正に関連して、次の事項が改正されます。
事業を所管する省庁の強化
中小企業が経営する事業を所管する主務省庁に対して、中小企業に対する指導や助言権限が与えられます。
また主務省庁からの指導や助言によっても改善されない企業に対しては、より具体的な措置を勧奨できることとなります。
遅延利息の対象に減額を追加
委託事業者が受託中小企業に対して遅延利息を支払わなくてはならない場合として、代金額を減額した場合が追加されます。
代金額を減額した場合、支払期日(定めていない場合は納品日)から起算して60日を経過した日から実際の支払日までの遅延利息を支払うこととされます。
国・地方公共団体の責務規程を新設
国と地方公共団体が連携する責務などが規定されます。
多段階の事業者が連携した取り組みへの支援
下請振興法の支援対象として、多段階の取引関係にある振興事業計画が追加されます。従来は直接の取引関係のみが対象でしたが、改正後はサプライチェーン全体が支援対象となります。
【引用】下請法・下請振興法改正法案の概要(2025年3月)|公正取引員会、中小企業庁
下請法の改正はいつから
2025年の下請法など改正案は2025年3月11日に閣議決定されました。今後、通常国会における審議を経て、法改正公布後1年以内に実施される予定です。
下請法改正による中小企業への影響と対策とは
2025年の下請法改正により、従来の商慣習から大きな転換を迫られる可能性があります。
今回の改正による中小企業における影響と対策をまとめると次のとおりです。
中小企業のメリットデメリット
中小企業にとっての主なメリットは次のとおりです。
- 価格交渉をしやすくなる
- 振込による売掛金回収の増加で資金繰り負担が軽くなる
一方、予測されるデメリットは次のとおりです。
- 振込による支払が増えるなど資金繰りに影響がある
- 中小企業同士の取引であっても適切な価格協議が必要となる
- 価格交渉の記録作成など事務負担が増す
- トラブルとなった場合、経営する事業の管轄省庁から指導を受ける可能性がある
下請法改正に伴う中小企業における対策
下請法改正にあわせた主な対策は次のとおりです。
- 価格交渉のために原価データなどを収集するIT化をすすめる
- 取引先との価格交渉を丁寧におこなう
- 振込による支払の増加に伴う運転資金を調達する
- 仕入価格や運送費などコスト上昇をカバーする生産性向上などに取り組む
下請法改正対策や資金繰り改善はF&M Clubがサポート
2025年に予定されている下請法改正は、手形による代金支払の禁止、従業員数300名超の企業や運送(発送)を対象へ追加などが盛り込まれています。中小企業においても、発注者側・受託者側の両方の立場から適切に対応できる体制を整える、支払手形を廃止する、運転資金を調達するなどの対策が必要です。
下請法改正における対応は自社の資金繰りに影響をおよぼす可能性があり、専門家からアドバイスを受けることがおすすめです。
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